ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

Pの『THE つだん部屋』コミュの対峙(後)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【コピペ】



神尾さんの部屋の前。

俺「ここだよ」

俺はチャイムを鳴らす。

「ピンポーン」

・・・

俺「あら?」

「ピンポーン」

・・・応答なし。

俺「出ないな」

舞「・・・」

もう一度チャイムを押そうとしたとき、姉がドアノブを掴む。

舞「開いているわ」

俺「え・・・」

そのままドアを開く姉。

俺「あら、本当だ。無用心だなぁ。姉貴が来るからって開けておいたのかな」

舞「出て行った人が閉めなかったから、開いているだけよ」

俺「ほぇ?」

それでも中にいる人が閉めるんじゃ?と思ったが、まぁどうでもいいか。
玄関を見ると、見覚えのある靴が置いてある。
古乃羽のものだ。
部屋の中は静かだけど、居るのかな?

俺「こんばんはー」

声を掛けるが、返事はない。
それはそうだ。
チャイムを鳴らしても無反応だったし、誰も居ないのか・・・って!?
俺はここにきて、やっと嫌な予感というものを感じる。
何と言う鈍感さだ・・・!
なぜ古乃羽から返事が来ないのか?
なぜドアが開けたままになっているのか?
靴はあるのに、こちらが呼びかけても何の返答もないのは?
そして姉の言った『何かあったら』って・・・何があるんだ?

俺「古乃羽!」

俺は慌てて神尾さんの部屋に駆け込む。
見覚えのある神尾さんの部屋。
そこに2人が倒れている。
まさか、死・・・いや・・・バカな!

俺「古乃羽!」

すぐに古乃羽の元に行く。
一体何があった?
メールは何だ?
玄関が開いているのは?
古乃羽を介抱しながら、軽くパニックになる。
すると姉がやってきて古乃羽の元に屈みこみ、熱を測るように額に手を当てた。

俺「何が?何があったんだ?2人は・・・」

舞「大丈夫。気を失っているだけ」

そう言うと姉はゆっくり立ち上がり、今度は神尾さんの元に行く。

俺「だけっ、て・・・」

古乃羽を抱きかかえながら姉に言う。

舞「美加さんも無事ね」

俺「無事?これで無事?一体・・・」

舞「2人をベッドに運んであげましょ」

俺「あぁ」

確かに床に寝転がしておくのも何なので、2人をベッドに運ぶ。

舞「怪我も無いみたいね。よかった」

ベッドに寝かせた2人の髪や服を整えながら、姉が言う。

俺「あぁ、そうだね」

舞「怒っている?」

俺「いや、何が何だか」

舞「ごめんね。2人が気が付いたら、話すから・・・」

弱弱しく言う姉。
そんな風に言われると、何も言えなくなる。
俺は大人しく、2人の意識が戻るのを待った。


どこをどうしたのか知らないが、姉が『触った』ためか、2人はすぐに目を覚ました。
気が付いた2人は俺達が居ることに驚いた様子だったが、そんな2人を姉が落ち着かせ、尋ねる。

舞「2人とも、何があったのか覚えている?」

神尾「古乃羽、覚えてる?」

古乃羽「うん。美加は?」

神尾「私も覚えている。佳澄が・・・」

2人がここで起きたことを話してくれる。
白谷さんのことは俺も知っていた。
2人の友人、ってレベルだけど。
その白谷さんに古乃羽が異常なものを感じ、更にそれを察した神尾さんが咄嗟に姉に電話をした、ということだった。

古乃羽「佳澄、今まで何ともなかったのに・・・突然、すごく嫌なものが見えたの」

舞「見つからないように隠していたのね。でも・・・」

姉が棚の方を見て、言う。

舞「あの子がそれを解いてくれたみたいね」

棚の上には俺も見覚えのあるヌイグルミが置いてあった。

神尾「ラット君・・・」

ラット君。
そうだ、あの少女はそう呼んでいた。
神尾さんがベッドから立ち上がり、ヌイグルミのところに行く。

神尾「守ってくれたんだ。ありがとう」

手に取り、ギュッと抱きしめてキスをする。
一瞬、ラット君が照れたように見えたのは、まぁ気のせいだろう。

俺「それで、電話でおかしいことに気付いて、姉貴はここに来ようって言ったのか」

神尾「気付いてくれて良かった・・・舞さん、ありがとう」

古乃羽「ありがとう。雨月君も、ありがとうね」

神尾さんと古乃羽がお礼を言う。
そう、気付いてよかった。
助かってよかった・・・でも・・・

神尾「舞さんが来るって分かったから、佳澄は逃げて行ったみたいね」

古乃羽「佳澄、舞さんのこと知っていたのかなぁ」

それも疑問だ。
しかし俺が不可解に思ったのはそこだけじゃない。

舞「佳澄さんと少し話をしたのよ」

姉が言う。

古乃羽「あ、じゃあそれで分かった・・・のかな」

神尾「舞さんには敵わないと思った、ってことね」

それなら余計おかしい。
敵わないと思って、なぜ2人を放っていく?利用しようとしないものか?報復が怖いとか、そういうことか?
考えすぎかも知れないけど、何となく古乃羽と神尾さんの言い方も不自然だ。
おかしいことに気付いていて、触れないように、誤魔化しているように思えてしまう。

舞「光一」

俺「うん?」

黙ってる俺に、姉が声を掛けてくる。

舞「気になることがあったら、言っていいのよ?」

俺「ん・・・」

古乃羽と神尾さんが何か訴えるような目でこちらを見ている。
腑に落ちない点があるのは確かなようで、なんだか色々と託された感じだ。

俺「じゃあ。えっと、電話でさ、どんなこと話したの?」

軽いことから聞いてみる。

舞「簡単な挨拶。私のこと、名前は知っていたみたいね。ハッキリと嫌いって言われたな。それと、2人のことで軽く脅されたわ」

脅された。
2人がどうなってもいいのか、と脅されたのだろう。
そうだろうな。
姉のことを知っていたなら、そうするのも分かる。
それで?

俺「それでなんで2人に何もしないで去って行ったのかな」

舞「・・・」

俺「それと、なんで姉貴は・・・急がなかったの?」

一番聞きたかったことを聞く。
この事態に、なぜあんなにゆっくりと来たのか?
話を聞いてれば、俺はもっと死ぬほど急いで駆けつけただろう。
取り返しのつかないことになる前に。
急いで来た訳じゃないことを、2人は知らない。
だから2人の前で聞くべきじゃないとも考えたけど、敢えて聞いてみた。
姉のことを信じているから。
これからもそうありたいと思っているから。
2人もきっと同じだろう。
車で急ぐと危ない。
事故を起こすかも知れない。
そう思ったから?
そんな答えは聞きたくない。
いくら急いでいたって、俺はそんな運転はしない。
それに車以外のところでも急げるところはあったはずだ。
あんな・・・慣れない冗談を言う時間もなかったはずだ。
しばしの沈黙。
姉に対する疑惑・・・嫌だ。
そんなの感じたくない。
俺は姉貴を信じたい。

舞「どれだけ急いでも・・・」

姉が口を開いた。

舞「間に合わないと、すぐに分かったわ。佳澄さんには自信と余裕があった」

そう言いながら姉貴は立ち上がり、窓に向かう。

舞「電話をしながらだって、彼女は行動に出られたと思う。もし私が動く気配を見せたら、すぐにでもね」

姉はカーテンを少しめくり、外を眺めながら話を続ける。

俺「だから・・・諦めた?」

仕方ないのかもしれない。
どれだけ急いでも無駄なら、確かにそうかもしれない。
でも、諦めては欲しくなかった。
2人に危険が迫っていたんだ。
例え無駄と分かっていても、諦めて欲しくなかった。

舞「すぐに助けに駆けつけるのは、諦めたわ」

俺「・・・」

舞「でも、ただ諦めるだけじゃ2人が危ないと思ったから・・・別の方法を探したわ」

何か言い難いことがあるのか、そこで姉は黙る。
でも何か良い方法があって・・・それが上手くいってこうなったのなら、それを聞かせて欲しい。
この不信感を取り払って欲しい。

俺「別の方法って?」

俺は話を促す。
そしてすぐ後で、俺はそれを後悔する。

舞「佳澄さんって・・・」

俺達に背を向けたまま、再び話を始める姉。

舞「ものすごくプライドが高くて、自己中心的で、欲しいものは何をしてでも手に入れるタイプ。そして何よりも私のことが嫌い。話をして、そう分かったわ」

そんな人だったのか、彼女。

舞「だから、ね・・・」

少し言い淀むが、続けてこう言った。

舞「そんな大嫌いな私のお下がり・・・私が使い古して捨てたものは、絶対に拾わないと思ったの」

俺「え?」

何故か姉の声が少し震えている。
言っている意味もよく分からない。
お下がり?使い古して・・・捨てたもの?

舞「人を物か人形のように扱う彼女は、すぐに分かってくれたわ」

あ・・・!

舞「だから彼女にこう言ったのよ。光一と2人は私の・・・」

・・・ダメだ!
俺は慌てて立ち上がる。
と同時に神尾さんが言う。

神尾「古乃羽!ほら・・・ここと台所、片付けないと」

古乃羽「あ・・・うん、そうだね。全部出しっぱなしだ」

すぐに答える古乃羽。


俺「姉貴、帰らないと・・・俺、お袋に何も言ってないから心配してるよ」

そう言って姉の手を取り、玄関に引っ張っていく。

俺「神尾さん、古乃羽、また今度・・・ごめん!」

古乃羽「うん。気を付けてね」

神尾「はーい。またねー」

外に出て、そのまま車に向かう。
姉は手を引かれるまま、何も言わない。
姉を乗せてエンジンを掛け、車を出す。
助手席の姉は、ただ俯いている。



※コメントに続きます

コメント(1)

※続き



なんてことだ。
こんな・・・

舞「私ね・・・光一と2人は、私の・・・」

姉がぽつりと喋りだす。

俺「いいって!分かったから」

舞「・・・」

姉は口を固く結んで言葉を切った。
そしてその目から一筋だけ、涙が流れていった。
本当に、なんてことだろう。
姉が何をしたのか、よく分かった。
俺、古乃羽、神尾さんの3人を自分の所有物・・・言葉を借りれば『自分の人形』であると、相手に伝えたのだろう。
そしてそれを捨てた。
一切の助ける素振りも見せず、もう要らないものとして捨てたのだろう。
そんな物はもう要らない、と。
そうして相手が2人に興味を無くすように・・・2人の『人形としての価値』を失わせた。
相手はそのプライドの高さから、人が捨てたものは拾わない。
ましてや嫌いな人が唾を付けて捨てたお下がりの人形など、決して拾わない。
そう考え、それに掛けたのだろう。
姉の性格から考えると、例え誰であれ、人のことをそんな風に言うなんて考えられない。
口が裂けたって言わないはずだ。
白谷佳澄。
彼女はそれを言わせた。
一体何の目的で、何をしようとしていたのかなんて俺には分からないが、ハッキリと分かることが1つ。
この件で一番傷付いたのは、姉だ。
様子がおかしいと気付いていたのに、最後まで分からなかった。
姉は怖かったのかもしれない。
部屋に行って、2人が無事かどうかを確認するのが。
でも逃げる訳にもいかなかったから、俺を一緒に連れて行ったのだろう。
そして・・・あの場で言わせてしまうところだった。
身を切る思いで言ったであろう言葉を、また言わせてしまうところだった。
自分がしたことを隠せない。
悪いと思う事をしてしまったら、それを隠しておけない。
姉貴はそんな性格だ。
謝らないと・・・
でもこういうとき、何て言えばいいのだろう?
気付かなくてごめん?一瞬でも疑ってごめん?
うーん・・・違うな。
ここはやはり思ったことをそのまま・・・

俺「あのさ・・・」

舞「・・・」

俺「ありがとう」

こういうのは中々照れくさい。

舞「・・・」

姉は何も言わない。
うーん、困ったぞ・・・
一筋とはいえ、姉の涙なんて何年ぶりに見るだろう。
こういう時にはどうすれば良いやら、まったく見当がつかない。

俺「えっとさ・・・」

舞「いいの」

やっと喋った。

舞「みんな、とても大切な人・・・」

俺「うん・・・」

舞「・・・少し寝るから、着いたら起こしてね」

そう言って姉はシートに身体を沈める。

俺「ん。もうすぐ・・・」

っと。
姉はすぐにスヤスヤと眠りだした。
最近、色々なことがあって、姉のことを何だか遠い存在に感じていた。
病気が治ってから、急に人が変わってしまったように思っていた。
でも違った。
寝顔を見れば分かる。
真面目すぎて、傷付きやすいところがある。
軽い冗談でも言うのは苦手。
お袋にワガママは言わないけど、俺には言う。
照れくさいことがあると、話を逸らす・・・場合によっては寝ると言って本当にすぐに寝る。
昔から何も変わっていないじゃないか。
俺はゆっくりと車を走らせ、遠回りで帰ることにした。



※終わり

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

Pの『THE つだん部屋』 更新情報

Pの『THE つだん部屋』のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング