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Pの『THE つだん部屋』コミュの【1110】心霊スポットツアー

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【コピペ】



これは今から6年前の話です。

当時、私は料理系の専門学生でした。

若気の至りとは良く言ったもので、それこそ毎晩の様に悪友数名とつるんで遊び呆けていました。

ある夏の日の事です。

その日は居酒屋でクラスメート男3女3の計6名で夕方過ぎから飲んでいました。
くだらない話で盛り上がり、気がつけば時間は深夜0時を少し過ぎていました。

誰が言い出したかは忘れましたが、今まで行った「心霊スポット」の話題になり、それぞれに「○○病院は怖いよ〜」「何処何処にあるボロい家はマジやばい」「自殺の名所のT尋坊(地元ばれますね〜)で女の幽霊を見た!」とか口々に言っていました。

そうなると・・・案の定、「今から心霊スポットツアーをしよう」と言う事になり、早々と飲み会を切り上げ店を出ました。


簡単に心霊スポットツアーの内容を説明しておきます。

?T尋坊
  ↓
?足×山の集団墓地
  ↓
?△△ホテル
の3箇所を一晩で回るツアーです。


メンバーは先程の男女6名

男共は私とAとM。
女性メンバーはTさんとHさんとYさん。

さらにキャラクターが分かり易い様に説明します。

私:このグループの中心人物で実はこのツアーの発起人

A:私の相方的男で、ガタイも良く、柔道黒帯

M:3枚目的キャラで霊感有り(自称?)

Tさん:男勝りな姉御肌でかなり美人、更に霊感有り

Hさん:ミス○○に輝く程の美人、しかし下ネタもドンと来い!のいい奴(Aが思いを寄せています)

Yさん:Hさんと甲乙つけ難い美人、ちょっとおっちょこちょいだけど憎めない(私が思いを寄せています)

皆、車を持ってましたが、1番でかいと言う理由でMのワゴン車で行く事になりました。

もちろん運転はM。
その隣には、Tさん。

続いて2列目にAとHさん。

3列目のシートには私とYさん。

霊感組2人を最前列に置いて、好きな女の子の隣に座るという、最強の布陣です。

そして、いよいよ深夜の心霊スポットツアースタートです。





T尋坊は車で40分程掛かります。道中も私達6人は怖い話をして雰囲気作りをしていました。

車の中では特にY子とH子が「ギャーギャー」騒いでいました。

しかし目的地が近付くと皆が静かになり、全員が緊張した顔をしていました。

T尋坊は本来、景勝地として全国的にも有名で休みの日には沢山の観光客が訪れます。

私達は観光バスが停める駐車場に車を停め、遊歩道沿いに歩いて行きました。

そして懐中電灯がなかったので、男子3人が持っていたライターで照らしながら歩いて行く事にしました。

しかし・・・

3人とものライターが点かないのです。

私とA男の100円ライターならまだしも、M男のZIPPOまで点かない始末でした。

この時、M男がしきりに「今朝、オイル入れたばかりなのになぁ?」と怪訝そうな顔をしていたのが印象的でした。

仕方なく6人は明かりなしてトボトボ歩いていきます。

幸いにも月明かりがあり、真っ暗ではなかったのでスムーズに歩く事が出来ました。

しばらく遊歩道を歩いていると噂の電話BOXがありました。

その噂とは、この電話BOXは自殺志願者が最後に電話をする事で有名で、BOX内にはテレカや10円玉が常備されており、「命を粗末にするな」的な標語が貼ってあります。

地元の方や役所の方が思い留まらせる為にされているんだと思います。

そのBOXに若い女の幽霊とかおじさんの幽霊とか子供とか、とにかく色んな幽霊が出るとされています。

じゃんけんをして、私とH子がBOX内に入る事になりました。

中でふざけていましたが、特に変わった事は起きませんでした。

その後、また歩いて断崖絶壁を覗いたり、自殺者の死体が潮の関係で流れ着くという島にも行きましたが、結局「なんにもないねぇ。」と言う結論でした。

6人は車に戻り、次の目的地に向かう事にしました。

車の中では「全然たいした事無かったね〜。」と口々に言っていました。見栄や虚勢でなく本当に大した事ないというのが皆の本心だったと思います。

次の目的の足○山集合墓地に向けて出発し、しばらくすると、T子が「ライター点けてみて。」と言いました。

男子3人はT子の思惑が瞬時に理解出来ましたし、面白そうと言う事で、半信半疑ながらも「せ〜の」でライターを点けてみました。

すると・・・3人とものライターが全て点き、暗い車内を3つの小さな炎が照らしました。

全員「うわあぁぁ〜!」となり車内の雰囲気が重くなりました。

それから30分程ひた走り、足○山集合墓地に到着しました。

この山も桜の名所で有名で春先には花見客で賑わいます。

集合墓地は大きく分けて、2つあり「東」と「西」と呼ばれています。私達は「東」の墓地、ギリギリの所に車を停めて、男女ペアで墓地の周りを1周し、目印の為にタバコを置いてくるルールで肝試しを行う事にしました。

ペアは車での配置と同じです。

まずはM男とT子。
霊感組の2人です。


15分程で2人は戻って来ましたが、どうもM男の顔色が良くありません。

理由を聞くと、「何でもない。」の一点張りです。その時は皆、気にするのをやめてA男とH子が出発しました。

20分後、何故かA男はニコニコ顔で戻って来ました。

その理由は簡単に見破れました。A男とH子が手を繋いでいたからです。
恐らく、怖がったH子の方からA男の握ったのでしょう。

そしていよいよ私とY子の番になりました。
Y子は6人の中では1番の怖がり。A男の姿を見ていたので、あわよくば自分も手を繋げるかもと密かに考えながら出発しました。

墓地はビックリするほどの規模で、無数の墓石が立ち並び、まるで私達を睨みつけているようでした。Y子はずっと「怖い怖い。」と怯えていましたが、私は「墓場が怖いんじゃなくて、暗いから怖いだけだよ。心配せんでも何にも出ない。」と言って聞かせていました。
しかし内心はかなりビビッていました。
丘の様になっている墓地の頂上を目指してひさすら上りました。

頂上には○○家と書かれた真っ黒の墓石がありました。3組目の私達は、前の2組のタバコを回収するルールだったのでタバコを探しました。しかし、その真っ黒の墓石にはタバコはありませんでした。

私は頂上の墓石に目印のタバコがあるものと思い込んでいたのです。
タバコを目印にするとルールを決めたのに、どの墓石に置くかまでは決めていませんでした。

きっと前の2組は好き勝手にタバコを置いたのでしょう。

そのまま帰る事も考えましたが、臆病者と罵られても癪なので、必死になって探しました。
Y子は「もう帰ろうよ。」と半泣きでした。私は「もう少しだけ。」と言って目印のタバコを探し続けました。

ようやくタバコを2本とも見つけたのは、1時間以上経ってからでした。
幸いにもタバコは2本同じ所にありました。

A男とH子ペアは偶然にもM男とT子ペアの置いたタバコを見つけて、そこに置いたのでしょう。

皆の所に戻ると、A男から「おせぇ〜よ、墓場で愛を育んだのか!?」と冷やかされました。

全員車に乗り込み、また「ここも大した事ない。」と結論付けました。

しかし、M男の表情だけはすぐれていません。そして助手席のT子となにやらヒソヒソ話をしています。

A男と私がM男に向かって「どうしたんだよ?」と問いかけても「う、うん。何でもないよ。」と思わせぶりな返事しかしません。

M男は車を次の目的地である△△ホテルに向けて走らせました。

山道を下り、市内の県道を走り、しばらくして田圃道に差し掛かりました。その間もM男はT子とヒソヒソ話を続けています。

しつこく私がM男に問いかけても、相変わらず生返事です。

A男はM男の浮かない理由にすかっり興味をなくした様子で、隣のH子といちゃつき始めました。
私もそのうち諦めて、Y子と最後尾のシートで、持っていた音楽プレイヤーで流行っていた曲を聴いていました。

プレイヤーのイヤホンを半分こにして聴いていたので、墓地での肝試しよりもドキドキしたのを覚えています。

Y子との至福の時間を堪能していたのも束の間、いきなりM男が車を激しく蛇行運転させました。

後ろの4人は「うわっ!」と悲鳴を上げます。

H子は「M男!ちょっとふざけないでよ!」と半切れです。

それでもM男は蛇行運転をやめません。それどころか、今度は、「ぎえぇぇ〜!!!」と奇声をあげだしました。後ろの4人はわけもわからず、シートにしがみついて蛇行運転を耐えていました。

後ろの4人は「うわぁっ!」っと悲鳴をあげ、H子は「M男!ちょっとふざけないでよ!」と半切れ気味です。



どの位経ったでしょう?

恐らく20分位だったと思います。
ようやくM男は蛇行運転をやめ、川沿いの小さな公園の傍らに車を停めました。

「はぁはぁ。」と荒い息遣いの後、M男はペットボトルのお茶を勢い良く飲み、こう呟きました。

「振り切った・・・。」

続いて助手席のT子も「もう大丈夫。」と小さく呟きました。

わけがわからず後ろの4人は一斉に詰め寄りました。

「どうゆう事だよ!?」

M男はしばらく間を置いて、静かに語りだします。

「実はさっき墓地で肝試しした時の事なんだけど・・・。俺は霊感の強いT子とペアだったから何があっても心配ないと思って、結構はしゃぎ回ってたんだ。そしたら墓地の中腹くらいのとこで躓いっちゃって。で、何に躓いたのかって足元を見ると、小さいお地蔵さんみたいなのが転がってたんだ。多分・・・あれは水子供養の為のお地蔵さんだと思う。いけないと思って直ぐに元に戻して、そのお地蔵さんの横にタバコを置いて皆のとこに戻ったんだ。」

「うんうん。」

T子はM男の話を聞いて
相槌をいれます。

他の皆はただ静かにM男の話を聞いています。

「昔、ばあちゃんに水子の霊は男には憑かないと聞いた事があったから、多分大丈夫だろうとタカをくくってたけど、全員が肝試しを終えて車に乗った時に、助手席側に小さい赤ん坊を見ちゃったんだ・・・。で、T子に話すと私に憑いたんだろうって。何とかしなきゃって様子を見ながら車を走らせてたら田圃道に差し掛かった辺りで消えたんだ。そん時はすげぇ安心したよ。でもなんかまだ後ろが気になってサイドミラーで確認したら今度は、H子側にさっきとは明らかに違う頭の無い赤ちゃんがいたんだ。それで怖くなって、気が動転して、振り切らなきゃって、必死で・・・必死で。」

そう言ったM男の顔は真剣そのもので、嘘や冗談には到底思えませんでした。

M男は続けて言います。

「でも何で2体もついてきたんだろう?」と腑に落ちない様子でした。

T子が「水子供養の地蔵は1体に対して1つ建てられるはずだから・・・おかしいのよねぇ。」と首を傾げます。

しかし私は何故かそのT子の様子が引っかかりました。

みんなのやり取りを遮る様にH子は泣き出した。

そりゃ誰だって水子が憑いたと言われればいい気はしませんよね?無理もない事です。

私は、「で、その2体目の赤ちゃんはもういないんだろ?振り切ったんだよな?」と強めの口調でM男に確認しました。

M男「ああ、俺にはもう見えてないし、感じもしない。」

それでもH子は不安そうです。

その表情を汲んだT子は

「H子、もう大丈夫だよ。あたしにも見えてないから。」

それを聞いてH子は少し安心したようでした。

M男はさらに気を利かせてカーラジオを流した。

車内に軽いヒップホップが流れる。

私は正直、ヒップホップが好きではありませんでしたが、その時ばかりは「常夏とサンシャインベイベー」的な音楽に心が癒されました。



※コメントに続きます

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※続き



「この後どうするの?」
Y子が私に耳打ちしてきます。

私「もう帰りたい?」

Y子「このメンバーでは最後の夏休みだからもう少し皆といたい。」

なんて愛くるしい子だっと胸がキュンキュンしました。

私は皆に向かって、「どうするよ?最後の目的地の△△ホテル行くか?」と聞きました。

若気の至りか、阿呆ばかりなのか、Y子と同じ気持ちなのか、満場一致で△△ホテル行き決定です。

つい数十分前に怖い目にあったのに皆が賛成した事に私が一番驚いていました。

ここから問題のホテルまでは来るまで10分程度。

あっと言う間にホテルに着きました。

H子がホテルに着くなり「ペアだと怖いから今度は6人全員で入ろうよ。」

その意見に反対する者がいるはずもなく、ホテル内には6人全員で入る事になりました。

「さぁて、行きますか!」

M男が元気に言い放って、車から降りようとドアを開けた時です。

「ちょっとストップ。俺皆に話す事がある。」

A男が突然切り出します。

「どうしたんだ?」M男は不思議そうな顔。

A男は続けます。

「実は2体目の赤ん坊は俺のせいだと思う。」

全員「????」

先陣を切ったのは私でした。

「A男、どうゆう事だよ?」

私に聞かれてA男は、

「言いにくいんだけどさ・・・墓場でH子とペアになって歩いてたんだ。で、あまりにH子が怖がるから、悪戯心でもっと怖がらそうと思って。わざとはぐれたふりして、先回りしたんだ。そいで墓の後ろに隠れて待ち伏せしてたんだ。」

H子は不安そうにA男の話に耳を傾ける。

A男「案の定、H子は怖がって俺を探したよ。で、俺が隠れてる墓の前に来たから、わぁっ!って驚かしたんだ。その拍子にM男が言ってた小さいお地蔵さんみたいなのを蹴飛ばしちゃって。もちろん元に戻したよ。バチが当たったら怖いからな。H子ゴメンな。」

H子は呆れた様な顔をしていましたが、ひとつ大きな溜息をついた後、「いいよ、ゆるしてあげる。」と微笑んだ。

この時、私はH子のA男に対する気持ちを確信しました。
Y子も私と同じ事を思ったらしく、私の顔を見て小さく頷きました。

M男は、「犯人はお前だったのかよ〜。だから2体憑いてたのか〜」と変に納得していました。

T子は、「やっぱりね。私はそうじゃないかと思ってたの。だってじゃないと説明がつかないもん。この馬鹿!」と言ってA男の頭を小突きました。

私は先程、T子に感じた引っかかる感じはこの事だと思いました。

そう、T子はA男がやらかした事を見抜いていたんです。

T子の霊感は本物だと改めて思いました。

A男がもう一度、皆に謝って仕切り直し。

全員一斉に車から降りました。

時間は5時をまわっていたと思います。
しかし、夏の夜はまだ明けていませんでした。
生ぬるい風が頬に当たったのを覚えています。

6人は立入禁止のロープをまたぎ、ホテル入口を探しました。

この先に更なる恐怖が待っている事も知らずに・・。





立入禁止のロープを超えると、草むらが広がっていました。
恐らくこのホテルがラブホテルとして営業していた当時は中庭か何かだった場所だと思います。

自分の腰より下まで伸びた草をかき分けて6人は進みました。

すると目の前に大きな建物が目に飛び込んで来ました。

ホテルは2階建て構造で、1階部分に駐車場、そして2階が客室になっているような造りでした。

私達は正面玄関を探したのですが、暗い事もあり、見つける事が出来ませんでした。

仕方なく、1階部分の駐車場にあった階段から中に侵入する事にしました。

このホテルは車を駐車して、階段を上れば誰とも会わずに客室に入れる様になっているタイプでした。

駐車場は見ただけでも6つ程あり、駐車場と駐車場の間にはコンクリートの壁がありました。
一番手前の駐車場に入ると、鉄製の階段がありました。
しかしこの階段は長い間風雨にさらされた様で、錆び付いてボロボロでした。

「気をつけろよ。」と注意し合いながら、私→Y子→A男→H子→T子→M男の順番で上る事になりました。



※続きます
※続き



先頭だった私は階段を上りきって、真正面のボロボロのドアを恐る恐る開けました。

「ギィィ〜。」

と耳障りな音を立てましたが、案外簡単にドアは開きました。

しかし、建てつけが悪いせいか、半分しか開きません。

全員が階段を上りきってドアの隙間からホテル内に侵入しました。

中は長い廊下になっていて、左右に4つずつ部屋の扉があるのが分かりました。
そしてその廊下には赤茶色の絨毯の様な素材の物が敷いてありました。
なお、廊下の突き当たりで左に曲がれるようになっているようで、その先にはまだ部屋がありそうな感じでした。


※ホテルに向かう道中、一番近いコンビニで懐中電灯を2本買った事をここで加えておきます。


このホテルも他の心霊(廃墟)スポットと同じ様にスプレー缶で壁一面に落書きがされていました。

6人はおしくら饅頭の様にくっついて、ゆっくり歩きだしました。

先頭の私は懐中電灯を持っていたので(もう1本は最後尾のM男)、まず左の一番手前の部屋のドアを照らし、小声で「まずはここの部屋からね。」と、後ろの5人に言いました。

しかし返事はなく、縦に首だけ振って返してくれました。

この部屋のドアは落書きさえあるものの、さほどボロボロではなく、簡単に開きました。

ドアを開けて、中を照らすと目の前に壁がありました。

「えぇぇ!」と思いましたが、良く見るとそれは壁ではなく箪笥でした。

その箪笥は私の背丈(168?)と同じくらいの高さでしたが、それのせいで室内に入る事は出来ませんでした。
でもよじ登れば何とかなりそうだったので、A男に説明し、「GO!」って顔を返して来ましたので、両手で箪笥の上を掴みよじ登りました。

そして口に咥えていた懐中電灯を右手に持ち替えて、室内を照らしました。

すると・・・





室内は大小すさまじい数の箪笥で埋め尽くされており、異様な光景を目の当たりにした私は、直ぐに箪笥から飛び降り、廊下に脱出しました。

状況を皆に説明すると、またもやA男があごだけで、「次行こう!」的な仕草をして来ました。

続いては箪笥の部屋の隣の部屋に行く事にしました。

が、しかしその部屋のドアは鍵が閉まっているのか、錆び付いて固まっているのかビクともしません。

私は何も言わず、もう一つ奥の部屋に向かいました。

箪笥の部屋と同様にドアは簡単に開き、室内を照らすと障害物もなく入れそうでした。

全員が室内に入り、私とM男が懐中電灯で隅ずみを照らします。

中にはベッドがありましたが、マットレスはボロボロに引き裂かれ、テレビのブラウン管は割られていました。
窓ガラスも全壊ではないですが、ヒビだらけでした。
足元にはBB弾が散らばっていました。

恐らく、地元の若者が侵入し、サバイバルゲームでもしたのでしょう。

雰囲気はあって、そこそこ怖かったのですが、今ひとつと言った感じで何とか耐えれそうな恐怖感でした。

そして暫くその部屋を見てまわり、全員が部屋を後にしました。

また私が先頭にされたので、少しイラッときましたが、黙って奥に進みました。
全部の部屋を見てたんじゃ夜が明けちゃうなと判断し、いくつかの部屋を無視して逆L字型の廊下を左に曲がりました。

するとそこには左に2つと右に1つ部屋がありました。
そして右の部屋の手前には階段がありました。


何故かはわかりませんが、迷わず私は階段を下り始めました。

みんな恐る恐る私の後ろをついて来ます。

階段は14段程で直ぐに1階に下りる事が出来ました。



しかし、おかしかったのはそこからです。



1階には客室はおろか、フロントらしきところもありません。



駐車場から直接、客室に入れるタイプなので部屋がない事は説明がつきました。

フロントが無いのも、2階の部屋にエアシューターらしき物の残骸があったので説明がつきます。

じゃあ何がおかしいかって?

この壁と廊下だけのスペースがある事がおかしいのです。
だってこの部分は別に必要の無い部分なのですから。
設計上、仕方なくこうなったのかと思いましたが、それにしては非常口なり、勝手口なり、管理人(フロント係)がいる部屋があってもいいはずです。



ただそこにあるのは、

「大きな逆L字型をした袋小路」

でした。



※続きます
※続き



他の5人も私ほど考えたかは解りませんが、体でこの場所はおかしいと感じ取った様です。

恐らく、5分くらいはその袋小路の隅ずみを照らしましたが、やはり壁しかありません。

しかもその壁には2階とは違い落書き一つなかったのです。

先頭に立っていた私は、「ここはやばそうだから2階に上がろう。」と、皆に言いました。

「そうだね。」とT子。

「ここは気持ち悪いな。」とA男。

「やばいやばい、ささっと帰ろうぜ。」とM男。

Y子とH子も頷いています。

私が階段を上ろうとしたその時です。

2階から凄まじい音が鳴り響きました。

「バタン、バタン!」
「バタバタバタッ!」
「バタバタ!バン!」

全員が身構えました。

そして目で見た訳でも無いのに頭の中に映像が浮かびました。

2階の部屋のドアというドアが一斉に開いたり、閉まったりしているのです。

「きゃ〜!」と言う悲鳴と共に誰かが走りだしました。

それに触発されるように皆走りました。

そして階段から一番離れた突き当たりの壁際で全員しゃがみ込んでしまいました。

そして恐怖の余り、立ち上がる事も、会話を交わす余裕さえありませんでした。


まだ2階ではドアが閉開する音が、けたたましく続いています。



全員震えていました。

逃げたくても出口はありません。

H子とY子は泣きじゃくる事も出来ず、ひきつけに近い呼吸の音だけが聞こえました。

このままここにいても逃げる事は出来ない。

逃げるには階段を上って、2階の廊下を突っ切るしかないのです。

多分、皆同じ事を考えていたと思います。

しかしながら2階から聞こえる凄まじい音に怯え、階段を上る勇気が出ないのです。

私は、T子に小声で話し掛けました。

「なぁT子。お前には何か見えてんのか?」

T子は首を横に振りました。

「じゃあ今の所は音だけで、2階に上がっても何にもいないかもしれないんだな?」

私はT子に聞きながら、そうであって欲しいと願っていました。

T子「私にもわかんない。」

期待していた返事は貰えませんでした。
本当にT子にも解らなかったんだと思います。
私は決心して皆に言いました。

「このままここにいても、逃げれないんだから、ダッシュで階段を上って突っ切ろう。」

A男とM男は親指を立ててOKサイン。

女子3人も頷いてくれました。
T子がH子とY子の背中をさすっていてあげた光景に何故か勇気を貰えました。

私は確認するように「じゃあみんな、階段は狭いから2人ずつ3列になってダッシュしような。」と、言いました。

先頭に私とY子。
2列目にM男とT子。
最後尾にA男とH子。

この順番で行く事になりました。

M男はY子に懐中電灯を渡します。

「じゃあ行くぞ。」と、私。

6人が立ち上がり、私の合図を待ちます。



「GO!!」

一斉に皆走りだしました。

逆L字廊下を曲がって階段を駆け上がります。

たった14段そこそこの階段が異様に長かったのを覚えています。

階段を駆け上がると、階段の頂上には赤ちゃんを抱いた髪が胸くらいまである半透明の女の人が立っていました。

私は躊躇せずに走り抜きました。

女の人の右側をすり抜けた時に、女の人と目が合いました。

明らかに敵意みたいなものを感じました。
凄く冷たい目でした。

そこで立ち止まるわけも行かず、ただただ走りました。

横目でY子がついて来ている事は解りましたが、後ろの4人がちゃんとついて来ているのかは、解りませんでした。

というより、必死だったので後ろを振り返る余裕も無く、ついてきていると信じる事しか出来ませんでした。

廊下は頭に映像が浮んだ通り、全てのドアがバタバタと音を立てて開いたり閉まったりしていました。



※続きます
※続き



やっとの事で侵入してきたドアまでたどり着き、半分しか開かないドアから外に出て、階段を駆け下り、草むらまで出ました。
Y子も私の少し後に続いて出て来ました。

私はY子の手を握ると草むらをかき分けて、立入禁止のロープをくぐり、車の所まで逃げて来ました。

後ろの4人を今か今かと待ちます。

Y子も祈るように4人の帰りを待っています。

すぐにA男とH子が草むらを走って来るのが見えました。

「M男とT子はどうしたっ!?」と私が言おうとした時です。

A男「やばい!やばい!T子が!!!」

そう言いながらA男が私達のところに駆け寄ります。

A男「T子が!T子が!」

随分動揺しているのか、何が言いたいのか解りませんでした。

そうこうする内、M男がT子をおぶって走って来ました。

M男「I(私)!!早く!車を出せ!」

M男はT子をおぶったままズボンのポケットから車のキーを取り出し、私に渡しました。

私は全員が車に乗ったのを確認すると、大急ぎで車を発進させました。

M男「I!早く病院に向かってくれ!」

M男は叫びます。

T子はぐったりとしていて、白目をむき、口からは泡をふいていました。

そして何より異常だったのが、ショートカットのはずのT子の髪が、胸のあたりまで伸びていたんです。

私は「M男!病院より御祓いに行ったほうがいいと思う!」と叫ぶと、信号を2つ3つ無視して一番近いお寺に向かいました。

そのお寺が御祓いをやってくれるかはわかりませんでしたが、兎に角、急がなければという思いの方が強かったのです。

幸い、この辺の道には詳しかったので10分足らずでお寺に着きました。

私とA男は車から飛び降り、走ってお寺の中の家みたいな所の玄関を叩きました。

私とA男「すみませーん!助けて下さい!!」

M男はT子を抱きかかえ私達に追いつきました。

少しして、Y子とH子も走って来ました。

全員「すみませーん!助けて下さい!!」

激しく玄関を叩くと、中から60歳位のお坊さんが出てきました。

お坊さんは私達の説明も聞かず、「本堂に来なさい。」とだけ言って玉砂利の上を歩き、本堂へ案内してくれました。

本堂に上がって細い廊下を進むと木製の引き戸の部屋の前で立ち止まり、「さぁその子をこの部屋の中へ」と言い、本堂から出て家みたいな所へ戻って行きました。



M男はT子を畳の上に寝かせました。
尚もT子はグッタリしていて白目をむき、泡をふいていました。

私は正直、助からないかもと思っていました。
それでも他の皆と同じ様に励ましの言葉を掛け続けました。

15分程経って、お坊さんが部屋にやって来ました。
その時、お坊さんは白い装束だけを身につけており袈裟などはつけていませんでした。

坊「今から、この娘さんに取り憑いておる、女の霊を祓う」

そういって祭壇の上の蝋燭を灯し、T子の四隅に塩を盛りました。

坊「お主らも飲みなさい。」と、日本酒みたいな物を私達に配り、正座するよう言われました。

お坊さんはT子の口から出ている泡を拭い、そっと日本酒を飲ませようとしました。

するとT子は

「ゴホッゴホッ」っとむせ返る様に日本酒を吐き出し、一緒に干からびたミミズの様な物も吐きました。

そのミミズの様な物は、私が幼い日に母に見せてもらった自分の臍の緒に見えました。

お坊さんは諦めず、少しずつ日本酒を飲ませます。
そしてお経を読み上げました。

お経が始まるとT子は叫び声を上げながら、激しくのたうちまわりました。

それを見て、Y子とH子は泣きだします。

どの位、お経が続いたでしょうか?

突然、お坊さんは読経をやめ、

「女の怨念が強過ぎて成仏させる事は出来ん。仕方ないが体から追い払い閉じこめる。」

そう言って一旦部屋を出ます。
すぐにお坊さんは戻って来ましたが、手には小さな木箱を持っていました。

「これからこの箱に女を閉じこめる。お主らにそれを見せるのは酷じゃから本堂で待っておれ」

言われるがまま、私達5人は本堂に移動し、待つ事になりました。

その間、誰ひとり口を開きませんでした。

「ギィャー うおぉぉ!あぁぁぁぁ!」とT子の声が響きます。

恐らく3時間程、その叫び声は続き、そしてピタっと止まりました。

皆、息を飲みます。

本堂にお坊さんだけが戻って来ました。

その手には小さな木箱があり、フタをする様な形で「封」と墨で書かれていました。

ただその木箱はお坊さんの手の中で カタカタと音を立てて揺れていました。



※続きます
※続き



私「T子は!?無事なんですか!?」

お坊さんを責めるように聞きました。

坊「安心せい。あの娘さんの命だけは助ける事が出来た。」

命だけ?その言い方に少し引っ掛かりました。

お坊さんは続けます。

「今は体力を消耗したから部屋で寝ておる。起きるまで休ませてやりなさい。お主らも疲れたじゃろ?付いて来なさい。」

言われるがまま、私達5人は本堂から出て、玉砂利を歩き、家みたいな所の台所に付いて行きました。

坊「まぁ座りなさい。」

そう言って、お坊さんは自ら食事を作ってくれる様でした。

そしてお粥と漬物と味噌汁を振る舞ってくれました。

私達はただ黙って食事を頂きました。

食事が済むと、寝床まで用意してくれた様で、5人は川の字で眠りにつきました。

私が目を覚ますと、他のメンバーは既に起きていました。

しかしT子はまだ目覚めていない様でした。

M男「A男とH子は、T子がこうなった理由を見たと思うけど、IとY子は先頭だったから見てないよな?一応説明するわ。」と、語り出しました。

M男が言うには、△△ホテルで私とY子が階段を駆け上がり、女の霊をすり抜け逃げた後、M男とT子も逃げようと女の横をすり抜けようとした瞬間に、女がT子に覆いかぶさった事。
それを助けている間にA男とH子を逃がした事を聞きました。

それで私とY子はT子が卒倒し、髪もあの女と同じ様に伸びたわけを理解しました。



それから1時間程してT子が起きてきました。

私達の心配とはよそに意外にもT子はケロッとしていて、今回の事を一切覚えていない様でした。

ただ、T子の髪は伸びたままで、私達が興味本位でしてしまった事の重大さを物語っていました。

お坊さんに丁重に御礼をし、私達はM男に送ってもらい各々が帰路に着きました。



2日後、私はT子を除く4人に連絡を入れ、お坊さんにもう一度挨拶に行く事になりました。

そこでお坊さんは、こんな事を聞かせてくれました。

「あの娘さんに憑いた女は、妊娠中に殺され、我が子に会えぬまま死んだ悲しい霊じゃよ。なぜあのホテルにいたかは解らないが、我が子を産みたいと言う執念と殺された怨念は強く、子供が産めそうだったあの娘に憑いた。他の2人の女の子ではなくあの娘だったのは、あの娘の母親としての資質(慈悲深さや大切な者を守る強さ)と波長があった事が理由だろう」と。

加えて、「あの娘さんには申し訳ないが、今回の件で恐らくもう子供が産めない体になっただろう。」と、聞かせてくれました。



それから私達はT子と疎遠になってしまいましたが、、こんな噂を聞いていました。

原因はわからないが精神の病気になり、入院していると。

あの件が原因でない事を切に願っていましたが、先月にこういう話を別の友人から聞きました。

T子は、精神病で長い間、入院していたが退院し結婚して幸せにくらしていると。まだ子供がいるかまではわからないみたいでした。

他のメンバーですが、M男はF子と女性と結婚しましたが、すぐに離婚しました。奥さんは結婚生活2年で4度流産したようです。あの日の事との因果関係はわかりませんが。

A男は今、バーテンとして働いていますが、あの日から何故か視力と聴力が著しく悪くなったと言っています。

H子はブライダル系の仕事をしていますが、あの日以来、「見える」体質になったとぼやいていました。

Y子は雑誌のモデルになりましたが、なかなか厳しい世界のようです。この6年で8回事故を起こしたようですが、怪我はいずれもひどくなく、こちらも因果関係はわかりません。

そして私はあの日から特に何もなく、元気で過ごしています。
この先も何もなければと思っています。






※終わり

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