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Pの『THE つだん部屋』コミュの【1057】狂気の果て

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【コピペ】



情けない話だが、ギャンブル依存症だった私は当時規制の甘かったサラ金から総額250万円の借金があった。

バイトはしていたが、パチンコ屋や競馬場に入り浸る毎日に金が残るはずもなく、各社への返済に困った私はついにヤミ金に手を出した。


昔はよく見かけた電柱の貼紙に書いてある携帯電話に電話をする。

話を聞いてみると、3万円の借り入れで、実際その場で手元に来る金額は2万5千円だという。

その日から一週間毎に返済日が来て、次週に延ばすジャンプなら5千円、全額返済なら3万円というシステムだった。


もちろんその金額ではサラ金の返済に充てても足りないくらいなので、すぐさま2社目、3社目と借り続ける。


ファミレスやパチンコ屋の駐車場で待ち合わせ相手の車で契約を交わす中、1、2社目に来た人はあからさまにその筋の方だったが、3社目に来た人は明らかに雰囲気が違った。


見たところ30代前半で金髪に上下ジャージ。

怪しい雰囲気ではあるものの、今までとは違う爽やかでフレンドリーな接し方に困惑しながら契約を済ませた。
(これからこの方をAさんとする)

それから私はヤミ金すら借り入れできなくなり、完全に手詰まり状態に陥る。

たくさんの返済日が迫る中、家族や親族に助けを求めたが当然冷たく突き放され放心していると、突然Aさんから『元気してる?』と電話があった。

返済日だったかと焦りながら聞くと、『暇だったから』との返事。

何を考えてるかよくわからないと思ったが、妙な安心感を得た私はAさんにダメ元で今の状態を隠さず話すことにした。


すると怒るどころか親身になって話を聞いてくれて、一緒に解決しようと言うのだ。

この反応に驚きはしたが、もう他にすがるところはないと思い言うとおりにすることした。

Aさんや同業者である他のヤミ金にはしっかり払うと言う約束を交わし、サラ金の債務整理の書類を揃えてもらい手続きを一緒に進めてくれたのだ。

それからサラ金の取り立てがなくなり、バイト代をヤミ金3社に滞りなく払い続け、とりあえずは生活を立て直す体制が整ってきた。


手続きが一段落し、Aさんには感謝しきれないくらいなのでお礼を言いに行くと、『裏切らないでね』と言うだけで見返りは求めて来なかった。


落ち着いたかと思われたその一週間後に事態は急変した。

1社目の返済日になったのでいつものように電話をしたが繋がらない。

その日は数十回とコールしたが相手は出ることがなかった。


次の日も相手が相手だけに焦りながら電話をかけ、ようやく繋がったと思ったが、忙しいと切られてしまう。

もしかしたら払わなくてよくなるかも…と勝手に考えを巡らせ、それから相手に電話しなくなってしまったのだ。


そして二日後、Aさんへの返済日の朝だ。

連絡の取れなかった1社目の人が『大人しくしてれば調子に乗りやがって』と怒鳴り込んできて、私はそのまま車で連れ去られてしまった。


車の中で私は何度も連絡したことや返済の意思があることを伝えたが、『実際返してもらってないだろ』と一蹴されるだけだった。

それから事務所らしき建物の中に連れられ、震えあがる私に何も言わさず携帯電話を取り上げた。


『おまえはいつでも帰れる。ただ、帰る時はそこに一筆書いていけよ』
と言われ物置のような部屋に入らされたがドアは開けたままだ。

3日ほど過ぎ何も考えられなくなったころ、そこにあった百万円の返済同意書にサインし事務所を後にした。

自宅でやっと自分のしたことの重大さや後悔、罪悪感に悩まされていた時、追い撃ちをかけるようにAさんが訪ねてきた。


何も言わずに車に乗るように促される。

いつもと変わらず穏やかな話し方だが、雰囲気がいつもと違っている。

『裏切ったな』

私は何も言えなかった。

『わかってると思うが俺はプロじゃない。だから違う方法で君には誠意を見せてもらう』

言ってる意味がわからない。

すると車は工場が建ち並ぶ工業団地に入っていく。

その突き当たりに車を止めたので外に出ると、南京錠がかかった金網の扉の前だった。

何箇所も鍵を開け中に入ると、そこは森の中で奥のほうに屋根だけの建物が見えてきた。

『あそこには返済をしない人を3人監禁している。ただ君と違うのは、返せる金がありながら返さない奴らだ』

私もそこに監禁されるのか…と思っているとAさんは続ける。

『そこで君に仕事をしてもらう。3人のうち1人でもいい、俺にお金を返す意思を持たせてくれれば君の今回の件は水に流し借金もなくしてあげよう。期限は一週間。』

そう言うと、これでも使えと言わんばかりに大きな袋を置いて、それじゃあよろしくと帰っていった。

よく状況が飲み込めないが、袋を持って建物に近づいた。


そこには椅子に縛られた主婦らしき40代の女性、小太りの中年、ヤンキーっぽい若者。

疲れきった表情で、私を見つけても助けを求めたりしない。

よくわからないが、とにかく話かけてみた。

『あの…。』

「…。」

『こんなとこに拘束されるぐらいなら、お金を払ったほうがいいのでは…?』

「あなたは何もわかってない」

中年がおじさんが口を開いた。

「あいつらは俺達をここから出す気はないよ」


確かに監禁は犯罪だ。

出てから警察に通報されたら捕まるだろう。

でもそんな理由じゃなかった。


続いておばさんが言う。

「兄さん、ここは夜中になるとニンゲンが出るんだよ。」
(発音が違ったのでカタカナで表記)

人間って…何を言ってるんだろう。
こんなとこに拘束されてると思考もおかしくなって当然だと思った。

その時ふとこの3人にお金を払わせるようにしなければいけないのを思い出した。

とにかく話を聞こうと、ニンゲンについては流し質問することに。

『皆さんはお金があるのに返さないからここにいるんですよね?』

「最初はそうだったけど、今はここを出してくれれば払うよ」

若者が初めて声を出した。

他の二人も頷くように私を見る。

「何度も払うから出してくれと頼んだが、口先や書面だけでは信用できないって言うんだ」

若者は続けるが、それ以外にどうやったら信用してもらえるんだろう。

っていうか、私がここに連れて来られた意味もわからなくなってきた。


するとおばさんが言う。

「さっきも言ったけどとにかくニンゲンには気をつけて。顔を見たらダメだからね」


とりあえずハイと答えたが、これからは流すことにした。

辺りも暗くなり、どうしようもなくなったので横にあった椅子に腰掛け途方に暮れていると、前方の森の中に人の気配がした。

横にいる3人に目をやるとうつむいてガタガタ震えている。

もしかしてあれがニンゲンか?と思い何か確かめる為に近づくことにした。


すると辺りの木すべてにしめ繩がついていることに気づく。

それでも恐怖はなく、徐々にハッキリとそれは見えてきた。


そこには、こちらに背を向けて黒っぽいコートを着た髪の長い人が立っている。


だいたい5メートルくらい離れているだろうか、男か女かはわからない。

ただ、それ以上近づけなかったのは異様な後ろ姿から放たれる雰囲気に呑まれそうになったからだ。

おいとか何をしてるなど呼びかけてみるが応答がない。


そこで近くにあった石を投げてみた。

するとバスッという音と共にソレに当たった。

なんだ…ニンゲンは人間か…とよくわからないことを考えていると、なんだかイライラしてきた。

こんなとこに立ってるだけで何も言わないなんて。
返事くらいしたらどうだと私はソレに向かって歩きだす。

顔を見てやろう…と若干右寄りに進んでいたとき、後ろから

「やめなさい!!」

と主婦の声がする。

その声にひどく驚いたので、思わず反射的に引き返してしまった。

主婦になんで止めたんだと少し怒った口調で言うと、次の事を話してくれた。

一週間前にはここに4人いたこと、その4人目はニンゲンの顔を見ておかしくなったこと、その後Aさんに連れて行かれたこと。

生きてる人が世の中で一番怖いと身に染みていたので、その現実離れした話は理解に苦しみ信用できなかった。

考え込んでふと3人の顔を見ると、私の後ろを凝視し固まっている。


振り返ると、すぐ近くに後ろ向きのニンゲンが立っていた。

まだ冷静だった私は観察するように全身を見たのだが、本当に人そのものだ。


すると顔が少しずつこちらを向くように動いているに気がついた。

「縄をほどいてくれ!」
「私達を後ろに向けて!」

と3人が叫び出す。

物凄い暴れようなので急いで袋からハサミを取り出し、足、手首、首と椅子に固定されていた縄を切っていく。

全員を解放し立ち上がると、皆おとなしくなっている。

せっかく自由にしたのに一点を見つめたままだ。

まさか…後ろでニンゲンがこちらを向いてるのでは…。


その時主婦が

「ぶぶぶぶべぶぶぶぶべぶ」

と顔を左右に震わし奇声を発しだした。

横の中年も目を見開き、へへへと髪をむしり取りながら笑いだす。

若者は耳に指を突っ込み

「そうじそうじそうじしましょ」

とぶつぶつ言っている。
人差し指が根元近くまで入っていた。


ここで初めて後ろにいるものが、得体の知れないものだと実感し動けなくなった。


なぜか顔が後ろを振り向くように動く。

必死に目を閉じようにも瞬きすらできない。

見てしまう…奴の顔を。

しかしながら、横目で顔を確認した瞬間に意識を失うことができた。


翌朝、Aさんに起こされ目を覚ますと3人はいなかった。

『一日で済ませるなんて凄いじゃない。約束通り君は自由だよ』

と笑顔で言った。
その後ろにはお坊さんもいる。

どこに連れて行かれたのか、皆無事なのかと考えてもAさんは何も答えないだろう。


送ってもらう車の中で、Aさんにひとつだけ質問してみた。

「ニンゲンてなんですか」

少しの沈黙のあと笑顔で答えた。

『この世が人間ならあの世は…?』

『精神病の人間の需要がないとでも?』

これ以上聞かないようにした。

私にはわからない世界だ。

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