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Pの『THE つだん部屋』コミュの【878】心霊調査チームT

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【コピペ】



俺の昔通ってた高校にはある噂があった。

校舎裏に聳える○○山には、夜中に行ったらまず無事には帰って来れない、最恐の心霊スポットがある、と。

昼間そこに行った奴なら俺のクラスにもかなりいるらしく、殆どが「大して怖くない」と話すらしいんだが・・・何故か誰もが「夜?絶対!無理無理!!」と言うらしい。

実際何年か前には、真夜中にそこを訪れて怪我をする学生が続出、新聞沙汰にもなったんだとか。

これは噂で、本人から直に聞いたわけではないが、夜中そこに行った者は、みな一様に、「血まみれの赤ん坊が出た」と言うらしい。
まあ、ある種都市伝説のようなものだと思ってたんだが、クラスにAっていう女子がいて、彼女が
「うちの兄貴、そこで怪我して新聞に名前が載った事あるんだよね」
なんて口走るものだから、俺は俄然その場所の事が気になり出した。

「お前んとこの兄貴、何て言ってた?何か見たのか?そこで」
Aに尋ねたが、Aの兄貴は何も見ていないらしく、他の奴が「出た―!」って叫ぶもんだから、パニクって坂道を転げ落ちたらしい。全治2ヶ月の大怪我だったという。

なんでもその心霊スポットは、急な坂道を上がった所にあるらしく、坂道といっても横から木の根っこが出てたりして、夜行くと非常に危険らしい。

ある土曜日の放課後、俺は、クラスでそこに行った事のあるTに詳しく話を聞いた。

Tはかなりのオカルトマニアらしく、興奮して話し始めた。
「他の連中は強がって、怖かったとは言わんが、俺は正直、昼間でもめっちゃ怖かったわ」

Tによると、裏山の竹林を入って行くと10分程の所に、今にも崩れ落ちそうな廃屋があり、その廃屋自体かなり怖いんだが、問題の場所はその家の裏側にあるんだとか。

「山を削って作ったような、坂道があるんだよ。おかしいのはその道、廃屋の中を抜けて裏に出るか、家の横を回って裏に行かないと、絶対に気付かれないんだ。竹やぶで隠れちゃってるからな」

そのかなり急な坂道の上には、Tによると、全身の毛が逆立つくらい不気味な祠と、人の手で作ったような小山があるらしい。

そして、それらを囲むように、高さ1メートル位の、材木でこさえた4つの鳥居みたいな物が立っている。
Tは断言する。
「あの小山は絶対塚で、下にはとんでもない物が埋まっている筈だ」と。

Tに聞いてみた。
「血まみれの赤ん坊が出るってまじ?」

「これは聞いた話だけど」Tはそう前置きして話し始めた。
「その廃屋には、昭和の30年頃まで産婆さんが1人で住んでたらしいんだが、産婆ってのは表向きで、実は【堕ろし屋】だったんだと」

「おろしや?」

「ああ、人工中絶ってあるやろ、その婆さん、この辺り一帯の中絶を一手に引き受けてたらしいで。特に戦後は引く手あまたで大繁盛だったらしいわ。相手が誰か判らん胎児を身籠った女の人、たくさん帰国したらしいからな」

Tの声がだんだん大きくなる。
「その婆さん、堕ろしの技術が半端なかったらしいわ、母親の身体を傷つけんっていうんか、まあ、いわば堕胎のスペシャリストやな」

懸命に話すTの声につられて、クラスの連中が集まってきた。

「でも、ある日を境にその婆さん行方を眩ませたらしくてな」

「ある日?」
誰ともなく尋ねる。

「うん、ある日その婆さん全財産を持ってS神社に行き、神主にあそこの後始末を託したんだと、それからぷっつり音沙汰無しらしいで」

俺はその話を聞いて、鳥肌が立つ程興味が湧いた。俺達を囲んでいた連中も同様だった。

Tがみんなに言った。
「俺が案内すっから、明日の日曜日、みんなで行ってみない?」

「行く行く〜」「俺、行った事あるけど、も1回行きて〜」
その日の放課後はその話題で6時まで大いに盛り上がった。Tを隊長とする心霊調査チームTの誕生だ。

Tはチームの心得を紙に書いて読み上げる。
一、トイレは必ず済ませて おく事!
一、「帰りたい」と言う者 がいたら、無理に引き 止めない事!
一、例え何が起ころうとも 仲間を見捨てない事!など、Tが読み上げるたびに、「わー」「きゃー」とテンションが異常にあがっていた。

日曜日の午後1時、チームは校舎の横にあるゴミ置きき場の前に集合した。

男16人女9人と予想以上の人数に、自分の事は差し置いて俺は内心、(うちの高校大丈夫か?)と思ってしまった。

ただ、制服姿でしか見たことのない女子達が、その日はジーンズにスニーカーといったラフな格好にもかかわらず、妙に眩しく見えたのを覚えている。

「じゃあ、しゅっぱーつ!」Tが先頭に立って歩き出す。みんなその後をぞろぞろと続いた。


クラス1のイケメンKに女子どもが群がり歩く。その時になってようやく(K目当てで集まったなー女ども!)と気付いたが、まあそれも良しだ。心霊スポットの探索はなるべく大勢の方が怖くなくていい。

軽トラがやっとの狭い道がかなり長く続いた。左右には田んぼが広がり、何人もの人が普通に農作業をしている。民家もあちこちにあり、この先にそんな怖いスポットがあるなんてちょっと信じられない。

20分位歩いただろうか。Tが「休憩〜」と言ったので少し休む。

「こんなに遠いとは思わんかったー」女どもが愚痴り始めた。

Tが指差して、
「あそこ、山の入り口見えるやろ、そこから20分もかからんし」

「まだだいぶあるしー」
みんなブツブツいいながらもなんとなく緊張感が漂い始めた。そこから見た山の入り口はやはりなんとなく不気味だった。

さらに20分程歩いて○○山の麓に着いた。道の脇には小川が流れていた。

山道を少し歩くと左にそれる脇道があった。竹やぶの中に入って行く感じの薄暗い道だ。
(・・・)みんな黙り込んでしまった。

突然1人の女子が口を開いた。
「私やっぱ止めるわ」
それに2人の女が続いた。「私も」
「私も」
早くも3人の脱落者が出てしまった。引き止めないって約束なのでそのまま帰す。

Tが先に歩きだした。誰も喋らない。(昼間だってのに何だこの暗さは)俺は嫌な雰囲気を肌で感じながら後に続いた。

しばらく歩くとそれは突然姿を現した。噂の廃屋だ。
「私もう無理だわ」
「私も駄目」
「私も」
「俺も」
「私も」
「私も」
「俺もパス!」
「俺も」
「俺も」
「俺も」
「私も止めとこっと」
Tは呆れて言う。
「あのねーあんたたち一体何しに来たんだよ」
結局残ったのは野郎ばかり11人だった。

「入るぞ」
Tがまず屋内に入る。すぐに俺も続いた。

中に入って驚いた。家の中至るところに竹が生えている。長い奴は天井をいくつも突き破っていた。そのせいか室内は思った程暗くない。あちこちから光が洩れている。

竹のあいだをくぐり抜け、奥の部屋に入る。ボロい仏壇が放置されたままだ。ここでもあちこちで竹が畳を突き破り、人の替わりに竹が住んでますって!って感じだ。

気を付けないと腐った畳に足を突っ込みそうになる。物理的な危険があまりにも大きい為か、霊的な怖さは何も感じなかった。

部屋を出、床が腐って危険極まりない廊下を進むと台所があった。

「おいS(俺の名)、早く来いよ」
Tが勝手口から顔を覗かせた。いつの間にか他の連中はみな家の裏に出てるようだ。

足元に気を付けながらTの方へ行こうとした俺の視界に、クレヨンで書かれたような子供の字が入ってきた。流しの下の壁にそれはあった。



おまけでる



お化け出ると書こうとしたんだろうか・・・その拙い字を見た瞬間、ゾクッと背中を冷たいものが走った。
「おいS、お前スゲーな!俺なんか怖くてすぐ裏に出たわ」
みんな何故か俺を尊敬の眼差しで迎えた。
「大したことないし」
白けた感じで答えた俺に、「おおー」とみんな驚いてた。おかげで子供の字の事は言いそびれてしまった。


廃屋の裏にある坂道は確かにあった。今や仲間内では、怖いもの知らずということになった俺がまず先頭を切った。

話に聞いてた通り、上には小山があって、祠があって、それを囲んで鳥居らしき物が4つ立っていた。

まず俺が不思議に感じたのは、周りは全て竹で覆われているのに、そこだけは雑草も生えていない、という事だった。除草剤でもこまめに撒かないとこうはならないだろう。

それに木で作った鳥居のようなもの、何の木を使ったか知らないが全く古いって感じがしない。

誰かが言った。
「この鳥居、何か彫ってある」

よく見ると確かに字のような、記号のようなものが彫ってある。四つを見比べてみるとどれも違う。

「そろそろ帰るか」
Tの言葉に従ってみんな坂をおりはじめた。

俺の出した結論は、
(やっぱ大した事ない)
だった。

「夜、もう一度来てみないか?」
俺はみんなに聞いてみた。
まあ、予想はしていたがほぼ全員が
「無理!無理!無理!絶対無理!」
と即答した。

ただ、T(さすが隊長!)とMは誘いに乗ってくれた。
Mはおたくって感じで、クラスでも全く目立たない奴だが、余計な事は言わない、俺の好きなタイプだった。

俺としては、丑三つ時を狙ってたんだが、2人の「せめて10時にして」との説得に負け、9時に学校に集合、って事になった。



約束通り2人は9時にやって来た。2人とも手にヘルメットを持っている。
「あの坂転げ落ちたらヤバいしな」

「俺のは?」
と俺。

「Sは大丈夫さ、なんせ、怖いもの知らずだからな」Tが言うとMが大笑いした。俺は心の中で(この2人とは生涯友達でいたい)などとのんきな事を考えていた。

麓に着くまでは、好きな女の名前を言ったり聞いたりして楽しかったが、さすがに夜になると山の雰囲気が全然違う。

竹やぶの中を歩き出したあたりから、空気がピリピリし始めた。

「なんか、ヤバくね」
Tの声が心なしか震えてあるようだ。

3人のライトが廃屋を照らした時、Mが小声で言った。「やっぱり止めとこう、嫌な予感がする」

Tも「まじやばいって、引き返そう!」と俺の服を引っ張る。
本音を言えば、俺も怖くて堪らなかった。ただ何故かその時は、怖さよりも(ここまで来て帰るのが勿体ない)という気持ちの方が強かった。

俺はヘルメットを借りて1人で行く事に決めた。2人には「10分で戻らなかったら助けに来てくれ」と頼んで。

さすがに廃屋の中を通り抜ける気にはなれず、横を回って裏に行く。もはや勇気というよりは自棄くそで、坂をのぼり始めた。その時!

「ウアーン」

かすかに赤ん坊の泣き声が聞こえた気がした。

「ウアーン」
今度ははっきり聞こえた。同時に生ゴミの腐ったような臭いが鼻をついた。

俺は恐怖ですぐにでも逃げたかったが、上の様子を一目見たい、という誘惑に負けてしまい少し顔を覗かせライトで照らした。

(!!!)目の前に、濡れてテカテカ光る小さな肉の塊があった。グズグズに腐ったそれは口が開くまで顔だと分からなかった。「ウアーン」一声泣いて、それは口の中に入ってきた。



病院のベッドで目覚めたのは3日後の夜、2人が助けてくれた事を知ったのは、4日後の朝だった。

俺はまだまだ朦朧とする意識の中で
(俺は助けてくれる人がいる、あの赤ん坊は一体誰が助けるんだろう)
などと考えていた。

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