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Pの『THE つだん部屋』コミュの扉(前)

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【コピペ】



「おとうさーん、お茶入ったよぉー」

階下から真奈美の声がする。

私「あー。すぐ行くー」

書斎で作業をしていた私は、典型的な生返事をする。
今は最後のメモ書きをしているところだった。
・・・万が一のための、メモ。
私はそれを書斎机の一番上の引き出しに入れておく。
できるなら迷惑は掛けたくないが・・・仕方ない。
他に手がないのだ。

真奈美「おとうさんってば〜」

私「終わった終わったー。今行くよー」

再び真奈美に呼ばれ、私は書斎を出る。
そして1階に続く階段を下りながら・・・一度、振り向く。
書斎の扉。
決して頑丈ではない、カギの付いてない、その扉。
・・・大丈夫。
きっと、大丈夫だ。

真奈美「・・・でね、ハナったら、痩せるんだって言いながら、なーんにもしないのよ」

私「あぁ、あの子はいつも、元気だねぇ」

真奈美の昔からの親友である、ハナ・・・立花さん。
最近は会ってないが、相変わらず恰幅が良いそうだ。

真奈美「元気一杯。それでね、私との体重差を減らすためにね、自分が痩せないで、私にもっと太れ、って言うんだから」

私「ハハハ、賢いな」

居間でお茶を飲みながら、台所で夕食の片付けをしている娘と会話をする。
会話の内容に、深い意味なんてない。
ただ何でもないことでも、こうして話をしていられれば良い。
ずっとこうして、一緒に・・・
でも、やはり言っておかなければならない。
この子の幸せだけが、私の望みだから。

私「真奈美、ちょっといいか?」

真奈美「んー・・・?なぁにー?」

洗い物をしながら応える真奈美。

私「ちょっと、こっちに」

真奈美「はぁい」

そう言って、洗い物を中断し、エプロンで手を拭きながらやってくる。

真奈美「なぁに?イヤな話でしょ」

探るような、警戒するような目でこちらを見ながら、椅子に座る真奈美。

私「真面目な話だよ」

真奈美「・・・はい」

背筋をピンと伸ばして、話を聞く体勢になる。

私「父さんの書斎机は分かるな?」

真奈美「うん。いつも掃除してるもの」

私「その一番上の引き出しに、メモ書きを入れておいた」

真奈美「メモ?」

私「そこに、父さんの古い友人の電話番号が書いてある。何かあったらそこに電話するんだ」

真奈美「何かって・・・なに言ってるの?」

当然の疑問。
だが、私は続ける。

私「携帯は持っているな?今も」

真奈美「持ってるけど・・・何で?」

私「あと、電話するときに・・・これは念のためだが、書斎の扉はしっかりと閉めること」

真奈美「ちょっと・・・何?」

私「カギは付いてないけど、ちゃんと閉めれば・・・」

真奈美「・・・ちょっと待ってってば!」

そう叫んで、立ち上がる真奈美。
初めて見た娘の剣幕に、ややたじろいでしまう。
が、話を止める訳にもいかない。

私「座って、まずは話を聞くんだ」

真奈美「イヤ。何言ってんのか分かんないもん」

私「座りなさい」

真奈美「・・・」

私「真奈美」

ムスッとした顔をして、大人しく座る真奈美。

私「いいか、もし・・・」

真奈美「・・・明日じゃだめ?」

私「・・・」

真奈美「明日なら、ちゃんと聞く」

あぁ、私は・・・

私「ダメだ。今日、今、話をするよ」

そう言うと、真奈美が途端に泣きそうな顔になる。

真奈美「最近、おかしかった話なの?」

私「ん?」

真奈美「アレでしょ?名刺」

流石に気付いていたか。
ここ最近、この子の前でも考え事をする事が多くなっていた。

私「あぁ、そうだよ」

真奈美「アレ何なの?」

私「今、その事を調べて・・・」

「ピンポーン」

私「っと・・・」

家のチャイムが鳴り、私は言葉を止める。
話の腰を折られてしまった。
時計を見ると、時刻は21時過ぎだ。
こんな時間に誰が?

真奈美「出てくるね」

私「あぁ・・・うん」

真奈美がパタパタとスリッパを鳴らして、玄関に掛けていく。
良い音だ。
可愛らしい、幸せな音。
私はこれを守りたい。
なんとしても。

真奈美「おとうさーん」

玄関から私を呼ぶ声がする。
そして呼ばれるまま玄関に向かった私が見たのは、2人の訪問者、本部長と藤木の姿だった。

高城「こんばんは汐崎さん。お嬢さんも、はじめまして・・・夜分遅くにごめんなさいね」

藤木「こんばんは、部長」

訪問してきた2人に、居間に通ってもらう。
お父さんの紹介によると、2人は高城さんと藤木さん、というらしい。
そう紹介されて何より驚いたのは、高城さんがお父さんの上司、本部長さんだということだった。
お父さんの上司ってことは、結構なお偉いさんの筈なのにこんなに若いなんて。
それに凄く綺麗で・・・女の私から見ても、色気を感じてしまう。
顔は、ちょっと切れ長の目をした美人顔。
鼻の形がかっこよくて、羨ましいな。
ハナは可愛いって言ってくれるけど、私のちょっと丸い鼻とは大違いだ。
でも、一番羨ましいのはそのスタイル。
足が長くて出る所はすごく良く出ている。
スーツ姿でもあれだけの膨らみって事は、きっとサイズは・・・あわわ。
私じゃ足元にも及ばないや。
大きさだけなら、ハナは良い勝負かも・・・なんて言ったら、怒られそうだ。
お父さんたら、こんな人の下で働いていたんだ・・・と思い、父親を見てみると、何だか緊張した顔をしている。
それが綺麗な人を相手にしているからなのか、他の理由なのかは、その時は分からなかった。

藤木「良いお住まいですねぇ」

お茶を飲みながら藤木という人が言う。
こっちは、ないかな。
いろんな意味で、ないや。
高城さんとの2ショットも、余りに似合わない。
バランスが悪いよ。
お父さんの方が、絶対良い。
2人でちょっと並んでみて欲しい・・・なんて思い、ふと考える。
高城さんって何歳くらいなんだろ。
お父さんより一回りくらい下かな?
それくらいだったら、お父さん、ちょっと頑張って・・・

父「真奈美」

ふと気付くと、台所に居た私のところに、お父さんが来ていた。

私「ん?今、お茶菓子持っていくよ」

父「いや。アレはどこだっけな・・・っと」

お父さんは、何やら背後を、居間の2人を気にしながら喋る。
何だろ?

父「真奈美」

鋭く小さな声で囁く父。

私「なぁに?」

その今までにない雰囲気に、私はお茶菓子の容器を持ったまま、固まってしまう。

父「さっきの話、間に合って良かった。こんなに早くとは・・・」

私「・・・」

何だか、嫌な感じ。
凄く、何か・・・イヤ。

父「私の部屋で・・・分かったな?」

ボソボソと話す父。
明らかに、あの2人を警戒して喋っている。

私「・・・今なの?」

父「あぁ、今だ」

私「何で・・・」

高城「汐崎さん、どうぞお構いなく」

高城さんの声が聞こえる。
あの人達が、何か・・・なの?
藤木って人はともかく、あの高城さんが変な事、悪い事?何か分からないけど、間違った事をするとは思えない。
さっき会ったばかりの、私の勝手な印象だけど。

父「あぁ、いえ・・・はい」

お父さんはそう言いながら、私の手から容器を取り、運んでいく。

私「何でなの?」

その背中にもう一度問い掛けるが、お父さんはそれを無視して、そのまま行ってしまった。
急に疎外感のようなものを感じてしまい、悲しくなってくる。
あんな態度、ひどいよ。
ちょっと泣きそう。
気持ちを紛らわすために洗い物の続きでもしてようかな、と思ったけど、それをすると、お父さんが困るだろうな。
そんな風に、困らせちゃいけない。
ちゃんと言う事、聞かないと。
お母さんに約束したもの。
お父さんの言う事聞くって・・・
よーし。
明日、ハナに思いっきり愚痴ってやるんだ。
お題は、『仕事にかまけて家庭を省みない父親』。
これだ。
上司の、綺麗な女の人に誘惑されて・・・みたいなこと、言ってやる。
フンだ。
しばらく、夕食をニガテな献立にしてやるんだから。
そんな事を思いながら、私はエプロンを外すと、テーブルを囲んで話をしている3人を尻目に、ソソクサと居間を出て・・・

藤木「あぁ、真奈美ちゃん。ちょっといいかな」

という所で、呼び止められてしまった。

私「はい?」

まさか呼ばれると思わなかったので、キョトンとしてしまう。

藤木「ちょっと来てくれる?」

私に背を向けて座っていた藤木さんが、振り向いて言ってくる。

私「えーっと・・・」

お父さんは丁度こちらを向いている角度に座っているので、その顔色を窺う。
・・・と、うわ。
何だか少し青い顔してる。

私「あの、私ちょっと・・・」

藤木「大事な話があるんだよ」

有無を言わせないような口調に、少しカチンとくる。
女の子を誘うなら、もっと優しく言いなさいよね。
お父さん、ちょっとどうにかして、と思い再び父親を見ると、首を横に振っている。
無視して行けってことだ。
でも、そんなのって何だか失礼で・・・

藤木「ね、ほら・・・」

とか思って躊躇していると、藤木さんが椅子から立ち上がる。

藤木「良い子だから、こっちに」

気持ち悪い口調。
ギラギラした目。
ヤダ、この人。
生理的に受け付けない。

父「真奈美は関係ないだろう!?」

不意にそう叫んで、お父さんが立ち上がる。
その様子に、私はすぐに逃げればいいのに、その場で固まってしまう。

藤木「関係あるかないかは、こちらが決めることなんですよ」

私の方に来ようとした藤木さんが立ち止まり、振り返ってお父さんに言う。
何でこんな険悪なのよぉ、もう。
・・・あ、高城さん、高城さんは?
と思って見てみるが、彼女はこちらに背を向けたまま座っている。
顔が見えないので、どんな表情をしているのかは分からない。

父「そちらにそんな権利はない」

いつもは見せない怖い顔をして、お父さんが言う。
何があったのか知らないけど、もう修復不可能な関係みたいだ。
お父さん、上司と喧嘩して、クビになっちゃうのかな・・・

藤木「私はねぇ、穏便に済ませたいんですよ。分かります?」

父「これ以上、何一つ従うつもりはない」

睨み合う2人。
でも、どう贔屓目に見ても、あっちの方が強そうだ。
若いし、ガタイも良いし、顔が乱暴そうだし。
う〜・・・止めないと、お父さんが怪我しそう。
でもでも、私ここに居ちゃいけないような・・・でも何とかしないと・・・
と、心の中でジタバタしていると

高城「2人とも、座ってくださる?」

ここでやっと、高城さんが口を開いた。



※コメントに続きます

コメント(2)

※続き



父「・・・本部長」

お父さんが高城さんを見る。

高城「汐崎さん、前に言ったと思いますけど・・・私、見下ろされるのが嫌いなの」

父「今は座りません」

高城「そう」

ため息混じりに言う高城さん。
私としても、座って落ち着いて欲しいのにな。

高城「では、そのままでどうぞ。藤木は?」

藤木「自分は、まぁ・・・座りますよ。もちろんね」

そう言って座る藤木さん。
うー・・・なんか、イヤーな感じ。

父「本部長、あなたは・・・」

高城「汐崎部長」

藤木さんが・・・ううん、もう藤木でいいや。
藤木が座ってから喋り始めたお父さんを、高城さんが制する。

父「・・・はい」

高城「今日、神尾という学生と会っていましたね?」

神尾?って誰だろう。
今日会っていたって?

父「えぇ、会いました」

高城「私は、この件については忘れろと言いましたよね」

澄ました声で言う高城さん。

父「はい」

高城「それに対して、あなたは忘れますと返事をしましたよね」

父「・・・」

そんな高城さんを、ジッと見つめるお父さん。
どんな事を考えているのか、私でも分からなかった。

高城「残念ですけど・・・私達と一緒に来てもらうしかありません」

え?来てもらうって?

父「・・・今すぐ、ですか」

高城「えぇ。今すぐ」

ヤダ、何言ってるの?ダメ。ダメよ。絶対ダメ。だって。
名刺の名前。
私は名刺を受け取った翌日、ネットで調べたんだ。
それで、普通じゃないことが分かった。
あれが殺人事件の被害者の物だってすぐに分かった。
誰かに殺された人の名詞。
人が死んでるんだ。
私は、それに巻き込まれたんだ。
そんな大変な事態の中、こんな風に有無を言わさず連れて行かれるなんて・・・
どう考えたって、絶対危ない事になる。
最悪、お父さんも・・・

父「分かりました」

え?
お父さんが簡単に了承するので、私は驚いてしまう。
危ないってば!ちょっと、何考えて・・・

藤木「それじゃ、ほら・・・真奈美ちゃんも、ね」

えええ?何で私も?
名刺を受け取ったから?
それだけのことで?

父「だから、真奈美は関係ないだろう!」

凄い剣幕でお父さんが怒鳴りつける。
それを受けて、藤木が再びゆっくりと立ち上がる。

藤木「もう、この問答はしたくないですね」

父「何を・・・」

と言った瞬間、藤木がお父さんの顔面を殴りつける。

私「あっ・・・!」

鈍い音がして、崩れ落ちるお父さん。

高城「・・・藤木!」

高城さんが咎めるように言い放つ。

藤木「どうです?慣れたものでしょう。急所を狙えば、一発で気絶ですよ」

偉そうに言う藤木。
バカじゃないの!?この人!

藤木「さ、ほら・・・真奈美ちゃんは大人しく、ね?」

そう言いながら、こっちに近付いてくる藤木。
そんなことで大人しく従うわけないのに・・・!
私はキッと藤木を睨みつける。
・・・戦う?
冗談じゃない。
17の乙女が勝てる訳がない。
すぐに、逃げるべきだ。
どこに?
勿論、言われた通り、お父さんの部屋に。
でも、お父さんが・・・
逃げる体勢を取りながら、私は倒れたお父さんを見る。
・・・と、その傍らに高城さんがしゃがみ込んでいた。
そして、その綺麗な手で、お父さんの顔を・・・殴られた辺りを触っている。
その仕草に、私は何か不思議な感じを受ける。
何だろう、これ・・・変な気持ち。
高城さんの横顔は、とても優しそうで・・・まるで・・・っと、いけない!
目の前に迫ってくる悪漢を忘れちゃいけない。



※続きます
※続き



私は背中を向け、一目散に2階へと駆け上がって行った。
2階のお父さんの部屋に逃げ込み、急いで扉を閉める。
でも、この部屋にはカギが無いんだ。
これじゃ、閉めても・・・と思ったけど、閉まった扉を見て驚く。
お札。
その扉には、ビッシリとお札が貼られていた。
何のお札かサッパリだけど、20枚くらいある。
私、霊感とかないけど・・・これはこれで、何か効果があるのかな?
そう思っていると、トントンと、階段を上る音がする。
1人・・・2人だ。
2人とも来た。
大丈夫よね?お父さん・・・
私は祈るような気持ちで、扉に貼られたお札を見つめる。
やがて、足音が扉の前で止まる。
逃げ込んだ場所は、丸分かりだったみたいだ。

藤木「真奈美ちゃーん。入るよー?」

そう言って、藤木が扉を・・・

藤木「あら?ノブが回らない?」

やった!効果ありだ!

藤木「あぁ、これ、もしかして・・・本部長」

高城「触るまで気付かないの?」

2人の会話が聞こえる。

高城「こんなにハッキリ、封がされているのに」

藤木「いや、どうもこういうのは苦手で・・・参ったなぁ」

参って参って。
意味は分からないけど、こんなに沢山お札が貼ってあるんだから、そう間単には・・・

高城「・・・退いていて」

高城さんの声が聞こえる。
何だか嫌な予感・・・

藤木「こういうのは、お任せしますよ」

お任せします、って・・・高城さん?
私は不安な気持ちで、扉を見つめる。
すると・・・
私の目の前で、1枚ずつお札が剥がれ始めていった。
剥がれたお札を拾って、もう一度貼ろうか・・・なんて思ったけど、私じゃきっと意味がない。
これじゃ・・・このままじゃダメ・・・
私は部屋の中を振り返り、何か・・・っと、そうだ!机の引き出し・・・電話!
私は慌てて書斎机の所に行き、一番上の引き出しを開ける。
そこには、お父さんが言った通り、1枚のメモが置かれていた。
私は持っていた携帯を取り出し、番号を・・・あ、それより警察に電話した方が良い?
何て言って?
お父さんの上司の人が、お父さんを無理やり連れて行こうとしているんです?
・・・違う。
無理やりじゃないんだ。
お父さんは了承していた。
それに私は子供、相手は・・・高城さんみたいな大人の人。
絶対に、私の言うことなんて通らない。
せめてあの名刺でもあれば良いのに、私の手元には今は無い・・・
悩みながら扉を見ると、次々にお札が剥がれていく。
時間は余りないのかも知れない。
今は、お父さんの言う通りにするんだ・・・
私はそう思い、そこに書かれた番号に電話をする。
メモには相手の名前も書いてあり、そこには、『牧村陸』と書かれていた。



※終わり

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