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Pの『THE つだん部屋』コミュの【453】死してなお

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【コピペ】



私が高校2年生の時に起きた話です。私とA子はいつも一緒にいました。A子はとても可愛くて性格も良かったのでクラスでも人気があり、特に男子からの人気は凄いものでした。さらに父親が社長のためお金持ち、天は二物を与えずと言いますがA子には与えてくれたようでした。

そんなA子ですが今まで彼氏が出来たことがありません。いや、出来ないというかまったく長続きしないのです。その原因は父親にありました。A子を小さい頃から溺愛していた父親の愛情はA子が大きくなっても無くなりませんでした。A子に彼氏ができても、すぐに別れさせてしまうのです。
チャラチャラしている。礼儀がなっていない。育ちが悪そうだ。家が貧乏だ。
父親は決して認めることはありませんでした。そういう経緯もあってかA子自身も恋愛に関して臆病になっていたのだと思います。

けれどA子も思春期の女の子、とうぜん恋愛がしたくなります。ある日、A子から彼氏が出来たという報告を聞きました。相手はすぐ隣の高校のB君という男の子だそうです。B君は私も知っている有名人でした。何年か前にB君の父親が強盗殺人の罪で刑務所に入り、騒がれたのです。犯罪者家族に向けられる世間の目は冷たいものでB君は学校でも避けられているようでした。


「B君ってあのB君?でも、その…大丈夫なの…?彼の父親ってさ…。」

「大丈夫って何よ!B君と父親がしたことは関係ないでしょ!?B君はとっても優しいんだからね。それに私の恩人だし。」

「恩人?」


ある日A子が歩いていた時、後ろからいきなりバックをひったくられたそうです。そしてそのひったくり犯を捕まえてくれたのがたまたま通りかかったB君だったらしいです。そっから仲良くなり付き合うことになったんだとか。私の知らない間にいつの間に…。


「ドラマチックでしょ♪」

「それで、B君とは隠れて付き合うの?」

「うん…。本当は堂々としてたいけど、お父さんにバレたら何言われるかわかんないし…。」

「そっか。んじゃ私も周りには黙ってるから、B君と上手くいくよう応援してるよ。」

「うん、ありがとう!」


そうしてA子とB君の恋愛が始まりました。二人はまるで運命の人どうしのようにとても愛し合っていて、よく惚気話を聞かされました。私もA子と一緒にBに会ったりしましたが、とても温厚で優しい男の子で暖かい空気を持っているように見受けられました。

しかし現実はそう甘くはありませんでした。A子とB君が付き合ってることが周囲にバレたのです。誰かが目撃して、誰かが噂をし、それが広まっていく、ついには父親の耳にも入りました。

ある日A子は私に相談してきました。父親にB君と付き合っているのがバレて今すぐ別れろと怒鳴り付けられ、さらには犯罪者の家族は犯罪者だ、Bなんてやつはクズだと言われたそうです。A子は怒り「絶対に別れない!」といったら頬を殴りつけられたと…。A子の頬には痣があります。


「もう、お父さんなんて大嫌い。私、B君とは絶対に別れないから。見方なのは○○だけ…。応援しててね…。」

「うん…。」


その日からA子には父親に早く別れろと怒鳴られ、反抗し、殴られるそんな日々が続きました。日に日に元気がなくなり、衰弱していくA子を見るのはとても辛かったです。急激に環境が変わったのはA子だけではありませんでした。普段、あまり目立たない(ようにしていた)B君が誰かと付き合う、それもA子みたいな可愛い子と。このことが周りから反感をかったようです。Bは学校で酷いイジメをうけるようになりました。二人とも心も体もボロボロ。

けれどA子は私に言いました。


「B君と一緒にいる時だけは本当に幸せなの。何もかもが輝いてみえるのよ…。」


そしてこれが私の聞いたA子の最後の言葉となったのです。



A子とB君は行方不明になりました。周りは二人は駆け落ちしたんだと囁いていましたが、私はそれとは別の、とても嫌な予感がしていました…。

三日後、A子とB君は近くの湖のほとりで見つかりました。水死体となって…。二人の死体は互いに手を握り合っておりなかなか離すことができなかったそうです。ふたりは生きることに悲観して、けれど出会えたことには感謝して、あの世で誰にも邪魔をされずに二人で一緒に過ごせるように、湖で手を握り合って心中したのでした…。

二人が死んでから湖には幽霊がでると噂されるようになりました。「二人の男女が湖の上で楽しそうに踊っていた」「湖のほとりにカップルがいると思ったら次の瞬間、消えていた。」などなど…。あの二人はまだこっちにいて仲良くやってるようでした。

しかし、この噂がまたもや歯車を狂わせていくことになったのです…。

A子を溺愛していた父親はとても悲しみ、怒り、…狂ってしまいました。湖の幽霊の噂を聞いた父親は高い金を払い有名といわれる霊能力者を呼びました。人づてにそれを聞いた私は真夜中に湖へと向かう霊能力者と父親にこっそりついていき、着いた後は茂みに隠れ様子をうかがいました。霊能力者は湖を見ると言いました。


「とても仲のよさそうな男女の霊が湖に漂っておられる。しかし害意や悪意は感じられぬし、いまは地縛霊となっているがじきに成仏するでしょう。供養塔たててあげればすぐに逝かれると思いますが、どうしますか?」

「そんなことはいい。それより男の方の霊…、そいつを地獄に落とせ。」

「…は?」

「地獄に落とせと言ってるんだ!」

「い、いや、しかし、それは…」

「お前には高い金はらってるんだぞ?それとも何か?お前が今すぐ地獄に落とされたいのか?」


父親は胸から出したナイフをぎらつかせ言いました。


「は、はい!いますぐやります!」


霊能力者はお経のようなものを唱え始めました。何やらひどい不協和音のようなお経。そもそも人が人を地獄に落とすなんて、そんなことができるのでしょうか。それはおそらく無理です。それこそまさに神の御技、少なくともあんな霊能力者にはとうてい出来そうには見えませんでした。唱え終わると霊能力者は言いました。


「男の霊は地獄に落とされました。永遠の苦痛を強いられるでしょう。」


それを聞いて父親は満足そうな笑みを浮かべました。その刹那。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


湖全体に女、A子の叫び声が響き渡りました。この世のすべての悲しみがつまっている…そんな声でした。霊能力者と父親が避難しはじめたので私もすく様、その場を離れ全力で走り家に帰りました。そしてその日から湖の幽霊の噂が変わり始めたのです。「湖に恐ろしい形相の女がたたずんでいた」「シクシクと女の泣く声が聞こえた」そして男の幽霊を目撃する人は誰一人としていませんでした。

あの霊能力者は本当にB君を地獄に落としたのか、それともただ供養したのか…。いったい何をしたのかは分かりませんがハッキリしているのはB君がいなくなり、そしてA子だけが取り残された…ということだけでした。死してなお二人はあの男によって引き裂かれたのです。


湖にはもう誰も近づかなくなりました。あそこには女の怨霊がいる。行けば湖に引きずり込まれる。そう真しやかに囁かれはじめたからです。度胸試しといって湖に行ったり泳いだりする人もいましたが溺れて、後日水死体になって発見される…というのが後を絶ちませんでした。


そして、あの霊能力者が電車に飛び降り自殺したと聞きました。目撃者によるとフラフラ〜としながらホームに近寄り電車が来たときにそのまま飛び降りていったと。体は綺麗に五肢にバラけて飛んでいったらしいです。

B君を苛めていた中心人物とされるCが交通事故に遭い死亡しました。その他にも何人かB君のクラスメイトが事故にあったりして大怪我したようです。

父親は、自宅の柱に自分で何度も頭を打ちつけて自殺という謎の死を遂げました。遺書と思われる傍においてあった紙には一言、「ゆるしてくれ」。

母親は父親が死んだ次の日から行方不明となりました。私が思うにもう生きてはいないでしょう。父親の娘に対する折檻、それを止めようともせずただ傍観していたのですから…。




そして唯一、生き残ったのは
A子の妹である、この私だけでした…。




私とA子…お姉ちゃんは小さいときからずっと一緒でした。どこに行くにしても何をやるにしても、仲良しの双子の姉妹でした。父親はA子のことばかりを可愛がりましたが、私はそんなことはまったく気にしていませんでした。お姉ちゃんがいればそれで良かったのです。お姉ちゃんの彼氏ができるとこっそり父親に言いつけて別れさせてもらいました。お姉ちゃんは私のもの、他人なんか必要ないんです。

お姉ちゃんも恋愛を諦めかけ、ずっと私のものになるはずだった矢先に現れたのがBでした。お姉ちゃんから惚気話をきくたびの嫉妬で腹が煮えくりかえる思いでした…。お姉ちゃんをあんな男に、ましてや犯罪者の家族なんかに渡すわけにはいかない。私はお姉ちゃんとBが付き合ってることを周囲にバラし、父親にも言いつけました。まさか、父親が暴力まで振るうとは思いませんでしたが、これで反省してさっさと別れてくれればそれでいいと考えていたのです。

けれど、お姉ちゃんはBと別れませんでした…。さすがにこれ以上傷ついていくお姉ちゃんは見てられなかったので、友達のCにBを率先していじめ、自殺に追いやってくれと頼みました。それ相応のお金は支払いましたがBがいなくなると思えば安いもんです。しかし、こともあろうに二人は一緒に湖へと身を投げ心中してしまったのです。私は絶望しました。すべてBのせいだと怨めしく思いました。そして湖の幽霊の噂を聞いた時…最後のチャンスだと思いました。お姉ちゃんが死んでおかしくなってしまった父親に湖の噂話を話し、霊能力者のことも持ちかけました。驚くほど順調に進みすぎて少し怖くなりましたが。



お姉ちゃんが死んであれから一年が経ちます。私が親戚に引き取られるのを拒んでまで、地元の汚い児童養護施設で過ごし生きてきたのも全て今日この日、お姉ちゃんの命日を祝いそして一緒になるためでした。

私とお姉ちゃんは仲良しなんです。小さい頃からずっと一緒に過ごして…大きくなっても…どこへ行っても…何をしてても…



死してなお一緒にいなくてはいけないんです。




…私の話はこれで終わりです。ここまで読んでくださってありがとうございました。私はお姉ちゃんが呼んでいるのでもういきますね。それではみなさん、さようなら。



-終-

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