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小鹿堂コミュのフォー・ミー

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蝉が鳴きはじめました。

鳴き始めるときは意識出来るのに、毎年毎年、いつのまにか蝉はいなくなる。

夏がやって来ます。

蝉が鳴き始めたら、夏を意識する。
素敵なことが始まるんだよ、って夏の始まりにはなぜか胸の高鳴りを感じる。
どうせ、たいしたことは起こらないのに。
花火が上がる夜に君は、逆方向の電車に乗る羽目になるだろうし、麦わら帽子は飛んでいくし、アイスはアスファルトの上でゆっくり溶けて行くだけだ。ぐったりした犬に憧れるように、僕はヒグラシの声を聴きながら、夕暮れにひとりでぬるくなった缶ビールを飲むだけだろう。
浴衣美人やなど存在はしないのさ。
少なくとも僕の目には映ることはない、そのうなじに齧りつくのはいつも知らない誰かだ。
かき氷食べて赤くなった舌でキスをするのはいつも知らない誰かだよ。

僕たちは、花火の消えカスが残ったアスファルトに立ち尽くしたまま。

蝉が鳴き始めました。

夏の始まりを知らせるくせに、いつも俺には挨拶なしであいつらいなくなっちまう。

知らないうちに、夏は終わる。
鼻にツンとくる風が秋の訪れを感じさせるまで、刹那風が吹くまで。
知らないうちに、夏は終わる。

終わったときに、寂しさを感じてばかりだ。
当然のように横にいたひとが、ある日突然いなくなるみたいに。自分のアイスは、アスファルトに落ちないと信じてるんじゃないだろうな。自分のぐったりした犬は死なないと思ってるんじゃないだろうな。


終わらせたくて、夏を終わらせるんじゃないさ、蝉だって。
終わらせたくなくても、恋人に別れを告げるように、なにか掬い上げるものを探すように、さよならも言わずに、生ビールを喉に流し込んでるわけじゃないのさ。

今日食べたボロネーゼみたいに、味がしないような恋が終わっても、寂しさが残る。
ビールの味じゃ忘れられない、苦さだけが僕のこころを支配しているように感じる。


蝉は終わらせたくて、夏を終わらせるんじゃないが、たった七日しか生きられないさ。


俺は蝉だ。
永遠に生きる蝉だ。

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