小鹿堂コミュのカランコエの声がする、トットテルリが呼んでいる

たとえば、
４月が近付くたびに、彼女はカートのことを思い出すみたいに、

たとえば、
茜色の夕日を眺めていたら、彼は、彼女が笑っていたことやどうしようもない悲しいことを思い出すみたいに、

息を吸ったら、吐くみたいに、
曲が鳴ったら、足が動き出すみたいに、
鳥たちが自由なように、
花たちが風に揺れるように、

今年も１月３０日が近付いているから、思い出す。

「彼女」のこと。

￣￣￣￣￣
(このようなことを私は永久に繰り返すのだ。)

￣￣￣￣￣
あの公園で、彼女とふたりで、水鳥たちに餌をあげた。水鳥たちがすごい数で餌を取り合うのに笑いながら、携帯で動画を撮った。

やがて、彼女と別れて、
ある日、このときの動画を見つけた。

水鳥たちが、画面いっぱいに映って、羽根が画面を舞って、彼女の横顔…、いや、横顔も映ってない。彼女の長い髪が隠した横顔の輪郭が、光と溶け合って、また水鳥がいっぱい映って、彼女は子供みたいに「すごーい」なんて声が一瞬入って、動画は終わった。

彼女の顔なんか、昔の僕はまったく撮らなかった。クソくだらねーわけもわからんような鳥たちがはしゃぐのを撮っただけさ。
彼女が永久に隣にいてくれるみたいに、彼女と３年後にでも見ながら「はじめて大濠公園行ったときやねー」って笑うかのように、なんの不安もなく、彼女の姿を撮ることがなかった。

それをまだ後悔しているような気もする。
後悔してるんだよって、もう伝える術もないし、彼女の姿を見たところでなにも起こらないこともわかってるさ。

けど、昔の自分を殴りたいんだ。
なぜ彼女を、彼女を、…撮らなかった？
優しく出来なかったのは何故だ。別れをすんなり覚悟したのは何故だ。すべて悟ったような顔してたのは何故だ。

３年たっても後悔している。
３年で忘れられるわけないよな。

なにより許せないのは、
永久に彼女と過ごせると思っていたことだよ。
馬鹿だよな。まわりにいるものをなにひとつたいせつにしなくて、実際今の彼女に感謝することなんて忘れてる。

さいあくだと思うよ。
だけど、こうしか出来ないんだ。
こんなんだけど、生きていたいよって思うよ。
誰かを愛したり、愛されたいなっていつも思うよ。

君を愛してもいいかい？

￣￣￣￣￣
明日には君の名前を忘れても、