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宮本恒靖日本代表ガンバ大阪コミュのこれもw

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2002年 日本代表の真実 宮本恒靖
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「自信を持って深めのラインを引いた」
多くの人と同じく、熱狂の渦中にいた宮本恒靖もまた、振り返るとあのワールド カップ(以下W杯)を遠くに感じるという。異常ともいえる喧騒から5カ月。「いい 意味で落ち着いてきた」という今、「あの夏」をどう思うのか。

出番は不意だった。2002年6月4日の埼玉スタジアム。鈴木隆行の執念で追 いつき、稲本潤一の躍動で勝ち越した初戦のベルギー戦後半。センターバックの真ん 中に位置する主将の森岡隆三が負傷で退くことになった。71分、森岡からポジション とキャプテンマークの両方を引き継ぐ。日本を逃げ切らせることが最大のミッション だった。

選手も客席もテンションは普通ではなかった。宮本にとってもW杯の初舞台であ る。

「すっとゲームに入るなんて無理だった。普段の試合と違った」

ピッチに入る直前にトルシエから指示を受けたが、その瞬間は無声映画。トルシ エの口は動いているが「何も聞こえなかった」。ファン・デル・ヘイデンの同点ゴー ルは宮本投入のわずか4分後のこと。絶望してもおかしくない、苦いデビュー戦とな った。

失点に後悔はつきもの。この場合はきっかけとなるCKを与えたのが悔しい。ベ ルギーの縦パスをクリアしたものの、利き足でない左足、しかもミートポイントがシ ョートバウンドになって、ボールは妙なスピンがかかり左斜め後方に飛んだ。GK楢 崎正剛はこれをパンチングでタッチライン外に出そうとしたが、ゴールラインを割る ことに。

CKはベルギーがミスキック。しかし、クリアボールを二度拾われ、最後はオフ サイドを取ろうとラインを上げた背後にボールをそっと落とされた。2列目から走り こんだファン・デル・ヘイデンが1対1になったGK楢崎を冷静に処理。ラインを上げ たこと自体に後悔はない。ただ、相手の縦パスに対処しようと踵を返したとき、戻っ てくるベルギーの選手と衝突、カバーに走れなかったことに腹が立った。偶然を装っ た故意なのか?

翌日、失点場面を収めた3分のビデオで1時間のミーティング。トルシエ監督は 失点の場面をまな板に乗せ、個々の選手の不手際を切り刻んで見せたが、結論はこれ までの守り方をより徹底してやる、ということだった。


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トルシエ不在
風呂場の作戦会議
「選手の雰囲気は、そんなにラインを上げなくても守れるんちゃうか、という感 じ」

その場では誰も異論を唱えなかった。夕方、食事前に風呂に入ったとき、フラッ ト3の右側を守る松田直樹に「どう思う」と考えを聞いてみた。

「あそこでベルギーのヤツにぶつかってなかったらカバーに間に合っていたか も」

「無理だろ、それは。問題点は別だろ」

風呂場から食事会場へと話し合いは続く。中田浩二、服部年宏、秋田豊、森岡隆 三らDF陣、ボランチの戸田和幸、稲本潤一、明神智和らもその輪に加わる。議論に 大きな刺激を与えたのが7日のアルゼンチン対イングランド戦だった。

「あのイングランドでもぺナ(ペナルティーエリア)の中に8人も入ってベタベ タに守って逃げ切った。W杯という大事な大会で勝つために日本は、今何をすべきな のか。しっかり深めにラインを保つことやろ。ピッチの中にいる自分たちの感覚を大 事にしよう。自分たちの考えを実践して今は結果を出すことに専念しよう」

守備にかかわる者全員で出した結論だが、トルシエには内緒にした。打ち明けた ときの反応が予測できない。事を荒立てるより試合に向けて集中したかった。

6月9日、そのロシア戦(横浜)。いつもより深い最終ラインにトルシエが怒鳴 る。

「マツは〈OK〉なんて適当に返事して。ぼくも注意を受けたけど、マツは〈気 にすんな〉と叫んでた。練習なしのぶっつけ本番でやれたのは何年も一緒にやってき て、お互いが思い描くラインのイメージが一致していたからだと思う。いつもは5 m上げるところを2mで止めておくとか、カバーリングをもう少し意識しようとか」

51分、稲本のゴールで1−0にしてからが長かった。0点に抑えて自分たちの力 を証明したかった。W杯初勝利を絶対にもぎとる意志の力が支えになった。85分に福 西崇史が入ってきたが、迎撃してボールを取りに行くタイプの福西に「ここを動く な」と場所を激しく手でたたいて示したりした。鬼気迫る表情。集中力が極度に研ぎ すまされていた。


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W杯初勝ち点の後は初勝利。試合のたびに「初」がついてくる。気分が悪いはず はない。決勝トーナメント進出を決めたチュニジア戦も「自信を持って深めのライン を引けた」という。ただ、試合前からコーチのサミアが神経質になっていた。後で理 由がわかった。トルシエはこの試合で森岡の復帰を考えていたが、サミアが宮本で行 くことを強く主張し、説き伏せたのだと聞かされた。

長居スタジアムから引き上げるとき、バスを取り囲む何万人という人々の歓喜の 表情を見て「自分たちが勝ったことで、こんなに喜んでくれるんや」という事実に震 えるほど感動した。一方で「グループリーグを突破しただけなのに」とも思った。勝 負はこれからだ、と。故障中の森岡に代わり、宮本がラインの統率者になった大会前 の親善試合で失点を重ねるたびに「戦犯」として槍玉に挙がったけれど、そうした批 判もロシア、チュニジア相手の連続完封勝利でぴたりとやんだ。


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トルコ戦試合前の
ロッカールームで……
トルコ戦前日の6月17日。公式練習の冒頭を報道陣に公開した際、トルシエがD F陣を集めてラインの上げ下げを直接指導した。

「深めのラインコントロールはうまくいっている。何のため? まあ、トルシエ に付き合うか、みたいな気持ちだった」。

報道陣を追い出した後、フォーメーション練習で三都主アレサンドロ、西沢明訓 が先発組のトップに入った。びっくりした。「ヤナギ(柳沢敦)が首を痛めて出られ ないのは分かっていた。ただ、やるとしても途中交代のオプションやとばかり思って いた。そしたら次の日、先発で。アキ(西澤)も国際試合は久しぶりで厳しいやろな と思った」。

試合が始まると何かおかしい。雨? 中3日と休養が十分でないせい? いつも ならスライディングする場面で選手が滑らない。ボールの譲り合い、セカンドボール を拾う粘りのなさ。「どうした! しっかりやれ!」と自然に叫んでいた。

試合前のロッカーから気になっていた。過去3戦と違い、笑顔を見せる選手がい た。これから厳しい戦いに臨む雰囲気に欠けていた。第一関門突破で使命を果たし、 妙な安堵感が生まれてしまったのか。トルシエは試合前「トルコ、セネガルに勝った らベスト4だぞ。この現実に気づけ」と必死にねじを巻いたのだが、選手の反応は鈍 かった。

そうこうするうちに12分のCKからユミト・ダバラに先制点を許した。コースも スピードも最高のボールだった。日本はセットプレーの際にゾーンマーキングを行 う。フラット3の並び通り、左から中田浩、宮本、松田とゾーンで守る。これもトル シエの教えだったが、レベルの高い相手だと危険過ぎるという意見も選手にあった。 W杯では選手独自の判断でロシアのオノプコには鈴木、トルコのシュキュルには西澤 をつけることにしていた。これも「脱トルシエ」の動きの一つ。ゾーンマーキングは キッカーがピンポイントのボールを味方に合わせてきた場合、立ち遅れる危険性があ る。トルコ戦の失点はまさにそれだった。

後半開始から鈴木、市川を投入し追撃態勢を取ったが、最後のカードとなった 86分の森島投入までベンチは動かなかった。

「ベンチが動かないなら、マツをトップに上げるとか自分もボランチの線まで出 て行ってチームに総攻撃の意志を示すとか、自分から動けばよかった。ベンチに怒鳴 って催促しても良かった。〈オレを下げてもいいからFWを出してくれ!〉って。W 杯の決勝トーナメントに初めて出たけれど、そこから先の処し方がわかっていなかっ た。……この経験はこれから生かすしかしないですね」


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自国開催のW杯で日本サッカー界、そして宮本個人にもいろいろと収穫はあっ た。

「大切なことを再確認できた。マークに行けば後ろから厳しく、前を向かせな い。1対1になっても粘り強く。基本に忠実にやればロシアやチュニジアなら十分や れる。アルゼンチンとかブラジルにはプラスアルファとしてのラインコントロールが 必要でも。そして次のプレーに対する予測の精度を高めることの重要性も。この角 度、この位置なら絶対にここにパスが出てくると読みながら体を動かしていけば、必 ず足は届くとか」

そういう舞台に立つ機会を与えてくれたトルシエに感謝の念もある。

「選手の、特に若い選手の力を上手に引き出したと思う。フラット3の練習なん かも理にかなっていた。ヒデ(中田英寿)しかいなかった海外組も今はたくさん増え た」

ただ、と付け加える。

「日本のやり方を研究された後、その解決策をどうするのか。その答えを示さな いまま日本を去ってしまいましたね」

日本のW杯は際どい綱渡りだった。森岡はケガ、宮本も鼻骨骨折を抱えて「仮面 の男」になっての奮闘。チュニジア戦はイエローカードの累積で出場停止にリーチが かかった状態。警告とケガの両面で、いつ宮本が戦力外になってもおかオくなかっ た。そうなったら、トルコ戦のフラット3の真ん中は誰がやっていたのか?

「どうするつもりやったんでしょうね。大会前の練習で福西が入ったこともあっ たけど……。ぼく自身は鼻も折れてるし、何がどうなってもええわと開き直ってやっ てましたけど」

警告やケガのことを先回りしてあれこれ考えるのは外野の発想なのかもしれな い。戦いに生きる選手は「今」、このときしか眼中にない。一瞬に生き、一瞬に死 ぬ。その刹那に自分の全エネルギーを注ぎ込む。その燃焼力に私たちの魂も奪われた のだろう。

ガンバ大阪のクラブハウスで宮本の話を聞きながら、W杯が遠くに感じるはずだ と思った。窓の外には、冬の気配を感じさせる風が吹いていた。

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