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ワライアル★自己紹介よろコミュのKS5-9 ユウナ→珍犯爺→ぺちょ→阿部マニア

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-ユウナ-

ジョギングをしている中年男性が驚いた顔で振り返った。
犬の散歩をしている主婦が、物珍しそうにチラチラと視線を送る。
登校中の学生が口を半開きにして、慌ててバッグをまさぐりだした。おそらく携帯電話を取り出そうとしているのだろう。 俺を撮るために。
なんて不躾な、遠慮のない態度だろう。漫画やアニメのキャラじゃない、現実の人間相手に、あまりにも失礼だといえるんじゃないだろうか。
だが、少し前に連日ワイドショーを賑わした顔が目の前に現れれば、しかたのないことなのかもしれない。
『野球賭博の琴光喜』まるでキャッチフレーズのように踊ったこの文句。それまで現在の角界における日本人の最高位と評され、多くの大相撲ファンを魅了した大関が転落の一途をたどったのが、暴力団を絡めて行われていた野球賭博の発覚だった。
大きな体に鋭い三白眼、狭い額に薄情そうな薄い唇。まさにツワモノの象徴のようだったその容姿も、事件の発覚以来、まるで「いかにもやりそう」だと囁かれるものとなる。
腐ったものは早々に切り捨てる。理事会はいとも簡単に黒い影をおぶった「大関琴光喜」を丸めてポイっと捨てた。
「長い間お疲れ様」や「残念だ、一から出直して戻って来い」という声はほとんど聞かれなかった。気の毒に思った世間の一部が「ポイ捨てだ!ポイ捨てだ!」と叫んでも、理事会は見事なくらいのすっ呆けを演じてみせた。
そんなこんなで琴光喜は「相撲取り」というレアな職業からいっきに「無職」という、泣くに泣けない立場へと転落してしまったのだ。
無職とはその言葉のとおり、「無」なわけで、社会人としてカウントすらしてもらえない。
皆が自身の胸に自分を表すプラカードを下げたとしよう。サラリーマン、主婦、学生、公務員、農家、アルバイト、医療系、自営業に販売員……。実に様々なプラカードが下がる。だがその中で無職の者のみが「無職」と表示されるのだ。百歩譲ってフリーターなどと格好のいい言葉を使ったとしても、無の者に変わりはない。この場合のフリーとは、自由という意味ではないのだから。
そんな無職の元大関、世間の目は様々だ。哀れむ目、興味深そうな目、好奇の目、ゴミを見るような目、クズを見るような目、せせら笑うような目。不躾にきられる携帯電話のシャッター音を耳にしながら、なぜこんな目にあうのかと、そればかりが胸に込み上げてくる。大きな雄たけびをあげて、「元・大関琴光喜」の俺を取り巻く世間のギャラリーに向けて突進してゆきたい衝動に駆られる。力士の立ち上がりの衝撃は、プロ野球選手のフルスイングより衝撃が大きいと聞く。きっと誰しもが顔色を変えて逃げ惑うだろう。 だが、それはできない。大きな体をしてはいるものの、俺は小心者だ。加えていえば、俺、佐原正一は国立四大の三期生、特注のリクルートスーツに身を包む、就活真っただ中のただの大学生。
巨体に小さな三白眼、恐ろしいほどに似てはいるが、琴光喜ではないのだ。


-珍犯爺-

俺、佐原正一のニックネームは『ハカセ』、幼馴染の仲間達からそうは呼ばれている。
仲間とは『ハンサム』こと国木田信夫、昔から病弱なためガリガリで、流木に目と口を掘り込んだ様な顔をしている。走るのが苦手で、よく野良犬に追いかけられていたのが印象的だ。犬にカジられてボロボロになったジャンパーをいつも着ていた。それと『ノッポ』こと佐野健一だ。彼は昔から鉄道マニアで、電車の部品や鉄道グッヅを集めるのが趣味である。いつも人民帽を斜めに被り、怒ると汽車の汽笛の真似をしてカッターナイフを振り廻す変わった奴だ。もう一人は紅一点の『デッパ』こと伊藤佳代子。彼女は受け口に出っ歯という珍しい顔をしていて、時おり見せる笑顔はまるで新種の深海魚といった感じである。もちろん、僕らのマドンナだった。4人は小さな頃からずっと一緒で、なにをするにも共に行動した。毎日遊んだ日々を思い起こせば懐かしいが、もう10年以上会っていない。
それにしても就職活動は憂鬱だ。何百とういエントリーした会社のなか、一つとしてやってみたい仕事はない。しかしそんな平凡でルーティン地獄の中でも唯一の楽しみがある。それは単純な行為であるのだが、マンションやアパートのベランダの物干しにブラ下がった下着を頂戴し、物陰に隠れて試着したのちに速やかに元に戻すという遊びである。たわわに実った果実を物色すべくパンティをもぎ取り、そしてズボンとブリーフを一気におろして、手に取った『おパンティ』に穿き替える。巨漢の俺には小さすぎるそれは、まるでマワシ姿に見える。誰かに見せたい衝動をグッと押さえつつ、日頃の就活ストレスを爆発させてこう叫ぶのだ。
「ドスコーイ!!」
ムンズとパンティからこぼれ出した両足は、腸詰に失敗したウインナーの怪物の如く。そして食い込んで抑圧された巨大な尻は、爆発寸前の水風船の様だ。
ことわっておくが、これは決して『性癖』などではない。れっきとした趣味である。
そんなこんなで、今日も日課である秘密の行為をDOしていた時だ、
「ドスコーイ!」、「ドスコーイ!!」、「ドスコイ、ドスコーイ!!!」
今日もすこぶる調子が良い。四股まで踏んでしまうのは絶好調の証である。150キロを超える巨体の四股がどれほどの迫力か想像出来るだろうか?

その時である、…「ガラガラガラ」…。
忍び込んだベランダの扉が開くと奥から人影が現れた。足元から見上げた俺に飛び込んできたのは、ピンクのスパッツからスっと伸びた脚に、上半身には見慣れない柄のハッピを羽織っていた可愛らしい顔の女性だった。俺は慌てた。全身の臓器が踊りだすほどビックリした俺は、ベランダの手すりに身を乗り出し、犬の尻からウンコが捻り落ちる様に地面目掛けて真っ逆さまに落っこちたのだった。


-ぺちょ-

「待って!!」という声 だが、素早く起き上がると 呼び止める声を背にして全力で逃げた。通りすぎの通行人が驚いた目で俺を見る。だが今に始まった事ではない。琴光喜に激似のせいで見られるのなんて慣れっこだ。もうウンザリだ!と思いつつもスピードを緩めず一目散に走った。
やっとの思いで自宅に着き、急いでドアを閉めた。1DKトイレ共同、駅から徒歩20分、家賃2万円の俺の城。「寄り切った・・あ間違えた逃げきった・・」安心したと同時に共同トイレに駆け込んだ。全力疾走したために刺激されて走っている途中でモーレツにしたくなったうんこをするために!急いでパンツを下げた! ん? いつになく下げやすい。そこで初めて気付いた。自分が
あの娘のおパンティーいっちょうだったことに…!!
「ウォ…マイガッッ!!」そりゃ見るわ通行人!そりゃ見るって!俺がこのおパンティを着けたところでお肉で隠れて面責ゼロってね!全裸の琴光喜がブリブリ全力疾走してたら驚きの眼差しよね!ごめんね!やっと落ち着いてきた俺の心臓はまたバクバクと脈を打ち出した。
「と、とにかく落ち着くべ・・!」急いで1番のお気に入りの鍋に先週砂浜で大量に拾い集めた昆布と水を入れて火にかけ、「沸騰してきたら鶏肉 ねぎ 豆腐 人参 白菜 ニラ ソーセージ 大根 エノキ マロニーちゃんをぶち込みまぁ〜す」と、いま自分がしているクッキングが全国放送されていることを想像しながら、それらが煮えていく様を見つめた。不思議とグツグツと音を出す鍋の中を見ているとだんだん落ち着いてきた。
「・・さて、このおパンティどうするべか・・」俺の手の平の上でちいさく丸まっているカワイイおパンティを見つめた。
「証拠隠滅!!のこったー!!」パシャ! 鍋に入れて煮込んでみることにした。投げ込まれたおパンティは徐々に汁を吸い込み、鍋の中に馴染んでいった。いつもなら食べ頃になったところでお得意の「ドスコーイ!」という掛け声と共に頭からアツアツの鍋をかぶるのがサイコーに男らしくてカッコイイから大好きなのだが、今日はなんてったってスゲー物が隠し味、いや、メインで入っているので、いつもの様に行水のごとく頭からかぶってしまうのは大変勿体ないから 素材の旨みがタップリ溶け込んだスープをいつもの哺乳瓶に入れた。そして、ぺったんコのせんべい布団に潜り込むと頭まですっかり被り、ゆっくりと哺乳瓶の乳首に吸い付き、目を閉じてチューチューしてみた。 「熱っっぢ!」熱かった。猫舌わすれてた。でもそんな熱さなんてどうでもいい程、美味かった!これまで口にした何よりもこのスペシャルスープはぶっちぎり1位だった。涙があふれた。何かを口にして涙がでたのは初めてだった。そのままスペシャルスープをチューチューしながら深く眠った。
翌日、俺はまたあの娘のベランダを見ていた。なぜ来てしまったのか あの味が忘れられないからか?それともあんなにもグレイトな出汁がとれるおパンティの持ち主のあの娘に会いたいからか?少し混乱しながらベランダに実っているおパンティを眺めていたら 「ガラガラ・・」窓を開けてあのダシっ娘が出て来て目が合ってしもうた!俺は逃げようと走り出そうとした瞬間 「待って!待ってハカセ!!」 へ? 今なんて?ハカセて言った?どうしてその呼び名を!?
仲間内だけのそのニックネームを知ってるんだ!!驚いて振り返り彼女をよく見てみたが、やっぱり見覚えのないカワイイ顔だった。「なんだチミは!!」俺は叫んだ。


-アベマ-

「なんだチミはってか!え?」「なんだチミはってか!え?」と彼女は2度復唱した。俺はその彼女の声を右脳と左脳の狭間で超越関数を用い考えた。まず、答えより過程が大切だった。今日の彼女はパッションホワイトのシミーズにピンクのスパッツ。 なんだ、今日はハッピを羽織っていないのか・・・と、自ずと答えは出た。π=キレイな形だなぁ だった。
次の瞬間、彼女は窓際のカーテンを掴み華麗にベランダから飛び落ちた! 握力が無かったようだ。 俺は真っ逆さまで落ちても平気だったが、下はコーラの瓶で敷き詰められた花壇だ。心配になり安否を確かめようと彼女に駆け寄った。 彼女は仰向けになり気を失っている様子だ。「おい!しっかりしろ!」俺は彼女の身体を揺すり何度も気付けを与えた。 彼女を揺らす 彼女のパイオツが揺れる ロンパリドン! 「ド、ドコスドスコー!」俺は焦る気持ちを押さえ3階のベランダに駆け上がり、まだ早生たおパンティをもぎ取るとリクルートスーツを乱雑に脱ぎ捨てた。 焦っているのか中々おパンティーに足が通らない。。俺は片目を瞑り「ここだー!」と足を一気に挿し込んだが、そこでは無く後ろに転んでしまった。 失敗失敗 そんなこんなで難無くおパンティを穿くと、リクルートスーツをクルクルと丸め、渾身の力でそれを部屋の壁目掛けてぶつけ 拳を握り締めこう言った。「かかって来いちゃー!」 再びベランダに出ると太陽の日差しいっぱいに浴び イナバウアーを決め込んだ。「ドスコイドスコーーイ!」 初めて構えるイナバウアーでの四股。感極まり歓喜余って窓際のカーテンを掴みベランダから飛び落ちた。痛かった。
隣に横たわる彼女に大の字で「へへ、いいもん持ってんじゃん」と捨て台詞を吐くと同時に手の甲で彼女のボインとは言い難いが、形のいいパイオツに触れた。セーフの領域なので強めで右手の中指の踝で、その辺りを押さえた。 キャッチザウェーブを感じ取った俺は、うつ伏せになり膝から下を天に向け左右の足をチグハグにプラプラさせパイオツと戯れる様にジャンケンをした。 俺は彼女に気付かれない様に「じゃーんけーん」と慈しむ様に乳を伺い「ぽん」と同時に指で作ったチャカを突き出した。そして彼女の左のその辺りに銃口を突き付け「チェックメイト」と呟き 銃口をシャクらせた。
彼女に反応は無い 瀕死の彼女に「ケミストリー堂珍って響きどう思う?」と問い掛けシミーズをズリ上げていった。 たわわで露したのはPJのカタログで見た優しい色使いの青いポンパドールブラだった。だが、これでは真の姿が判りかねると思った俺は彼女に気付かれない様にブラのホックに手を伸ばし温暖化を解除したのだ。 眩い青の…いや、蒼と表現する方が適しているポンパドールブラをまるでマジシャンかの様な手つきで剥がし取り、銃眼が少しばかり邪魔だったが、それを失わない様におパンティの自称前ポケットに仕舞った。 ブラを外した彼女の胸は若干小振りだが見事なマウントフジコだった。
目の前には意識を失いトップレスで横たわる可愛い女性 一刻を争う。何から手をつけていいのか判らなくなり混乱したが、持ち前のインスピレーションで今やらなければならない事が閃いた。
俺は彼女の胸を前にし「こんなに腫れて痒いだろう」と、爪でバッテンをしようとした時だった…。 背後で“カリカリ”という音と同時に“ポッポー”と汽笛の様な音がした。 今まで何度も聞いたことのあるこの汽笛 振り返ると、そこにはやはり『ノッポ』が立っていた。
だが、久しぶりに再会したノッポは興奮状態だ。 ノッポは俺に有無も言う隙さえ与えずカッターでシュプールを描いてきたのだ! 俺は必死でノッポに訴えかけた。「一体どうしたんだ!」 ノッポは「一体どうしただ?そんな格好の奴に言われる筋合いは無い おまえ佳代子に何をした!」と言われたが何一つ恥ずかしい事はなかった。それよりも佳代子に何をしたとはどういう意味なのか… 俺とノッポの共通する佳代子は『デッパ』以外居ないのだ。
「そんなの何処に居んだよ」と言うとノッポは「目の前に横たわってんだだーが!」と咬みながら言った。
このS級素人の女性があのデッパ? 興奮のあまり狂喜乱舞で受け口と出っ歯を暴れ散らかしていたあの『デッパ』なのか? 俺は戦闘モードをオートに切換え 額の小窓から身を乗り出し確認してみた。チャームポイントの受け口とデッパが除去されていたが、言われてみればあの佳代子だった。


-ユウナ-

「あ、あのさ…。デッパの…デッパの伊藤佳代子のデッパはどうなったんだ?」
俺の当然すぎる問いに、ノッポはわずかに息を飲んだ。
「どうして昔の佳代子のことを知っているんだ?」
そこでようやく気づいた。ノッポは俺が誰だかわかっていない。それもそうだろう、俺たちは10年以上も逢っていないのだから。事実、俺は佳代子がわからなかった。ノッポだって、カッターを振り回してこなければ、誰だかわからなかったかもしれない。
「俺、ハカセだよ。昔よく一緒にいただろ。俺とノッポとハンサムとデッ…佳代子と」
デッパではなくなった佳代子をデッパは呼びにくく、あえて言い直した。ノッポはまだ警戒しているようだが、カッターを持つ手が少し下がった。畳み掛けるように俺は続ける。
「とりあえずさ、カッターをしまおうぜ。佳代子をこのままにしてはおけないし、俺も、そのう、服を着たいし」
ノッポは汚らしいものを見るように俺を一瞥し、かがんで佳代子を抱き上げた。それから顎で佳代子のアパートの方をしゃくり「ついてこい」と促した。俺はノッポの後に続き階段へと向かう。沈黙が重苦しかったから、ノッポの背にむけて話かける。
「デッパ綺麗になったな。そのう、乳もいい具合になってたし」
ノッポは答えない。
「ノッポはアレ、まだ鉄道好きなのか? ハンサムとは連絡とってる? あいつ、まだ犬に追いかけられてるのかなぁ」
ぴたりとノッポは足を止めた。そしてコンクリートの壁を突き破りそうな勢いの、大きな溜息をついた。
「はぁー。オマエ、本当にハカセなんだな」
「そう! 俺、ハカセだよ」と思わず声が弾む。女物のおパンティを穿いた変態がかつての友人なんて、冷静に考えれば嬉しくない、むしろ頭を抱えて崩れ落ちたくなるくらいショックはずだが、わかってもらえた嬉しさが勝った。
ノッポはポケットから鍵を取り出し、佳代子の部屋のドアをカチャリとあける。佳代子を壁にぶつけないようにゆっくりと室内に入る。その時、小声でノッポは言った。
「マジでハカセかよ。まるで琴光喜じゃねえか」
やっぱりそこに行きつく! そりゃ、10年の間にハンパなく太ったけどさ!
それぞれの時間が十年分流れた。それだけあれば、人は別人も同然になるのかもしれない。ということは、かつてデッパだった佳代子がデッパでなくなったわけだから、俺がNEW佳代子に何かしらの感情を抱いてもいいということなのではないか。
俺はノッポがゆっくりとベッドに佳代子を寝かせるのをみて、呼吸が荒くなるのを感じた。ノッポはそんな俺の浅はかな思惑を見抜いているのだろう、佳代子に毛布をかけると睨みつけるような鋭い視線を俺に向けた。
「10年の間に、ずいぶん落ちぶれたんだな、ハカセ。まさか変態になってるとはな」
「確かにちょっと変かもしれないけど、それほどじゃない」
はっ、とノッポは肩をすくめた。
「あんまりそのツラで世間に顔向けできないことをすんなよ。世間は琴光喜が変態だと勘違いするだろうが」
その琴光喜のせいで俺だって迷惑をこうむっているんだ、俺はそう言ってやりたかった。


-珍犯爺-

急に懐かしさと嬉しさが込上げて来た俺は、ノッポの首筋にコブシを当てて、頚動脈をグリグリした。笑顔のノッポを見てなぜか工藤静香の卑屈な微笑がダブったが、それは口に出すのをやめた。
シルエットが『習字の筆』そっくりなノッポが、湿った声で俺に言った。
「ハカセ、少し、時間あるか?佳代子と一緒に蕎麦でもどうだ。」
急ぎの用事があるわけもなく、佳代子と俺は着替えを済まして、3人で歩いて蕎麦屋に向かった。空は少年時代に見た空よりも狭く感じたのは、僕らが大きくなったか それとも街が高いビルに囲まれて実際に消えて来ているのか…そんな事をぼんやり考えながら歩いていると、ブラジャーを着けている自分を思い出したが、「もお、どうでもいいや」 正直に思った。
蕎麦屋に入り奥のテーブル席に俺ら3人は腰をかけた。すると、「あれっ!?」佳代子が飛び跳ねた。ハッと佳代子の腰元に目をやると、なんと佳代子のイスだけ、イノシシの剥製ではないか。 「どうなってんだよ?!」 ノッポがムッとして店主に噛み付いた。ノレンの奥からヒョロリと現れた店主はペコペコと「それ、狩ったのよ、俺が」と銃をかまえるしぐさをしてみせた。 「…で?」 3人の誰もが思った。さらに続けて「ところでさ、なんでブラジャーしてんだい?」と問いかけた。俺はそれを無視してイスを替えてもらう事をお願いした。次に店主が持ってきたのは巨大な角が生えた鹿の頭だったが、俺は自分のイスを佳代子に渡して、無言で鹿の頭に座った。「…この店主には何を言っても無駄だ」と心で思いつつ、鹿の角に肘をかけた。
しばらくの無言を切り破ったのはノッポだった。「おれたちさぁ、実は大変な事に巻き込まれているんだ。」 佳代子とノッポが大変なこと? 想像もつかない俺に、こう言い続けた。「ダースベーダー知ってるだろ? あれの庶民的な感じの人間に脅されているんだ。」 ノッポの顔は完全に白くなっていた。それにしても『庶民的なダースベーダー』?? いったい何なんだ? あれは悪の帝王じゃないのか? 漆黒の仮面は被っていないのか? マントがチープなのか? それとも体つきが貧弱なのか? 頭を悩ませてていると、佳代子がこう言った。
「電話がね、あるの。毎日。そして、会話の合間で『コー、ホー』って言うのよ。」
なんだ、ただのいたずら電話じゃないか。そう思いながら蕎麦をすすりつつ、シャンパングラスにドングリを注いだ。 俺はただ事ではない予感がした。
その時、ノレンの奥では店主が、くわえタバコでライフルを磨いていた。
斜め向かえの席では佳代子が、鼻をかんだティッシュを広げて見ていた。
ノッポは興奮し、眼鏡を前後させて、目を大きくしたり小さくしたりしていた。
俺は、瀬戸内寂聴のビキニ姿を考えていた。


-ぺちょ-

ボーっとして寂聴のビキニはきっとビビットなオレンジかな・・と妄想して興奮していると、店内に、米米クラブの「浪漫飛行」が流れた。 佳代子の携帯の着信音だった。着うたフルでダウンロードしたらしく、前奏から最後までフルで流れた。
佳代子とノッポは大声でビブラートを効かせ、ゴスペラーズもびっくりな程にハモり、歌っている。間奏のボイスパーカッションは見事だった。バッチリ歌い切ると、顔を見合わせて満足そうに微笑み合っている。
「あの、出なくていいの?」とつっこむと、佳代子が「あっちゃー!またやっちゃった!いつもこうなのイヒヒッ」と笑い、二回目の浪漫飛行をしつこく鳴らしている携帯を開き、「お待たせしました!もしもっしーん!」と電話に出た。
「もしー?アレ?もしーん?…あ、奴だわ。」と怯えた顔をしながら、俺の耳に携帯を押し当ててきた。
「コー、ホー、コー、ホー、シュコー、ホー、ゲホゲホッ」 むせていた。
「あの、大丈夫ですか?普通に話してくださいな。」
「コー、ホー、シュコー、い、今から、そこに行くど!コー、ホー、ゲホッ 」 プッ  電話が切られた。「あんだって!?」佳代子とノッポが身をのりだした。「今から来るって。」と伝えると、2人は震えだし、動揺した佳代子は急いでハッピを羽織り、テーブルの上に登ると「ワッショーイ!!ワッショーイ!!整形ワッショーイ!!」と、エアみこしを担ぎだした。
同じく動揺したノッポも、「ポッポー!!ポッポー!!」とカッターナイフを振り回し、完全にイッている目でそれを舐めまわした。
「落ち着いてくで!!」俺の声は2人に届かない。そこへ ズキューン! とライフルの発砲音 2人につられたオヤジが天井に向かって打ち放ち「祭りサー!!」と叫んだ。 沖縄出身らしい。どうりで蕎麦がソーキソバな訳だ。そこへ店の奥からおばちゃんが出てきた。一緒に3人を落ち着かせてくれと頼むと、鹿の角をボキッと折り、自慢の大仏パーマの頭に差し込むと、俺をめがけて「ブヒョー!!」と、突進してきた! とっさに俺はブラジャーを投げつけた! 直球で顔面にヒットしたのにめげずに突進してくる豚鹿に、今度はどんぐりを節分のように力一杯投げつけた! 眼球にヒットして怯み、下を向いて目をおさえている。
「あ、ごめんなさい、つい。。」と覗き込んだ瞬間、豚鹿はニヤリと笑い、「バーカ」と言うと同時に「ブッヒョーン!!」と突進してきた!「きたねぇぞ!! ドスコーイ!!」張り手で対抗する俺!闘牛のように鼻息を荒くして突っ込んでくる豚鹿!

「ワッショーイ!! ポッポー!! ズキューン!祭りサー!! ブッヒョー!! ドスコーイ!!」

もはや店内はめちゃくちゃになり、止める者も居ない。そうして2時間程暴れていると、突然、不気味な音楽が爆音で流れてきた。 デーンデーンデーン デーデデーデーデデーン♪
紛れもなくそれはダースベーダーのテーマソングだった。 一同、ハッ、としてグッ、と入口に目をやると、そこには「Kiss me」と手書きで書かれたTシャツに、ケミカルウオッシュのタイトなデニム、頭には マジックで黒く塗り潰されているが、ダンボールの質感が全面に出ている手作り感満載な、遠目、ダースベーダーに見えなくもない被り物をかぶった男が、首に巻かれた ふろしきをなびかせて立っていた。
「・・来たわ・・」佳代子が震える声で言った。


-アベマ-

爆音だが4和音だった音も鳴り止み男は仮面を横ちょにエロ被りした。その素顔は意外にハンサムだったが国木田信夫ではなかった。
「おで 次世代の騎士 シュコー」と言うと、おばちゃんが、角を机の上に置き「コーとか恥ずかしくないのかお前」と言うと、突然そこに居た俺以外の5人がピースをし、指で星を作った。男は“コー”と頬染めたかと思えば、照れ隠しに「コ- ン・コ- ン・コ- ン・コ- ア゙ォルァイ オフェヘイ」とDiggy-MO'風にカッコつけた。。俺は仲間外れにされた悔しさから捨て身で「ドスコーイ!」と叫ぶと佳代子のスパッツから、おちょんの毛が逆立ちワッショーイした。

「ごっつぁんです!」


なんやかんやと世間から見ればゲルニカの面々が集ったであろうあの日から半月余り…。何もかも俺の中では赤く錆付いた記憶になっていた。
俺はもうリクルートスーツに袖を通すことはなく、持ち前の巨漢を使いビーチクサンマンダーにLEGOをはめ込むと、カメラに手を振り 今日もチャットレディのお仕事をしています。




        製作・著作
      糸冬―――――
         N H K

コメント(2)

カッターナイフを舐めるとこ最高です!

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