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人と自然コミュの里山資本主義

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藻谷浩介・NHK広島取材班「里山資本主義」角川oneテーマ21新書 \781 2013・7月刊


 このタイトルはわかりにくいですが、現代世界に広がるグローバル経済(マネー資本主義)とは対極の、地域でのローカル経済(里山資本主義)のお勧め本ということになるでしょう。切り口はモノとカネの流通を全国ではなく、地域の中で循環させることで地域を潤すこと、燃料・水・食料が低価格で、あるいは無料で利用できるのが里山であり、そのいくつかの成功例をルポしています。
 本体はNHK取材班のルポと、藻谷氏の現代資本主義解説の2本立てで、後者はなかなか難しい話ですが、里山での暮らしとグローバル経済を結びつける論理でもあって、里山資本主義が世界経済の救世主になるという、まぁ大げさでも未来に希望を持てるお話です。

 中国山地の中にある岡山県真庭市にある、従業員200名の製材所では、製材後の木くずを発電用の燃料に使い、年間4億円の利益を上げた。さらにその残り材で木質ペレットを製造し、キロ20円で販売、市内の一般家庭、農家はもちろん、全国から韓国から注文があるとか。真庭市内のエネルギー消費の11%を占めている。新たに5倍の発電所を設立。雇用の場も生まれた。その製材所は外材も使用しているという批判がありますが、2刀流でいいじゃないですか。国産材も外材も使えばいいのです。

 この本で「エコストーブ」という手作りで熱効率の高い手作りストーブの存在を初めて知りました。山から集めた薪数本でご飯も炊けるという。どこへでも持ち運びできる便利さも節電も重宝だ。(ただし、時計型の薪ストーブが4600円(送料・代引き料込み)で売られている)しかし、福島県の山林からの薪は放射能汚染されているので、要注意ではある。

 オーストリア。エネルギー源の石油・ガスは全量輸入に依存していたが、薪を燃料暖房に使うようになっただけではない。木質ペレット製造工場があり、そのペレットを各家庭に運ぶタンクローリーまで使っている。石油よりも燃料効率のよいペレットボイラー、ペレット製造装置の販売が増加しており、それが雇用の拡大につながっている。今やバイオマス燃料は30%になりつつある。いわば、広域のエネルギー(国内)地産地消ということになろうか。建築材料として、強力な集成材が開発され、9階建てのビルが鉄筋コンクリートでなく、木材で建築されるようになっているという。国内でも集成材による高層ビルができると面白いことが起こるだろう。ただし、集成材は材木の50%しか使用出来ず、あとは廃材になるという批判もある。

「中間総括」では、水・食料・燃料はお金でなくて地域で自給した方が安心でき、また過疎の地方ほど可能である(井戸・自家菜園・薪集め柴刈り、それらの譲り合い)とか。

 都市サイドからこの本に対して批判があるようだが、都市は地方の過疎化に対して何もしていない。人口が半減とか3分の1になった山村過疎地の里山と、そこでの暮らしが活性化するヒントを挙げているのであって、都市だって非正規雇用が増大しているし子育てしにくいので出生率が下がっている。食料・水・燃料・住居とお金ばかりかかる都市が暮らしやすいとばかりは言えないだろうし。

 山口県周防大島。ミカンの産地で脱サラでジャム屋を開き、材料の柑橘キロ100円を農家に払い、22人の雇用まで広げた例、養蜂を始めた人、レストランを開いた人等々。町役場もチャレンジショップを用意し、月1万円で2,3坪のスペースを貸し出して販売の便宜を図っている。
 島根県の山間の休耕地に乳牛を放牧して、日替わりに味の違うミルクを市販の5倍の価格で販売している例。休耕地で自分たちで作った野菜をイタリアンレストランで調理して集客に成功した例。ホンモロコ(淡水魚)を休耕水田で育てるのに50人の農家が参加した例。まだまだ里山の元気な例が挙げられているが、書ききれない。

 これらの、言わば細々とした地域の営みがどれほど巨大なマネー資本主義に変わりうるのか。可能だと著者はデータを提示して強調するのだが、そこまで考えて評価する必要はないのではないだろうか。今必要なことは人口減が続く過疎地が元気になる処方箋や道筋なのだから。
 さらに言うなら、グローバル資本主義の行方に何があるのか。弱者(若者・老人・地方・低開発国など)は更に落とされ、強者(大企業・都市・先進国など)のみが潤う構造が拡大するのではないだろうか。TPPも結局はアメリカの市場拡大が目的に過ぎない。日本に「軽自動車の規格が貿易障壁だ」と言うくらいだ。それはともかくとして、まず足元の、たとえば里山でお金やエネルギーを循環させて、マネー資本主義に取り込まれないようにしよう(適当に利用するのはいいとして)という試みは評価できると思う。(2014/3/10)

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