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人と自然コミュの内山節「文明の災禍」

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内山節(うちやまたかし) 「文明の災禍」 新潮新書 ¥680 2011・9刊

 この本を著者が書き終えたのは2011年7月末であり、同年の3.11の地震、津波、そしてフクシマ第一原発の爆破から4ヶ月余りしか経過していないので、「文明の災禍」=原発事故であるが、まもなく事故後3年を過ぎようとしているのに、未だに事故の全貌も不明であり、放射能汚染地域がどうなるのかも予測が付かない。地域によっては今後数十年間は居住禁止区域であって、無人の町となる可能性が高い。というよりも誰にもその先がわからない。私としては、この文明の災禍にどのように向かえ合えばよいのかのヒントを得たかったが、著作には無力感虚脱感だけが漂い、そこまでの記述は無かったように思う。

 さらには、この本が出るのが早すぎた。「文明の災禍」とは、原発事故だけではないだろう。2013年11月5.6日にフィリピンを襲った台風30号は風速60メートル、瞬間で90メートル級で死者6千人、行方不明1800人に達した(東日本大震災では死者行方不明者1万8千人)。地球温暖化が進むと台風・豪雨、夏の日照りなどが激しく大きくなることが予測されている。この台風もまた「文明の災禍」ではないのか、と私は思うわけだ。また、海水温の上昇により、日本近海で台風が発生するようになって、その進路がかなり東に変わりつつある。九州や高知でなくて、伊勢湾や遠州灘に上陸することが多くなり、時に台風が海上を東から西に進むことも起こるようになった。何度も竜巻が発生した。40℃超の夏の灼熱もここ数年珍しいことではなくなった。地球温暖化もまた「文明の災禍」なのではないか。このような現代文明とは距離を置く、暮らしから遠ざけるしか手段が無い。原発とは共存などありえない。低線量被曝や放射性物質の摂取量をできるだけ減らそうとすることが過剰反応だとは言えないとも。私の知人は家族で和歌山からバリ島へ移住した。沖縄に移住した有名人も何人かいる。今ではその判断が賢明に近いとさえ思える。
 
 また、現代人は巨大な重層的なシステムネットに取り込まれていると著者は言う。電気・情報通信・流通・交通・生産システムの広がりによって、天災が地域的に発生しても、その被害は国内どころか、世界中に及ぶようになった。

 一方、地震や津波は自然がもたらした天災であって、自然は恵みも与えてくれるが、時にこのような大被害を発生させることもあるし、それはある程度住民は事前にも心構えがあるので、やがては復興へと向かう姿勢が現れる。東北の漁民が船も漁具も不足ながらも回復への作業をいち早く始めていた。著者は、それは漁民が知性で判断したのでなく、自然と一体化した風土での作業を彼らの身体が求めたからだと言う。人の仕事やあらゆる営みが疎外されることがない風土の中でならば、そのような巨大システムにも取り込まれることもない。自然は海であったり山であったり、野原であったりする。自然と人との相互の働きかけの時間的蓄積を風土と著者は呼んでいる。だから、復興とは風土の再建に他ならないと言う。
 また、巨大システムや現代文明の真中に私たちは生きているわけだが、すべてを奪われたわけでなく、現代人の中にはずっと歴史的に受け継がれた精神・文化や発想・価値観が生き残っている。明治以来の欧米個人自由主義思想と、そこからの経済至上主義から脱する足がかりが、風土の中ではぐくんでいる、そのような精神だと、著者は言いたいようだ。

最初に書いたように、多分著者は原発事故への、もう少し鮮明な対処方法をしばらく後に出してくれるのではないかと思うので、それを期待したい。

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