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人と自然コミュの「近代日本の誕生」

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イアン・ブルマ「近代日本の誕生」ランダムハウス講談社 \1800

 例えば、家族の一員であるから家族のことは全部なんでもわかっているかというと、必ずしもそうでなくて、外部の人の方が詳しいこともあるだろう。歴史についてもそれが言える。
 外国人による近代日本史の記述の本。幕末は黒船渡来から100年間の国内史で、明治大正昭和そして平成までの概観、最近では田中・中曽根・小泉政権まで。歴史上の主な人物がほとんど登場している。
 読もうという気になったのは、どのような経過をたどって、あの戦争に突入したのかを知りたいと思ったからだが、なかなか簡単ではない。
 ただ、明治以来の富国強兵・徴兵制などにより少しずつ戦争への道を進んだようである。どこの国にもあるのかもしれないが、日本民族優越主義とアジア指導・解放という麗句の裏にあるのは帝国主義的アジア覇権すなわち植民地主義に他ならない。自国民優越主義というのは日本だけではなかった。欧米列強がアジア・アフリカ・南米へ進出し、植民地を広げ、日米は後発組でもあって、最後の空白地帯が中国・東南アジアだったということだろう。だから、どの先進国でも植民地化に手を汚しているはずだ。欧米にはこれへの反省がどれほどあるのか。
 天皇も実際に統帥権を行使したことはなかったようだ。政治家の決断の隠れ蓑にされていたのだが、それでも「戦争責任」は免れない。日本民族の優位性は結局は天皇制に収斂されて利用されたようだ。2・26や5・15事件は節目だったが、大きく軌道修正できなかった。大陸での軍の暴走をどこも止めることができない。陸軍大将や海軍大将が閣僚に入り、事実上軍部が戦争への国政の方向を決めたのだ。
 民主主義や自由主義の芽生えは明治大正戦前昭和にもあったが、国政に影響を与えるほどの広がりも力も結局持てなかったし、もっと言えば政治家も民主化を嫌ったのだ。
 坂本龍馬、板垣退助、大杉栄、小林多喜二、浅沼稲次郎そして5・15と2・26。この系図はテロに倒れた自由主義(社会主義)者の系図で、テロリストは軍人か右翼である。国家主義者である。根は深い。
 こうして真の意味の民主制はマッカーサー連合軍司令官による憲法公布からしか始まらなかったというわけだから、占領は善政というべきだ。
 安保条約改定も本来は不平等性の改革だったが、当時はそのようには受け取られず、米ソ冷戦に巻き込まれるか、どちらに着くかが争点というイデオロギーが濃い国際情勢の反映した右左の問題だったことが今ならわかる。
 日本人は12歳といったのはマ司令官だったか。今でもこれはあてはまるのではないか、と思ってしまった。靖国、防衛省、教育基本法改正(愛国心)、そして憲法改正・・・と続くと、明治以来、民主制を妨げてきた勢力の台頭を憂えないわけにはいかない。
 私自身がその中にいた政治状況をこうして50年100年振り返って見ると、近視眼的だった行為に反省させられる局面もあり、歴史的評価からはマイナス点だったことも多いと言わざるを得ない。ただし、国家主義者に荷担したことはないが。
 近代史を復習するには、とてもよい参考書だと思いました。

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