誰もが一度は眠れない夜を経験する。今の俺みたいに。なんとか眠ろうとするけど、眠気はどこかに行ってしまったらしい。あるのは疲労感だけ。
気を紛らわそうと映画でも観ようとしたが、何を観たいのかわからない。いつもならゲームでもしながら眠気を待つのだが、生憎今日クリアしてしまったばかりだ。
外の空気が吸いたくなって靴を履く。―雨。しとしとと降る雨。風邪をひくのも馬鹿馬鹿しいので、当たり前のように傘をさす。お気に入りの赤い蛇の目傘。車社会であまり傘をさすことがないので、少し不思議な感じだ。
ゆっくりと歩を進める。雨の音と自分の足音が世界を支配する。コンビニのつまらない明かりを通り過ぎ、ただ空を見ながら歩く。
ふと、闇の中で空に色があることに気付く。今もお気に入りの傘を濡らし続けるくせに、彼方では世界を照らし始めている。雨が頬を伝うのを感じた。少し大きめの傘を通り抜けて、雨が一筋の滴を大地に垂らす。言葉にならない何かを抱えながらただ歩く。
もうすぐ夜が明ける。そうしたら俺はあの白いシーツの上に横たわる。麻酔で意識を奪われ、『俺』という『物』にされ、ただ時を待つ。
どんなに手を伸ばそうと、身体の中に巣くうものは掴めない。ただ、歩く。それだけが、病に侵された自分に対しての小さな抵抗なのだ―。
気を紛らわそうと映画でも観ようとしたが、何を観たいのかわからない。いつもならゲームでもしながら眠気を待つのだが、生憎今日クリアしてしまったばかりだ。
外の空気が吸いたくなって靴を履く。―雨。しとしとと降る雨。風邪をひくのも馬鹿馬鹿しいので、当たり前のように傘をさす。お気に入りの赤い蛇の目傘。車社会であまり傘をさすことがないので、少し不思議な感じだ。
ゆっくりと歩を進める。雨の音と自分の足音が世界を支配する。コンビニのつまらない明かりを通り過ぎ、ただ空を見ながら歩く。
ふと、闇の中で空に色があることに気付く。今もお気に入りの傘を濡らし続けるくせに、彼方では世界を照らし始めている。雨が頬を伝うのを感じた。少し大きめの傘を通り抜けて、雨が一筋の滴を大地に垂らす。言葉にならない何かを抱えながらただ歩く。
もうすぐ夜が明ける。そうしたら俺はあの白いシーツの上に横たわる。麻酔で意識を奪われ、『俺』という『物』にされ、ただ時を待つ。
どんなに手を伸ばそうと、身体の中に巣くうものは掴めない。ただ、歩く。それだけが、病に侵された自分に対しての小さな抵抗なのだ―。
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