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あいだーぬんリレー小説コミュの桜の塚

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 坂口安吾は言っていた。
「桜の下には死体が埋まっている」
 ゆえに桜は妖艶に紅く、紅く色づく。不思議なほどに美しい花を咲かせる。まるで、血の赤が人の心を奪い取るかのように。
 その日は4月には相応しくない曇天。
 刺すような寒さが季節を数ヶ月戻したのかと勘違いさせるようなそんな日だった。
 桜の木の下に、数人の男。
 2人の男は桜の樹の根元を一心不乱に掘り返していた。年は若い。まだ少年と呼んでも良いかもしれない。一人はパーカーとジーンズ。もう一人はジャージだろうか。どちらもラフで身軽な格好に身を包み、それにあった重労働にいそしんでいる。
 残る一人は中年の男。短く刈り込んだ髪がどこか迫力を醸し出す。着込んだよれよれのワイシャツが銜えタバコと相まってどこか不健康そうでもあった。

「くそ!!」
 パーカーの少年が悪態をつく。
「何で、こんな目にあわなきゃならねえんだよ!!」
「…何でって…」
 気弱そうにジャージの少年がつぶやいた。
 空はますます暗くなる。桜はますます明るさを増す。
「あぁ、分かってるよ!!俺たちの所為だ。そんなのは分かってんだよ!!」
 怒りに任せて掘り返した土が中年男の足元に僅かにかかる。しかし、男は眉一つ動かさずに少年たちの動きをじっと見ていた。
「…俺たちって…俺もかよ…」
 ジャージの少年のつぶやきにパーカーの少年は土を掘る手を止めた。
「あぁあぁ、じゃあ何だ?俺だけが悪いって言うのか!!えぇぇぇ!!!」
 パーカーの少年の怒鳴り声はジャージの少年に変化をもたらすのには十分だった。
「違うって言うのか!!最終的にはお前が手加減もしねえで滅茶苦茶に叩きまくるからこういう事になったんだろうが!!違うのか!!あぁぁぁ!!お前が殺したんだろうがよ!!!」
「ふざけんなよ!!んじゃ、元々こんなとこに連れて来たのはどこのどいつだよ!!どっから連れて来たか知んねえけどよ!!お前だって散々好き勝手やって興味なくなったらポイだろうが!!」
「っは!!俺はてめえほどのことはしてねえよ!!大体よぉ、どこをどう考えたら…」
「…いい加減にしろ…」
 ヒートアップしていた少年たちの言葉は中年男の静かな、それでいて力強い一言で急速にしぼんで行った。
「そんなのはどうでも良いだろ。重要なのは死んだ…いいや、殺したって事実だけだ…分かったらさっさと穴を掘れ」
 中年男の言葉にジャージの少年は黙りこくり、パーカーの少年はなにやらぶつぶつ言いながらも穴掘りを再開した。
 そのとき、空から小さな雨粒が地上へと落ちてきた。
 冷たい雨粒は『死』そのものを悲しむようにも、その理由を作った男たちを道連れにしようとしているようにも感じられた。
「…ついてねえ…」
 パーカーの少年がつぶやく。
 その言葉を聞いた中年をとこはゆっくりとパーカーの少年へと近づいて行った。
「お前はまだそんなことを言う元気があるらしいな?」
 表情にこそ出なかったが中年男はおそらく先ほどの会話に苛立っていたのだろう。冷たい雨が降り始めた仄かに赤い桜の木の下で中年男はパーカーの少年に向けて大きく手を上げた。
 その瞬間にジャージの少年の声が響く。










「やめてよ、お父さん!!」
 中年男…父親の手がぴたりと止まった。
「お兄ちゃんを打たないで…本当は…俺もお兄ちゃんも分かってるんだよ…いけないことしたって…でも、でも」
 父親はパーカーの少年…兄弟の兄に目を向けた。
 兄は泣いていた。
「お、お、俺、金魚…珍しくて…水槽叩いてたら…死んじゃって…悲しくて…でも、でも…」
「俺もさ…小学校から貰って来たのはよかったけど…めんどくさくて餌あげない日とかあったし…本当に反省してんだ…」
 父親は大きくため息をついた。
「だから言っただろ?生き物は繊細だ。死んだら帰ってこない。だから大切に飼えって」
「「うん」」
 二人の声が重なる。
「じゃあ、どうするんだ?」
 二人は無言のまま小さい金魚に対してはずいぶん大きく掘った穴に優しい手つきで金魚を横たえた。
 そしてゆっくりと土をかけながら言う。
「金魚さん、ごめんなさい」
「次は絶対こんなことはしません。許してください」
 心から拝む。
 気がつけば雨は一時のものだったらしく、すでに雲間から光すらさしている。
「それじゃあ、戻るか」
 父親の言葉に兄弟は小さくうなずいた。


 桜の下には死体が埋まっている。
 彼らの家の場合。
 金魚の。

コメント(9)

 書けるときにさっさと書いてしまおうと思いさっさと書きました。こんなんではいかが?眠い。
出だしがほぼ同じの話を考えてました……w
まぁ、やはり桜と言えば基本だろ。坂口安吾。
誰かは使うと思っていた桜の木=死体の方程式
…お前だったか
誰かやると思って案からはずしといてよかった……
いいだろ!!他に思い付かなかったんだから!!(照れ
あぁ、それ真っ先に思いついたぴかぴか(新しい)
素材としていろいろ変化だせるもんねー

オチが可愛い(笑)

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