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あいだーぬんリレー小説コミュの帰納の昨日は既納済み(個)

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 あたしは馬鹿だ。
 自分でよくそう思うんだけれど、他人にもそう言われることがある。道端で騒いでいるときなんか、そのへんのオバサンからそういう目で見られるし、電車の中で電話してると、ハゲがじろじろ迷惑そうに見てくるわけ。
 けどね、あたしは好きで馬鹿やってるわけじゃないの。そこんところ、理解して欲しい。
 でも、流石に今回は自分のこと、滅茶苦茶馬鹿なヤツだと思った。どうしてあたしはこんなに馬鹿なんだろうか。いったい誰がこんなあたしを生んだわけ?
 あたしの部屋は和室っぽい感じで、障子があったりするんだけど、むかつくときはいつもティッシュの箱を投げつけてみんの。ばこんっていい音がして、障子が破けて穴が開く。ああ、すっきり爽快。でも、あとで張り替えるのはあたし。こっぴどく親に叱られるわけ。ガミガミ。馬鹿なあたし。
 あたしがなんでこんなにむかついてて、自分のことを馬鹿だなって思ってるかというと、とくに理由はなかったりするの。いっつもあたし、苛々してっから。
 ウソウソ。ほんとは、ちょっとしたことがあったわけ。
 愛しの彼が死んじゃったんだ。
 ああ、ヤダヤダ、そんな同情っぽい視線向けないでくれる? 超偽善。あんたには関係ないことっしょ。同情なんかいいからさ、まあ黙ってあたしの話を聞いてくれって感じで。おごってくれるならなおよしね。同情するならカネをくれってやつ。
 あのね、ほんと言うと、あんまり悲しくないんだ。悲しくないって感じることに、苛々してるのかもしんないけどね。彼が死んじゃったのに悲しくないって思う、非情なあたし。ほら、馬鹿なヤツだって思わない?
 嫌いだったのかって? そんな、愛しいに決まってるじゃん。毎日毎日、こう、ぎゅうって抱きしめちゃいたいくらいね。
 え? 年下なのかって? そりゃ、まあね。なに、その爆笑は。ひとの好みにケチつけないでくんないかな。ああ、無理して笑ってくれたんだ。ありがとね。でも、大丈夫、ぜんぜん平気、悲しくないんだ。
 どうして悲しくないのかなって考えるとね、ちょっとだけは悲しくなるんだ。あれだね、感情が止まっちゃったみたいな感じ。わかる? あたしのこの微妙な心の動き。乙女心? 笑わせないでよ。ああ、彼が死んじゃったっていうのに、笑っちゃうあたし。やっぱり馬鹿だね。
 たいして長いこと一緒にいなかったから、そんなに悲しくないのかもね。でもさ、期間なんて関係ないじゃん? やっぱり、大事なのはどれだけ想ってるかってコト。偉そうなことを語ってみるあたし。え? 大丈夫だって、何度も言わせんなっつーの。無理なんかしてないからさ。
 まあ、あれだね。そんなに強く想ってなかったってことなのかな。でもさ、やっぱりちょっとは傷ついてるんだよね、あたし。泣けるほど悲しくはないけど、やっぱり、ほら、こう、ぽっかりきちゃった感じ。クリスマスの夜に、出会い系サイトの勧誘メールが来たタイミングに似てるかな。え? わかんないの? ああ、むかつくな。どうせあたしはひとりぼっちだよ。
 でもね、いいヤツだったんだよね。おかげであたし、毎日がしあわせだったと思うんだ。具体的にしあわせって、なにを表してるのかよくわかんないけどさ。まあ、とにかく退屈じゃなかったわけ。だからね、彼が死んじゃったいま、これからあたし、しあわせじゃなくなっちゃうのかなーって考えると、そっちの方が不安で、悲しいんだよね。ひどいヤツだって思う?
 まあ、淋しいんだよね、ようするに。でもさあ、死んじゃった命は、もう戻ってこないんだよね。だから、取り戻せないのかな。もう、戻ってこないしあわせってやつなのかもしんないね。リセットボタンぽちって押して、戻ってきたらいいのにって、考えたことある? あたし、いまそんな気分なわけよ。 
 暖かいヤツでさ。側にいるとほっとしちゃうんだよね。なんだかさ、ベンキョーベンキョーばかりしてて馬鹿らしい日常の時間が、ふっと静かになって、安らぐ感じ。ほら、お風呂に入ってのんびりするみたいな感覚よ。この高等な心持ちがわかる?
 もちろん、四六時中一緒にいたわけじゃないけどさ、でも、気づけばあたしのところに来てくれる感じなわけ。いちいち時間と場所を決めて、待ち合わせなんてしなくたっていいのよ。そのへん、超気が楽でさ。あたしね、あの、ひとを待っている間の時間ってのが嫌いなわけ。とくに駅前とか、うじゃうじゃ混んでるところとかさ。時間過ぎて、三十分も立ってると、なんだかそわそわして、落ちつかないっしょ? まわりの視線とかも気になっちゃってさ……とにかく、そういうのがなくて楽なわけ。
 ……なんか、あれだね、話してたら、ちょっと悲しくなってきたかな。
 もう、会えないんだよね。ねえ、天国ってどこにあるのかな。神様ってさ、本当にいるのかな。いるんなら、彼、神様のところで、しあわせに暮らしてるのかな。
 ……やだな、そんな顔しないでって。大丈夫。大丈夫。うん、無理はしてるかもしんないけどね。でも、いつまでもうじうじしてらんないっしょ。ほら、試験も近いし。
 まあ、非情なヤツって思われてもいいよ。そう、あたし、泣けないんだもの。死んじゃったのに、もう会えないのに、泣けないんだ。
 人間ってさ、どうして泣くんだろうね。死んじゃったから、泣くのかな。死んじゃったら、どうして泣いちゃうのかな。よくわかんないよね。
 あたしさ、昔、おばあちゃんが死んじゃったときにね、ちっとも泣かなかったんだよね。ずーっとずーっと昔、あたしが鼻たれのがきんちょだった頃なんだけどさ。
 よく、おばあちゃんには本を読んでもらってたな。いまも悲しくないし、そんときも悲しくなかった。泣かなかったんだよね。
 子供は、誰かが死んじゃっても泣かないのかな。子供って非情なわけ? 大人になると、泣くようになるのかな。なんでだろうね、不思議だよね。
 まわりの人間が、みんな泣いてるからなのかな。人間って真似したがりやだもんね。だから大人は泣くのかも。あんた、すごい、正解かもね。
 でもさ、あたしはいまも泣けない。でも、悲しいんだ。泣こうと思えば、泣けるんだと思うよ。でもさ、それってよく考えたら、彼が死んじゃったから悲しいわけじゃなくて、ひとりぼっちになっちゃったあたしが淋しくて、悲しくて泣いちゃいそうなんだよね。彼のために泣けないわけよ。
 なに、複雑な顔してるけど。あたし、難しいこと言ってる? まあ、これでも国語は得意だかんね、四字熟語の暗記は任せて。
 でもさ、誰かのために泣くっていうのは、考えてみるとけっこう難しいんだよね。人間ってさ、結局自分のコト優先っしょ。自分が悲しいんだよね。自分が悲しいから泣いちゃうんだ。死んじゃった誰かのためを想って泣くわけじゃないのかも。
 やっぱり子供は純粋だから、だから泣かないのかもね。いまのガキはムカツクやつらばっかだけどさ。
 え、なに、難しい? 実を言うと、あたしもそろそろわけがわからなくなってきたわけ。勉強以外で難しいこと考えると、オーヴァーヒートしちゃうんだよね、アタマ。はい? 勉強でもヒートしてる? はいはい、仰る通りで。
 まあ、とにかく、あたしは彼のために泣くことができないわけ。死んじゃった彼が可哀想とか、そういうことで泣かなくて、ひとりになった淋しいあたしが可哀想って、そう感じちゃうんだ。ほら、非情っしょ?
 それでもってさ、今更、こんなことになるなら、もっと色々なことしてやればよかったって思うの。もっと優しくしてあげたら、とか思ったりさ。もっと一緒にご飯食べたかったな、とかさ。ほんと、今更だよね。こういうの、なんて言うんだっけ。後の祭り? 後悔先に立たず? 昔のひとはよく言ったもんだよね。ほんと、そのとおり。
 ね、今更こんなこと考えるなんて、あたし、超馬鹿っしょ。大馬鹿だよね。っていうかさ、どうして馬鹿っていう字、馬と鹿って書くのかな。え、どうでもいい? まあ、たしかにね。ちょっと気になっただけ。
 でも、ほんとうに、あたし、なにしてたのかな。なにをしてあげられたのかな。後悔ばっかりだよね。もう戻らないんだもんね。考えると、やっぱり悲しいよ。あたし、馬鹿だ。なんにもできなかったんだよ……。
 自分を責めるのはよくないって言ってもさ……。まあ、そうだよね。くよくよしてたって、しょうがないもんね。うん、彼も、そう思ってると思う。ありがとね。
 やっぱあんたに話してよかったかな。少しすっきりしたかもしれない。聞いて欲しかったんだよね。あたし、淋しかったからさ。なんにもできなかったなって考えて、馬鹿なやつって思って……。
 過ぎた時間は戻らないって? うん……まぁ、そうだね。いや、あんたにしてはいいこと言ったね。
 うん、まあ、こうやって考えてるなら、それでいいのかな。なにかしてあげたかったってのは、彼のことを想ってるってことになるかな?
 ありがと。そんなにくっきり頷かれちゃうと、こっちとしては嬉しい感じだね。ちょっと恥ずかしいな。
 そうだね。これから想っていけばいいのかもね。そうしたら、いつか彼のために泣けるようになるのかな。ああすればよかった、こうすればよかったって、そんなこと思ってるより、これからのこと、だよね。これから、彼のこと、大事に想っていく。絶対忘れないようにすっからさ。
 ありがと。
 うん、じゃあ、またね。バイバイ。付き合ってくれてサンクス。
 ……。
 行っちゃった……。本当はもうちょっと話したかったけれど、しかたない。
 でも、いくらか気が楽になったし、あたしも、帰ろうかな。
 暗い道っていうのは、ちょっと怖い。ひっそりと静まりかえった、淋しい感覚。でも、あたしはここを歩くのが大好き。
 雑居ビルが立ち並ぶ小さな通りで、ふと立ち止まる。周囲は物静か。ぱちぱちと音を立てる街灯が、やけに五月蝿い感じ。
 耳を澄ましてみた。
 でも、彼の声は聞こえない。彼は、もう死んじゃったからね。
 にゃあって、もう鳴いてくれないもの。
 ここは彼と、はじめて出会った通り。
 あたしが彼を拾った場所。
 でも耳を澄ましたら、また、にゃあーって声が聞こえてきそう。
 もう一度、猫飼おうかな。
 彼は白黒のブチだったから……今度は黒猫がいいかも。
 そしたら、ね。今度は、後悔しないように、愛してあげるの。

コメント(1)

意外と深いかも…とか思ってたら猫かいexclamation

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