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創作ストーリー『流転恐怖』コミュの最終話 『ミミズバーガー』

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梅菌マン「ぐわあぁぁぁーーー!」?

 突然、苦痛に溢れる絶叫が響き渡った。その叫びの尋常なさに焦り、吹き荒れるガスの中、目を向ければ、そこには苦悶の表情を浮かべながら両膝から崩れ落ちる梅菌マンの姿があった。?

梅菌マン「か、体が…… や、焼け……よう……だ! がはあぁぁぁぁ!」?

 激しく苦悶の声をあげ、手を激しく振り回すも、白いガスを振り払えるはずもない。全身にまとわりつくガスに敗れ、梅菌マンは床に倒れこむ。?

メリー「え? え? な、なな何が起きてるの?!」?

 戸惑うメリーを横目に叫び声は至るところから絶え間なく続くこととなる。?

口裂け女「いやあぁーーー! か、顔が! 顔がぁー!」?

ヤ無茶「ぐ、ぐわぁーーー!」?

 口裂け女はどういうわけか顔面を押さえて苦悶の声をあげ、ヤ無茶は既にその生命を散らしていた。おかしなところは全ての参加者が苦しんでいるわけではなく、一部だけということ。まるでこの霧状のなにかが選別しているかのような……?

メリー「ど、どうしよ? 私もなにかなっちゃうの? で、でもサプリメントさんが平気みたいだから、私が何かなるわけないと思うけど。あうぅ、やっぱり怖い……」?

GORO「さりげなく僕をものさしに使わないでもらえるかい? それはともかく、これはタイプライター君には影響はないから安心するといい」?

メリー「な、なんでそんなこと言えるんですか? サプリメントさんのくせに」?

GORO「これはただの消毒液だよ。って、なんか僕に対する態度がどんどんと悪くなってないかい?!」?

メリー「消毒薬?」?

 彼女は部屋中に充満する霧の匂いを嗅いでみる。鼻につくツンとした匂い。病院内に漂う消毒薬の匂いとはやや違うが、確かにそれっぽいものだ。?

メリー「あ、本当だ。で、でも、ただの消毒薬でなんで苦しんで…… ま、まさか!」?

GORO「そうだよ」?

 何かに気づいた彼女の様子にGOROは小さく肯定の頷きを見せる。そして、梅菌マンへと向き直り、ビシッと指さして――?

GORO「彼は消毒薬で消毒されてしまったんだよ!」?

メリー「……名前だけじゃなく、本当にそんな人だったんだね」?

 消毒された梅菌マンに掘羅マンがすがりつく。?

掘羅マン「あ、兄貴……。だから、ファーストフード店なんてやめようっていったじゃないですか!」?

梅菌マン「ごふっ! わ、分かっていても…… がはっ! 一度は日の当たる世界で…… 日の当たるハッテン場にでてみたいじゃねぇか……」?

メリー「ファーストフード店はそんなところじゃないよ! 誤解与えるようなこと言わないでよ!」?

掘羅マン「やっぱり俺達は男子トイレの清掃のバイトがあってるんスよ……! あそこなら清掃中の看板さえだせば、いつでもハッテン場に出来るんですからね」?

メリー「ダメでしょ! ちゃんと掃除しなくちゃダメでしょ! そもそもこの人たち、働く気あるの?!」?

梅菌マン「俺は…… もう駄目だ。高く…… 高く飛びすぎちまった……。太陽に近づき過ぎて…… 光の当たるハッテン場を目指しすぎて…… がはっ!」?

掘羅マン「あ、兄貴……? 兄貴ー!」?

メリー「格好いい感じにまとめようとしないでよ! 言ってること最低なんだけど?!」?

 梅菌マンはもう見えない目で光を仰ぎ続け、届くことのない手を伸ばし続け…… その願いを叶えることもできずに命の灯し火を潰えさせるのだった。哀れな最期を看取る掘羅マンに、仲間であるはずの梅菌仙人は薄ら笑いを浮かべる。?

梅菌仙人「ふぉっ、ふぉっ。未熟者めが。この程度の消毒液で敗れるとは情けない」?

掘羅マン「ば、梅菌仙人! あなたに感染させられた男が散っていったというのに、かける言葉はそれだけだというんですかい?」?

梅菌仙人「それがどうしたというのじゃ?」?

掘羅マン「貴様ー!」?

 夜の貴公子の異名を持つ掘羅マンであったが、兄貴と慕う男を罵倒されて、怒りを抑えることなどできなかった。クールな雰囲気をかなぐり捨てて、掘羅マンは梅菌仙人へと挑むのであった。敵うことなどないと知りながら……。?

メリー「……あうぅ。なんか、頭痛くなってきたんだけど」?

GORO「君も消毒薬にやられたのかい?」?

メリー「そんなわけないじゃないですか! 消毒薬にやられる都市伝説なんていませんから! 頭痛くなったのはこの訳のわからない展開についていけないだけで……」?

GORO「この熱い展開は採用試験初心者のタイプライター君には早すぎたかな。僕なんかは、いくつもの採用試験会場を渡り歩いているから、もう見慣れたけどね」?

メリー「自慢げに言ってるけど、それって幾つもの採用試験に落ちたってことですよね?」?

GORO「ぐはぁっ!」?

 これ以上、おかしなことを言わないようにさりげなくクリティカルヒットを入れておくメリーであった。?

メリー「梅菌マンは消毒薬が原因として、口裂け女さんは……」?

口裂け女「いやぁー! け、化粧が落ちるー! このままじゃ、顔が、顔がー!」?

モブ1「ぎやぁぁぁぁぁぁ!」?

モブ2「ひえぇぇぇぇぇぇ!」?

モブ3「おえぇぇぇぇぇぇ!」?

 丁度、噴出口の近くにいた口裂け女は、常人の何倍もの消毒薬を浴びてしまっていた。結果、分厚い化粧は湿り気を帯びて溶け出してしまったのだ。ただでさえ凶器ともいえる口裂け女の顔は、崩れた化粧によって見るものを狂気へと変貌させるのに十分なものであった。?

メリー「みなかったことにしよっと……」?

 彼女はバタバタと倒れてゆく参加者たちの姿から、素早く目を逸らすのだった。彼女にとっての幸運は口裂け女が背中を向けていたことと、他の参加者が犠牲になってくれたことで状況を察することができたことだろう。?

 消毒薬の散布は数分ほどで収まり、続けて次のステージへの扉が開く。?

ラジオ『……逃走を続ける容疑者たちは人質になっていた老人を置き去りにしてなおも逃走を続けております。最新の情報ではつくば市内で行方をくらましたとの情報も入っており、都市伝説認定委員会は当該地域の都市伝説の調査を重点的に行うこととし……』?

 ラジオが流れる中、一行は数々の屍を踏み越えて前へと進む。そこには一切の情も踏み込む余地などない。他者に気を許せば、今度は自分がそこに横たわることになるのだから……。?

邪夢「ひい、ふう、みい……。まさか、予選でこれだけの人数が脱落するとは。まったく、年甲斐もなく心が踊ってしまうよ」?

拉麺男「漢は黙って残酷ラーメン! 闘将、拉麺男!」?

メリー「私、このバイトに採用されてお給料が出たら、スペシャルスイートデンジャラスウルトライチゴショートケーキをホールで買うんだ……。本当はワンランクしたのスペシャルスイートウルトライチゴショートケーキのつもりだったけど、自分へのご褒美だからいいよね? ふふ、ははは……」?

GORO「もう採用後のことを考えるのかい? それは時期尚早ってやつだよ。この僕ですら就職が決まってないのに、タイプライター君が先に就職するなんてあるわけないさ! あぁ、あるわけないよ!」?

暗犯マン「ついに出番が…… じゃなかった、就職先がはぁっ!」?

( ´∀`)「ちょっと頭のアンパン借りるぜ」?

華麗犯マン「るらら〜♪ ん? あ、暗犯マンがはぁっ!」?

色犯マン「ふ…… ふつくしい……!」?

ヤ無茶「ごふっ! こ、こんな茶番…… がはっ! か、肩慣らしにすらならぐほっ! ……な、ならねぇな!」?

ドナルド「うぅーっ! ふぅーっ!」?

 様々な思惑を乗せて、参加者たちは採用試験という名の更なる地獄へと進んでゆくのだった。?

 次の試験は様々な食材が並ぶ調理の部屋。ファーストフードの場合は既に下ごしらえが終わっており、『焼く』、『揚げる』、『パンズで挟む』などの特に難しいことはない。ゆえに最初の試験をクリアした者たちにとっては楽勝かと思われた。?

 だが、彼らを待ち受ける本当の試練は次の一言にあった……?

音声『では皆様、二人一組になってください』?

 その瞬間、場内は一気にざわめきと凍てついた空気に支配された。?

 当然である。彼らは競い合う敵同士でしかない。僅かの油断も、欠片程度の同情も命取りとなる相手と二人一組になどなれるだろうか。出来るわけがない。いや、そんなことより、そもそも見ず知らずの相手に安々と話しかけられるくらいなら、彼らはとっくに就職している。?

拉麺男「くっ……。戦いを挑むことなら声をかけられるというのに!」?

邪夢「ふ、二人一組だと……?! お、落ち着け! 落ち着くんだ、邪夢! そうだ、接客だ……。接客だと思えば……。あぁー、ダメだ! 接客はいつも罵多子にまかせっきりだった!」?

ヤ無茶「おーい! 空いてる奴いるなら組もうぜ! ……って、なんでみんなして目を逸らすんだよ!」?

 疑心。嫉妬。悪意。様々な感情が入り混じる場内で繰り広げられる無言の駆け引き。だが、リミットは刻一刻と近づいてゆく。焦燥感は判断を鈍らせ、しかし、それでも動くことができない。互いに声がかかるのを待つ、不毛な時間ばかりが過ぎてゆく。?

GORO「誰か、誰か、声をかけてくれ。仲間にしてくれたら、この知識をいかんなく発揮するから。お願いだから、誰か。本当にお願い!」?

 ぶつぶつと願いを口に出しながら、しかし自ら動くことのないGORO。このままでは彼の挑戦は終わってしまう。そのときだ。彼の目の前は白い少女が、救いの少女がすり抜けていったのは。?

メリー「うーん……」?

 メリーさん。彼女は知り合いである。全く知らない相手に話しかけるのは無理でも彼女とは普通に話ができる。確かに実力的にはどうしようもないほどに低いが、だがそれゆえにあぶれてもいる。このチャンスを逃すわけにはいかないと、GOROは一歩を踏み出す。?

GORO「やあやあ、メリー君! 君も一人……」?

メリー「あっ、ちょっと待って!」?

カレーパン頭の少女「きゅ?」?

 GOROが声をかけるのとほぼ同じタイミングでメリーはカレーパン頭の少女に声をかけた。とても柔らかな笑みで。?

メリー「あの、一緒に組みませんか?」?

カレーパン頭の少女「わ、わわ私と?」?

メリー「はい。やっぱり一緒に組むなら女の子同士がいいかなって。えへへ」?

カレーパン頭の少女「え、え、えぇ?! で、でも私、今、すごくカレー臭いですよ?!」?

メリー「そりゃあ、カレーパンなんかを被ってれば……」?

 なぜ、カレーパンを被っているのか。そこにはツッコミを入れない、空気の読めるメリーであった。?

カレーパン頭の少女「う、あ、うぅん……。ま、まあ、私ものっぴきならない事情がありますし、その…… お、女の子同士というのも、えと…… いいんじゃないですか?」?

 照れているのか頭を180度回転させ、ごにょごにょと呟く。珍妙な相手であるが、メリーは二人一組になることが出来たのだった。?

GORO「……タイプライター君。まさか君は……君は知らない人にでも気軽に話しかけられるタイプだったのかい?」?

 そして、GOROは二人一組になれなかったのだった……。?

 二人一組になれずに散っていった者たちの屍の上、更なる戦いが始まる。?

音声『では、これから皆様には検品と調理を行なって頂きます。お二人のうち、どちらかは精肉から焼いて加工、パンズに挟み包装までをして頂きます』?

メリー「ふむふむ。あれ? これだと一人で調理作業全部やらなくちゃならないよ。もう一人は何するの? 販売?」?

音声『もうお一人は精肉されてください』?

メリー「あぁ、お肉になるのかぁ。って、精肉?! 精肉されてくださいって何?」?

カレーパン頭の少女「噂に聞く都会流の弱肉強食ですか。しかし、まさか食肉にするとは…… 都会は想像以上に恐ろしいところだったんですね」?

メリー「ないよ?! そんな弱肉強食してないよ! カニバリズム全盛期じゃないよ!」?

カレーパン頭の少女「そうですか? でも、向こうでは既に殺る気の方が……」?

 カレーパン女が指差す先には、チェーンソーを構える道化師と調理の準備をしている拉麺男がいた。?

ドナルド「逝ってみよう!」?

拉麺男「漢は黙って残酷ラーメン! 闘将、拉麺男!」?

メリー「あの人達は違うよ! 色々と違うよ! そもそもなんでお肉用意してないの?」?

音声『当店ではミミズや三本足の鶏などを使うことでコスト削減を図っていました。しかし、思ったよりもミミズは高価で牛肉よりもコストがかかってしまったのです。以来、我社ではより安く手に入る採用試験参加者肉に切り替えております』?

メリー「安く手に入る云々じゃなくて、採用試験参加者肉って色々とおかしいでしょ?!」?

音声『採用試験参加者肉って色々とおいしい? 率直なご感想ありがとうございます。今後の開発に役立たせて頂きます』?

カレーパン女「……おいしいって、まさか」?

メリー「おいしいじゃなくて、お・か・し・い! 間違ってもおいしく頂いてません!」?

ヤ無茶「なんだっていいから、さっさとかかってきがはぁっ!」?

GORO「ぼ、僕はもう落ちているからって、ぎゃー!」?

 抗議の声も虚しく、既に戦いは始まっていた。まずはヤ無茶が、続いてGOROが生贄となる。肉にするのは組んだ相手となっているが、これを好機とライバルを潰しにきたのだ。?

メリー「ど、どうしよう。このままじゃ、お肉にされてカニバリズムがハンニバルで、うわー!」?

カレーパン頭の少女「しきたりも命令もまるで聞こうとしない。これだから都会は面倒なんですよ」?

メリー「都会だからとかいう問題じゃないからね! あと落ち着いている場合じゃないから!」?

 そうこうしている間にも戦いは激化の一途をたどる。それに応じて残るのは強者のみ。最初から戦う価値もないと放っておかれたメリーにいたってはそこにいるだけで生命にかかわるレベルに達していた。?

ドナルド「らん! らん! るー!」?

邪夢「ぐはぁっ!」?

メリー「ひぇぁ!」?

 ドナルドの投げた魔苦フライポテトは邪夢を串刺しにし、流れ弾がメリー脇の下に突き刺さる。?

梅菌仙人「ふぉっ、ふぉっ!  奥義! 真・夜羅無威架!」?

軍人カシマさん「アーッ! ……でも、これはこれで…… いいっ……ス…… ぐふっ!」?

メリー「きゃーっ!」?

 梅菌仙人はヤ無茶を空中へ投げ飛ばし、そこで捉えてからの落下の衝撃を応用したドリルによる貫通攻撃でヤ無茶を葬る。そのあまりあるエネルギーの衝撃で周囲とメリーはまるで隕石が落ちたかのようにふきとばされた。?

アンパン頭の青年「おいおい、この頭うめぇな」?

食パン頭の大男「…………」?

 アンパン男は自らの頭はちぎっては食べ、ちぎっては食べをしていた。?

メリー「って、自食してるよ?!」?

 混沌を極める会場に更なる混沌が訪れることになる。?

女カシマさん「すみません。こちらにスピリチュアルハザードの容疑者が逃げ込ん…… って、なんですか、これは?!」?

 訪れたのはカシマさん(女性ピアニスト)だ。胸には都市伝説認定委員会のバッジをつけており、採用面接ではなく公務で訪れたことがわかる。?

カレーパン頭の少女「げっ……」?

 なぜかカレーパン頭の少女はカレーパンの頭を深く被って、こそこそと目立たない素振りをする。?

女カシマさん「これは一体、何事ですか?!」?

メリー「え、えーと…… 採用面接にきたら、実はハンニバル博士がミミズバーガー作って、黙って残酷ハンバーガーになる沈黙する羊が私なんです!」?

女カシマさん「はい、よくわかりません。物事はもっと要点をわかりやすくまとめてください」?

メリー「えと、えと、だから…… って、今はそんなこと言ってる場合じゃなくて!」?

梅菌仙人「ふぉっ、ふぉっ! 娘っ子ごときがさっきからうるさいぞ」?

 わたわたと説明をするメリーを疎ましく思ったか、梅菌仙人は手近にあったヤ無茶を投げつける。すぐに物陰に隠れれば充分に避けられる程度のものだが、彼女は咄嗟に動けるほどの運動神経など持ち合わせていない。所詮、タイプライターと呼ばれる程度の儚い存在。頭をかかえてその場に丸くなるのだった。?

メリー「きゃー!」?

アンパン頭の青年「やれやれだぜ!」?

 アンパン頭の青年は彼女の頭上を飛び越えて、飛んでくるヤ無茶にドロップキックをぶちかます。?

ヤ無茶「ぐべぼがぁっ!」?

 あえなく撃沈するヤ無茶。彼女を助けたのはアンパン頭の青年……。いや、既にその頭は食べ尽くしており、見覚えのある顔がそこにあった。?

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