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創作ストーリー『流転恐怖』コミュの流転恐怖 第五十話 『深山奇譚 〜神山奇譚〜』

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 伝説の首なしライダー・デュラハンこと、出由良 判は、多くを語ることなく、マントを翻して俺と七人御先の間に割って入る。

 そして、俺に向けて一発、拳を叩き込むのであった。

(;´Д`)「モルスァ!」

 映画などで男同士が再会した時に遊びで軽く拳を交わすシーンとかあるが、そんなものじゃない。凄い勢いで吹き飛んだ俺の姿を見れば分かるだろう。

朱鞠「えー?! ちょ、ちょっと、仲間じゃなかったんですか?!」

( ´Д`)「うおぉぉぉ! 鋼鉄のガントレットで思い切り殴るって洒落にならんだろ! げふっ、七人御先にやられたのより致命傷っぽいのくらったぜ!」

朱鞠「致命傷と言ってる割に元気そうですね」

( ´∀`)「瀕死なのを悟られたらまずいだろ、色々と。それにしても……」

 俺は壊れた木刀を肩に乗せて、伴を睨み付ける。彼もまた俺へと強い気を放つ。他の奴らにとっては攻撃のチャンスだろうが、気迫に押されてか攻め入るどころか身動き一つとろうとしなかった。

 何も語らず、何も動かず、時間にすれば僅かな、けれど重く長く感じる沈黙。その果てに俺と伴は同時に動く。周囲の緊張が一気に高まり、そして……。

デュラハン「…………」

( ´∀`)b「ふっ……」

 俺と伴は互いにサムズアップを交わすのだった。

朱鞠「って、なんでそうなるんですか?! 今の間に何があったっていうんですか!」

( ´∀`)「え? いや、背中で語り合ってたんだけど分からなかったか?」

朱鞠「何を分かれと…… むしろ、背中で語り合うってなんですか」

( ´∀`)「やれやれ、これだから女の子は困るぜ」

デュラハン「…………」

朱鞠「だから、何を言ってるかわからないんですってば……。これだから都会者は困るんです。そもそも殴られたことも放置してるし」

( ´∀`)「えー? あれは一人で無茶してんじゃねぇ! って感じの意味がこめられてだな。でも、それを言うならお前も似たようなもんじゃねぇかって返しがあって、それからさ……」

朱鞠「いや、いいです。聞いても理解出来そうにないんで」

 漢同士の熱い会話を、彼女は片手をパタパタと振ってあっさりと拒否するのであった。取り付く暇もない拒絶を受けて判はショックを受けて地面に屈みこんでしまうのだった。

邪視「……へ、へへっ! とんだデカブツが来たかと思ったが、ただのでくの坊のようだな? 」

 俺達のやりとりを律儀に待っていた…… というより警戒していたらしき邪視は、判のショックを受けた姿に余裕をみせる。本質を見抜くことなく、相手を見下し強気に出るこいつらしい展開だ。

邪視「へへっ! 屈みこんでいる今のうちにやってしまえ!」

 邪視の号令のもと、七人御先は一斉に判へと襲いかかる。

朱鞠「あ、危ない! た、助けにいかなくて?!」

( ´∀`)「あー、問題ないさ」

 慌てふためく朱鞠は次の瞬間には違う意味で凍り付く。

 まさに大型車が衝突したかのような腹の底から響く音が闇に轟く。判の一撃が七人御先のうちの三体を地面へ叩き伏せたのだ。やられた三体は骨がいくつかちょっと変な曲がり方してたりして、ぐったりと動かなくなる。

朱鞠「う……うそ……」

( ´∀`)「あいつは俺の苦戦なんてなかったことにするくらいには強いからな」

 その実力を目の当たりにして、俺と判、ついでに地獄棺以外は一瞬で凍りつき、身動きを取れなくなる。

デュラハン「…………」

( ´∀`)「それじゃあそっちは任せた。俺達は邪視をぶちのめさせてもらうぜ」

 俺はそう告げて、朱鞠の首根っこを掴み、邪視へと折れた木刀を向ける。

朱鞠「え? ちょ、ちょっと! なに、勝手に話を進めてるんですか?!」

( ´∀`)「ふっ、何も言うな。分かっているさ」

朱鞠「いや、そうじゃなくて! そもそも何を分かってるっていうんですか。むしろ、こっちが分からないんですけど?!」

( ´∀`)「つーわけで、決着といこうか!」

朱鞠「ちょ、ちょっと! まだ話は終わわわわ!」

 折れた木刀を右手に朱鞠を左手に、俺は邪視へと突き進む。

邪視「生者ごときがふざけるな!」

 七人御先が判に足止めされ、先ほどから打って変わって勢いづいた俺達の姿に邪視の苛立ちは最高潮に達する。未だ鈍い動きを続ける地獄棺を押しのけ、奴は自ら前へとしゃしゃり出てきた。

邪視「救いなどない悍ましき視線をその身に刻め!」

 邪視の瞳が今までにないほど大きく見開かれる。真っ赤に充血した瞳からは次々と鮮血が吹き散ってゆく。それは破裂寸前の風船のような危うさに近いが、同時にそれだけの力を込めたということのあらわれだ。

 俺達の周囲にある今まで漠然としたイメージだった視線は、明確な存在となって姿を現す。無数の目が闇に浮かび、俺達を視ていた。

朱鞠「うっ、うわあぁぁぁぁ!」

( A )「ぐっ!」

 他者からの視線。今までよりも明確に物語る拒絶の視線。存在を否定し、嘲笑い、嫌悪し、悪意なき邪悪に溢れた眼差し。心をすり減らせ、抗う感情を失わせ、体から力が抜け落ちて鉛のように重くなる。

邪視「感じるだろう? そこに存在しているのに存在が許されない、絶対の孤独。何もないところでただ一人でいるよりも、集団の中においてただ一人であることの孤独。より深くその身に、心に突き刺さるだろう?! へはははははっ! そのまま、邪視に呑まれて心すらも壊してしまうがいい!」

( A )「やっぱり、この視線は慣れる気がしないぜ」

 そう吐き捨てて、俺は極度に疲労したときのように重い足で振り上げて力強く一歩を踏み込む。

邪視「まだ動けるのか……?」

( ´∀`)「当たり前だろ。たかが視線、されど視線。だが、やっぱりたかが視線なんだよ」

 朱鞠を引きずりながら、一歩、また一歩と踏み込んでゆく。踏み込む度に足はより力強く大地を踏みしめ、どんどんと歩速をあげてゆく。

邪視「あり得ない! なんで近づいてこれる! 俺に近づけば近づくほどに邪視の力は強くなるというのに!」

朱鞠「うぅっ! ぐっ!」

 邪視の力が強く作用する。それを物語るように朱鞠はより強く苦悶の声をあげる。それを見て邪視は自らの力がきちんと働いていることを判断し、弱いながらも薄ら笑いを続ける。

邪視「そ、そうだ! 天都の、そいつはこんなにも苦しんでいる! へ、へははっ! お前も本当は苦しいんだろ? 心が壊れてしまいそうなんだろ? ただ抗っているふりをしているだけなんだろ?!」

( A )「やれやれだぜ……」

 一歩、また一歩と歩み寄り、ついには邪視の目の前に立つ。俺が奴を見下ろし、奴は狼狽える感情を押し殺しながら俺を見上げる。

邪視「な、なんで…… なんでこの邪視に心を壊さないんだ、お前は!」

( ´∀`)「そんなの決まってるだろ」

 俺は思い切り背中を逸らし、そして奴の巨大な目玉にヘッドバッドと共に感情の全てを言葉にして叩きこむ

( A )「誰にどう見られるかじゃねぇ! 漢ならその背中で何を語るかだろうが!」

 思ったよりも弾力と硬さのある眼球から血しぶきが溢れる。元より破裂寸前の風船も同然のそれに更なる打撃が加わったのだ。いとも容易く邪悪なる目玉は崩れるのだった。

 それと時を同じくして、判の一撃が七人御先、最後の一人を大地へと沈めていた。物理と心霊、その両方からの極大のダメージを受けた御先はもう動くことなく地に伏す。

邪視「ぐがあぁぁぁっ!」

 打撃から破裂、崩壊……。それから僅かに遅れて、邪視の絶叫が溢れる。それが最後。悪意に満ちた視線は霧散してゆく。

邪視「ば、馬鹿な……! 邪視に耐えるなど…… ありは……」

( ´∀`)「有象無象にどんな視線を向けられようと知ったことかよ。俺は俺の背中をしっかりと見てくれる仲間がいるからな」

デュラハン「…………」

( ´∀`)b「ふっ、何もいうなって」

 俺と判は何も語らず、ただ熱いサムズアップを交わすのだった。

朱鞠「……仲……間……」

 邪視の呪縛から解放された朱鞠はまだどこか呆然としたまま、俺と判を見やる。

( ´∀`)「おう! 俺と判と、きゅーも入れておくぜ」

 そう告げて朱鞠の襟を引っ張って立たせる。

朱鞠「だ、誰がきゅーですか! そ、それに…… なんで私まで仲間なんて……!」

( ´∀`)「一緒に邪視を倒したじゃんか。それに背中で語りあえたし」

朱鞠「そんなわけのわからないもので語ってません! 邪視だって…… あなたが倒したわけですし……」

( ノ∀`)「いやいや、あのときお前が一緒に邪視の元までいってくれなかったらヤバかったんだよ」

朱鞠「いや、あれはあなたが勝手に連れて行っただけでしょうが……」

( ノ∀`)「いやぁ、謙遜するなって。あのとき、きゅーがいざとなったら盾にしてくれといったときは心強かったぜ? おかげであんなにも近づけたわけだし。正直、最後はきゅーと木刀、どっちで仕留めるか悩んだぜ。まあ、きゅーで仕留めたい心を必死に押し殺して、ヘッドバッドにしたわけだけどさ」

朱鞠「誰が盾にしてくれなんて言いましたか! おまけに言ってもない武器にまでしようとして! そもそも人を武器とか盾扱いしといて何が仲間ですか、まったく……」

 そういう彼女の瞳はこぼれそうなほどの涙で溢れていた。邪視の呪いに打ちひしがれた苦悶のゆえの涙ではない。もっと澄んだ、綺麗なものだ。

( ´∀`)「やれやれだぜ」

 俺は彼女の頭をくしゃくしゃと撫で、自然に俯き加減になるようにする。彼女は「何をするんですか!」と声をあげるが、手を振り払うこともせず、小さく体を震わせる。

 地面にはぽたぽたと涙がこぼれ落ちた。

邪視「ま……だ……だ!」

 淀んだ空気をざわめかせ、邪視が最後の悪意を振り絞りだす。

 俺達はすぐに邪視へと構える。既に奴は自分の力で内側から崩壊を始めていて、もう力を使えるようには見えない。

( ´∀`)「七人御先もいない、手下の猿も首なしライダーも戦意喪失。おまけにお前自身は既に虫の息。対してこっちは手傷を負っているとはいえど俺に朱鞠に、ほぼ無傷の判がいるんだぜ? これ以上、何をするつもりだよ?」

邪視「貴様らを喰らう! 貴様らの血も、肉も、絶望も、孤独も、全て喰らい尽くして、そして――」

 そのとき、巨大な影が奴を覆い隠す。影の主の姿を目の当たりにした俺達は驚愕の色をこぼし、奴はそれと共に自身を覆う影に何かを悟る。そうして邪視は初めて絶望の嗚咽を漏らす。

 地獄棺……。

 その扉を打ち抜いて現れた四本の腕は邪視の体を背後から捕らえて、抵抗する暇すら与えずに棺の中へと引きずり込んでしまった。

 戦いの場において恐怖したことなどいくらでもある。だが、今、目の前で起こったことはそれとは異質な恐怖だった。まさに心霊らしい身の毛もよだつ恐い話と同じ類の恐怖。

(; Д )「おいおい……」

デュラハン「…………」

朱鞠「うっ……」

 地獄棺は内側から何度も何度も扉を打ち付ける音をたて、そのたびに大きく震えた。しかし、厳重に締め付けられている鎖と注連縄が邪魔をして開くことはない。いや、もしかしたらそんなものより内側からの力のせいで開けられないのかも知れない。

 最後に大きく棺が震えたとき、邪視が引きずり込まれたときに出来た隙間から、冷たくむき出しの憎悪のこもった目がこちらを覗き、そして闇の奥へと消える。

 あまりの出来事に朱鞠は顔を逸らし、口に手を当てて吐き気を抑える。俺と判は異様な空気に呑まれまいと気持ちを強くもって、とにかく地獄棺の動きを見極め続けた。

 邪視を飲み込んだ地獄棺は静かに佇む。そのまま棺というものに成り下がったように。出来れば、このままずっと動かないで欲しいところだ。

???『お…… 終わりになど…… しな…… ヴオォアァァァッ!』

 もっとも、そんな都合よく終わってくれるはずもない。地獄棺の最奥から這い上がる叫びが深山を震わせる。

( ´∀`)「やれやれだぜ」

デュラハン「…………!」

 地獄棺からまずは血まみれになった巨大な目が姿を表す。顔といえるものは既にない。毛も皮膚も肉も骨すらも、次から次へと浮かんでは消える無数の血だらけの手に毟り取られる。たまにむしり取れないものがいるが邪視はそれをそのまま引きずってでてくる。腕はとても脆いようであっさりと引きちぎられ、そのたびに苦痛に満ちた嗚咽が溢れる。

 ホラーとグロは似て非なるもの。だけど、これは感性にも視覚にも嫌な意味で訴えてくる。

( ´Д`)「しつこいにも程があるだろう……」

朱鞠「既に肉体は滅び、妖力も朽ちているのに。本当に化物ですか……」

 極小の地獄から無理矢理、現世へと舞い戻った邪視は既に猿だった面影など欠片も残っていない。醜悪な膨れ上がった腐敗した肉塊にすぎなかった。

???『じ、じご、ごくがこのみをくら、らうが……! す、すべてくい、いつく、つくしてや、やる!』

 邪視の瞳はあちこちから黒い血を噴きだし、自らを包む赤を黒へと染めてゆく。黒い血は見る間に棺を浸してゆく。胸だったあたりからは不揃いの肋骨が六本ほどが蠢き、足の代わりに大地に突き刺さる。

 そうして、肉塊はかつて下半身だったものを、更なる異形となったそれを棺から引きずりだした。

???『ブヴォガァァァァァァ!!』

 それは膨れ上がったゼリー状の何か。無数の眼が考えうる、いやそれ以上の負の感情を語っていた。そのゼリーは完全に棺から出ることは叶わなかったか、ぶよぶよと揺れながら棺の中へと戻されそうに綱引きを続ける。

 ようやくあらわになったそれを形容するなら、巨大な単眼を持つ大蜘蛛だ。全体の大きさはざっと三メートル。蜘蛛もここまででかいと気持ち悪いってことはない。ただ単純に怖い。ついでに言えば、全身にあぶくのように浮かんでは消える人間の顔の方がよっぽど精神的にくるものがある。

朱鞠「地獄棺に眠る怨念を取り込み、無理矢理、現世に舞い戻りましたか……」

( ´Д`)「ガクブルするべきか、キモいと思うべきか迷うシチュエーションだな」

 口から大量の黒い血を吐き出しながら、邪視は断末魔、または産声をあげる。

???『ア゛ア゛ア゛ァァァァァッ!!』

 天を裂く絶叫と地を揺らす苦悶、それらを合わせたような咆哮。そこに自我のようなものはまるで感じ取れず、ただただ妄執の囚人を思わせた。

朱鞠「……全てを求め続ける欲望に呑まれて己を見失い、憎しみへの執着で己を失くしましたか……。同情の余地などありませんが哀れですね」

( A )「せめてもの情けだ、ここで引導を渡してやるよ!」

デュラハン「…………!」

 邪視がその単眼でこちらを睨む。それを合図に戦いが始まる。

 朱鞠はスピードで撹乱しながら肋骨の足を切りつけてゆく。機動力を奪われた邪視へ判が突撃をかまし奴の体を棺へと押し戻す。俺は折れた木刀を奴の単眼へと突き刺し、追い打ちをかける。そして、じいちゃんは木の影でエロ本を読む。

???『ヴアァァァァァアッァッ!』

 俺達の攻撃を受け、邪視の全身から赤黒い鮮血と淀んだ瘴気が溢れだす。もうほっておいても瓦解するだろう。

(´・ω・`)「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ! わしらの友情ぱわーの前に、貴様のような邪悪が勝てるとでも思ったか!」

( ´∀`)「ちょっと待て、そこの邪悪。なに、さりげなく復活してるんだよ。つーか、じいちゃんはエロ本しか読んでないだろ」

(´・ω・`)「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。お前も読むか?」

( ´∀`)「んなもん読まねぇで空気読め!」

朱鞠「なんであれ、所詮は妄執の残り香。見かけはともかく力はもう残ってないみたいですね。このまま、一気に……」

 ぐらり、と大気が震えた。地面がぐらりとするのはあるが、大気がそう震えるなんて奇妙な感覚だった。もっとも、これはただの予兆にすぎない。

デュラハン「…………!」

( A )「なっ!」

(´・ω・`)「ふぉっ?」

 ふと足元にむず痒さにも似た違和感を感じれば、いつのまにか蜘蛛のものらしき糸の束が絡み付いていた。俺だけじゃない、みんなの足にも絡みついている。

( ´Д`)「いつの間に……」

朱鞠「これは…… しまった、縁を結ばれた!」

( ´Д`)「縁?」

???『ア゛ア゛ア゛ァァァァァッ!!』

 大蜘蛛の再びの咆哮。以前と同じく様々な苦しみに彩られた聞くに堪えない絶叫。そこに僅かに歓喜が混じったような気がするのは気のせいだろうか。

 俺と判は身構え、大蜘蛛の次の行動を警戒する。だが、あれほどの絶叫をしながら、蜘蛛はなんら攻撃をする気配はない。いや……

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