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創作ストーリー『流転恐怖』コミュの流転恐怖 第四十一話 『学校の七不思議 〜神隠しの体育館〜』

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GORO「今度の心霊特番の調査を手伝ってくれないかい?」

 それは俺の心霊関係の先輩というべきGOROさんからの電話だった。暇だったのとバイト料もはずむという、よくある心霊体験談にありがちな理由で俺は二つ返事で了承してしまうのだったが……

( ´∀`)「だが、それは大きな過ちであったことはいうまでもあるまい!」

 今は真夜中、それも人も車も獣も通らない雑木林の中で俺は怒りのままに叫び声をあげるのだった。

 GOROさんに連れてこられたのは電車とバスを乗り継いで、更に車でいけない場所を歩きとおして気づけば数時間、早朝に出発して深夜に現地入りするような辺境だった。

 空に雲はほとんどないが周りの木々に月や星の光が遮られ、辺りはまさに真の闇を思わせる。人も車も通らないため、人工の光も自分たちの用意したものしかない。労働環境に問題ありすぎだろう。

 怒りの限界に達した叫びを耳にして、近くで機材の調整をしていたGOROさんは情けない笑顔でなだめに入ってきた。

GORO「いや、ごめんごめん。ちゃんとバイト代ははずむからさ」

( ´∀`)「おいおい、金で懐柔するつもりかい? 相変わらず悪い大人の見本じゃねぇか。思わず惚れちまいそうだぜ、腹の黒さが服装まで出てるところなんか痺れるぜ!」

GORO「えー? 別にこの背広が黒いのはそういう意味じゃないからさ。そもそも、僕はそんなに真っ黒な人間じゃないから」

( ´∀`)「謙遜しなくていいって。それより、まだ廃校舎に入らないのかい?」

 俺は雑木林の中にぽつんと建っている廃校舎に目を移す。GOROさんも額の汗を拭いながら、校舎の方を向く。

GORO「廃校舎……。数十年前に廃校になったとされる古びた校舎だ……。見て分かるほどに傷んでいるが、それでもかつての面影をしっかりと残している。窓ガラスが全部割られているとか、落書きがたくさんしてあるとか、そういうのもまるでなく、まるで今も学校として使われている、そんな雰囲気さえ感じる……」

( ´∀`)「誰に説明してるんだい?」

GORO「あぁ、ごめん。ついいつもの癖でね」

 今回の目的はこの廃校舎で語られていた七不思議の調査だ。七不思議のお決まりで深夜になるとあらわれるものがあるため、こうやって夜中に来たのだが、GOROさんはまだ入る様子がない。

GORO「機械の調整はもう終わるよ。でも、応援に呼んだ人がまだ来てないからね。入るとなるとその人が来てからかな」

( ´∀`)「応援? またスタッフに見捨てられたんじゃないのか?」

 俺は「応援」という言葉を聞いて思わず聞き返してしまう。研究の都合上、GOROさんはよくスタッフに見捨てられる。調査の最中にスタッフが逃げ出したり、GOROさんを忘れて帰ってしまったりすることも多いが、調査にいく前に見放されることもある。今回もまたそういった経緯で俺が呼ばれたのだと思ったが違うのだろうか。

 GOROさんはむしろ爽やかな笑顔で頷く。

GORO「まあ、見捨てられたわけだけどね。でも、応援はスタッフじゃないんだ。そのうち来ると思うから待っててよ」

( ´∀`)「やっぱり見捨てられたのか。しかも、それを爽やかに語る辺り、慣れの恐ろしさを感じるぜ」

 とはいえ、こんなところを調査するのだと知っているなら、スタッフは誰も来ないのも仕方ないだろう。そして、知らない奴は日給の高さに釣られ、ほいほいついてきてしまうというわけか。そんなことを思いながら、後ろにいる、ほいほい着いてきた子達の様子を見る。

メリー「あうぅ…… なんで私はこんなところにいるの?」

 やはりというか、メリーさんは泣きでしゃがみ込み、ぶつぶつと嘆いていた。

 こんな場所と時間にあまりに不釣合な銀髪の白い可愛らしい服の少女が道端にうずくまり泣いている…… それは見るものに恐怖を与えかねない光景だ。これだけだと都市伝説らしく恐怖を撒く存在になれたかのように思える。だが、残念ながら小動物のように震える彼女の姿はむしろ憐憫の情しか沸いてこない。

メル「……運命とはままならないもの…… 本に書いてあった」

 ぶつぶつと嘆いているメリーさんにフォローらしきものを入れるのは、こちらもTPOをわきまえない真っ黒でスマートなドレスにも似た服を着た金髪の少女メルである。強い霊気を吸収してしまうのを防ぐため、片目には眼帯をつけており、更にスカートはロングで二の腕まである手袋のせいで、暗闇では顔の欠けた生首が浮いているように見えてしまう。実際、メリーさんも勘違いして驚いたほどだ。

 GOROさんの邪魔をしても得にならないので、俺は二人をなだめることにした。

( ´∀`)「むしろ、本当になんで来たんだよ? メリーさんもソアラと一緒に家で待ってればよかったのに」

メリー「だ、だって…… ぐすっ…… 先輩が怖いところにいって少しは都市伝説の勉強してみたら? っていうから…… ひっく…… でも、でも、いきなりレベル99に送られるとは思ってなかったよ!」

( ´∀`)「いや、ここはレベル99まではいってないだろ? せいぜいレベル87ってとこじゃね?」

メリー「どっちでも充分怖いよ! まだレベル10…… ううん、レベル17くらい? の私には攻略不可能だよ!」

( ´∀`)「おいこら鯖読み過ぎだろ、レベル1。せめて深夜に一人で家の中を徘徊できるようになってからレベル2を名乗るんだな」

メリー「あうっ!」

 辛い現実を突きつけられたメリーさんは、頭を抱えてダメージを受けたような仕草をみせる。だが、まだHPは残っていたらしい、拗ねるような目付きで俺を見つめて、反撃に出る。

メリー「でもでも! あの家を夜中に徘徊なんてレベル1の所業じゃないもん! そもそも、あの家には都市伝説が三人もいるんだよ? レベル50くらいあってもおかしくないよ!」

( ´∀`)「そのうちの一人は自分だろうが!」

メリー「はうぅっ! で、でも他にも夜中に勝手に動く人形とか、髪が勝手に伸びる人形とか、夜中に釘を打つ音が聞こえる木刀とか、呪いのアイテムがいっぱいあるんだよ? どう考えてもレベル90くらいあってもおかしくないもん」

( ´∀`)「さっきよりレベルがあがってるぞ、おい。つか、うちを化け物屋敷扱いするなよ」

メリー「だってぇ……」

 メリーさんは瞳を潤ませながら、帽子の両端を掴んで帽子を目深に被る。本人は情けない姿を隠したいのだろうか? だが、少なくとも目元はまるで隠れておらず、むしろ視線で泣いてないと訴えてきてるので隠してる意味はない。

( ´∀`)「やれやれだぜ」

 痛いほどに鳴き続ける虫の声と、林の奥から聞こえるカコーン、カコーンとリズミカルに釘を打つ音を煩わしく思いながら、結局、俺たちは静かに最後の一人の到着を待つことにした。

 ちらちら携帯電話の時計を見て、五分、十分、十五分…… 午前一時半と表示していた時計もそろそろ午前二時をまわるかというところで、雑木林の奥から、ざっ、ざっと足音が聞こえてくる。

メリー「あうぅ! こ、こんな夜中に誰かきた?! ま、まさか…… お、お化け?」

( ´∀`)「いい加減、お化けを克服したらどうだい?」

 こんな時間にこんな場所に一般人がくるわけもない。おそらく、GOROさんの言っていた応援だろう。暗闇に目をこらせば、ボーリング玉が連なったような数珠を肩からかけた熊のように大きな坊主がやってきた。

MUDO「すまないな、遅くなってしまった」

 気さくに声をかけてくるその男は俺も知っている人物だった。GOROさんと同じく心霊四天王の一人に数えられ、かつてはカリスマ祈祷師としてTVにもよく出ていた拝み屋MUDOだ。その実力は対人、対霊ともに日本屈指といわれている。

GORO「お久しぶりです、MUDOさん。本日はよろしくお願いします」

MUDO「ああ。ところで…… ここに人外の者が混ざっているようだが?」

 そう言って、MUDOさんは俺たちの方をじろりと睨みつける。その視線が自分に向けられたのは分かったのだろう、真っ先にメリーさんは取り乱してしまう。

メリー「じ、人外?! あうぅ、やっぱりお化けがいるんだ〜! 見えても気付かないふりしてたけど、やっぱりいるんだ〜!」

メル「……幽霊の正体は枯れ尾花……」

メリー「そ、そうだよね? や、やっぱりお化けなんていないよね? きっと見間違いなんだよね?」

( ´∀`)「驚く理由が違うだろ! つーか、さりげなく自分の存在を否定するなよ」

メリー「ち、違うもん! 私は都市伝説だもん! お化けなんかじゃないもんね!」

GORO「彼女たちはお祓い対象じゃないですよ。ちゃんと都市伝説認定委員会から認定も受けてますから」

 メリーさんが方向が違うが取り乱してしまったので、代わりにGOROさんが説明に入った。MUDOさんは「ふむ」と顎をさすり、敵意を収める。

MUDO「だとすると、ここに呼んだ七不思議とは関係ないということか」

GORO「そうですよ。彼女たちは一応、手伝いで来てくれてるわけですから。さて、それじゃあ、全員が集まったことだし……。早速、今回の目的について話を進めようか」

 一先ず、全員が集まったので、これから何をするのかを話すことになった。

( ´∀`)「そうだな。それじゃあ今回の目的の七不思議はどんなのなんだい?」

GORO「そうだね。じゃあ、まずはこの学校の見取り図を見てもらえるかい」

 そう言ってGOROさんは手にしていたカバンから茶色がかった古い四つ折りの紙を取り出す。俺はそれを受け取って、メリーさんに懐中電灯で照らしてもらって広げる。随分と色あせてはいるが虫食いなどもなく、見取り図としては充分なものだ。

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