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創作ストーリー『流転恐怖』コミュの流転恐怖 第三十八話 『ブキミちゃん』

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俺は臆病な割に怖い話が好きで、暇さえあればそういった本ばかりを読んでいる。ただ、やはりそういった本ばかりを読んでいると、とんでもないものに悩まされることもあるわけで……

『えー、これは私の友人の話なんですけどね。彼が小学校のときにね、ブキミちゃんと呼ばれてた子がいたんですって。ブキミちゃん、もうこの名前聞いたときに嫌だなって思ったわけですよ。だって、ブキミちゃんですよ? 名前からして不気味じゃないですか。でね、実際に彼の話も怖いのなんのって。

そのブキミちゃんという女の子がね、道路に出てしまった仔犬を助けるんですよ。あぁ、ブキミちゃんって呼ばれてるのに凄い優しいんだな、いい子だなぁって思ってたら…… バァーーン!! て、ブキミちゃんは轢かれてしまったんですって……。そのときにね、その子のお気に入りのハーモニカ! それが排水口に落ちちゃったらしいんですよ……。

その子にとってそのハーモニカはとっても大事だったみたでね、今も探してるんですって……。でも、ブキミちゃんはもう死んじゃって体がないわけじゃないですか。だからね…… 来たそうですよ、ブキミちゃん……。

彼がね仕事に疲れてうとうと、うとうとしてたらね、急に…… ぎゅぅー!! って体を締め付けるような金縛りに襲われたんですって!

もうね、金縛りと怖さで汗がダラダラ、ダラダラ止まらないですよ。あぁ、どうしよ! どうしよ! ってしてると、ブキミちゃんが目の前にやってきてこういうんですよ。ハーモニカを探してこいっ……て。もうね怖いじゃないですか。だから、はい、はいぃ! って、何度も頷いてね、ハーモニカを探しにいくんですよ。ただね、そのハーモニカのある場所というのがね、また分かりにくいんですよ。

まず赤い門をとおって、次に左から2番目のドア。そこを通ったら今度は右から4番目の窓を通って、階段を登って左から3番目をおりると…… そこで終わりかと思ったら今度は7つの排水口があるんですよ?

七つ…… 七つ…… その中のどれだっけ? あれ、どれだっけ? パニックになりながらね、必死に思い出すんですよ! えーと、1番目? いや2番目? そうこうしてるうちにもブキミちゃんが『まだか……』、『まだか……』って迫ってくるんですよ! もう背中に手が届きそうってところで…… そうだ! 右から5番目、5番目にあるんだ! って、友達はかろうじて見つけ出すことができたそうですよ。』

( ´Д`)「おぉ、こいつはガチでガクブルだぜ! 12時までにトイレ済ませないと安心して眠れそうにないぜ。……ん? まだ続きがあるな」

『あ、あとね。この話…… 聞いた人の元にも出るんですって。そう、ブキミちゃんが。

私ね、それ聞いたら、もうサーッて音たてて血の気が引きましたよ。あぁ、最初に聞いた嫌な感じはこれだったんだって。その日からはもうね、ひたすらに道順を覚える作業ですよ! 台本とかなんとかぜぇーんぶ後回し! もうね、最初はどこで次はこうで最後はあれでって……。

おかげでブキミちゃんと遭遇してもなんとか生き残れたんですけどね……。その後はもうね、ブキミちゃんよりも怖いマネージャーに追い掛け回されましたよ。

みなさんもこの話を聞くときは気をつけたほうがいいですよ』

( ´Д`)「おいおいおい、気をつけるようなことなら先にいってくれよ。もう読んじまったじゃねぇか」

怖い話を読むことで一番恐ろしいもの。そう、呪い系の怖い話である。話を伝え聞いた者の元にも怪人が現れるというのに、それを示唆する文言は読み終わった頃に聞かされる。まことに恐ろしいトラップである。

( ´∀`)「やれやれ、またかよ。カシマさんの話を読んだ時はピザ屋の宅配よりも早く来たし、やっぱり今回もくるんだろうな。……仕方ない、今日はお祓い用に線香でも焚いておくか」

(´・ω・`)「墓参りのときに使い切ったからのう、線香なんて残ってないじゃろ。代わりに蚊取線香でも良いかの? 大自然に育まれた強靭な蚊さえもただでは済まさぬほど強力なやつじゃ。都会もんのお前ごときでは朝まで無事でいられるかわからんがの」

( ´∀`)「……あー、あのバルサン並に煙がでる奴か。一体、何で出来てるのか非常に気になるんだが……。去年、メリーさんがつけたときは1分とかからずKOされてたし、まあ、それでいいや」

なかなか物騒な蚊取り線香しかないようだが仕方ない。今日はそれを付けて寝ることにした。




・その夜

( ´∀`)「おぉ! ガリガリ君が当たりどころかフィーバーなんてのが出やがったぜ! もしかして、これ持っていったら1本どころか食い放題になるんじゃね?」

???「ふふっ…… げほっ、げほっ! ふふふ……! 残念ね、それはごほっ、ごほっ! ゆ、夢よ!」

( ´∀`)「誰だ?!」

生涯最大級ともいえるガリガリウェーブに乗った俺の喜びをあざ笑う少女の声が、頭上より響き渡る。すかさず見上げれば、中学生か高校生くらいの年頃の、ウェーブのかかった髪の女の子が考える人のポーズで宙に浮いていた。ブラウスにチェックのスカート、首元にはリボンという、見たことのない制服を着ている。

うちのじいちゃんならば、すかさずスカートの中が見えるアングルを探し回るだろう展開だ。

それはともかくとして、少女は気の強そうなツリ目で俺を意地悪そうににやにやと見下ろしている。

???「ふふん、聞いて驚きごほっ、ごほっ! ……驚きなさい! わた…… げほっ! 私はごほっ、ごほっ!」

( ´∀`)「さっきから、なんかやたらと咳き込んでないか?」

???「ごほっ、ごほっ! なんか、やたらと煙た…… ごほっ! 煙たいんだから、仕方げほっ! ないでしょ!!」

( ´∀`)「……そういや蚊取り線香を焚いてたな。なんとかと煙は高いところが好きっていうからさ、そんなところにいると煙たいぞ、なんとか」

なんとか「なんとかって何よ!? もう……げほっ、げほっ! こ、このままじゃ、ごほっごほっ! 話にくげほっ! し、仕方ないから下にいってあげるわよ!」

そう言って降りてきたなんとかは相当にむせていたのか、目に少し涙が溜まっていた。

なんとか「……い、言っておくけど、話しにくかっただけだから。別に辛くもなんともなかったんだからね」

( ´∀`)「へいへい。それより誰だよ? 夢でもガリガリ君がフィーバーしてたのに邪魔しやがって」

俺に問われて、なんとかは咳払いを一つしてから、声のトーンを落として薄気味悪い様子を演出してくる。もっとも、今更取り繕うことなどできないくらいには、彼女はイメージをぶち壊してる。

なんとか「ふふっ…… 私はブキミちゃん。私の話を聞いたあなたの元へやってきたの……」

( ´∀`)「マジかよ? こんなことなら落ちてくるまで蚊取り線香の煙で焙っておけばよかったな」

ブキミちゃん「焙るってねぇ、都市伝説と蚊を一緒にしないもらえる? ……まあ、あの程度で撃退されるほど、都市伝説ブキミちゃんは甘くないのよ、ふふふっ……」

目に涙ためてた奴のセリフとは思えない。

( ´∀`)「どうでもいいが、いい歳して自分のことをちゃんづけで呼んで恥ずかしくないか?」

ブキミちゃん「べ、別に好きで自分のことをちゃんづけしてるわけじゃないわよ! なんていうか、ちゃんまでが愛称の一部みたいなものなの。ほら、ガリガリ君が「君」までついて一つの呼称になってるのと同じようなものね」

( ´∀`)「あぁ…… よくペンネームとかに○○君とか○○さんとかつけてるのと同じ類いか」

ブキミちゃん「そんなところかしら。ふふっ、分かったら、大人しく……」

( ´∀`)「悪いけど、俺、ペンネームに君とかさんとかつけるの嫌いなんだよ。○○君で止めていいのか、○○君さんと呼ぶべきか迷うじゃねぇか。なぁ、ブキミちゃんさん」

ブキミちゃんさん「そんなの知らないわよ! むしろ、あんたの好みなんてどうでもいいでしょう! あと私はさんづけいらないわ」

( ´∀`)「じゃあ、ブキミ」

ブキミ「ちゃんはつけなさいよ! なんか無茶苦茶、バカにされてるみたいじゃないのよ!」

( ´∀`)「いちいち、細かい奴だな。つーかさ、お前はブキミっていうほどブキミじゃないぜ?」

ブキミちゃん「な、なによ……」

(*´∀`)「まあ、なんだ。そのさ……」

ブキミちゃん「そ、そんなの当たり前でしょ。べ、別に褒めたって……」

(*´∀`)「どっちかっていうと普通だろ? なあフツウさんに改名しないか? 今までにない都市伝説っぽくて逆にガクブルじゃね?」

フツウさん「いいわけないでしょ! 夜中に現れても、怖がられるどころか「あっ、ども」とか挨拶されて終わりそうじゃない! 3日もあれば消えるわよ、そんな都市伝説!!」

気に入らなかったらしい。まあ、本当はフツウよりは可愛い子である。でも、褒めて調子に乗らせるのは本人のためじゃないし、面白くもないので心を鬼にしてやめておいた。

( ´∀`)「まあ、本人がいいっていうならブキミちゃんと呼ぶけどさ。……なんか、女の子をちゃんづけで呼ぶのも恥ずかしいな。ブキミンって呼んでいいか?」

ブキミン「ちょっ、なに変な愛称つけてるのよ。むしろ、ちゃんづけより恥ずかしい呼び方じゃないの!」

( ´∀`)「じゃあ、なんて呼べばいいんだよ?!」

ブキミン「ブキミちゃんでいいでしょうが! 名前だけでどれだけ引っ張るつもりよ!!」

( ´∀`)「別にそんなつもりはないんだけどな。まあ、いいさ。それじゃあ、俺は当たりを越えたフィーバー棒でガリガリ君を交換しまくってくるぜ!」

ブキミン「そうそう、いってらっしゃー…… って、違うでしょうが!」

近所のコンビニへ向かおうとする俺の腕を、ブキミンは両手でおさえて止めに入る。

ブキミン「この夢ですることはガリガリ君の交換じゃなくて、私の落とし物を探すことでしょうが! わざわざ、読んだ日の夜に来てあげたっていうのに忘れたんじゃないでしょうね?」

( ´∀`)「あぁ、そういやそうだったな。確か…… パイプオルガンだっけ? おいおい、とんでもないもの落としたな」

ブキミン「どこの誰がパイプオルガンなんて落とすのよ!? 一文字もあってないし!」

( ´∀`)「なんだよ、違うのか。一度でいいから、あれで邪教の館のBGMを弾いてもらいたかったのによ。しかし、パイプオルガンじゃないとすると…… 他に落とすようなものあったか?」

ブキミン「むしろパイプオルガン落とすことのほうがありえないわよ。私が落としたのはハーモニカよ、ハーモニカ!」

( ´∀`)「おいおい、そんな小さいものじゃ見つけにくいだろ? もう少し探しやすいブブゼラで手をうたないか? スナフキンだってハーモニカ持ってたり、ギター持ってたり、パイプオルガン持ってたり結構浮気してるじゃん。ブキミンもそういった流行り廃りに敏感になったほうが良いんじゃね?」

ブキミン「誰がブキミンよ、誰が……。つーか、ブブゼラなんて流行でもなんでもないじゃないし、スナフキンはパイプオルガン持ち歩いてないでしょ! 全く、いつになったら探しにいけるのよ……」

夢の中だというのにやたらと疲れた様子のブキミンは、ため息一つついてから腕を組んで何かによりかかる。何も見えないが壁でもあるのだろうか。

ブキミン「とにかく! ブブゼラでもパイプオルガンでもギターでもなくて、私のハーモニカを探してきなさい! もし見つけられなかったら…… ふふっ、どうなるかわかるでしょ?」

( ´∀`)「ガリガリ君を交換にいかせてもらえないんだろ? まったく、とんでもない極悪非道な都市伝説だな」

ブキミン「違うわよ。ガリガリ君の交換どころか、永遠に夢の中をさ迷うの! 言っておくけど、探しに行かなくても同じだからね。ふふっ、少しは都市伝説『ブキミちゃん』の恐ろしさを理解できたかしら?」

ブキミンはそう言って人差し指を唇にあてがい意地の悪い笑みを浮かべる。

( ´Д`)「そしたら結局、ガリガリ君を交換にいけないじゃねぇか。まったく、とんでもない冷酷無比な都市伝説だな」

ブキミン「いや、なんでガリガリ君にこだわるのよ……。むしろ、ガリガリ君ごときでなんでそこまで悪く言われなくちゃならないのよ……」

自分の悪行に気づいてちょっと凹んだ様子のブキミンであった。

( ´∀`)「とにかくブキミンのトロンボーンを見つけりゃガリガリ君を交換しに行けるんだろ? 道順は覚えてるし楽勝だぜ」

ブキミン「誰がブキミンだっての! それとトロンボーンじゃなくてハーモニカ! その程度の記憶力でよく道順覚えてるなんて言えるわね」

( ´∀`)「まず赤い門をとおって、次に左から2番目のドア。そこを通ったら今度は右から4番目の窓を通って、階段を登って左から3番目をおりると7つの排水口があり、右から5番目にスナフキンのギターがあるんだったな」

ブキミン「……」

( ´∀`)「……」

ブキミン「……ちょっ」

( ´∀`)「なんか間違ったか?」

ブキミン「ちょっと! な、なんで道順だけは完璧に覚えてるのよ!? それでなんでハーモニカだけ覚えてないわけ!」

( ´∀`)「あぁ、スナフキンのギターじゃなくて、スナフキンのハーモニカだったか?」

ブキミン「そうじゃなくて! スナフキン自体関係ないわよ!」

( ´∀`)「そういや、スナフキンとブキミンってなんか似た名前だな。もしかして兄妹?」

ブキミン「まったくもって関係ないし、私はブキミンじゃないって言ってるでしょ! 都市伝説の名前もハーモニカも覚えられないくせになんで道順だけしっかり覚えてるのよ……」

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