新NEJM誌掲載の論文「ノルウェーにおけるマンモグラフィ検診の乳癌死亡率への効果」、やっと話がだいぶ見えました(汗)
posted at 10:23:20
ノルウェーでは1996年〜9年かけて全国に乳がん検診プログラムを導入していった。なので同時期に検診実施地区と非実施地区が両方あった。そこでそれぞれで現在と過去の死亡率を比較したところ、検診実施地区で28%、非実施地区で18%死亡率が下がってた(続)
posted at 10:30:44
検診をやっていない地区でも、90年代から高まった乳がん啓発運動や、治療技術の向上、診断ツールの発達によって18%死亡率が下がっていたわけです。となると28%と18%の差、10%が、検診プログラムによる低下分と考えられる。これは検診対象の50〜69歳の女性のお話。
posted at 10:33:04
ところが、こっからがまたややこしい。ノルウェーの乳がん検診プログラムは、マンモ検診をみんなに受けてもらうことと同時に、乳がんが見つかった人に他分野の専門家がチームを組んで治療にのぞむ集学的医療を提供することが必須条件として各地区に課せられていた。
posted at 10:34:33
なので、検診プログラムで10%死亡率が下がったとはいえ、そのうち純粋にマンモ検診による低下分がどれぐらいか、分からない。そこで、同時期、同地区に住んでいた、他の年齢層で、検診対象でなかった女性たちと比較した。
posted at 10:36:10
すると、70〜84歳、つまりマンモ検診の対象ではないけど、乳がんが見つかったら集学的医療のサービスを受けていた女性たちも、8%死亡率が下がっていた。マンモ+集学的医療を受けた50〜69歳は10%となると、純粋にマンモが寄与したのは2%?と考えられる。
posted at 10:38:41
乳がんは主に60〜80年代にかけてランダム化比較試験が行われていて、昨年の米USPSTF推奨変更では、それらをトータルして15〜23%の死亡率低下が期待できるとしていました。それと比べてなんでこんな低いわけ?とどうしたって疑問がわく
posted at 10:42:56
それについてEditorialではこう言ってます。この研究の計算がヘンとい人もいるだろうが、RCTが行われたのが「昔」だからではないか。啓発が進んで女性たちが異常を感じたら早めに受診するようになる前。またホルモン療法など治療法が進む前のほうがマンモの効果があったのかも
posted at 10:46:30
この論文が言いたいことはだいたい分かったのですが、これがどれだけの重みを持つ論文か、素人にはよく分かりません。でもEditorialにも書かれていましたが、過去60万人の女性がRCTに参加して何十年にも渡って議論してきたのに、まだ決着がつかないとは、本当に微妙な問題なんだろな
posted at 10:48:32
下げられる死亡率がもし本当にわずかなら、過剰診断などの不利益を考えると、全員が受けるべきとは言えないように思えてきます。でもそれより私が気になったのは、ノルウェーでこれだけ死亡率を下げた理由と思われる「早めの受診」「集学的治療」が日本でちゃんとできているかという点でした。
posted at 10:50:26
ピンクリボンキャンペーンに戻って、Think Before You Pinkというキャンペーンを展開しているBreast Cancer Actionという団体のバーバラ・ブレナーさんがこのクリップには登場します。彼女は、もうひとつ気にかかる指摘をしていました。乳がんを引き起こす物質を含んでいるような化粧品にもピンクリボンキャンペーンに参加しているものがあるのだとか。自動車メーカーも排気ガスが発がん性があるのにピンクリボンキャンペーンに参加している。乳製品も同様だそうです。(これはホルモンを投与していることを問題にしているのでしょうか。) こうした企業のピンクリボンキャンペーンはブレナーさんにとっては無礼で無責任な行為に感じられるということです。(ブレナーさんは乳がんにかかったこともあります。)乳がんについて真剣に取り組む気持ちがあるなら自社の製品に発がん性のある物質を使うのをやめるのが先だろう、というのが彼女の考え方だと思います。