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ヒゲの里コミュのくろいふくろのサンタクロース/後編

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 ◆◆◆



「いててててて。ひどいめにあったわい」

 いっしょうけんめいににげたサンタさんをのせ、ソリは、たくさんのほしのしたをとんでいきます。すっかりまっくろになってしまったサンタさんをみて、ルドルフたちはクスクスとわらいました。クスクスわらうと、すずがシャンシャンとなりました。

「サンタさん、あたまからつまさきまでまっくろで、すっかりどろぼうみたいですよ」

「おまえのせいじゃ!」

 プンプンとおこるサンタさん。でも、たくさんのこどもたちがまっているので、いえにかえってきがえているひまはありません。

「どうして、まほうのこなをつかわなかったんですか?」

 と、ルドルフはききました。まほうのこなをつかうと、こどもたちはおきることなく、サンタさんがおとをだしても、すやすやねているのです。

「そんなことはいいんじゃ! あたらしいほうほうをしようとおもったんじゃ!」

 サンタさんはいいました。でも、かおがまっかでした。まっくろなのに、まっかでした。どうやら、わすれてしまったようです。

「ああ」

「ああ、じゃない!」

 サンタさんはいい、たづなをぴしっとたたきました。

「つぎは、アニーケというおんなのこのいえじゃな」

 サンタさんがいうと、ルドルフは、「はーい」とへんじをして、ひゅーんと、あかいやねのいえにむかっておりていきました。

 やねにとうちゃくし、エントツをみると、『こうじちゅうです』というはりがみがしてありました。これはこまったわい、とおもってサンタさんがよくみると、はりがみには、『げんかんのドアをあけておくので、そこからどうぞ』とかいてありました。

「こりゃこりゃ、たすかったのお」

「でもサンタさん」とルドルフがいいます。「そうやってげんかんにいったら、ワナがしかけてあるかもしれませんよ」

「なんでそんなことするんじゃ?」

「そんなこどももいるかもしれません」

「だいじょうぶじゃ。そんなこどもにプレゼントはやらん」

 そういうと、サンタさんはさっさとげんかんにおりていきました。そして、がちゃり、とドアをあけ、ゆっくりとなかのようすをのぞきました。

 なかはまっくらでした。みんなねているようです。よしよし、とおもいながら、サンタさんはなかにはいりました。ゆかが、ぎしり、とおとをたてました。

「いまだー!」

 おんなのこのかけごえとともに、サンタさんのあたまになにかがふってきました。どうやら、おおきなあみのようです。サンタさんはあわてて、「うわー! うわー!」といいながらうごきました。でも、あみがてとあしにからまって、どんどんからまって、うごけなくなりました。うごけなくなって、ころんでしまいました。

「それー!」

 またおんなのこのこえがします。そして、あちらこちらから、ビニールのバットみたいなもので、ぱこんぱこんと、サンタさんはなぐられました。

「あいたたた! あいたたた!」

 サンタさんはいっしょうけんめいあたまをおさえて、からだをまもりました。さんにんかよにんくらいはいるのでしょうか。いろんなところから、パコンパコンとたたかれます。

「あいててて! やめとくれ! あいたたた!」

「よーし! あかりをつけて!」

 おんなのこがいうと、へやのあかりがパッとつきました。はなのえのかいてある、ピンクのパジャマをきた、おんなのこたちが、いひひひひ、とわるいかおで、わらっていました。みんな、ごさいくらいでしょうか。

「あれ?」とだれかがいいました。「サンタさんだとおもったのに、このひと、どろぼうさんじゃない?」

「あ、ほんとだ」

「ほんとだー。まっくろのかっこうで、どろぼうさんだあ」

 おんなのこたちががっかりしたこえをだします。それをきいてサンタさんは、「わしゃどろぼうじゃない! サンタクロースじゃ! はっ!」とおもわずいってしまいました。

「えー、サンタさんはこんなまっくろじゃないよー」

「そうだよー。サンタさんはあかいふくで、しろいおひげだもん」

「どうする? おまわりさん、よぶ?」

 それをきいてサンタさんは、あわてました。

「まてまてまて! ほんとうじゃ、わしゃサンタクロースじゃ! そのしょうこに、ほら、そこのふくろをみてごらん。きみたちにあげるプレゼントが、いっぱいはいっておるんじゃから」

 サンタさんはあみのあいだからいっしょうけんめいてをのばして、ゆびをさしました。おんなのこのひとりが、「これー?」といいながら、そのふくろを、ビニールのバットでつっつきます。

「そうじゃ。そのなかに、このいえの、アニーケというおんなのこのプレゼントをもってきたのじゃ」

「あたしのー?」と、バットでつっついていたおんなのこがいいました。「なにくれるの?」

「それはおじょうちゃんのねがうものじゃが、しかし、おじょうちゃんはよいこですごしていたかね?」

「うん!」

 アニーケがにっこりわらいます。もっていたバットも、せなかのうしろにかくしました。

「よしよし。それじゃあまず、わしをここからだしておくれ」

 おんなのこたちはちからをあわせて、サンタさんをたすけました。「やれやれ」と、サンタさんがたたかれたところをおさえます。

「だいじょうぶ?」

 アニーケがしんぱいそうにききました。

「だいじょうぶじゃよ」とこたえ、サンタさんはききました「それにしてもおじょうちゃんたち、どうしてこんないたずらしたのかね?」

「だって」とアニーケがいいます。「きょねんはサンタさん、きてくれなかったんだもん」

 もしかしたらアニーケが、いたずらをいっぱいしたのかもしれません。でもサンタさんは、よしよし、とおもい、ことしはアニーケにプレゼントをあげることにしました。

「さて、おじょうちゃん。なにがほしいのかな?」

「いいにおいのする、こうすい!」

 アニーケは、おおきなこえでいいました。

「こうすい、かね?」

「うん! ママのこうすいとか、すごくいいにおいなの。でも、つかわせてくれないの。だから、アニーケのこうすいがほしいの!」

 あたしもー、あたしもー! と、ほかのおんなのこたちもいいました。

「よしよし。おやすいごようじゃ」

 そしてサンタさんは、くろいふくろをゴソゴソとしました。やがて、よっつのこうすいをとりだし、おんなのこたちにあげました。

「ありがとう!」

「ありがとうサンタさん!」

 おんなのこたちは、とってもうれしそうです。さっそくつかおう! とだれかがいい、ぷしゅぷしゅ、っと、おんなのこたちはこうすいをふりまきました。でもすぐに、みんなへんなかおをしました。

「うわ! なにこれ! くさい!」

 おんなのこたちがこうすいをつかうと、とっても、とってもイヤなにおいがしました。まるで、くさくなったさかなのようです。

「くさーい」

「くさいよーー!」

 おんなのこたちははなをおさえ、イヤなかおをしました。サンタさんもはなをおさえ、ヘンなかおをしました。

「なにこれー、サンタさん、こうすいじゃないよー!」

 アニーケはおこって、サンタさんにこうすいをなげつけました。ほかのおんなのこたちもおこって、サンタさんになげようとします。

「うわ! こりゃ! やめんか!」

 サンタさんはびっくりして、すぐにそとへとにげだしました。おんなのこたちがバットをもっておいかけてきます。サンタさんはすぐにソリへとのって、ルドルフとともに、そらへととびだちました。
 

 ◆◆◆


 シャンシャンシャン、とソリがとんでいきます。たくさんのほしがサンタさんたちをみてニコニコするように、キラキラしています。

「まったく、ひどいめにあったわい」

 サンタさんはとほほ、というかおで、ためいきをはきました。

「つぎは、ミハエルくんというおとこのこです」

 ルドルフがひゅーんとそらをかけながら、サンタさんにいいました。そのときサンタさんはしたをみながら、「おや?」とおもいました。

「あのおおきなきのしたにある、ゆきのいっぱいつもったイエには、こどもはいないのかな?」

 ルドルフは、ちらりとしたをみました。「わかりません。いままで、いったことはないようです」

「ふむ。へんじゃな。ちょっと、いってみようか」

「わかりました。それー!」

 ルドルフたちは、しゅーんとおりていきました。そして、ゆきのつもったやねのうえに、しゅるりととまります。

「よしよし。ここでまっとるんじゃよ」

 サンタさんがいうと、トナカイたちはシャンシャンとすずをならして、うなずきました。ルドルフは、「サンタさん、ゆきがいっぱいなので、ころばないでくださいね」といいました。

「そんなもん、だいじょうぶじゃ!」

 といったサンタさんは、すってんころり、ドスン! と、ころびました。

「いてててて」

 おしりをさするサンタさんをみて、ルドルフたちがわらいます。スズがたのしそうに、シャンシャン、シャンシャンとなりました。

「わらうな!」

 サンタさんはおこりながら、くろいふくろをもって、エントツにのぼりました。

「よっこいしょ」

 こんどのえんとつはそれほどおおきくなかったので、ひとりでもじょうずにおりていけそうです。てとあしをじょうずにつかって、ゆっくりとおりていきました。

 へやにとうちゃくすると、「おたんじょうびおめでとう! ラファエルくん」とかかれたカミがかべにはってありました。ろうそくのあかりが、へやをぼんやりとあかるくしています。ベッドには、どうやらこどもがねているようです。

「なんじゃ、やっぱりこどもがおるじゃないか」

 サンタさんはふしぎにおもいながら、ベッドへとちかづきました。

「よーし、このコはなにがほしいのかな?」

 サンタさんがベッドにちかづくと、ふとんのなかにいたおとこのコが、とつぜんからだをおこし、「ばあ!」といって、サンタさんをおどろかせました。

「うわ!」

 びっくりしたサンタさんは、しりもちをついてしまいました。

「あいたたた」

 それをみたおとこのコが、「あっ、ごめんなさい!」といいました。

「あれ? おじさん、だれ?」

 ごさいくらいのおとこのコはふしぎそうにいいました。サンタさんはおしりをさすりながら、「わしゃ、サンタクロースじゃ」といいました。

「うわ! ごめんなさい! パパかとおもったんです」

 おとこのコはベッドからでて、サンタさんにあやまりました。てをかして、おこしてあげます。

「いたたたた」

「ほんとうにごめんなさい」

 おとこのコがしょんぼりしていうと、サンタさんは、「いいんじゃよ。だいじょうぶじゃ」といいました。

「きみが、ラファエルくんかね?」

 サンタさんがきくと、おとこのコは、くびをこくんとしました。

「そうかそうか。おきていたとはなあ。びっくりじゃ」

「ごめんなさい」

「いいんじゃよ」

 サンタさんは、またまほうのこなをつかうのをわすれてしまっていて、はずかしくなりました。やっぱり、おじいさんとおなじく、とってもドジなようです。

「おじさんは、ほんとうにサンタクロースですか?」

 ラファエルくんはききました。「うん、そうじゃが?」とサンタさんがいうと、「へえ、ほんとうにいるなんて、しりませんでした」とおとこのコはいいました。

「どうしてだね?」

「だって、ずっとだれもきてくれませんでした」

 それをきき、サンタさんはびっくりしました。おそらく、おおきなきにかくれていたので、だれもきづかなかったのかもしれません。

「それはすまなかったな。もうしわけないなあ、ラファエルくん」

「いえ、でもことしはきてくれたので、とてもうれしいです」

 ラファエルくんは、にっこりしました。

「そうか。いや、すまなかったなあ。じゃあ、これまでのぶんもいれて、たっくさんプレゼントをあげるよ。さあさあ、ほしいものはなにかね?」

「えっと、じゃあ、ぼくは」と、ラファエルくんはもじもじしました。「ぼくはなにもいりません」

「なぜかね?!」

 サンタさんはびっくりしていいました。ラファエルくんは、もじもじします。

「なぜかね?」

 サンタさんは、もういちどやさしくききました。ラファエルくんは、「……あの」とかおをあげ、サンタさんのめをみていいました。

「ぼくはいらないので、パパになにかあげてくれませんか?」

「どうしてかね?!」

 サンタさんは、もういちどおどろきました。

「えっと、だって、おとなになっちゃったら、サンタさんはきてくれないんでしょ? サンタさんは、こどもだけにくるんでしょ?」

「そうじゃが?」

「このまえ、パパに『サンタさんからなにほしい?』ってきいたら、『パパはもうおとなだから、サンタさんはこないよ』っていうんです。『じゃあ、パパがこどものとき、サンタさんはきた?』ってきいたら、パパさみしそうに、『きたことなかったなあ』っていうんです」

「なぜじゃね?」

「ぼくも、『なんで?』ってきいたんです。『パパ、わるいこだったの?』って。そしたら『うーん、わかんないけど、もしかしたらパパ、わるいこだったのかもなあ』ってわらってたんです。さみしそうに」

 もしかしたら、おとうさんサンタも、おじいさんサンタもドジだったので、おおきなきのしたにかくれたラファエルくんのいえに、きづかなかったのかもしれませんでした。

 サンタさんはとってももうしわけないきぶんになり、なんどもなんども、ごめんなさい、ごめんなさい、といいました。そして、ラファエルくんのきもちがとってもやさしかったので、そのおねがいをかなえてあげることにしました。

「よし。じゃあ、パパさんにプレゼントをあげることにしようかの。いったいパパさんは、なにがほしいのかな?」

「うんと、うんと、あっ、そうだ!」ラファエルくんは、大きな声を出しました。「オルゴールをください!」

「オルゴール?」

「はい!」

 ラファエルくんは、めをきらきらとさせました。まるで、そらのおほしさまのようです。

「なんだそんなものでいいのか。おやすいごようじゃ」

「あっ、でも」ラファエルくんはいいました。「パパがこどものころになくしたっていう、オルゴールのことなんです。ちょっとまっててください」

 ラファエルくんは、たったった、とへやのそとにはしっていきました。そしてすぐに、たったった、ともどってきました。

「これです」

 ラファエルくんはしゃしんをもってきました。しろとクロいろのしゃしんです。ラファエルくんによくにたおとこのこが、ひざにかわいいハコをおいて、にっこりわらっていました。

「このハコの、オルゴールです」

 サンタさんはじっくりとみて、にっこりしました。「おやすいごようじゃ」

 サンタさんは、くろいふくろをもち、ごそごそとなかをさがしました。そして、オルゴールをだし、ラファエルくんにわたしました。

「わー!! ありがとう、サンタさん」

 ラファエルくんはおおよろこびしました。ぎんいろの、ハナのえがほってある、オルゴールでした。ハコをあけると、かわいいおんがくがながれました。

「どうじゃね?」

 でも、ラファエルくんはがっかりしたかおになりました。

「どうしたんじゃ?」

「これじゃないです」

「どうしてじゃ?」

「パパのオルゴールは、おとがならないんです」

 ラファエルくんはいいました。このオルゴールは、パパのパパが、パパのたんじょうびプレゼントであげたものだそうです。さいしょはきれいなオトがなっていたのですが、あるひ、パパがうっかりおっことしてしまい、こわれてしまったそうです。

「それでパパがないていると、パパのパパが、『おとはならないけど、ほら、みみをすまして、そうぞうしてごらん。きみのすきなきょくが、いろんなきょくが、きこえてこないかい?』って、いったそうです。すると、いろんなきょくがきこえてきたそうです」

 それはいままでオルゴールがならしていたオトだったり、がいこくのオンガクだったり、きれいなひとがうたっている、あたらしいウタだったり、ゆうめいなウタだったり、いろんなオトが、きこえてきた、ということでした。

「ふーむ」

 サンタさんはくびをかしげました。サンタさんは、パパがなくしたオルゴールをイメージしてとりだしたので、いまラファエルくんがもっているオルゴールは、まちがいなく、パパのオルゴールなのでした。

「やっぱり、どこかおかしいようじゃ」

 くびをかしげていると、ラファエルくんが、「どうしました?」とききました。サンタさんはいいました。おとのしないトランペットをとろうとしたら、おおきなオトのするトランペットが。いいにおいのこうすいをだしたら、くさいにおいのこうすいが。そして、おとのしないオルゴールをだしたら、おとのするオルゴールがでてしまった、と。

「どうも、ふくろがこわれてしまったようじゃ」

 くろいふくろをもち、サンタさんががっかりしたかおをします。まっくろになってしまったから、こわれてしまったのかもしれません。おじいさんとおなじあわてんぼうで、サンタさんは、がっかりしました。

「じゃあ」とラファエルくんはいいました。「サンタさん、そのふくろをぼくにかしてください」

「どうしてじゃ?」

「だいじょうぶです。ぼくにまかせてください」

 ラファエルくんは、にっこりしました。サンタさんは、かれにふくろをわたしました。

「じゃあ、サンタさん。いまほしいものは、なんですか?」

「そりゃわしは、しろの」

 そこまでいったとき、ラファエルくんは、じぶんのくちびるにゆびをあて、しっ、というポーズをしました。「サンタさん、いまほしいものは、なんですか?」

 きょとんとしたサンタさんは、でも、すぐにわかりました。

「わしは、くろいふくろがほしいです」

「わかりました」

 ラファエルくんがふくろのなかをごそごそします。そして、しろいふくろをとりだしました。

「うおー! ラファエルくん、てんさいじゃな!」

 サンタさんはおおよろこびしました。ラファエルくんはてれくさそうに、「えへへ」といいました。

 にっこにこのサンタさんは、しろいふくろをごそごそし、ラファエルくんに、パパのなくした、ほんもののオルゴールをわたしました。ラファエルくんはおおよろこびしながら、「ありがとうございます!」といいました。

「いやいや、こちらこそ。これでせかいじゅうのこどものところに、ちゃんとプレゼントをくばれるわい」

 サンタさんは、「ありがとう」とおれいをし、ラファエルくんとあくしゅしました。

「らいねんもまた、きてくれますか?」

 えんとつにもどろうとしているサンタさんに、ラファエルくんはききました。くろいおかおのサンタさんはふりかえって、「もちろんじゃ」と、にっこりしました。


 ◆◆◆


 サンタさんがいなくなり、ラファエルくんはベッドにもどりました。ハコをあけると、やっぱりおんがくはきこえてきません。でも、ラファエルくんがめをとじ、みみをすませると、きれいな、クリスマスのおんがくがきこえてきました。

 そのとき、やねのうえで、どすん! というおおきなオトがしました。そして、にぎやかにわらうようなスズのねが、シャンシャン、シャンシャンときこえてきました。





      おしまい

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