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古 き 良 き 時 代コミュの[短篇] 終わりゆく世の芍薬

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私が、級長に選ばれたのは、

級内で、僅かに年長・・・

とも云えないような、生まれが早い、と、

それだけの理由であった。



現代、日本國では、

学舎の人数も、年々、少なくなり、

級長とは、

永遠に続く日直の様な物である。

何たる哀しき役職か。



とはいえ、

再び、戦意も興る、この國では、

どの名家も旧家も疎開に忙しい。



婦女子のみに与えられるが如き、

乙女同士の恋を語らう時間さえ、

級内に、残されてはいなかった。



皆、御令嬢が、裾を捲り上げて、

ご給仕さま方さながらに、

夜毎、邸宅では荷造りをされた。



なぜならもう、

ご給仕さま方なれば、とっとと、

帝都を逃げ出し、久しいからだ。



唯一、我が家のご給仕さま方は、

幾人か残られていた。



私が「永遠の日直」の仕事を終え、

校門をくぐる頃、

遂に、少々と、小雨が降り出した。



私の頭上に、

ご給仕さまの傘が差しかけられた。

「おつかれさまでありました、嬢さま」

と、彼は口にした。



私は可笑しかった。



「永遠の日直」

それを、ねぎらってくださる方が在る、

なんて云う事がね。



「ええ、今日も御國を救って来たわ」

そう、私は、大げさに云うと、

ご給仕さまと、笑い、傘を分け合った。



雨からは、

「終わりゆく世」を憐れむかのように、

芍薬の香りが漂った。




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