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脳汁廃棄処分場コミュの宇宙が落ちた日 第10話

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―UC.0079 1/6―

 母艦に戻る間も絶えず爆発音とアラートはく響いていたが、先頭を行くミギリ少尉と殿をするスグ曹長が退路の確保と追随を許さなかったため無事帰還することに成功する。

 「今の内に休んでおけ。またすぐに出撃するぞ・・・」

 ミギリ少尉がドーデ軍曹を撃墜してからというもの、帰還するまでの間はスグ曹長も俺も口数が少なくなっていた。

 ”ミギリ少尉は至急俺の所にまで来い!!”

 帰還するまで終始艦長の怒りはおさまらず、当然の如く少尉に呼び出しがかかる。

 「少尉、俺たちも行こうか?」

 スグ曹長が不安そうな顔をして言う。

 「いや、いい。統率できなかったのは俺の責任だ。絞られるのは俺だけでいいさ。」

 そう言ってミギリ少尉はヘルメットを外し振り返らず行ってしまう。

 「少尉・・・」

 もう一度俺が引きとめようと声をかけようとした時、スグ曹長が俺の肩に手を当てやめろと言うように首を横に振る。

 ”対艦兵装へと移行します。”

 オペレーターの変わらぬ通信が入り次の出撃も間もないことを察知する。

 「やれやれ、フロントラインで戦ってる以上こき使われるのはあたりまえか・・・。」

 そういうとスグ曹長も艦内の奥へと消えて行くのであった。

 俺は暫く壁を背もたれにしてへたり込む。
たった一回での出撃がまるで一週間、一ヶ月間ずっと乗りっぱなしだったかのような疲労感に襲われる。

 「・・・だるい。」

 俺は軽く目を閉じる。

 脳裏に焼きつく光と叫び、そして恐怖。それらがグルグルと眼の内側で周るような感じだ。
毒ガス作戦注入後まともな食事すらしていないのに空腹感は無い。胃の中は空っぽだというのに吐き気だけは時々波のように襲ってくる。

 「ちくしょう・・・くそッ・・・ウウウ・・・」

 俺は胸元から下げてる仲間との別れの際にもらった殻の薬莢を細工したペンダントをスーツの中から取り出して握り締める。

 「マイケル、エディ、サムソン・・・ダリア・・・怖いよ・・・。」

 いつも一緒だった仲間と自分を待っているであろう彼女の名前を呟き、泣く。

 誰でもいいから側にいてほしいと感じた時だった。



―メインブリッジ―


 ミギリ少尉が入るやいなや艦長の罵声がブリッジ内に響き渡る。
覚悟してたとはいえこの時ばかりは少尉も顔をしかめる。

 「貴重な、ザクを・・・戦力を!!お前はぁぁ!!!」

 「申し訳ありません・・・」

 「申し訳ありませんじゃないぞ!!」

―バキキッ

 ベイ艦長は備え付けのインカムを床に叩きつけると、ミギリ少尉の前まで歩み寄り彼のスーツの襟を掴む。

 「貴様・・・我々が今どんな状況にあるかわかっているのか・・・答えろ!!」

 「戦争中で、コロニーを地球に落とす作戦中です。」

 「あぁそうだ、その通りだよミギリ少尉!」

 艦長は怒鳴りすぎたためか少し声がかれている。
しかし、憤りの表情は相変わらずでたかがザク一機でなにをこんなにも必死なのだろうとさえ思わせる表情だった。

 「貴様・・・たかがMSの一機でとでもおもっているだろう!」

 「いえ・・・」

 「戦局からすればたかだか一機だ・・・だがなぁ!俺達がしてきた事に対して置かれているこの状況では貴重な一機なんだぞ!!」

 「・・・?」

 「なぜ、撃墜した。お前を含む残り三機で無理やりにでも連れてこれたんじゃないのか!?」

 「・・・申し訳ありません。」

 「このばかたれがぁぁ!!!」

―バキィ!

 艦長はついに腕を振り上げミギリ少尉を殴りつける。

 「ム・・・クッ」

 少尉よろめきながらも倒れはしなかった。
しかし、それが艦長の気を逆撫でしたのか艦長は二度三度とミギリ少尉を殴りつける。

 「ハァハァ・・・俺達の部隊の呼ばれ方を教えてやろうか・・・?」

 「・・・?」

 ミギリ少尉は鼻から流れる血を手の甲で拭い艦長の方を見据える。

 「・・・外人部隊だとよ。」

 「外・・・人・・・部隊?」

 「そうだよ、俺達は公国軍人でありながらなぁジオン国籍じゃない部隊なんだよおお!!」

 「・・・!?」

 外人部隊とは国籍を持たぬ人達の集まりだと言われている。故に過酷な誰もやりたがらない作戦や転戦につぐ転戦と言う具合に常に捨て駒というような扱いを受ける部隊でもある。
この外人部隊にはジオン側の意図的な政治面での裏回しがあり、無国籍でも受け入れるという前面的な姿勢の政策は表向きであり、裏ではこういった流れ者を集めて強制的に軍属へとしたてあげ、無国籍をいい事に彼等を非人道的な扱いをしたとも言われている。ちなみに当時の外人部隊には無国籍の他、孤児や身寄りの無い者も強制的に入隊させられる事もあったと言う。

 「貴様・・・生まれはどこだ?」

 「アイランド・イフッシュの・・・7バンチ・・・!?」

 「気が付いたようだな・・・。」

 ハッとして気が付いたミギリ少尉の表情から見る見る血の気が引く。

 「そうだよ・・・俺もお前も、どうやらあのコロニー出身者のジオン軍人は外人部隊に編成されたようだ。いや、そうなるように初めから仕組まされたたんだろう。」

 「まさか艦長も・・・そ、そんな・・・」

 その場で崩れ落ちるミギリ少尉。

 この時、少尉の正式な戸籍はアイランド・イフッシュであった。しかし、身寄りが居なかったミギリ少尉は入隊時に国籍をジオンと改めている。つまり『サイド2出身国籍ジオン公国、ジオン公国軍人』として戸籍上では記されて居た。

 この計画が発案された時にどのコロニーを使うかと言うので審議された所、サイド3からさほど離れていないこのコロニーが選ばれる事となった。同コロニーはジオン公国圏内(サイド3を中心としたコロニー郡)で有りながら反ジオンであったため選ばれるのは必然であった。
 だが、弾頭に変える際に反ジオンを掲げる住民を一斉退去させるのは至難であり、強制退去と言う手段も取れたがそれには時間がかかり過ぎる。このブリティッシュ作戦にはコロニーを落とすと言う大きな目的の他に、いかに迅速にコロニー弾頭を作り上げるかが問題であった。
 一年以上前から計画されてたとはいえ、この部分の審議にはかなり時間が費やされたと言う。
毒殺作戦という案はその初期段階で上げられていたが、やはりジオン側もこのバイオ兵器を用いた作戦に流石に反対者も出ていたからだ。
 しかし、もともとコロニーを地球に落下させる事自体が毒殺作戦のそれに類似するものだと言う意見に行き着いて決定となったのである。
 次にその毒殺作戦を実行させる部隊編成であが、これは意外とすんなり決められている。
これはもはや皆口には出さないが、予めこうなるという事が解っていたからだ。国籍を持たぬ流れ者や、孤児、義勇兵等全て洗い出され、その中で作戦に携わっても何ら支障の無い人員で編成させたのである。特にサイド2出身のジオン兵は全て最優先で編成されたと言う。つまり、例え出身地であろうとも公国軍人であるならばその地に手をかける事も出来るだろう、と言う無茶苦茶な考えであったのだ。
 尚、この作戦の全貌が割れる事となっても外人部隊なので”異国の外人”がやった、と言い張ればいい訳である。
そう仕向け易くするために、この作戦の詳細をギリギリまで隠蔽させる事も全て初めから仕組まれていたのだ。



 作戦を知っている限られた者を謀殺すればいいのだから・・・



 床にへたり込んだミギリ少尉を見下ろす艦長もまた表情が曇る。

 「ジオンのためにやったのに・・・ジオン公国の一人である事で有り続けるために・・・自分の故郷を・・・なのに・・・国籍を持たぬ外人だと?・・・ ・・・そんな事・・・そんな馬鹿な事があるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 ミギリ少尉は拳を床に叩きつけて叫ぶ。

 「たかがMS一機だよ、俺もそう思う。だが・・・この事実を知った時、俺も今のお前と同じ気持ちになった。行き場の無いこの感情を俺は誰かに向けて出したかったんだ・・・俺は・・・艦長失格だ・・・。」

 そう言って帽子を被りなおすと自分でたたき付けたインカムを拾い上げ座席に腰を下ろす。

 「どうすれば・・・どうすれば私の部下達は陽の目を見られるんですか・・・?」

 「・・・認められるまで生き延びて、上にのぼるしかあるまい。」

 「・・・」

 「それ故・・・お前が味方のザクを撃墜させた事に腹を立てた。俺達みたいな底辺にさせられた者達が這い上がるには失敗や不祥事は許されないんだ。せめて生き延びてこの戦争に勝利し、この事実を上層部によって隠蔽されないように生き証人とならねばならないんだ。」

 「わかりました・・・」

 ミギリ少尉は体を立たせる。

 「艦長・・・俺は例えこの作戦が我がジオンによって予め仕組まれた事であっても、俺はジオン軍人として戦える事を誇りに思います・・・だから・・・この作戦は絶対に成功させるべきです。」

 「ック・・・馬鹿が・・・歯が・・・浮くような事を言うんじゃねぇよ若造・・・初めから乗組員全員そのつもりだ。」

 艦長は震えた声で鼻をすすりながら背もたれに深く腰掛ける。

 「俺も長い事軍人やってきたが、お前等見たいなのがどうしてこんな事にならなくちゃいけないのか解らんよ。世間一般じゃ外人部隊なんて言えば後ろ指さされるが、事実は逆で外人部隊の奴等は皆この国に認められたくて必死だってのによ・・・。お前は正規の軍人以上にジオン軍人だぜ。」 

 そう言うと艦長はメインモニターの方へと視線を送る。

 ミギリ少尉は今になって気が付いたが、周りにいるオペレータ達が自分の方を見ながら涙眼で頷いたり拳を突き出して無言のエールを送っていた。
それは外人部隊という立場なのは少尉本人だけでなくこの戦艦内全員、毒ガス作戦に関わった全ての部隊が少尉と同じ気持ちだったといえる瞬間でもあったのだった・・・

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