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貞子ラブコミュの「リング」原作での貞子出現シーン/

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<大石智子の場合>
手が震えた。背後に気配がある。けっして人間ではあり得ない。肉の腐ったすえた臭い、空気の中に溶け込んで包み込むように…、固体ではあり得ない。〜中略〜流しの上の。15ワットの蛍光灯がチカチカと息切れをしている。まだ新しいはずなのに、なんとも頼りない明り。〜中略〜気のせいですますには、あまりに気配が濃密であった。今にも何かがニュッと伸び、自分の首筋に触れそうでならない。〜中略〜背中は泡立っていた。肩のあたりで湧き起こった悪寒が背筋を伝って下へ下へと這い降り、冷たい汗でTシャツはぐっしょりと濡れていた。単なる思い込みにしては、肉体の変化が激し過ぎる。〜中略〜グラスの中でピシッと音をたてて氷が割れた。そして、その音に弾かれるように、智子は思わず振り返ってしまった。
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<高山竜司の場合>
「ヤベエ、やって来やがった…」〜中略〜竜司の身体の回りに隙間ができ、そこに得体の知れない霊気が漂った。冷え冷えとした夜気と、肌にまとわりつく湿気が、陰影となって身に迫って来る。心臓の音が、カチカチと鳴る時計の音を追い抜き、一段と早くなった。〜中略〜確かにソレはヒタヒタと近づきつつあった。ただ、わからないのは…なぜオレのところにだけやってくるんだ?という疑問。〜中略〜胸は早鐘を打った。何者かの手が胸の中にまで伸び、ぎゅっと心臓を掴まれたような気分であった。背中がキリキリと痛んだ。背筋に冷たい感触があり、竜司は驚いて椅子から立ち上がりかけたが、腰から背中にかけての激しい痛みに襲われて床に倒れ込んだ。〜中略〜胸への強い圧迫が肋骨をきしませる。〜中略〜頭がムズムズとして無性にかゆい。頭に手をやってボリボリかくと、何本かの髪の毛が抜ける感触があった。〜中略〜竜司は構わず鏡の中の自分を見つめた。鏡には別の人間が映っていた。頬は黄ばみ、干乾びてゴワゴワとひび割れ、次々と抜ける毛髪の隙間には褐色のかさぶたが散在している。〜中略〜鏡に映っているのは、他でもない百年先の自分の姿であった。さすがの竜司も知らなかった。まったくの別人となり果てた自分と出合うのがこんなにも恐いものとは…。〜中略〜呼び出し音が四回鳴るのを聞いて、高野舞は受話器を持ち上げ、「もしもし…」と言った。しかし、それに答えたのは、「うぉぉぉぉぉー」という悲鳴であった。一本の電話線を戦慄が駆け抜けた、竜司のアパートから高野舞の部屋に、恐怖はそのままのかたちで伝わったのだ。〜中略〜うめき声は、はたとやんだ。後を襲ったのは、しんとした静寂…。

(鈴木光司「リング」/角川ホラー文庫)より抜粋。

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