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We love ジップス!!!コミュの『紅、そして青』

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雲一つない空を久しぶりにみたなと思いつつ肩からずり落ちたリュックを背負い直した。すると同時に後ろから声をかけられた。
「タクミ!」

ボクは心臓が半分ほど縮こまり、すぐにもとにもどる、いやそれ以上に大きくなるのを感じた。

「今日は2限から?」

「あ、うん」

「そっか!じゃ同じだね。あたし1限さぼっちゃった」

「そう。」

「なに?どしたの!よそよそしい。」

「別になんもねーよ。さっさと歩かないと2限も間に合わないぞ」

「わかってるし!」

と彼女は言いスカートの裾をちょいとつかみペースをあげた。
スカートなんて珍しいと思いつつペースをあげた。

今朝、起きたとき顔が熱くなってるのがわかった。それはきっと夢にでてきたカエデのせいだろう。いつものように学食で仲間たちと話をしているとカエデは急に箸を止め、タクミに言った。

「今キスして」

一瞬誰になにを言ったのかわからなかった。人がいるにもかかわらず、しかもお前を好きなヒロキも隣にいるし、サヤもマサユキもいるんだぞ!とまわりをゆっくり見回すとなにもなかったかのよーに話をしている。いやなにもなかったんだと思いもう一度箸を動かしたところ、またカエデは言った。

「聞こえたでしょ!今ここでキスして」

みんなには聞こえてない?カエデが立ち上がってるのにも気付いてない?見えてない?なぜそこで受け入れたのかも自分ではわからなかった、気付くと白昼堂々学生がわんさかいる食堂でボクらは求めるようにキスをした。周りは見ているのだろうか、なにか言われてるのだろうかは気にならなかった。ただはっきり覚えてるのは甘い柔らかな感触だけであった。

学校に着くなりマサユキがからかいの言葉を飛ばしてきた。

「君たち仲良く社長出勤ですか!」

サヤも続けて言う。

「1限の代返大変なんだからねぇ、あとでクリームパンおごりね」

するとカエデはタクミの腕を抱き、

「タクちゃーん私今日お財布と喧嘩してチャック開いてくれないの〜」

おいおい、おっぱいあたってんぞ!まったく意味わからんいいわけだし。と思いながらもため息で返事をした。

空腹の合図と同時に授業終了のチャイムがなり、学生はいっきに食堂に流れ込む。席を確保しランチになる。もちろんタクミからはマサユキとサヤに愚痴と愛がつまったクリームパンが贈呈された。ヒロキは2限が終わる頃にひょっこり現れてさっき合流した。むしろヒロキ!お前が・・・ケチくさいのでやめた。
話はいつものように講師の悪口、昨晩のお笑い番組の話と続いた、なにかの拍子でヒロキが、

「昨日、あの美人女優がついに俺にまたがって、いっやらしぃ声だしてよぉ!まぁ夢だけどな。そんでもって朝から・・・ってなわけで遅刻しちゃったんだからしょうがない。マサやタクミならこの気持ちわかるべぇ?」
といつものようにオチャラケたヒロキに続いてボクはは言った。

「俺も今日変な夢みたんよ」

「なになに?」カエデとサヤは聞く。

「たいした夢じゃない。ヒロキの話のほうがおもしろいよ」

「おもしろいかおもしろくないかは俺らが決めることだろ」クールにマサユキが言う。

「そうだ」みんなボクが言うのを待っている。

なんで夢みたなんて言ったんだろうと後悔したが遅かった。しぶしぶ話をした。するとみんな声をあげて笑い、

「お前たまってんじゃね?」ヒロキが笑い、

「新たな告白の仕方なの?」とボクをちゃかした。

しかしカエデはまじめな顔をしてこう言った。

「万葉集では想ってくれてる人が夢にでるんだよね」

「はいっ?」タクミは驚いた。

「だからそーゆうこと。私の夢にもよくタクミがでてくるけど、どーゆうことかな?奈良時代風にとらえてよいかしら?」

正夢?ではないが白昼堂々と告白を受け、それから僕達の付き合いは始まった。



英語で愛はLOVE、恋もLOVE。それに対して日本語は愛と恋を分ける。恋は情熱的で執着が強い。愛はもっと穏やかで大きなものだ。恋愛という言葉はその二つを結び付けたもの、人が恋愛という文字にひきつけられるのは言葉自体素敵なものだから。しかし言葉のように情熱的で穏やかで執着の強いものなんてない。恋を愛に変えていければ一番なのかもしれない。男と女には恋愛ではなく、恋と愛が必要なのかもしれない。

ボクは一人の女を恋と愛で包めたのだろうか。

あの事件から1週間がすぎた、周りは落ち着き今やからかいの対象にまでなっている。
サヤはやはり女の子、からかったあとには恋愛のマナーなのか二人をお似合いだとよいしょしてくれる。
一方男どもはどこまでいったとか、どんなプレイをするかなどニヤニヤしながら聞いてくる。しかししっかりそこはかわしている。なぜならまだなにもしていない、いやできていないからだ。
次の週末にカエデがみたい映画があるといい、ボクを誘った。あれからボクたちはぎこちないなりにできるかぎり一緒にいた。そして二人だけで外にデートにいくのは初めてだ。
最近カエデは可愛く?女らしくなった気がする。前は僕らも同じ格好ができるようなジーンズ姿のイメージがあったが今は僕らが着れないような服を着こなし髪もお団子にしたり下ろしてたりとポニーテール姿はどこにやら。

そして今日は一段とキレイであった。
二人は映画をみたあとカフェでコヒーを飲んで映画の話をした。ヒロキとマサユキと一緒にきたら間違いなくマックでたむろして映画の話なんかそっちのけで、外を歩いてる女子高生のスカートの話で花を咲かしているだろう。

「素敵な映画だったね」

カエデの声で我にかえる。

「深かったね、久しぶりにいい映画をみた」

「私も、あのヒロインみたいに素敵な女性になりたいわ。家事も料理もうまくて誰からも尊敬されるような、じゃないとタクミに捨てられそう」

「なにもしてくれなくてもいいんだ、ただ一緒にいてくれれば」

「まぁ、素敵なこと言ってくれるのね」

「だってそうだろ?一緒にいなきゃなにもできないし、してもらえない。少なくとも俺はカエデの笑顔があればやっていける」

「ばかね」

「なにがだよ!」

「・・・」

「なにさ?」

「恥ずかしいのとうれしいのがごっちゃで、バカしかでてこなかった」

「バカ」

「ほら!タクミだって」

ボクはうれしはずかしの中にいるという実感がもどかしくも心地よかった。



それから3ヵ月僕らは大学3年生も終わりを迎える。からかわれるのも少なく、もう二人の事に関してはスルーされてる。男からのやらしい質問ももう答えられる。キスだってあの映画の日の夜に最高のシチュエーションでできたし、もう何度も夜を一緒に過ごしている。

みなは相変わらずだが、最近は将来の事に悩み戦っていた。サヤはメイクだか化粧品の会社をあたって、マサユキは旅行会社、ヒロキはのんきにアダルト方面と言っているが、本当は映像の編集企画などの職につきたいらしい。一方ぼくは公務員の試験を受けるため勉強中。カエデはとくにやりたい事が見つからないからという理由でゆっくりと過ごしている。でもこないだ部屋にインテリアの雑誌があったのをボクは見つけた。おそらく父の血を受け継いでるのだろう。

彼女の父は海外で注目をあびたデザイナーで今はパリのほうで個人で仕事をやっていると聞いた。母は小さい頃になくしているとも耳にしたことがある。

「みんな卒業したらバラバラだね。なんだか淋しいわ」サヤがホントに淋しそうに言う。

「じゃ月1で飲みにいこう」ヒロキがいつものテンポで言う。

「アホかアダルト会社にそんな暇はないぞ」マサユキがすかさず言う。

「そだな。毎日女優と・・・よーっしゃやる気がでてきた」

「変態」サヤがヒロキの頭をはたく。

するとカエデが話を変え話だした。

「あたし少し学校を休むかもしれない、父のところに・・・」

なに?俺は聞いてないぞ。昨日家にいるときそんな話いっさいでなかった。

「なんでぇ?」

「少し体調悪いみたいなの。たいした事ないと思うんだけど、ほらちょっと社会見学もかねてさぁ。みんなに置いていかれてるしさぁ」

「でも後期のテストはどうするんだ?」マサユキが冷静に聞く。

「うん。一応受けてから行こうと思う。」

「なら学校も休みに入るから平気ね。でもこりゃタクミが淋しがるねぇ」サヤがこっちをみて言う。

「そんな事ねぇよ」必死に言ってる自分がいた。

みんなが笑った。ボクはその笑い声の中カエデの様子を盗むようにみた。しかしその無邪気な笑顔からはなにひとつ読み取れなかった。

そしてカエデは詳しい事を話す前、テストも受けずにパリに行ってしまった。


カエデがパリに行ってからは、後期のテストがあり、就職のガイダンスがあるなど、みな忙しい毎日をすごしていた。

落ち着きだし、また公務員試験の勉強をはじめた頃カエデから手紙がとどいた。

『タクミ元気してる?私は今パリ郊外の小さな会社のお手伝いしながら、父の体を診ています。
詳しい事を話せないうちに行ってしまった事を謝りたい。急に父の具合が悪くなってその日の便でいかなくちゃいけなくてみんなにも連絡できなくて申し訳なかったわ。父は今は落ち着いているけど、体はよくないみたい。日本につれて帰りたいんだけど、頑固でさぁ日本に帰ってもなにもないだとか、俺の最後はここと決めているだとかどうしようもないことを言ってるのよ。しばらくの間、社会勉強含めパリにいます。また手紙を書きます。

            パリから愛をこめて。楓より。』


『手紙ありがとう。最近はテストも終わり、みんなそれぞれの将来のためにがんばってるよ。
お父さん平気なの?よくなってはやくカエデも戻ってくることを願ってます。』


『タクミ〜!私今、父のインテリアの仕事を手伝ってるんだけど、すごく興味がわいてきて楽しくやってます。父の弟子の宮下さんって人がいるんだけど、すごい才能があってまだ20代なのに父に認められて大きな仕事もしてるの。その人について今インテリアの勉強をしているわ。
タクミはどうしてますか?みんなは就活がんばってる?
てかさぁタクミも私に愛があるならなにかしめしてよ!まったく(>_<)
           
             パリから愛をこめて。楓より。』


『楓は元気そうでなにより。やりたい事が見つかってよかったね。お父さんの具合はどうですか?
みんなは4年生になって授業も少なくあまりあわないけど、がんばってるよ!とくにヒロキの野郎が柄にもなくスーツきて走り回ってるよ。
こーゆうの恥ずかしくて書きづらいけどきみを愛してるから書くよ。
          
             日本から愛をこめて。匠より。』


それからしばらく返事は返ってこなかったが、勉強もはかどっていたのでさほど気にならなかった。
ある日、ヒロキがボクになにげなく言った。

「カエデのやつ戻ってきた?」

「いやまだだけど。なんで?」

「じゃ見間違えだな。なんか高級外車に男と乗っててさぁ。いやぁ格好もキレイ系な感じだったし、ただ似てただけだな。なんでもねーや」

そのときみぞおちのあたりになまりみたいなどんよりとした感覚があった。

まさかと思い、カエデの住んでいるアパートに行ってみたが誰もいなかった。もうかれこれ何ヵ月も留守にしているのだ。家賃は?光熱費は?などと余計な事を考えながらも、ヒロキの勘違いだったとわかり安心した。
模擬試験の結果がよく気分がよかったのでカエデに手紙を出すことにした。


『久しぶり!元気にしてる?お父さんの具合は?最近手紙がないので心配しています。こないだ受けた模擬試験の結果がよくこのままがんばればなんとか受かりそうだよ!
あとヒロキが行ってたんだけど似た人をみたそうです。けど服装なんかかなり違ってたみたいだし、間違えみたい。はやく本物の楓に会いたいとみな言ってるよ。一番会いたがってるのは俺だけどね。返事待ってます。

            日本から愛をこめて。匠より』



『手紙出せなくてごめんなさい。最近は父の体調も回復してきて、インテリアの勉強も進んでます。もしかしたら専門の学校にかよって資格を取るかもしれません。
また近々手紙を書きます。          楓より。』



『お父さんもよくなってきてよかった。資格を取るの?これからまた学校とかいくなら会える日も少なくなるね。まぁ今に比べればよいほうか。
みんな就職決まりだしたよ!サヤは第一希望のメイク系、マサユキは資格の試験受かって内定もらったよ。ヒロキはまだだけどあいつも頑張ってるよ!
そーいえばこないだの手紙、愛をこめて、が入ってなかったけど忘れたのかな?
また手紙書きます。
          
            日本から愛をこめて。匠より。』


しばらくしてマサユキもカエデをみたと言った。ボクは気が付くとカエデのアパートの前にいた。中には誰かがいるのがわかった。ブザーをならすと懐かしい声がドアの向こうから聞こえた。ボクは返事をせず待っているとドアが開いた。カエデは一瞬驚いたような表情をみせたがすぐになにも読めない顔に戻った。ボクは変わりに変わったカエデをみて、嫉妬?羞恥?欲望?エゴ?ぐちゃぐちゃすぎてわからない感情が混乱を招き、カエデを求めた。しかし気付くと顔左半面がじわぁっと熱をもった。あのあとどういう道でどのくらい時間をかけて家に戻ったのかわからなかった。


『こないだは悪かった。あまりにキレイになっていた楓をみて感情の整理がうまくできずにあんなことをしてしまって。
でもなぜこっちに返ってきているのに、連絡をくれなかったのですか?高級車の男?正直に話してほしい。

             愛をこめて。匠より』



『もう連絡がこないと思っていたから手紙が届いたときは驚きました。
正直に話ます。私はパリに行ってあらゆるものの見方が変わってまわりの環境からも学ぶものもたくさんあり、やりたい事もやっとみつける事ができた。その手伝いをしてくれたのが、手紙でも書いた父の弟子の宮下さん。なにもわからない私に一から教えてくれて、そのうちひかれていったわ。そして一回こっちに戻ってきたときに資格をとる手続きをしに一緒にきてもらったの。そのときヒロキに見られたのね。そしてまた戻ったんだけど、私子供ができちゃったの。そしたら彼は態度をがらりと変えおろすように言ったの。私、ショックというか自分が情けなくなっちゃって。それを知った父は激怒し宮下さんを勘当し、私を日本に戻した。父はあっちの仕事が落ち着いたらパリの会社を手放してこっちに戻る事にしたの。これも私のせいだわ。そして日本に戻り、手術をして帰ってきたところ、ちょうどあなたがきたの。わがまま言うけどホントはやさしく抱き締めてほしかった。ごめんなさい。』



『あなたの合格を耳にしました。おめでとう!これからは社会人として頑張ってください。私は来週から父と福岡に小さな会社をたてるというのでそこで勉強し、手に職をつけようと思います。匠にはいっぱい迷惑かけたね。ごめんね。お元気で。

              愛をこめて。楓より。』



手紙を見たのは合格祝いで大学のメンバーと朝まで騒いで帰ってきたときだった。手紙を読みおわり、消印をみると手紙に書いてある福岡に旅立つ日がちょうど今日にあたる。
部屋に戻りなにを考えていたかよくわからない。どのくらいそこに座っていたのだろう。テーブルに置いた手紙もう一度読むと最後の、愛をこめて。楓より。が目にはいる。久しぶりな気がした、少しくせがあるが優しくまるい字でかかれたこのフレーズをみるのは。「楓」か、いい名前だ、裸の木から葉をつけ、夏が過ぎ秋にはきれいなあかに。
ふと時計をみると7時をまわっている、まだ間に合うかもしれない。
ボクは走った。
靴紐がほどけ、転ぶ。
通い慣れたこの道の草木たちが笑っているようだ。
息がしづらい。

会ってどうする?

会って何を言う?

わからない。

けど会いたい。

カエデに会いたい。

起き上がりまた走った。

最後の路地を曲がると、道路の反対側にスーツケースをもったカエデの姿がみえた。カエデはタクシーを拾うのか、手をあげている。

「カエデ。」ぼくは力いっぱいの声を出したつもりだったが思ったより大きな声がでてない。

「!?」カエデはなにか聞こえたのか、周りを見回すがすぐやめた。
ちょうどそこにタクシーが滑り込む。

喉をならしもう一度言った。
「カエデ!!!」

カエデはタクシーのドアに手をかけたとき呼ばれたことに気づきすぐにボクを見つけた。

「俺、葉がまたあかくなるのを見たい!」

「・・・タクミ・・・どうしたの?」カエデは涙目になっている。距離があるがかすかに聞き取れる。

「緑の葉をつけたあときれいに紅葉する、葉は落ちる、けどまた春がきて恋をし葉がつき愛すると楓はきれいな紅に染まる」ボクは力いっぱい、まっすぐカエデをみていう。

「今朝あなたが優しく起こしてくれる夢をみた」

「俺は毎日きみが夢にでてきたよ。これって万葉集風にとらえてよいのかな?」

「もう・・・バカ」
葉をつけはじめた草木にしたたるしずくのようなキレイな水を落とし、少しぎこちない、けどボクの大好きな笑顔でカエデはいった。
ぼくも笑顔になる。
カエデのすこしあかに染まった頬をみると幸せになれる。
まるで本物の楓を見ているようだ。
あの笑顔をいつまでも見ていたい。心臓の鼓動がそう伝える。心から思うというのはこうゆうことなのだろう。

久しぶりに雲一つない空であった。その空はどこまでも続いているのだろう。

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