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25夜物語コミュの女友達

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マチコは実に解りやすい女。




好きになった男にすぐ感化される。

ちょっと前の男はホテルの厨房に勤務していたらしく
一緒に外食するたびに、味付けやら使っている食器やら
あれこれ薀蓄を並べていた。

聞いてるほうもいつものことだから半分くらいしか聞いていない。
つまらない女かというとそうでもないから厄介なのだ。
男の趣味の悪さを除けば、実に気持ちのいい友人関係を保っている。

一緒にバーに行ったり映画を見たり。
永いこと友人付き合いをしていた。
そう、私が結婚するまでは、一番の仲良しだった。

結婚して自然に付き合う時間が減り、気付けば二年近く逢っていなかった。
彼女は相変わらず独り身で、気ままに恋愛を楽しんでいるようだ。

ひょんなことで彼女と再会した。

市民図書館に彼女はいた。
私が先に彼女を見つけ、声をかけた。
とてもびっくりした表情で私を見た。

「何よ、そんなに驚いた?」
「あ、思いがけない場所だったから・・・。」
「そうだけど。私だって図書館くらい来るわよ。」
「そ、そうよね。」

彼女の驚き方が尋常じゃなかったから、なんだか悪いことしたみたいな気分になっていた。
「何読んでたの?」
「え?あぁ、お皿をね。」
「お皿?」

私は昔付き合っていた男のことを想像して、ちょっと笑った。

もう別れたと風の噂で聞いてたけど・・・。




「来週末、出張だ。」
珍しく遅く帰宅した夫が言った。
「そう。どこ?」
水割りの支度をしながら聞いた。
「あ、九州のほうに・・・。」
「へぇ〜、九州かぁ。良いなぁ。福岡に友達いるんだよね。へぇ〜。」

夫の出張はさほど珍しくもなかった。

「あたしも行こうかな?」
別に本気で言ったわけじゃない。なんとなく出た言葉なのに・・・。

「あ、遊びに行くわけじゃないんだよ。」
そんなの知っている。
コンベンションでの知見は、通常の交渉とはまた違うもの。
それくらい私だって知っている。

夫の態度がいつもと違う。
なに?

「お土産くらいはお願いしても良いでしょ?」
「ものによるけど・・・。」
夫は私の目を見ずに答えた。
「難しい物じゃないヮ、空港でも売ってるかもね。」

お土産の話に写った途端、夫が大きく息を吐くのを見た。

なんなの?


出張の多い夫。今まで泊まるホテルなど聞いたこともなかった。
連絡は携帯で十分だし、夫には夫の付き合いがあるから。
そんな風にしてきたから。
だから「来週末の出張」もそんないつものお話だと思ったけど・・・。

なんだろう?この違和感。




ノブコはいつも通り少し遅れてきた。
彼女のいいところはすごくシンプルなこと。
勿論いい意味で。
だからめったに会えないけれど、良い時間を過ごせる自信がある。
だから少しのルーズさは目を瞑ることにした。

そろそろ体型を気にしなくちゃならない年だけど
ノブコの食欲を見ているとそんなことは忘れられる。

気持ちいいくらいの食欲とどんどん開けられるワインのボトル。
そうしてストレートな会話。

「知ってる?」
「何?」
「マチコの新しい男。」
「え?シェフでしょ?」
「違う違う。こんどはサラリーマンらしい。」
「らしいって?」
「あたしもよく知らないけど、噂じゃかなり本気らしい。」
「へぇ、結婚するの?」
「それがね。どうも・・・。」

ノブコの話だと相手は妻子持ちとか。

ふうん・・・・。

コメント(3)

出張の前夜。夫は一人で支度をしている。




いつもは私がやるのに・・・。

「良いよ、忙しそうだし、それに資料とかも入れて行くから。」
私には妙に確信があった。
夫は出張だけじゃない。
何かある。

「ネクタイとかもお気に入り入れて行きたいしね。」
半分皮肉めいた口調で答えた。
「え?そういうわけじゃないよ。本当に細々あるからさ。」

寝室のダストボックスに下着の入っていたらしい空き袋が入っていた。靴下もシャツも新品・・・、か。なんで?


夫は全身に疑問をまとって出かけていた。
確かにそのコンベンションは九州で開催されている。



「で、週末は独身なわけね。」
ノブコと飲むことにした。

「知ってる?」
「何を?」
「出張先でのアバンチュール、案外簡単に解るらしいよ。」
「たとえば?」
「宿泊先のホテル名を言わない、とか。」

そんなのいつものことだから。

「いつもより洒落たスーツで行くとか。」

それは無いな、通勤服の中で一番上質なもので出かけたけど・・・。

「そそ、決定版はね、新しい下着だって。笑っちゃうね、ストレート過ぎてさ。」

ノブコは心から可笑しそうに笑った。
私も一緒に笑う。

「そんなことしたらばれちゃうよね。」





帰ってきてからというもの、夫は少し変だった。
普通に普通にしようとしている。
裏切りは間違いない事実、そう思うようになった。
相手は誰?


そんな時、マチコから電話があった。
「逢わない?」
「良いわね。」

あの図書館での日以来だった。
小さな洋食屋で会うことにした。


「なんか変わった?」
「え?どうして?」
「マチコきれいになった。」
「そう?お化粧変えたからかな?」
嬉しそうに笑う。

「そういえば素敵な彼ができたって、聞いたけど。」
私の問いにマチコの目がきらりと光った。

「うん、素敵な人よ。でも・・・。」
「でも、何?」
「思ったより素敵じゃなかった。」
「どういうこと?」
「なんか奥様のことばっかり話して。」
「やだ、不倫?」
「私的には純愛なんだけど。」
「そんな・・・。ルール違反じゃないの?」
「だいたい結婚しているのに他の女に目が行くのはね、奥さんにも責任あるのよ。」
「なんですって。」


思わず立ち上がってしまった私。

その時気付いた・・・。
お店のスタッフにも客にも私たちの話は筒抜け・・・。
私たちは場所を替えて、話を続けた。


マチコの話、ほんとなのかしら?

    「なんか奥様のことばっかり話して。」

どんな話をしたのかしら?


「どんな奥様なの?」

私の問いにマチコの目が再び、きらり。

「そうね、趣味の問題とか・・・。」
「趣味?何それ?」
「アクセサリーをね、買おうとしたの。」
「うん。」
「素敵だなって思うものは片っ端から否定されたの。」
「それで?」
「彼の言いなりに買ったヮ。」
「へぇ〜、どれ?」
「これ。」

マチコは胸のペンダントを示した。
「あら!面白い。陶器?」
「そう、レプリカらしいけど、なんでも隠れキリシタンの遺跡にまつわるものらしい。」
「ふうん・・・、面白いエピソードね。」

私はマチコの胸で揺れているペンダントに触れた。
白い地肌に藍色の染付文様。
縁取りは銀かしら?

「マチコは本当はどういうのが欲しかったの?」
「え?そうね、ごく普通の石が良かったな。だってこれってそこにしか売ってないのよ。」
「そこにしか・・・。それが素敵なんじゃないの?」
「そうかな?わざわざ不倫してきましたって言ってるようなもんでしょ?」

マチコの答えになんだか笑ってしまった。
笑うところじゃないのは解っているのに、可笑しかった。

「で、続けるの?その彼と?」
マチコはまっすぐに私を見た。
「私、彼女を泣かせたかったのかもしれない。」
「泣かせる?」
「そう、彼女いつも幸せそうで悔しかったから。」
「へぇ〜、そんなお友達居たの?」
「えぇ、居るわ。いつもきれいにしていていつも幸せそうで。」

マチコの顔が一瞬歪む。
泣きたいのはあなたの方なのね。

私の胸の中に様々渦巻いていたものが一瞬にして静まり、そうして褪めて行った。

「彼のこと愛していたわけじゃないの?」
「ちょっとは好きだったかもしれない。でも冷めた。」
「結論早いのね。」
「これも要らない。」

マチコはペンダントを外した。

「要らないの?じゃぁ、頂戴。」
マチコは驚いた顔をしたが、何も言わなかった。
私はそのペンダントを首にかけた。
何かとても重い。重いけどして帰らなくちゃ。


「お帰りなさい。」
「ただ・・・・いま・・・。」

夫は私の胸のペンダントに心底驚いた顔をした。
決定的、そう思った。

「可笑しい?」
「な、何が?」
「このペンダント。」
「いや・・・。」
夫が唾をごくりと呑み込むのが解った。

「素敵でしょ?こういうの好きなの。」
「そう・・・だよね。君はそういうの好きだ、うん。でも・・・。」
「でも?」
「どうしたの?それ。」
「買ったの。」
「買った?」

夫の緊張感が無くなったのが解った。
「どこで?」
「デパートの物産展。」
「そうなんだ。」

夫は心底ほっとした顔をした。
私はどうやって夫に白状させようか考えていた。
様々な事象が一致する。
マチコと夫は一緒に過ごしたのだ。
私が何も知らないと思っている。

「ねぇ、あなた。」
「何?」
「お願いがあるの。」
「お願いって。」
「欲しいものがあるの。」
「僕が買えるものならいいよ。」



「そうね、10万・・・、高い?」
「10万か・・・、良いよ。」
「良かった。」
「ところで何が欲しいの?」
「うん、水割り作る?」
「好いねぇ。」

私がキッチンに入るのを見て、夫が大きく伸びをするのが見えた。

すっかり安心している・・・。


「乾杯。」
夫がグラスを挙げた。
何に?
私の企みも知らずに・・・。
「乾杯。」そう、私の企みの成功を願って・・・。


「何が欲しいの?」
「うん・・・。」
私はすぐには答えない。
「お代りは?」

夫はお酒好きなくせに弱い。すぐに酔う。
私は酔うのを待った。

「あのね、私のお友達。」
「友達?」
「そうマチコって言うんだけど。知ってる?」
「あ、あの・・・、ワインがぶ飲みするって言う・・・。」
「あら、それはノブコよ。」
「そうだったね、でそのマサコさんがどうしたの?」
夫はわざと間違ったふりした。

「マチコよ、マチコ。彼女どうやら失恋したみたい。」
「失恋?」
夫が変に真面目な顔で聞いてきた。
「どうして?」

「どうしてって?私にはよく解らないけど、珍しく彼女、自分から冷めたみたい。」
「どう冷めたの?」
「え?つまり興ざめしたみたい。」
「興ざめ?」

夫はすっかり酔いがさめたみたい。
「興ざめって、どういう事なんだ。」
夫は目の前にマチコがいるみたいな口ぶりで私に問う。
「なんでも趣味が合わなかったとか・・・。」
「趣味ぃ?」
「そ、マチコ案外こだわる子なの。なのに彼女の見立てを否定したらしくて。」
「そんなので冷めるのか?」
「さぁ、解らないけど、好きなものって人それぞれだから。」
「そうかもしれないけど・・・。」

夫は何か考えている感じ。

「マチコの好みって意外とシンプルだから。」
「・・・。」
「押し付けられて頭来たんじゃないの?」
「押し付け・・・?そうかな?」
「これマチコの見立て?」
「いや、僕。」


はい、あがり。
 

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