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25夜物語コミュの二十五時   2

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母に叱られたことのない私は、母の強い口調にうろたえ
その後は自分のものを座敷に持ち込むことはなかった。




夏の終わりには、座敷の畳はあげられ、用のない限り座敷の雨戸は閉じられたままだった。
薄暗い廊下。
閉じられた襖。
盆のにぎやかな部屋とはまるで違う静寂・・・。

受験は無事に終え、私は市内の高校に通うようになった。


私が高一の秋、長兄が結婚した。
結婚式に備え、座敷の畳は新しくなり、襖も障子も張り替えられた。


奥座敷には祝いの屏風がたてられ、兄は紋付を着て緊張していた。
やがて、花嫁がやってきて、家のしきたりに従った作法で奥座敷に入ってきた。
神主の祝詞の後、杯が交わされ、晴れて二人は夫婦になった。


披露宴のはじまり。
祝いの膳が用意され、運ぶのは女たちの役目。


台所には近所の主婦たちが駆けつけて、一緒に来た子供たちは庭で遊んでいた。


座敷は酒宴の場となり、夜遅くまで続いた。
やがて新郎新婦が自室に戻るのを合図に、客たちは帰り支度を始めた。

お膳は台所に下げられ、手際よく食器が片付けられていった。
近所の主婦たちもお役御免。
お土産を手に帰って行った。


さすがにこの日だけは都会から来ていた叔父たちの世話ができなくて
近くの旅館に泊まってもらった。
旅館の迎えの車に、叔父たちが乗って行った。


叔父たちの乗った車を見送り、家に入ろうとした時だった。

あれ?

子供が一人、奥座敷に入っていくのが見えた。
みんな帰ったはずなのに・・・。
だれ?


私はその子の後を追いかけてみた。

奥座敷はすっかり片付き、誰もいなかった。



祝いの屏風が立てかけたままだった。

隠れているのかな?そう思ってそっと屏風の裏を見てみた。
誰もいない。

錯覚だったのかな?そう思って座敷の明かりを消して、襖を閉めた。

でも、でも・・・、確かに聞こえる・・・。

あれは子供の足音・・・。


私はもうそれ以上探すのをやめた。

母が台所のほうから私を呼んだから。

「もう遅いから寝なさい。残りは明日片付けよう。」


兄夫婦は結婚式を終えると新しい住まいに移って行った。
母は寂しそうな顔をしたが、父と兄が話し合った結論に口を挟むことはなかった。


そうして、家は再び元の静寂を取り戻した。

私はあの夜の子供のことをすっかり忘れていた。


やがて私は大学生になり家を出た。

家は両親と祖母の3人だけになった。



それから10年が過ぎた・・・。

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