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25夜物語コミュの25夜物語 5

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18XX年

ヨーロッパの片隅の小さな王国。
シャルル・アンリは未来の国王として父王の傍で様々な事を学んでいました。
外国との交易、自国の産業、課税の事、内乱の治め方・・・。
シャルル・アンリは利発な少年でした。
見目麗しく、誠実。
兵士としても敵を恐れない大胆さと熱い心を持っていました。

隣国からの花嫁候補は数知れず。
使者は数多の贈物を携えて訪れるのですが、どの候補も気に入りません。
無理もありません。
シャルル・アンリは国内で保護推奨され、交易の一番の稼ぎ頭、ガラス職人の娘、オノリーヌと恋仲だったのです。

何も知らない国王は、頑是ない王子に頭を痛めていました。

ある年、北方の豪族が反旗を翻し、王宮を襲いました。
一旦はシャルル・アンリ率いる国王軍の勢いで沈静化したものの
豪族とその黒幕になっている大国との繋がりは消えず、地下で連携を強めていました。
豪族は降伏の印として、国王に娘を差し出しました。
シャルル・アンリとたいして年の違わない娘を国王は後妻として迎え入れたのです。
若く美しく、そして野心家の豪族の娘はあっという間に国王に取り入り、懐妊したのです。
生まれたのは男の子でした。

若い王妃はシャルル・アンリ追放を企てます。
謀反を仄めかす寝物語に、老いた国王は疑念の眼差しで息子を見るようになりました。
生まれたての第二王子に国王は策士の重臣をあてがいました。
その重臣こそ、若い王妃の隠れた愛人だったのです。
そんな事おくびにも出さず、王妃は閨でかいがいしく国王を喜ばせていました。

オノリーヌは城内を比較的自由に立ち回れる娘でした。
ガラスの製品を納めたり、王室からの注文をとったり。
もちろん、シャルル・アンリとの関係は誰も知りません。
工房と王宮と自由に出入りし、王宮の下働きの女達にも一目置かれていました。

オノリーヌの耳に若い王妃と重臣の噂が徐々に・・・。
王子を追放する兆しも感じ取っていました。
オノリーヌはシャルル・アンリに忠告します。
「気をつけて。」

やがて・・・
国王は寝室である朝突然亡くなっていました。
心臓麻痺、と若い王妃に繋がっている医者は告げました。
確かに外傷は無く、その日に限って王妃は幼い王子の病気を理由に別室で休んでいました。王妃の関与はその場で否定されたのです。
密かに食事に加えていた野草の成分が国王の心臓を徐々に弱めていました。
知っているのは王妃と愛人の重臣、そして医者。

シャルル・アンリは城を出て行くことにしました。
王妃は国王の形見を分けるという鷹揚さを示しました。
シャルル・アンリは
「では、父の首に下がっていたガラスのネックレスを。」
王妃は宝石ではないガラスのネックレスに不審に思いました。
ガラス工房の娘を呼び、そのカットされたガラスの不思議な文様に何か特別な意味でもあるのかとたずねました。
工房の娘、オノリーヌは
「はい。王妃様。あの首飾りはシャルル・アンリ様のお母様ご本家の文様を刻んでおります。」
若い王妃はその首飾りをまるで汚いものでも摘むようにして
シャルル・アンリに手渡しました。


シャルル・アンリは母の生国に身を寄せました。
母の兄弟たちは皆、病気で早世していました。
祖父の血を継ぐいとこもまた病弱で、明日をも知れぬ命・・・。
立派に育った外孫を見て、祖父は次期後継者を誰にすべきか告げました。

シャルル・アンリは誠実に祖父の下で学び、家臣達の信頼を得、力をつけていきました。

やがて、父の死の真相を知る時が来ました。
それは、オノリーヌからの報告。
ガラス工房の娘は注意深く城内を探り、国王暗殺に加わった者たちの血判書と
秘密の薬草の処方箋を手に入れたのです。

シャルル・アンリは、軍隊を引き連れて自分の生まれた国へ乗り込みました。
血を流すつもりはありません。
夜の闇の中で大群を引き連れた王子は、城内にいる王妃に告げました。
「この国は私の物。私こそが正当な後継者。命だけは助けてやるから、即刻出て行くように。」
「何を言う、私が産んだ息子こそ、正当な血筋。」
「では、後継者の印の王の剣を示せ。」
「王の剣・・・・?」
若い後妻の王妃は事を急ぎすぎました。
王から聞く間を与えられていなかったのです。

ガラス工房に昔から仕えていた老人が言いました。
「王の剣の隠し場所は・・・。」
「どこにある、言いなさい。」
「はい、王のガラスの首飾りを王が生まれた日の朝、バルコニーの一番高い柱に置き、日の出の光りに当てる。朝日は一本の光りに収束され、城壁の一部に当たる。そこに隠されているのです。」
「ガラスの首飾り・・・とな。」
王妃はわなわなと震え始めました。
「オノリーヌを呼べ。」
オノリーヌをはじめとした工房の者たちは、すでにシャルル・アンリの計らいで安全な場所に移っていました。

シャルル・アンリは首からおもむろにガラスの飾りを取り出しました。
図らずもその朝が先王の生まれた日。
そうして
工房の老人の言ったとおりに、ガラスの首飾りは朝の光りを浴びて
一本の光りの道を作りました。
そして壁の一部に突き刺さったのです。
シャルル・アンリの兵隊がその壁の細工を発見し、壁を取り除きました。
そこには、数々の宝石で彩られた王の剣が・・・。
正当な王の継承者の印を手に入れたシャルル・アンリは、王妃とその一派を追放し
生まれ育った国の王に返り咲いたのです。
祖父の国と自国、二つの国の王となったシャルル・アンリは、オノリーヌを后にし、たくさんの子供たちに囲まれて幸せに暮らしました。

オノリーヌの工房の者たちは、国の宝としてますます保護され、後世までその技術を継承し、国を豊かに支えました、とさ・・・。

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25の短編  第6作 ギヤマン    

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