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Jumpin jack flashコミュの●ジャンピン・ジャック・フラッシュ論●

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それが日本語であれ、英語であれ、ロックンロールとはまずもって言葉が歌われる音楽、エクリチュールの流れ、運動である。言葉なくして如何なる激しい演奏を露呈させたところで、それはロックンロールではない。

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の詩は革新的だ。キースが雇っていた大足の庭師のヨタ話を元に書き上げたと言われるその内容の、恐るべきアヴァンギャルド。徹底的に無感情・無感覚であり、意味的に脱構築されていると言っていいだろう。

このような楽曲、しかもこれ程世界的に有名なものは、今もって他には見当たらない。ニルヴァーナの「スメルス・ライク・ティーンスピリット」がやや近いかも知れないが、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の方が遥かに軽やかだ。「スメルス・ライク・ティーンスピリット」が“まあいいや、何だろうと、気にするな”とダウナーに締めくくられているのに対し、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は“ホンの冗談だってば…”でいとも軽薄に事を済ませてしまう。

その昔、ディランがキースに「サティスファクションはオレにも書けるが、お前にミスタータンブリンマンは書けないだろう」と絡んだ話は有名だが、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」こそ、ディランには決して書けないシロモノであろう。
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「ジャンピン・ジャック・フラシュ」

オレはハリケーンの中で生まれた
打ちつける雨にお袋はビビッて泣き喚いた
でも、どうってことないぜ
ホンの冗談、どうってことねーよ
オレ様は稲妻野郎
ホンの冗談

歯ナシの髭モジャババアに育てられ
背中をムチで打ちのめされて仕付けられた
でも、どうってことないぜ
ホンの冗談、どうってことことねーよ
オレ様は稲妻野郎
ホンの冗談

俺は溺れ、死体で打ち上げられた
ところがドッコイ、蘇ってやったぜ
足は血まみれでパン屑も真っ赤っか
頭に刺さったでっかいクギがオレの王冠さ
でも、どうってことないぜ
ホンの冗談、マジになんなよ
オレ様は稲妻野郎
ホンの冗談だっちゅーに

ジャンピン・ジャック・フラシュ、ホンの冗談、冗談だってば!…

(作詞:ジャガー&リチャーズ)
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軽やかに滑り出し、跳梁するイントロの循環コードを補完する縦方向の野太いカッティング、しばしの余韻の後、おもむろにカマクビをもたげる世界一有名なギターリフ。その一瞬に圧縮された空気感は、直面したもの全てに接続する力を持っている。

それは、ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」の、たった2つの音で目の前の世界を炸裂させてしまうドラムのフィルイン、チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」の、小さくて鋭い 螺旋のようなギターの軋み、レッド・ツェッペリンの「ロックンロール」の、ドラムの土俗的かつ密室的な“三連”の“四連”発、ビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」の、どこか悠長でありながらゴリゴリとした質感を備え、直後のジョン・レノンのシャウトへの引導を果たす、全宇宙を集約したような3つのコード、ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」の、売春婦のスキャットに合わせてあの世とこの世を行き来するかのようなベースのスライド音、セックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」の、何の前触れもなく空気をズタズタに分断する制圧と反乱を合わせ持った厚顔無恥なファンファーレ等に相通じている。

この曲はR&B気違いと言われたプロデューサー、ジミー・ミラーとストーンズの初のコラボレーション作品らしく、ミラーとしては、その直前に録音されたサイケデリックかぶれの「サタニック・マジェスティーズ」に対する不評を一掃する為、ストーンズを彼等の音楽的ルーツであるストレートなR&Bサウンドへと回帰させたということらしいが、シンプルであろうが、黒っぽかろうが、やはりこの楽曲のコードの響き、アレンジのすべては、歌詞と同じく徹底的に無感情・無感覚であり、何らかの自己投影を行うには余りにも無根拠であると感じさせられる。

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のすべては、その歌詞からコードの響き、アレンジに至るまでが、まったくもって感情的ではないのである。「ジャンピン〜」だけでなく、他のストーンズの楽曲、例えば「ブラウンシュガー」のイントロ部分の各音素による速さと遅さの複合関係から成る不安定なリズム、「悪魔を憐れむ歌」の間奏部分の両岸を侵食し、真ん中で速度を増す流れのような、キースの突発的で痙攣じみたフレーズ(まさに、切り裂きジャックのような…それは一本の折れ曲がった、錯乱した抽象の線、単なる“間奏”ではなくストーンズという事象の“間”をすり抜けるジグザグの線でもある)、「ホンキートンク・ウーマン」のイントロ部分で間の抜けたカウベルに重ねられる、まるでこの俗世の残響音のようなくもぐったコードの振動や、歌を補足する奇妙なリフ、また、その間奏部分のヨレヨレであることが返って勢いに繋がって行くようなリード等、これら一群のロックンロールと呼ばれる音楽の一形式の突出した部分に充溢しているのは、感情以外の、否、感情以上の何ものかである。

問題は感情的でないものが、つまり、それ自体としてはいかなる感情移入も不可能に思えるものが、何故これほどまでに我々の心を捉えるのか、ということだろう。感情によって楽曲と繋がらないとすれば、我々は何によって、それと連鎖し得るのか。多くの場合、感情とは現状を解釈した結果生まれる意味から成る。意味があるからこそ、感情はそれと似通った意味性を持つあらゆるものへの、代償的な移入が可能となるのだ。

ところで、意味とは、いつもある種の“湿り気”として顕れる。意味は解釈の結果生まれるが、その解釈とは、常に相当ウエットなものなのである。何故なら、解釈はその性格上常に後手に回らざるを得ないのであり、それによって獲得した意味もまた常に後付けされたものでしかなく、根本的に自己弁護的であり、正当化であり、ひとつの悪あがきであるからだ。

僕はそもそも、感情とは挫折した衝動であると考える。衝動とは自身が発する排他的な生の閃きであり、その排他性をもって充足しようとする衝動は、他との共存を余儀なくされる公共空間としての現社会の中で挫折し、感情へと変質する。
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我々の雑多な衝動はほとんどの場合充足されない。あの女とヤリてー!!とか、野郎ブッ殺す!!とか思っても現社会では即実行に移すわけにはいかない。そこで挫折した衝動のエネルギーは行き場をなくし、充足の代償として感情へと劣化、変質するのである。例えば俺のあのコに対する気持ちはもっと純粋なんだ、とか汝の敵を愛せ、てな具合に巧妙に他者を回避し閉じた世界の中で自己弁護的な物語を紡ぎ出す。つまり感情とは、だからそれがどれほど晴れ晴れとしたものであっても、どこかに“負性”を抱えているのである。

(某雑誌掲載/筆者)
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衝動とは常に意味以前であり、発せられた瞬間に消滅する速度を備え(まさに“ジャンピン・ジャック・フラッシュ”である)、感情に対しての垂直的方向、横断的運動を指す。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」という楽曲が“無感情・無感覚”“いかなる感情移入も不可能”であると思えるのは、感情を構成すべき“湿った意味性”が歌詞及びコードの響き、アレンジのすべてから駆逐されているからであろう。

例えば「アンジー」のような楽曲が感情への追従をその存在理由としているのに対し、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は奇跡的に感情を遡り、まさに“衝動そのものを直接的に”表現し得たのである。しかも、衝動を、音楽の形を借りて表現したのではない。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」という音響自体が、それを聴く人自身の発露する生々しい衝動そのものへと生成変化するのであり、しかも、それは、それ自身が音響として鳴っている間は決して感情へと挫折、変質することなく、自身の響きの中に充足される。

現社会ではほとんど得られない衝動の充足感を、ただ、CDやレコードをオンするだけで得られるとすれば、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」と名付けられた空気の振動を、衝動のそもそもの発信源であり、我々の身体を形作っている無数の細胞群が、すなわち多くのオーディエンスがこれほどまでに求めるとしても不思議ではあるまい。

繰り返しておくが重要なことは、これは衝動充足の疑似体験ではない。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の音響は、まさに、僕自身の衝動及びその充足感として作用する。 感情と衝動、それらはたいてい混同して使われている。聖なる衝動を区別すべきだ。

僕は、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の無感情・無感覚で、感情移入不可能な歌詞、コードの響き、アレンジを数あるロックンロールの中でも感情を排し、演奏自体を衝動そのものへと生成変化させた革新的なものであると断じた。特にその歌詞は、茫漠とした世界を言葉で限定することで(言葉が本質的に対象を限定するものであることは誰でも知っている。しかし、言葉は限定するものであるがゆえに却って標的を絞り込む効果を持つ。それゆえロックンロールは言葉、歌詞を必要とする)、衝動に鋭いエッジを与えている。無感情・無感覚な言葉が、それによって湿った意味性を掬い上げることなく衝動そのもののカタチを切り出し、自らが衝動そのものになるといったイメージなのだ。

しかし、感情移入を拒むこと、それにより衝動自身と同化することにロックンロールの価値を置くのであれば、いっそ歌詞や循環コード、統一されたアレンジを排したインプロヴィゼーション音楽の方が、その概念に近いのではないかという疑問が残る。また、ポエトリーリーディングのような、さらにシンプルな表現形態の効用も考えられる。

例えば、一見衝動に手を加えず表出させているように見えるフリージャズの演奏を考えてみよう。それはロックンロールと何が大きく違うのか。フリージャズと比べると、明らかにロックンロールは形式的に制限されている。しかし、細い管(形式)を通って噴出する“勢い”がロックンロールにとって重要なのかも知れない。

また、フリージャズがあくまで“音楽”であるのに比べて、ロックンロールはあくまで“唄”である。岩波国語辞典によれば、唄とは“声に節をつけて歌う言葉”とあるが、衝動の表現法として、“音楽”つまり、楽器による演奏があくまでも代償行為的であるのに比べ、“唄”はより、直接的であると言える。優れた楽器演奏は、より巧妙に彼岸の世界を描き出すかも知れないが、いわゆる現実とは剥離し始めるような気がする。

フリージャズという衝動の嵐はあくまで茫漠としたままであり、良きにつけ悪しきにつけその冗長性は衝動を陶酔へと変質させてしまう。それはなさがら忘我の極地であって、もはや衝動ではなく、空間、世界との奇妙な一体感が全体を被ってしまう。しかし、衝動とはまさに“我(=自身、自我、固体)”から発するのであって、“我”を忘れた時空に衝動が奔るすべはない。つまり、陶酔もまた挫折した衝動の一形態であって、それ以上の何ものでもないのだ。

陶酔の中にあっても生が“ランと目を見開いていること”。それは、何万もの聴衆の前で踊り狂いながらその実、ニコリともしないミック・ジャガーの蛙のような面付きであり、死にたくなるような騒音の中でただ一点を凝視し続けるジョニー・ロットンの薮睨みであり、女王の冠を付け、胸にボールを入れたドレスから汚いスネ毛をのぞかせるカート・コバーン的な覇気である。世界や空間と一体化などせず、逆にそれらを自身の内部へと取り込み拡張し続けようとする力への意志が、陶酔と衝動、フリージャズとロックンロールを明確に分け隔てる。…エッ、あんたジャズメンだって!?知ったことかよ。

少なくともロックンロールに於いては、音楽=音の響きだけでは、我々は何か絞り込まれ、的を得たものを掌中に出来ない。言葉だけが、この空気中からそれを、欲しかったある感覚、状態を限定し、即座に取り出してくれるのだ。言葉なしで、この世界に、つまり茫漠としたものに亀裂を入れることは難しい。言葉こそが、ロックンロールを稼動させるエンジンである。冒頭で述べた通り、ロックンロールとは常にエクリチュール(書くこと・書かれたもの)の流れなのだ。これまでに優れたロックンロールであると断じられたすべての楽曲が言葉を伴っていることが、ある程度それを実証してくれる。その歌詞の多くは“反感情的”であり、ロックンロールが演奏されるや否や、歌詞は衝動そのもののエッジとして作用する。

もちろん、音楽も重要ではある。それは分かり切ったことだ。ショーペンハウアーが看破したように、音楽には他の芸術と比べて、何かの形を借りずに直接身体の奥底にまで到達するという優越性がある。だから、ロックンロールは常に、必要最低限の音楽を身に纏って表れるのだ。再度、確認しておこう。茫漠とした世界を限定する言葉が衝動を浮き上がらせ、そのエッジを明解に示す。姿を露にした衝動は音楽というスープの中で自らを享受し、充足すると言う訳だ。
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jump('in)/
1.跳ぶ, 跳び上がる, 跳躍する
2.飛びかかる 飛びつく
3.急にとび移る
4.突然襲う,激しく攻撃する

jack/
1. 男, やつ, 少年
2.金(かね)<米俗>
3.ダイヤのジャック(若い兵士にかたどった札)
4.(電気等の)差し込み口

flash/
1.〔光などの〕ひらめき, ぱっと出る発火, 閃光(せんこう)
2.〔感興・機知などの〕ひらめき
3.瞬間
4.虚飾, けばけばしさ.
5.他人に性器をちらりと見せること<俗>
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僕の知る限り「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」はあちこちの訳詞で“稲妻野郎”と表記されていたように記憶しているが、僕はこの訳が結構気に入っている。雰囲気的には多分そんな感じだろう、と思えるからだ。念の為に辞書を牽いてみると上記のような内容であった。で、気に入ってはいるが、これが何故“稲妻野郎”なんだろう。何かのスラングなのかも知れない。しかし、この内容は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を衝動そのものであると断じた僕の見解に適うものだ。

この“稲妻野郎”は、まさに“衝動”なのである。

(ウッディー)

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