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黒き運命の下で

注 この物語に出てく地名、人物は実在のものとは一切関係がありません

第一話 最果ての地へ
4月14日 水曜日
その日は やけに蒸し暑い一日だった。
学校長「いやいやこの度はヒルズインターナショナルカレッジへの合格おめでとう
・・・えーと」
晶「晶です、獅堂 晶(しどう あきら)」
学校長「ああ そうだったそうだった いやいやすまないねこの年にもなると物忘れが激しくってねー、ああそんな話は如何でもいいんだ まずはこの学校について説明しようか」
この学校は基本的に・・・なーんて学校長が言っている間に俺は別のことを考えていた。

なぜ俺はここに居るんだろう?
そこには今まで見た事の無いような植物と、大量のハエと外国人。
何故こんなこんなところへ来る破目になってしまったのか 俺はきっかけとなった一日を思い出した。

とある一日
中学生のころ、俺は学校で問題を起こしてしまったため停学になり
それを気に学校をサボって家に引きこもるようになっていた。
そしてその日は 俺が学校にも行かなくなってから、ちょうど二ヶ月がたった日のことだった。
その日もいつもと同じように部屋でパソコンをやっていたら
ドタドタドタ、と ものすごい勢いで人が走って来る音がした。
何かと思って耳を傾けてみると、
???「あきらぁぁぁ」
その人は叫び声とともに俺の部屋のドアをこじ開けた。
晶「うわぁ! いきなり開けんなよ、親父」
この人が俺の父親 本名は獅堂 鬼神(しどう きしん)
仕事は獅堂組の頭をやっている まあ簡単に言ってしまえばヤクザだ。
それと先ほど父親といったが、それは義理で、
俺の本当の父親はこの人に支部(ヤミ金)にお金を借りてしまい その額が払えなくなるほど膨れ上がってしまって・・・そのころ1歳だった俺を置いて自殺、母親はトンズラしてしまった。
その後そのことが獅堂鬼神の耳に入ったは良いがそれからが大変、
この人がまた情に厚くて厚くて、この子がわしが育てる!とか言い出してしまったらしい。
親父「聞いてるのかあきらぁぁぁぁ!!」
晶「うわぁぁ! 何だよせっかく人が回想シーン入ってたのに!」
親父「そんなことは如何でも良いんだ!お前もう二ヶ月も学校サボってるって本当なのか!?」
晶「え?、ああ 今更気付いたのか」
サボり始めてから二ヶ月もたってから気付くようじゃ遅いと思うかもしれないけど
最近獅堂組の下のほうで争いがあったらしくて親父も忙しかったんだろう。
親父「このままじゃ進路が危ないんだぞ!? 分かってるのか!?」
晶「別に良いよ、そうなったらここ入るし」
とだけ伝えてまたパソコンをやろうとすると、
親父「駄目だ駄目だ駄目だぁぁ!!」
とまた大声を出すうちの親父
晶「何でだよ! 組のメンバーは増える、息子の就職先は決まる、一石二鳥とはまさにこのことだろ?」
親父「駄目だ!あんなところ人の働くところじゃない! そんなとこに息子を行かせてたまるかぁ!」
おい、その人の働くところじゃないところで働いてるのは頭やってるのは誰だよ?
親父「とにかくだ、そんな考えは駄目だ きちんと高校に行って、ちゃんとしたところで働くんだ!」
晶「高校へ行くって言ってももう出席に数がギリギリで卒業できても高校にはいけないって先生が嘆いてたぞ?」
親父「それなら大丈夫だ! そんなお前でも行ける学校がいくつかあるんだ」
と、後ろに抱えていたパンフレットを差し出してきた。
君でも入れる!と書かれた見出しの後にいくつかの学校名が書いてある 
幸せ精神高校、機動兵訓練学校・・・
晶「何だこの明らかに怪しい学校たちは! これならまだ組に入るほうがマシじゃないのか!?」
親父「違う違う その裏だ裏!」
言われてパンフをひっくり返してみると
そこに書かれていたのは海外留学コースについてだった。
晶「オーストラリア留学? ヒルズインターナショナルカレッジ?」
親父「そうだ、そこなら行けるし大学へ行くのに楽になるっていう事なんでな」
晶「ああ、最近大学の留学枠が増えてるとか何とかニュースでやってたな」
親父「そうだろう?そこでだ、かわいい子には旅をさせろというし、もう申し込んどいたからな」
晶「はあぁ!? 本人の了承は!?」
親父「そんなものは後からとればいい」
晶「本人を前にして言う台詞かよ!?」
親父「まあとにかくだな、お前は来年からその高校に通うんだ、分かったな」
晶「あ、おいっ」
すると親父はそう言い残して出て行ってしまう。
ったく、勝手に決めやがって。
でも確かにこの組に入れないとなると 高校と大学に行かねばまともな仕事に就けないのが今の社会だ。
それを考えると留学は楽な道かもしれない。
晶「留学、か・・・」


学校長「というわけでですね、この学校にはたくさんのスポーツ科があるわけですけど・・・あのー、聞いてますか?」
晶「あ、はい 一応は」
学校長「それではとりあえず晶君が入る予定となっている教室のほうへ言って見ましょうか」
そうだ、全部あの時が悪いんだ。
そしてこうして俺の学校生活が始まっていった。

オープニング

先生「というわけで今日からこのYEAR10に入る事なった獅堂 晶君だ、みんな仲良くやってくれ」
これが俺の入る事になったクラス、通称YEAR10。
このクラスは日本で言えば高校一年生のクラスである。
ここはYEAR10のクラスだがそれはHRの時だけの話で、基本授業はそれぞれの先生のクラスに行って授業を受ける形となっている。
晶「よろしくお願いします」
この学校は最初現地のオーストラリア人と各国からきた留学生だったんだが、さっきの学校長の話によると日本からの留学生が増えてしまったため二年前に日本人留学生専用の学校に変わってしまったらしい。
先生「えーと、あ、じゃああの空いてる席に座ってもらえるかな?」
晶「はぁい」
と、生ったるい返事を吐きながら席に着く。
はあ、とため息を一つつき ホームルームを適当に聞きながら机に突っ伏した。
〜約五分後〜
ホームルームも終わり休憩時間のようだ、早速何人かが話しかけてきた気もしたが全部スルーした。
他人と付き合うのは苦手じゃないが だからといって、馴れ合う気はチャンチャラ無い。
そんなこんなで過ごしていると、
先生「あーそうだ、晶君」
と、いきなり呼びかけられる。
晶「はい?」
先生「今日の午後はスポーツがあるので授業はありませんから、自由に見学して下さい」
晶「わかりました」
そう言い残すと先生は部屋から出て行った。

そして午前の授業が終了。
授業は今日はどんな授業をやるか、見たいな感じで俺は見ているだけだった。
最初は先生の言っていることが聞き取りにくかったが直ぐに慣れた。もともと英語は得意な方だったしな。
晶「えーと、オフィスはあっちだったよな」
本来なら皆はこの時間にランチを取るらしいが・・・大して腹も減ってないし、そのまま各科の見学に行くか。
そしてオフィスへ向おうと部屋を出て体を目的地のほうへ向けた瞬間に、
???「どいてどいてー!」
と、そんな声がした気がして振り返ろうとするが
ドーン!!
とか効果音がしそうなほどの勢いで何かがぶつかってきた、
何とか踏ん張ろうとしたがその重さを支えきれず倒れこんでしまう。
晶「あいてててて・・・」
ぐっ、と足に力をこめて起き上がろうとするが体が重く起き上がれない、何かが上に乗っかってるのか?
???「あわわ、ごめんなさい今すぐどきますんで!」
ようやく体の重い感覚が無くなったのでゆっくりと立ち上がり背中についていた砂を落とす。
倒れた瞬間にうまく受身を取れたみたいだ、手のひら以外にあまり痛む場所は無い。
???「いやー、インラインスケートで飛ばしてたらついつい横向いちゃってですね」
声からすると女の子のようだが、こういう子は経験上いろいろめんどくさいと知っている俺はそのままスルーして行く事にした。
???「え?無視?無視ですか? ねー、ちょっとー!」
晶「急いでるから」
???「えーッとそっちの方向からするとオフィス行くんですよね?それだったらちょうど私も用あるんですよ あ、わかった 新入生さんですよね?」
いきなり横に並んできてなれなれしく話すところを見ると、人懐っこい性格だということはわかったが,
???「ねー、無視しないでくださいよ!」
それにしてもいい加減しつこいので、一度立ち止まってみる。
晶「じゃあ聞くが何でついてくるんだ?」
???「だってぶつかっちゃったから謝ろうとしたんですけどそのまま無視して行っちゃうんだもん」
晶「そうか、だが見ての通り俺は無事だ、受身も取ったから大して怪我は無い、だから付いて来るな」
そしてついて来ない様にと早歩きにしたのだが、
???「私もオフィスに用がありますので!ね?、晶先輩?」
しっかりと歩幅を合わせてついてきた。
? そこで疑問が出る、俺は自己紹介をした覚えはない。
晶「?? 名前・・・なんで・・・?」
???「今日新入生の先輩にスポーツ科の案内をするようにって先生に言われて、それでその人の名前が獅堂 晶って聞いてたから やっぱりそうだったみたいですね」
なるほど、つまり今日の午後はこの子と行動か・・・少し考えただけでため息が出そうだった。
晶「そうか、それじゃ今までの態度はあんまりだったな、悪かった」
???「そんな、謝るのは私のほうですよ、さっきはぶつかっちゃってごめんなさい」
晶「それなら大丈夫だ・・・名前、まだだったな」
雫「そうでした、私の名前は夏目 雫(なつめ しずく) 14才です、よろしくお願いします」
14・・・という事は2つ下か・・・というか今改めて顔を見てみると結構可愛い方だという事に気付く、いや 実際可愛い、少し垂れ目気味の茶髪ショートの子だった。
雫「どうかしましたか?」
晶「はっ、い、いや なんでもね」
柄にも無く見とれてしまった・・・。
雫「それじゃ早速見学にれっつらゴー♪」
テンションの高い子だ。

この学校はとても大きな草原の中にそれぞれ学校だのコートだのがぽつぽつ建っている、という形になっているらしく、一番近い運動場へ行くのですら五分は歩かなくてはいけないらしい。
俺たちがオフィスを出発してから六分ほど歩くと大きなプールがある場所に着いた。
晶「ここは、水泳科?」
雫「そうです、ここには百メートルプールしかありませんけど奥には競技用の五十メートルプールもありますよ」
見た所きれいに整備されているようだが・・・プールには、あまりいい思い出が無い。
晶「次へ行こう、泳ぐのは嫌いだ」
雫「そうなんですか? でも全部の科を平等に紹介しろって言われてるんですけど・・・」
晶「いいんだよ、本人が要らないって言ってるんだから」
そしてちゃちゃっと次の科へ向かおうとした時、
???「ちょっと待ちなさいよ」
プールのほうから呼び止められた。
振り向いてみるとそこには・・・一人の女子が立っていた。
顔立ちからして日本人だろう、つり目でポニーテールの女の子が一人 こちらを指刺している。
???「うちの科の説明時間がいくらなんでも短すぎるんじゃない?」
雫「あ、先輩っ」
???「あれ、雫ちゃん どうしたの?こんなとこで」
雫「今日は新しく入ってきた先輩を案内しろって先生に言われたんです!」
???「ふーん、そうなんだ・・・それよりあんた、何でこの科をちゃんと見て行かないの?」
俺、こいつ嫌いだ。
なぜか挑戦的なその言い方は俺の勘に障った。
晶「別に、ここに興味が無いんだから仕方ないだろ」
???「なによあんた、確か獅堂晶とかって言ったっけ」
晶「・・・またこのパターンか、で?今度は何でお前は俺の名前を知ってるんだ?」
鈴「あっ、あんたねぇ、同じクラスの隣の席の人の名前ぐらい知っときなさいよ!」
鈴「橘 鈴(たちばな りん)ってしっかり名乗った記憶があるんだけど!?」
晶「?・・・ああ、ホームルームのときになんか言われたような・・・全部無視してたから覚えてねぇ」
鈴「あ、頭にきた!自己紹介とかされたならそれだけでも最低限の覚えておくのが礼儀ってもんでしょ!それなのにあんたは人の話も聞かないで何様のつもり!?」
何だろう、怒りではなく、こう、何か違う物が湧き出てきて言い返したくなる。
そんなに気持ちの悪いものではない、だがやはりムカつく。
晶「いきなり人の事指さしておいて礼儀を語れる立場か?お前が」
鈴「たーちーばーなーりーん!お前なんて呼ばないで!非常識!」
前言撤回、やっぱりムカつくだけだった。
雫「あのー、お取り込み中のとこすみませんけど〜」
鈴「・・・なに?」
雫「もう次の科の紹介の方へ行かなきゃなんですけど・・・」
鈴「え!あ、ほんとだ・・・」
晶「ということだ、楽しい紹介の時間をありがとう、じゃ」
皮肉をたっぷり含めて言ってやり、俺は雫に行くぞ、とジェスチャーした。
鈴「あんた、明日覚えてなさいよー!!」
とか後ろで吠えてるのを無視して俺たちは次の科へ向う。
雫「でも良かったんですか?あんな感じで済ましちゃって」
晶「いーんだよ、水泳なんて興味ないし、てか知り合いか?あいつと」
雫「あ、はい!同じ部屋なんです!寮が」
晶「ふーん、で?次はどこ行くんだ?」
すると雫はポケットから一枚のメモ帳を取り出した。
おそらくその中に見学順路などが書いてあるのだろう。
晶「そのぐらい覚えろよ・・・」
雫「うう、どうにも記憶系は苦手なんです・・・」
???「やあ、新入生を案内しているのかい?」
ボーっとしているとまた誰かが話しかけてきた。
こんどは黒髪で背の高い男だ。
雫「あ、響さん」
晶「誰だこいつ、知り合いか?」
雫「ダメですよこいつとか言っちゃ、この人はこれでも一応生徒会長なんですよ?」
響「雫君もさり気無く一応とか言ってるが、まあそんな事は別にいいんだ、こんにちは晶君、
私の名前は桐生 響(きりゅう ひびき) 一応生徒会長をやらしてもらってる
今日は強気でクールな新入生がきたと聞いたんでね、挨拶しに来たのさ、
まあよろしく頼むよ」
第一印象は金持ちの坊ちゃんといった感じかな、ワインを飲んでいるのが似合いそうだ。
晶「理由が激しく気持ち悪かった気がするが まあ宜しく」
雫「ちゃ、ちゃんと敬語使わないとダメですよ?晶さんからすると二歳年上ですからね」
響「いや、いいんだよ雫君 そのほうが萌えるしね」
響が不気味に笑いだす。
晶「・・・こいつ殴っていい?」
第二印象 腐ったヘンタイ
雫「だめですよいくら気持ちが悪いからって」
響「はっはっは 雫君も結構ひどいねぇ、まあいい今日のところは用事があるのでこのぐらいで帰るとするよ、また今度だな、晶君」
響がさっと手を上げるとどこからともなく黒塗りのベンツがやってくる。
晶「どっから来たんだ、これ!?」
雫「この学校の七不思議のひとつ!どこからともなく現れるベンツ、うわさは本当だったんだぁ」
響「それじゃ、後は気をつけて」
その車のドアが自動で開いたかと思うと響はさっとその車に乗り込み 車はそのままどこかへと行ってしまった。
晶「もう二度と会いたくないな、あいつとは」
雫「変な性格してますけどあの人凄いんですよ?この前も三対一なのに勝っちゃって」
晶「三対一・・・喧嘩か?」
雫「そうなんですよぉ、こう、あっという間にボカーンって」
雫はいろいろなジェスチャーをしてくれたがいまいち分かりにくい。
晶「そ、そうか で?次はどこへ行けばいいんだ?」
雫「はっ そうでしたぁ!す、少し待っていてくださいね」
晶「ったく・・・計画性が無さ過ぎるぞお前」
雫「あっ!今さり気無く雫を馬鹿にしましたね!?」
晶「いや、全然さり気無くじゃないけどな」
雫「もーいいですよ、それじゃあ今からきっちりエスコートして・・・はっ!」
何だ?急に固まったぞ。
雫「今日・・・ベースボール科の助っ人に行かなきゃ行けなかったんですけど・・・」
晶「ふーん、それで?」
雫「後はこの紙の通りに行ってださい!それじゃまた明日!」
晶「は!?おい!どういうことだよ!」
雫はいきなり俺にくしゃくしゃの紙を手渡すとものすごい速さでどこかへ去っていってしまった。
晶「うぉい!・・・最初から最後まで無計画かよ、あいつ」
にしてもこの紙何が書いてあるんだ?
くしゃくしゃの紙を広げて見てみると、
右、左、水泳科、左、真っ直ぐ・・・
なんかの宝の地図かよこれ!こりゃ迷うわけだな。
晶「ったく、今日はもう寮に戻るか」
この学校に通う場合は寮かホームステイかを選択できるようになっている。
ホームステイは大体バスで三十分以内にある家で生活していく。
朝ご飯と晩ご飯はそのそれぞれのホームステイ先でとるが昼ご飯だけカフェテリアでとる形となる。
寮は学校の直ぐそばにある。(徒歩二分以下)
食事はすべてカフェテリアで取ることになっているが毎週木曜日だけ近くの町(といってもバスで三十分はかかる)にナイトショッピングに行き、ディナーもそこでとる事が出来る。(自腹)
俺はホームステイで知らない大人になんやかんや言われて縛られるのは嫌だったので
消去法で寮に決めたわけだ。
寮は二階建て、俺の部屋は二階の左端にある、ルームナンバーは5。
晶「ただいまぁー、って言っても誰も居ないか・・・」
部屋につくと日本にいたころの癖でついついただいまと言ってしまう・・・悲しいから直すか、この癖。
寮の部屋割りは基本的に国ごとに分けられるのだがこの部屋にいた日本人は俺がここへ来る前に
全員卒業してしまったらしい、だからこの部屋には俺だけ。
そしてこの寮は今となっては教員や近くの別の学校に通っている生徒たちが利用しているだけで、この学校の生徒はほとんどいないらしい。
はぁ、疲れた。
ばふっ、と布団にそのまま倒れこむ。

本来一番の心配になりそうだった英語に関しては大丈夫そうだった。
実は小さいころに英会話をやらされていて、最初は俺もカッコいいと思ってやっていたんだが
基本会話が出来るようになった頃には俺はすっかり飽きていて直ぐに止めてしまったという過去があ る。

・・・気づくと少し眠ってしまっていたようだ。
それにしてもここは無駄にだだっ広いな、ここは。
などと考えていると、部屋にコンコンという音が飛び込んできた。
晶『はい?』
(『』の中は英語だと思いな)
ジェイソン『荷物はベットの下に置いておいたからな』
彼の名はジェイソン、ここの寮を管理してる人だ。
性別は男でオーストラリア人の筋肉質・・・って誰に紹介してるんだ?俺。
晶『ありがとうございます』
ジェイソン『それともう少しでディナーだ、遅れるなよ』
もうそんな時間か? 腕時計を見てみるともう五時になっていた。
しょうがないので俺は気だるい体に活を入れつつ起き上がり、ゆっくりとカフェテリアに向かった。
寮、学校、カフェテリアはそれぞれ結構近い距離にある、なので初めてでも迷う事はなかった。
晶「ふー、腹減った」
昼飯を抜いたせいか、かなり腹が減っていた俺は直ぐに料理を受け取るために並んだ。
少したってから自分の番が来たので、とりあえずライスとソーセージを注文し、自分の席を探していると
???「せんぱーい!一緒に食べましょうよー!」
???「あっ、こら あんなやつなんか放って置けばいいのに」
後ろから俺を呼ぶ声(と俺を非難する声)が聞こえた。
振り向いてみるとそこにはやはり昼間の二人がいる。
晶「よう、雫と・・・誰だ?」
鈴「たーちーばーなーりん!!何回言わせんのよ!」
晶「本気にすんな、冗談だ」
俺は空いていた雫の隣に座り飯を食い始めた。
雫「そういえば先輩!今日はごめんなさいでした!」
晶「ん?ああ、科の案内の事か、別なんとも思ってねぇよ」
雫「いえ、そうは言っても雫の気が済みません、だからお詫びとして・・明日私を好きにしていいですっ!」
ぶふー!!
何?イマナンテイイマシタカコノコハ?
俺と鈴はその一言でそのとき口に含んでいた水を一気に噴だしてしまった。
鈴「あ、あのねぇ雫ちゃん?そういう時は明日もう一度案内しますから〜とかちゃんと伝わりやすいようにいうのよ?そうじゃないと誤解されるから気をつけてね?」
雫「え?あ、はいすみません」
雫はまだ何がいけなかったのか判らない様だった。
晶「・・・まあ、明日また頼む、結局今日はひとつしか見れなかったしな」
雫「わっかりましたぁぁ!!名誉返上のチャンスですね!」
鈴「いや、それだと反対の意味になってるから、汚名返上か名誉挽回ね?」
晶「はぁ・・・早くも不安だ」
その後、二人よりも早く食い終わった俺は先に寮に戻った。
雫「あきらさーん!またあしたーー!」
部屋に戻ってもすることがなかったのでしょうがなく洋服類をタンスに入れ、又ベットへと入る。
晶「ふうっ」
ここにこれからあと三年も居なくちゃいけないのか・・・それを考えると先が長いな。
でもまあ・・・楽しそうだし・・・い・・・か



一話 完

というわけではい
一話が終わりました!
なんかもう微妙なとこで終わったし未だこんだけしか書けてねーのかよーとか
思われるかもしれませんが!
作者はこれで必死にがんばってるんです!(嘘八百)


ここまで読んでみてどうだったとか、ここはこんな風にしたらいいんじゃないか、
みたいなのがあったらどんどん応募ください!
それと!
この話に出てくるキャラクターに聞きたいこと、話したいことがあったらじゃんじゃん下さい!
あて先は作者にメールかDVDで
返事はの次の話の終わりにそれぞれのキャラクターたちが答えてくれちゃいます!


それでは!
またこんどー!



次回予告
響「久しぶりに友人と会えると、ほっとしたり、嬉しいものだ
それは仲がよければいいほどに
でも、中には会いたくないって思う人もいるみたいだね
それが誰で何故かは、また今度。」
次回 第二話 再会、喜ぶ者、喜ばない者
響「それじゃあ私は晶君にでも会いに行くかな、ふふっ」







第二話 再会、喜ぶ者、喜ばない者









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第四話

4月16日 金曜日

バサササササ、キュエーキュエー!。
晶「ん・・・あ?・・」
鳥の声で目が覚めた、これが日本の可愛い雀とかの声で目が覚めたなら気分は良いんだろうが、
名前も分からないようなオーストラリアの鳥なので気分は朝っぱらから最悪だ。
・・・数分間ボーっとしてから、ようやく脳が動き出す。
とりあえず今の時間を確認しようと時計を探すが、何故か何処にも見当たらない。
晶「あー、昨日投げたんだっけか」
昨日の事を思い出し、今度は床の上を探すと直ぐに見つかる。
正確に言えば破片がだが・・・。
針を守っていたプラスチックの部分は割れ、針はどこかへ行ってしまっている。
晶「・・・本気で投げちまった」
これじゃ何時だかわからない。
仕方が無いので俺は寝起きで重い体を無理やり起こして立ち、パソコンを立ち上げる。
晶「えーと、今の時間時間・・・何だ、まだ六時半か」
昨日あんなに遅く寝たのに・・・早起きが習慣着くほどいい生活を送っていた記憶は無いんだが。
・・・どうする?、今から二度寝しても大して寝れないし・・仕方が無い、起きてるか。
またあんなに早く行くわけにも行かないので俺は少しゆっくりしながら支度をする。
ちんたらちんたら服を着替え、準備が終わってもまだ七時にならない位だったので、
少しボーっとしていると、
???「晶せんぱーい!」
と外から俺を呼ぶ声がした。
この声は雫か。
とりあえずドアを開けて上半身だけ外に出し、返事代わりに顔を見せる。
雫「あっ!やっぱりまだ中にいたんですか!早く学校に行かないと遅刻しますよー!」
晶「遅刻?まだ七時にもなってないだろ」
雫「え?晶せんぱい何言ってるんですか!?もう七時五十五分分ですよ!!」
晶「は!?」
急いで戻ってパソコンの時計を見てみる、やっぱり六時五十五分だ。
晶「お前、時計読めるか?」
雫「失礼ですね、読めるに決まってるじゃないですか!さらに言うなら英語でも読めちゃいますよ!」
だとしたらおかしいな、パソコンの方の時計が間違ってるとは思えな・・・・あ。
晶「悪い!今から行く!!」
俺は急いでパソコンを閉じて部屋から出た。
雫「あらためておはようございます!どうしたんですか?寝坊ですか?」
晶「いや、時計が・・・」
雫「時計?・・・」
晶「気にすんな、走るぞ!」
雫「わわわ、ちょっと待ってくださいよー!」
タッタッタッタッ。
晶「そういえばあいつ等は?」
雫「え?、誰ですか?」
晶「鈴と鏡花だよ、あいつ等はもう行ったのか?」
雫「あ、はい、雫が晶せんぱいが部屋から出てくるのを待ってたら最初は
一緒に待っててくれたんですけど・・」
晶「って言うかまた待ってたのかお前は」
雫「ええ!もちろんですとも!!」
晶「・・頼むからそのストーカーみたいな行為は止めてくれ」
雫「何言ってるんですか!もし雫が今日晶せんぱいを待ってなかったらせんぱいはまだ寮ですよ?」
晶「それについては助かったけど・・おっと、お前はこっちだろ?」
ちょうど雫のクラスの前に来ても着いて来ようとするので声をかける。
流石は学校から徒歩五分、走れば一分足らずで着く事が出来た。
雫「っとほんとだ!それじゃあまた後でですね!晶せんぱい!」
ああ、と答えて俺も自分の教室の前に行った、そしてきちんと自分のカバンを回収してから教室に入ってみると。
ガチャ。
中に入ってみるとすでにHRが始まっている。
昨日のこの時間にはまだ先生は来てなかった筈なんだが、どうやら今日は先生が少し速く来たようだ。
男教師『少し遅れているがどうしてだ?』
晶『・・起きるのが遅れました』
男教師『そうか、まあ今日は良いだろう、だが次にやったらdetentionだからな』
・・・?今なんて言った?。
まあなんか許されたみたいなのでとりあえず席に着く。
男教師『まあそういうわけで、来週の月曜日の行事については自己申告で行うことになった、ではHRを終わりにする』
HRが終わり先生が部屋から出て行った、これで次のクラスまで少し時間が空くので、
またいつもの三人で会話を始める。
鏡花「晶君おはよー!よかったねディテンションくらわんで」
晶「ああ、そういえばそのディテンションって何なんだ?」
鈴「んーっと、簡単に言えば罰かな?何に対して喰らったかにもよるけど、大抵の場合は
同じ英語の文章を何回も書かせられるのよ、大体30とか50とか。」
鏡花「そうそう、だからこれからは遅刻せんように気を付けなあかんで?」
なんだか小学生の罰って感じだな、何処と無く幼稚と言うかなんと言うか。
鈴「まったく、何で遅刻なんてしたのよ」
晶「昨日時計を投げたら壊れたから、パソコンで時間の確認をしたんだよ」
鏡花「な、何で時計投げるん?」
晶「いや、悪い夢見たから」
鈴「時計に八つ当たりしたくなるほど嫌な夢見たの?」
あれは八つ当たりじゃなくて正当な怒りだと思う。
晶「そしたら」
鈴の質問に答えるとどんな夢かと聞かれる気がしたので、無視して続ける。
晶「パソコンの時間、日本時間のままでさ」
・・・。
鏡花&鈴「・・ぷっ、あっはははははは!」
少し黙った反動の所為か何かが爆発したかのように笑い出す二人。
鈴「そういえば日本と時差が一時間あるんだっけね!あははは」
鏡花「一年もたつと忘れてしまう物なんやね、あっははは」
そう、パソコンの方の設定時間を日本のままにしてた為、一時間の時差があるのに気付かず、
俺はそのまま一時間早い時間を読んでしまったのである。
晶「・・それにしてもお前ら笑いすぎだ、そんな面白い話でもないだろ?」
鏡花「だって、だって」
あははと、また笑い出してしまう鏡花。
笑われてしまっている側としては面白くない。
鈴「ほら、人ってそれぞれイメージがあるじゃない?」
今にも噴出しそうになりながら説明し始める鈴。
晶「ああ、まあな」
鏡花「晶君って目つき鋭いやん?だからなんか怖いイメージがあるんよ、それと見事に
ギャップして、あはははっ」
鈴「いやー、あんたでもそんなお茶目なことするのねー」
なんとなく理由は分かったが、それでもここまで大爆笑する必要はないと思った。
それともそんなに怖いイメージがあるのか?俺は。

鏡花「にしてもなんで急に身体測定なんてやり初めたんやろな、学級委員長は」
ようやく笑い終わった二人がまた別の話題を話し始める。
鈴「ね、しかも自己申告だなんて、どういうことだろ」
晶「身体測定って、どういうことだ?」
鈴「さっき先生が教えてくれたんだけど・・・あんた、この学校はたまに生徒会
主催のイベントが
あるんだけどそれは知ってる?」
晶「ああ、誰かが言ってたような気がする」
鈴「それでそれがまた来週の月曜日にやることになったんだけど、その内容が身体測定、ってわけ」
そういうことか、そういえば昨日生徒会長室へ言った時に聞いたような気がする。
晶「ふーん、何でまた身体測定なんだ?響の奴・・何やる気だ?」
しかもそれが学校からの行事じゃなく、生徒会主催にしていると言うことは何かあると見て良いだろう。
鏡花「たまにはまともな事もやって見たかったとかそんな理由なんちゃう?、てーかいいん?
一応二歳年上なんやで、桐生先輩って」
きりゅう?・・まあ、話の流れからして響のことか。
そういえばそんな苗字だったような・・。
晶「いいんだよ、アレとはこんな感じで」
鈴「説得しようとするだけ無駄よ鏡花、コイツは非常識の塊なんだから」
そんな事言われても始めてあった日に言われた言葉が言葉だったからな、
いまさらアレを尊敬なんて到底出来そうに無い。
それに非常識って言ったらあっちの方が遥かに上だと思う。
鈴「あ、先生来たわよ鏡花」
鏡花「あ、ほんまや、ほなまたあとでな」

でもって最初の授業中。
昨日と同じように授業を受けていて、いまひとつ気付いた事がある。
前の席の奴がまだ来てない。
前の奴といえば思い出すのがやはり昨日の喧嘩のことだ。
えーっと、名前はダリスだったっけ。
そんなに強く蹴った覚えは無いんだが、もしそれが原因で学校に来ていないとなると・・・。
来て早々強制帰国!?。
そういえばこっちで他の生徒と問題を起こすと色々五月蝿いからそれは止めろとか
親父がほざいてたような・・。
いや、それは考えすぎか?。
・・・。
くそっ、ついつい考えちまって授業に集中できねぇ!。

先生『というわけでここまでを宿題にしておく、来週の金曜日までに終わらせるように』
ガタ、ガタタッ。
晶「あ?」
気がつくと先生が教室から出て行こうとしている、どうやら授業が終わったようだ。
時計を見てみるとすでにやはり授業終了の時間の10時30分を指している。
ってことは、えーっと・・約十五分くらいあいつの事考えてたのか!?。
・・なんかムカついて来た、しかも本気で授業のこと何にも覚えてないし。
鈴「あんた、大丈夫?後の方ずーっと険しい顔してたけど」
気がつくと隣に鈴が・・ってコイツは元から隣だったか。
晶「なあ、前の・・なんつったっけ・・えーと、ゴツイ奴がなんで来てないか知らないか?」
鈴「へぇー、あんたが人のこと気にするなんて珍しいわね」
晶「どうでも良いだろ、放っとけ」
鈴「はいはい、それであんたの前ってことは・・井上君のこと?」
晶「いや・・そんな和風な名前じゃなかった気がするぞ」
鏡花「井上ダリス、っていう名前なんよ、アメリカ人とのハーフやったかな?」
気付くと鏡花もいつの間にか会話に参加しに来ていた。
井上ダリス・・そういうことか、納得。
晶「それで、そいつが何で遅れてるか知らないか?」
鈴「さあ?朝先生は何も言ってなかったから風邪じゃないし、たぶん遅刻でしょ」
鏡花「それか生徒会にまた犬とられてるかのどっちかやな」
晶「犬をとられる?あぁ、没収されるのか、その辺はまともに働いてるんだな生徒会は」
さすがにオーストラリアといえども学校に犬を持ってくることは許されていないんだろう。
鈴「まあ、半分は私利の為な気がするけどね、あれは」
晶「どういうことだ?」
鈴「別に、ただの独り言」
鏡花「もし犬のせいで遅刻してるんやったら今オフィスにいるはずやで、用事があるんやったら
行ってきたら?」
どうするか、とりあえず俺のせいで休んでないんだったら他のはどうでも良いんだが。
晶「いや、いい、めんどくさい」
それによくよく考えるとあいつが喧嘩を吹っ掛けて来たんだから、昨日の喧嘩の傷が原因で
休んだとしても俺に非は無い、まさに自業自得ってやつ・・・な筈だ。
鈴「分けわかんないわねあんた・・・それより、晶は次の授業の宿題やった?」
晶「次の?」
ああ、昨日のカバン取りに来るかで悩んだ奴か、結局取りに来なかったんだっけ。
鈴「もしかして、忘れたの?」
晶「いや、昨日このクラスの前にカバン置いていってたから出来なかったんだよ」
鏡花「晶君、せっかく遅刻のディテンションはセーフやったのにねぇ」
なに!?。
晶「宿題忘れても喰らうのか!?」
鈴「もちろん、どっちかって言うとそれが一番喰らう原因かな?」
マジかよ、来て早々罰とかついてねぇ。
晶「そ、そういうお前らはどうなんだよ?」
鏡花「もちろんやってあるで、昨日の夜に二人で思い出して急いでやったんよ」
鈴「そういうこと、残念でした」
ちっ・・まあディテンションって言っても結局は同じ文を何回も書かされるだけだろ。
日本の下手な罰よりは良い気がする。
・・・日本の罰知らないけど。

で、結局誤魔化す事も出来ずディテンションを喰らうことになったんだが。
カリカリカリカリカリ。
鈴「・・・」
晶「・・・」
ダリス「・・・」
何故か隣にこいつらがいる。
ダリスの方は簡単、遅刻が原因だ。
鏡花の言うと通り結局犬のせいで遅れてきたんだそうだ。
そしてコイツは、
鈴「・・・」

一時間前。
予想通り授業が始まって直ぐに宿題が集められることになったのでしょうがなく俺は
先生の所へ宿題を忘れたことを言いに行くことにした。
先生『まあ初めてだから勘弁してやろう』
とならないかと密かに期待していたのだが、それはあっさり裏切られ記念すべき始めてのディテンションを喰らうことになった・・・のは良いんだが。
席に戻ってみると・・右隣が何かゴソゴソとしている。
鈴「あれー?入れたはずなのになぁ」
・・なるほど、まあ誰でも一回はやるよな。
晶「おい、何やってんだ?早く宿題出せよ」
無論、忘れたと分かってて聞いている。
鈴「うう、入れ忘れたかなー?」
晶「どうせ元からやってなかったんだろ?」
鈴「な、何言ってんのよ失礼ね!ちゃんと鏡花とやったわよ!」
晶「はいはい、口では何とでもって奴か」
鈴「もー!ほんっっとむかつくわね!」
先生『何をしてるんだ?早く宿題を出しなさい』
先生が鈴の方を向いて言ってくるので、仕方なく伝えに行く鈴。
ここからでも少し声を張り上げれば伝えることはできるのに、それをせずにワザワザ歩いていくってことは
やっぱり恥ずかしいんだろう。
鈴『あの、寮に忘れてきました』
先生『そうか、では鈴もディテンションだな、全員モーニングティーの時間にオフィスに行くように』
鈴『は、はい』
少しがっくりした様子で静かに席に戻ってくる。
晶「お前、あんだけ偉そうに言っておいて結局それかよ」
鈴「あーもー、うるさい!」
ま、こんなもんで朝の仕返し完了かな。

ってな感じで今三人でディテンションを受けているわけだが。
カリカリカリカリ。
皆何も喋ることも無くひたすら沈黙、まあ仮にも罰だから当たり前と言えば当たり前だが。
それにしても、それだけですむなら結構軽い罰だなとか思ってたんだが・・・これが結構キツイ。
ひたすら退屈なだけの罰、まあ英語を覚えるって言うのはあるかもしれないな。
それを考えると結構合理的な罰なのか?。
まあどうでもいいか、それより早く終わらせないと
えーっと、I mast remember do my homework I mast remember do my homework I mast,,,
鈴「終わったぁー!」
急に鈴が大きな声を上げる。
晶「ふーん、早いんだな」
鈴「へっへーん、それじゃお先に」
晶「do my homeworkっと 残念だったな、俺も今終わった。」
鈴「えぇ!?ちゃんと40回書いたんでしょうね!」
晶「当たり前だ、俺はちゃんと数えやすいようにしっかり五回ごとに数字打ってるからな」
鈴「あっそ・・晶って変なとこしっかりしてるわね、あんたA型?」
晶「どうでも良いだろ」
鈴「あのねぇ、質問されたらまともに答えなさいよ!そういう返し方ってはっきり言ってムカつくわよ?」
何で直ぐに突っかかって来るんだよ、ああそうで済ませりゃいいものを。
ここまではっきりと物を言われては無視することもできない
晶「だったら教えてやる、そういうのをはっきり言うのも相当ムカつく」
・・・黙り込む鈴、後ろからカリカリという音だけが聞こえてくる。
鈴「・・・何かあんたと話してるとイライラする」
晶「同感だ」
鈴「とりあえず・・出しに行く?」
晶「ああ」
とりあえずその場は一旦休戦という形で平和的に幕を閉じた。
はぁ、何かコイツと話してるとどうしても喧嘩腰になる。
プラスイオンとか体から出してるんじゃないのか?。
ダリス「・・・」
こいつはまだやってるのか。
昨日あんな事があったから気にしてたけど、意外と無反応だったな。
会った瞬間にいきなり突っ掛って来るかとも思ったけど目すら合わしてこない。
まあ、これ以上何も無いならそれが一番良いんだが。

ガチャ。
鈴『ディテンション終わりましたー』
俺たちは結局ダリスを待たず、先にオフィスまで報告に来た。
と言うか鈴はダリス居た事に気付いてるのか?と思うほどダリスのことを気にしていなかった。
・・いや、ほんとに気付いてなかったりしてな。
鈴「あれ?先生いないわね・・まあここに置いておけばいいでしょ」
そういうと鈴はその辺にあった誰のか分からない机の上に置いてしまった。
オフィスにあるって事は先生や関係者の机だとは思うが。
晶「そんな適当でいいのか?」
鈴「まあ何とかなるでしょ、さーってディテンションも終わったし上まで行こうかなっ、晶も行くでしょ?」
晶「上?」
鈴「カフェテリアまでってことよ、ほら、あそこほんのちょっと高台じゃない、だからみんなカフェテリア
に行くことをって上に行くって言うの」
晶「ふーん、まあ上の意味は分かったんだがどうして行くんだよ」
鈴「そりゃカフェテリアでなんか買うために・・・って、あ」
晶「?、どうした」
鈴「そういえばあんた来てまだ三日目だっけ・・」
晶「そうだけど、急になんだよ」
鈴「いや、あんたすっごいここに馴染んでるから新入生だって事忘れてたわ・・」
まあ、言わんとしてる事は分かる。
なにより本来最大の難関になるであろう英語が、英会話習ってたことによって解決してるからな。
それを考えるとあのときの親父には本当に感謝だ。
鈴「な、何でいきなり黙り込むのよ、なんか悪い事言った?」
晶「別に、考え事してただけだからいちいち気にすんな」
鈴「あっそ、で?どうすんの?」
晶「ああ、上行くかどうかか・・」
どうするかな、昨日のこの時間は先生に呼ばれたりしてこんな休みがあるとは気付かったけど・・・。
・・・まあ、どんなのか知るためにも行ってみたほうが良いよな。
少なくとも悪いことにはならないはずだ。

カフェテリアに来て見るとカフェテリアのところに少しの列ができている。
まあさすがに昼飯のときほどではない、せいぜい七人くらいだ。
鈴「あっ、いたいたっ」
鈴がカフェテリアの外の席に座っていた二人組みに近づいていく。
鏡花と雫だ。
鏡花「あ、けっこう早いんやね、もうちょっと待つかと思ってたんやけど」
鈴「うん、とりあえず四十回、超特急で書いたからね!」
雫「あれ?晶せんぱいもだったんですか?」
そのグループに入って行くべきかと迷っていると、トタトタと雫が駆け寄ってきた。
気を使ってくれたのか?・・・それは無いか。
晶「ああ、カバンを学校に置きっ放しにしてたんだ」
雫「あっ、やっぱりそうだったんですか?昨日もって帰ってなかったからどうしたんだろうとは思って
たんですけど」
晶「ああ、それで鈴」
鈴「ん?なによ」
晶「ここでなんか買うって言ってたけど、ここまで連れてきたんだったらちゃんと説明しろよな」
鈴「えー、めんどくさいわねぇ」
雫「あ、雫がしてあげますよ!」
晶「あ、ああたのむ」
激しく不安を感じる、会ってから雫がしっかりしている所を見たことがないせいか俺の中の雫の
イメージがとても頼りない・・・なるほど、これもイメージか。
確かにこれで急にしっかりしている所を見せられたら笑うことはなくても驚いたりはするかもしれないな。
雫「えーっとですね、ここでは色んな物をこのモーニングティーの時間に買うことが出来ます」
晶「・・・例えば?」
雫「え!?・・えーっと、ジュース・・・とか?」
何で疑問形になるんだ。
晶「・・・雫ってここ来てどのくらいになるんだ?」
鈴「来たのは私と同じときだったから・・・ちょうど一年位かな?」
晶「一年もいるのに何で曖昧なんだよ・・」
鏡花「ああ、それはしょうがないんよ、雫ちゃんほとんど上こーへんみたいやから、な?」
雫「え?あ・・はい」
だったらなんで案内役を買って出たんだ、と言う言葉が喉から出そうになり、ギリギリの所で止める。
俺、もしくは鈴の為を思ってやったことに対して流石に可哀想かと思ったからだ。
晶「まあいい、見てみたら分かるだろ」
といらえず列の一番後ろに並んでみる。
お、飯の時と違って結構スムーズに進むんだな。
直ぐに前にいた全員が買い終え、俺の番になる。
中を覗きこんでみる。
なるほど、こういうことか。
ランチのときに気付いたのだがカフェテリアに一箇所、自動販売機のようなもので囲まれた場所がある。
ただそれは端の方にある上にその機械は壁側を向いていたので変に思っていたのだが・・・。
それは外から中に注文するためにこうなっていたのだ。
壁に向いている、と思っていた壁の場所は窓ガラスになっていて、その下部分は一箇所開いている。
おそらくここからお金を渡したり商品の受け取ったりするのだろう。
店の人『・・・何がほしいの?』
興味津々でいろいろ観察していると中から声を掛けられてしまった。
晶『えっと・・・』
・・・ミスった、何を置いてあるか全然見てねぇ。
鈴『チキンマンチ4つと・・・』「コーラでいい?みんな」
鏡花「え?なになに?晶君がおごってくれるん?」
雫「はい!大丈夫ですよ!!」
晶「・・・ちょっと待てお前!」
鈴『コーラ4っつお願いします』
店の人『はい、$18.4ね』
鈴「はいはい、早く払った払った、じゃ、私たちはあっちに席とってるから」
鈴はそれだけ言って皆を連れ、屋外のほうの席へ座りに行ってしまった。
晶「ちょっと待てよ、何で俺が──」
文句を言おうとを口をあけると、
???「それぞれもう一つずつお願いできるかな」
後ろからかかる声。
店の人『はいはい、じゃあ$33ね』
晶「は?」
響「やあ晶君、こんにちは」
振り向くとそこにいたのは響だった。
響「どうだい、後ろにいきなり愛する人が立っていた気分は?」
早速ぶっ飛んでるなこいつ。
晶「いくつか言いたいことがあるんだが良いか?」
響「もちろん、でもその前に支払いをしてしまわないとね」
財布から紙切れを取り出し店の人に渡すと、店の人は商品を渡してくれた。
・・・何だ今出した紙は、ただの紙に何か書いてあるだけの物に見えたんだが。
響「それで?言いたい事ってなんだい?」
晶「あ、ああ」
気持ち悪いことを言うな、と、何で俺がお前の分まで買わなくちゃいけないんだ、
と言うつもりだったのだが。
言うことが消えたり増えたりしたせいで言葉が出てこなくなってしまう。
響「ふむ」
すると響は何か考えるように頷き、
響「思い悩むと言うことは・・・告白かい?」
真顔でとんでもないことを言ってきた。
晶「それを止めろ気持ち悪い」
まあ、おかげで自然に言葉が出てくる。
響「はっはっは、まあ冗談はこのくらいにしてとりあえず座ろうか」
響は荷物の半分を持って鈴の方へと歩き出すので、俺も後に続く。
鈴「あれ?桐生先輩じゃないですか、珍しいですね」
雫「お、おはようございます!」
鏡花「うーん、もうこんにちは、な時間ちゃう?雫ちゃん」
響「今日は、雫君と鈴君に鏡花君、ご一緒させてもらって良いかな?」
雫「あ、はい!もちろんです」
俺らが机に買ってきたものを置くと、それぞれお礼を言いながら取っていく。
晶「なあ、さっき店の人に何を渡したんだ?」
自分も同じように椅子を用意して、チキンマンチとやらの袋を開けつつ質問した。
響「何・・とは?」
晶「紙を渡してただろ?見た感じアレでお金を払ってたみたいだったけど」
鈴「え!?と言うことは桐生先輩が払ってくれたんですか?」
それを聞いた鈴は立ち上がり財布をポケットから取り出す。
俺の時とえらい違いだ。
響「ああ気にしないでいい、バルチャーで払ってしまったからね」
鈴「え、でも」
晶「だからそのバルチャーって何んなんだよ」
響「ああすまないすまない、バルチャーって言うのはこの学校だけで使える小切手みたいなもでね、
学校の成績がとても良かったりするともらえることがあるのさ」
海外だからなんだろうか、この学校って幼稚な考えな気がする。
悪いことをした子には罰を、良い事をした子にはご褒美を。
まあそっちのほうが分かりやすくて不良とかも出にくそうだけどな。
晶「・・・お前今さり気無く頭がいいこと自慢しなかったか?」
鏡花「そら生徒会長さんなんやからある程度は頭よーないとあかんしね」
雫「んぐんぐ」
食べながらも鏡花の言葉に頷く雫。
響「いやいや、小夜子君には勝てないよ」
お、このチキンマンチって言うのうまいな。
鶏肉のミンチを小さく揚げて出来ているものなんだろう、少し脂っこいがそれもまた
オーストラリアらしいと言うものだ。
鈴「あれ?、そういえば空崎先輩どうしたんですか?いつもは一緒なのに」
響「ああ、小夜子君なら今生徒会長室で月曜日の為の準備書類等々と睨めっこをしていると思うよ」
雫「あー、またそれですか・・・」
鏡花「空崎先輩も可哀想になぁ・・・」
響「大丈夫さ、なんせ今回ここに来たのは小夜子君公認だからね」
うわっ、オーストラリアのコーラって甘いな!。
しかも炭酸も少し強い気がする、流石は海外って事なのか?。
・・・ちょっと振ろうかな。
鈴「公認・・・って、珍しいですね、それはまたどういった経緯で?」
響「来週の月曜日に身体測定があるのはみんな聞いただろう、ただそれを正式に決めたのが
昨日の事でね、はっきり言って人手が足りないんだ」
鏡花「へぇ、生徒会も大変なんやなぁ」
響「そうなんだよ、それで誰か手を貸してくれる人を探してカフェテリアまで来たら、ちょうど君たちが
居たと言う訳さ」
鈴「・・・」
鏡花「・・・」
雫「?」
もしかしたらこれはケチャップを漬けたら美味いんじゃないか?。
今度試してみるか。
鈴「晶、これいる?」
晶「ん?なんだ急に」
食べるのを止め顔を上げて見るとなぜか全員静まり返っていた。
響はやたらニコニコしてるし雫は何がなんだか分からないと言った顔をしている。
俺の聞いてないうちになんかあったのか?。
鈴「まあ、とりあえず受け取っときなさいって」
握らされるチキンマンチとコーラ、どちらも未開封だ。
晶「何なんだ?」
鏡花「ほ、ほら、私はホームステイやから・・・」
響「うーん、まあ二人も居れば良いだろうし、それじゃ晶君、雫君、よろしく頼むよ」
?、まったく状況が掴めない、とりあえず何かを頼まれているみたいなんだが。
俺と同じように名指しされた雫を見てみたがコイツも何が起こっているか分からないようだ
鈴「ま、がんばってね」
鏡花「うーん、ごめんなぁ?」
何故か二人とも俺に買ったものを渡してそそくさと帰っていってしまう。
・・・取り合えずなんかに巻き込まれたな、俺。
晶「さっきまでの話をまったく聞いてなかったんで説明を要求する」
響「そうだったのかい?簡単に言えば君たちは生徒会の手伝いをすることになったのさ」
雫「え!?そうなんですか?」
晶「断るって可能性は考えないのか?」
響「それはないよ、だってほら」
そっと何かを指差す響。
その指先には・・・俺らのチキンマンチとコーラ。
・・・汚ねぇ。
響「出来れば卑怯な真似はしたくなかったんだが、普通に言っても手伝ってくれないと思ってね」
雫「・・・つまりこれをおごる代わりに仕事を手伝って、ていう事ですか?」
響「そういうことになるね」
晶「・・・何をやればいいんだ?」
響「すまない、こちらも本当に手一杯なものでね、まあ実際のところ前準備は我々だけで
なんとか出来るから、二人に手伝ってもらいたいのは当日の書類整頓などの簡単な仕事だよ」
雫「そうなんですか?」
晶「まあ、それくらいだったら・・・」
響「ありがとう、お礼は別に何か考えておくよ、といっても大した事が出来る訳じゃないが・・」
これでアフターケアがなかったら嫌えるんだが・・・こいつ、何かずるいな。
まあ人を使い慣れてるって事なんだろう。
晶「はぁ、俺らもそろそろ戻るか」
長い間話してたからな、そろそろ戻らないと次の授業に間に合わないかもしれない。
これ以上のディテンションは勘弁してほしい。
雫「はいっ!」
元気に返事をする雫。
そして戻るために俺が席を立った瞬間に、
響「ちょっと待った晶君」
響に呼び止められた。
響「オフィスで晶君のことを先生が待っていたようだが、もう行ったのかい?」
俺を?、ディテンションは終わったし、呼ばれる用事は特になかったはずなんだが・・・。
そのとき俺の頭に、昨日の出来事が再生される。
犬、ダリス、喧嘩、強制帰国。
・・・まさかな。
晶「いや、今始めて聞いた」
それに先に手を出してきたのは向こうなんだから非はダリスにある。
そのぐらいはあいつだって理解できるはずだ。
・・ってかなんで昨日俺喧嘩売られたんだ?。
響「そうか、じゃあオフィスまで一緒に行かないかい?」
晶「別にいいけど・・雫はどうするんだ?」
雫「うーん、雫は鈴せんぱいのところへ行ってます」
晶「そうか、じゃあ又帰りにな」
雫「その前にランチですよ!それじゃまた後で会いましょう!」
俺と響に一礼した後教室棟のほうに走っていく雫、何かほんとに元気が有り余ってる感じがするな。
・・ってか足速いなあいつ。
響「それじゃあチャイムの鳴らない内に、おっと、忘れるところだった」
響はカフェテリアのショップまで行き、何かを手に持って戻ってきた。
晶「それは?」
響「少し時間がかかってしまったからね、小夜子君に怒られないようにお土産を買っていくのさ」
晶「・・・ご機嫌取りも大変だな」
響「そうでもないよ」

響「さて、それじゃあ晶君、来週の月曜日の朝ここに来てくれるかな、もちろん雫君も連れてね」
晶「ああ、わかった」
最後に俺に手を振ってからドアをノックして生徒会室に入っていった。
俺は俺を探してたって言う先生を探さないとな。
先生『ああ、晶 ここに居たのか、日本から電話がかかってきてたぞ』
晶『あ、そうですか、ありがとうございます』
取り合えずすぐに見つかったけど電話?・・・ああ、親父か。
晶『それでどこへ行けばいいですか?』
先生『あそこにある受付に行きなさい、今繋がってる筈だから』
俺はお礼をもう一度いい受付に向かうと、女の人が受話器を渡してくれた。
晶「もしもし」
鬼神「おお!晶か!!」
やっぱりな、大方こっちから連絡しないから心配になって掛けて来たんだろう。
晶「悪かったな、こっちから連絡入れなくて」
鬼神「心配したぞ!これで今日電話に出なかったら二人ほど偵察に行かせようかと話を
していた所だ!いやぁ出てよかった、はっはっは!」
本当にそれだけは勘弁してくれ。
晶「それで?、別に大した報告もないんだろ」
鬼神「ああ、一応無事を確認するために一度連絡をと思ってな」
晶「だったらもう切っていいよな」
鬼神「何!?晶、久しぶりにわしの声が聞けて照れるのはわか──」
ガチャン。
さーて、そろそろ教室に行かないとな、もうすぐ授業が始まるはずだ。
・・・次ぎ話すとき何か言われそうだな、切った言い訳を考えておくか。

教室前。
戻ってみるとまだ教室は開いておらず、扉の前にいるのは鈴だけだった。
鈴「あらおかえり、何で先生に呼ばれてたの?」
晶「・・親から電話」
一瞬「どうでもいいだろ」、とか答えそうになった。
そんなこと言ったらまた喧嘩になるだけだ。
日々精進する男・・・なんてな。
鈴「へぇ、どうせあんたが連絡し忘れてて心配して掛けて来た、とかそんなのでしょ?」
晶「ああ、よく分かるな」
鈴「ま、私も最初そうだったからねー、あーあ、懐かしいなー」
そうか、こいつは一年前に来たって言ってたな。
晶「そういえば他の二人は?」
鈴「雫は自分の教室、鏡花はお手洗い」
晶「ふーん・・・あ、これ返す」
鈴「ん?」
俺はポケットに入れておいたチキンマンチとコーラを押し付ける。
鈴「あれ、あんた食べなかったの?」
晶「二袋もこんな脂っこいもん食えるかよ」
鈴「へー・・・はい、それじゃお金」
ズイと突き出される手、その手のひらには小銭が乗っていた。
晶「・・・何のつもりだ?」
鈴「お金よお金、チキンマンチとコーラ代」
晶「それなら響に渡せよ、結局払ったのは響なんだから」
鈴「でもそれって仕事手伝ってもらうためだったんでしょ?」
晶「ああ」
鈴「だったら私はそれを断ったんだから奢って貰う権利はなくなるわけじゃない?」
晶「あ、ああ」
たぶん。
鈴「それだったらお金を払わなきゃいけないって事でしょ?だから、はい」
晶「だからってなんで俺に渡すんだよ」
鈴「ほら、私それを断ってあんたに押し付ける形になったでしょ?、なんか嫌な気分なのよね、それ」
晶「いやな気分?」
鈴「うーん、借りがある感じって言うか・・・とにかく嫌なの!」
晶「お前、最初は俺に奢らせる気だったくせに・・」
鈴「もうっ!うだうだ言ってないで早く受け取っときなさいよ!」
そう言うや否や鈴は俺に無理やり小銭を手渡してきた。
うーん、よく分からんがそれでコイツの気が済むならまあいいか。
・・・。

前半終了



その後直ぐに鏡花が帰ってきて、教室が開き、授業が始まった。
授業はいつも通りに進んで・・・いるんだけど。
前からプリントが配られて来た時に、一枚だけメモ用紙が混ざっていた。
大雑把にたたまれた紙を開いてみるとこんなことが書いてある。
晶、昼休みカフェテリア裏で待つ。 昨日の事をハッキリさせたい。
・・・前の奴だよな、これ書いたの。
まあほんとに唯の話し合いで済むならいいんだが。
行くだけ行って見るか。

とりあえず午前の授業は何もなく終了。
あったと言ってもウトウトしてるのを怒られて七回連続で当てられた、とかそんな事だ。
・・・実際きつかったけどな。
鈴「はぁー、やぁっとおわったー!」
鏡花「ゆうてもまだ午前中だけやけどな〜」
鈴「もぉ、テンションの下がる事言わないでよー、鏡花ー」
鏡花「まぁまぁ、とりあえずご飯食べにいこー?」
鈴「そうね、じゃ行こっか、晶、あんたも一緒に行く?」
晶「ああ、今行──」
ギラッ!。
・・・ものすっごい勢いで前の奴から睨まれた。
晶「い、いや、今日はちょっと用事があるんだ」
鈴「・・・ふーん」
疑われている。
まあこんな台詞実際に使う奴中々いないだろうしな。
俺も漫画の中でしか聞いたことない。
鈴「まあいっか、行こー、鏡花ー!」
二人とも教室を出て行く。
クラスに人が少なくなって来た頃、ようやくダリスが立ち上がり黙って出て教室から出て行った。
付いて来いってことかな・・・。
とりあえず少し離れて付いて行ってみることにした。

あー、やっぱカフェテリアの裏か。
そのまま付いて行くと予想通りカフェテリアの裏まで来ていた。
只着いてみると一つ予想していた事と違うことがある。
もう一人、他の誰かが待っている。
ここで考えられる理由は三つ。
1、俺とは別にダリスに呼び出された。
2、ダリスの仲間で一緒に何かする気。
3、ただただそこに居合わせただけ。
さーて、どうするか。
まずダリスが何をする気なのか分かってたらある程度予想できるんだが・・・。
何故か今日は一言も俺に話しかけてこない。
・・・妥当なところで2か3だな。
晶「そろそろ何するか話してくれてもいいんじゃないか?」
呼びかけてみる、だが反応がない。
ダリスはそのまま歩いていくのでしょうがなくそのまま付いて行くことに。
少し行くと立っていた奴の前で止まった。
???「あっ、ダリスさん、ちゃんと連れてきましたか?」
さっきは少し遠くて分からなかったが近づいてみると特徴的だった。
髪は金髪、顔までは良く分からないが声からして男だろう。
ダリス「ああ」
そいつの呼びかけにこたえるダリス。
つまり3ではない、ということだ。
???「よかった、何も喋ってませんよね?」
ダリス「ああ」
???「はぁ、ホント昨日ダリスさんを見つけたときはどうしようかと思いましたー、
ランチタイムはもう終わりだって言うのに寮の裏でうずく──」
ダリス「そんな事はどうでもいいから早く話を進めろぉ!!」
???「ひっ、は、はい!今すぐに!」
晶「なんなんだよ・・」
マフュー「えーと、始めまして、ボクの名前は笠原マフューって言います」
・・・だから何だ。
髪が金髪で、顔もどちらかといえば外人顔だったので外人かと思ったが・・
日本語が通じるって事はハーフか。
さすがに外国にあるだけはあるって事か、この学校、ハーフ多いな。
晶「・・・それで?」
マフュー「え!?えぇーっと、な、名前を・・」
晶「・・晶、獅堂晶だ」
マフュー「えっと、今日ここに呼んだのはですね、昨日の話しを聞きたいなーと思ったからでして・・」
晶「昨日・・・あぁ、喧嘩のか」
マフュー「いや、それじゃなくて・・えーっと、その前に何やってたかを聞きたいんです」
何かいちいち言葉に詰まる奴だな、ストレス溜まりそうだ。
晶「その前?・・・別に、何もやってねぇよ」
ダリス「嘘ついてんじゃねぇよ!!」
っ!、いきなり横から大声出すなよ!。
晶「嘘って、何が」
ダリス「お前うちのマリ・・ペットを虐めてたろうが!」
いや、今更隠してもお前のペットの名前知ってるから、俺。
晶「俺は別に何もやってねぇよ、飯食い終わって出てきたら、雫が犬と一緒に遊んでたからそれを
見てただけだよ」
マフュー「夏目さんと?」
夏目・・・いや、本当に全員の名前フルネームで暗記しなきゃな。
晶「あ、ああ」
とりあえず夏目雫・・・よし、覚えた。
ダリス「じゃあそいつが犬を虐めてたんじゃねぇのかよ」
マフュー「うーん、それはないと思いますよダリスさん」
ダリス「何?知り合いか、お前」
マフュー「はい、一応同じクラスですから・・というかダリスさんも会った事くらいはあると思いますけど」
ダリス「・・・どんな奴だ?」
晶「身長はコイツから20センチくらい引いた・・・ちょっと待て、お前いくつだ?」
さっき夏目さんって言ったよな。
マフュー「え?ボクですか?、今年で15ですけど」
晶「つーことは・・雫と同い年かお前!?随分でかいな!」
俺との差が大体5〜6センチぐらいしか無いぞコイツ。
俺が最後に計ったのがここ来る前で175・・・まあさすがハーフってわけか。
ダリス「んなこたぁいいから話を早く戻せ!」
っ!、またコイツは・・。
マフュー「うーんと、とりあえずこの前はダリスさんの勘違いですよ」
ダリス「ちっ、知るかそんなこと!俺はあやまらねぇからな!」
マフュー「そんなぁ!、約束が違いますよぉー!」
さっさと歩いていこうとするダリスに張り付くマフュー。
一応止めようとしてるのは分かるんだが・・ダリスはダリスででかいからな。
まったく意味を成してない。
そのまま二人は(マフューは引きずられているだけだが)何処かへ歩いて行ってしまう。

・・・なんで俺ここに呼ばれたんだ?。
飯・・・食べに行こ。

カフェテリアに行ってみると、そこにダリスたちの姿は無かった。
他の生徒もほとんど帰った後のようだ。
ガタタッ。
カチャカチャ、モグモグモグ。
・・・不味いな、これ。
この前から気付いてはいたけどここの人結構料理下手だよな。
・・・。
???「あれ?、まだ食べてたんですか?」
晶「っうぉ!?」
いきなり後ろから声を掛けられ、危うく食器をひっくり返しそうになる。
???「あはははは、びっくりしすぎですよ晶せんぱい!」
晶「・・・はぁ、雫か」
雫「はい!、それにしても遅くまで残ってるんですね、ディテンションですか?」
晶「いや、いきなりカフェテリアの裏に呼び出されて・・・」
雫「え!?、そ、そそそそそれで?」
晶「?、昨日何してたかとか聞かれて終わった」
雫「・・・それだけですか?」
晶「ああ」
雫「なーんだ、呼び出されたーとか言うんでてっきり告白されたのかと思っちゃいましたよ」
何を期待してるんだ、お前は。
晶「無いなそれは、大体俺を呼び出したのってダリスと・・マフューって奴だぞ?」
雫「へぇー、マフュー君もだったんですか」
晶「知ってるのか?」
雫「あ、はい、同じクラスなんです」
晶「ふーん・・・まあ、とりあえず座れ」
雫は俺に話しかけた時の体勢から動かずに、つまり俺の横に立ったまま話をしていた。
雫「あ、そうですね」
コト、と俺の前の席に皿を置き座る。
・・・ん?。
晶「そういえばそっちの理由は?」
雫「もぐもぐ、ふぇ?はんへふか?」
晶「無理矢理口とじながら言われてもわかんねえよ」
雫「もごもごもご、ごくんっ・・それで理由って何のですか?」
晶「飯食い始めたのが遅れた理由、ディテンションか?」
雫「えへへ、ごめーさつ、ですよ晶せんぱい!まさにその通りです!」
晶「何でまた、朝やっぱり間に合わなかったのか?」
そうだとしたら少し悪い気がするな。
雫「いえいえ、それは間に合ったんですけど、実はモーニングティーが終わる五分前、晶せんぱいたちと別れてからインラインスケートで走り回ってたんですけど、先生に見つかっちゃって・・」
インラインスケート・・・たしか最初に雫と会った時に雫が履いてたやつだよな。
晶「それが原因か?」
最後にきちんと聞くと えへへ、とだけ返してきた。
晶「・・・とりあえず、さっさと食うか」
雫「はい!」

晶「それにしても放課後、どうすればいいと思う?」
カフェテリアからの帰り道、常に頭の端にあった疑問を雫にしてみる。
雫「放課後って、真田せんぱいのことですか?」
晶「ああ、話す話題とかさ」
雫「うーん、晶せんぱいっていつ真田せんぱいと知り合ったんですか?」
知り合ったのは・・・いつだっけな。
晶「存在を知ったのは三年前ぐらいかな、前にも言ったけど、中学で知り合った」
雫「へぇー、だったらそのころの話とかしたら良いんじゃないですか?」
あの頃の話・・・か、何があったかな。
晶「・・それはパス、大して思い出話になるようなことも無かったからな」
雫「だとしたらぁ・・・駄目です!雫はもうギブアップです!」
・・・まぁ、元から大して当てにはしてなかったけどな。

午後の授業中。
うう、何か緊張してきた。
にしても昨日は何だったんだろう。
目に見えるほどに冷たいオーラが出ていたんだが・・・。
・・・俺が何かしたのか?。
卒業の時・・・その後・・・大して何もなかったはずなんだが。
???「・・・きら・・」
はぁ、しかも一緒に行くのが雫って・・・不安倍増だぞ・・。
???「晶っ!」
晶「うおっ!?」
鈴「何ボーっとしてんのよ」
晶「・・なんだよ」
鈴「何だよはないでしょ、それともあんた今日は教室に泊まるつもりなの?」
晶「何?」
周りを見渡してみるとそこに先生の姿は無く、生徒が帰り支度をしている所だった。
晶「授業、終わったのか?」
鈴「ええ、とっくのとうにね」
最近俺こんなのばっかりだけど・・来て早々大丈夫か?。
自分でも正直不安になって来るな。
鈴「ちょっと?またボーっとしてるわよ?」
晶「あ、ああ、大丈夫」
そうだ、美影先輩のとこに行くんだったな。
晶「雫が何所にいるか知らないか?」
鈴「雫ちゃん?、そういえば外で誰か待ってたけど・・あんたを?」
晶「ああ、ちょっと用事があってな、じゃあな」
鈴「あ、うん、じゃあね」

晶「悪い、ボーっとしてたら授業終わってた」
外に出てみると鈴の言っていた通り、雫が教室壁にもたれかかりながら外で待っていた。
雫「あっ、よかったぁー、雫晶せんぱいが先に行っちゃったんじゃないかって心配で心配で」
晶「いや、さすがに約束しといてそんなことはしないから安心しろ」
・・・まあその考えが浮かばなかったわけじゃないけどな。
晶「それで?、どこ行けばいいんだ?、昨日あれだけ偉そうにしてたんだから当然
何か考えてあるんだよな?」
雫「も、もちろんですよ!とりあえずバス停に行きましょう!」

んで、俺の教室から徒歩二分。
晶「とりあえず着いたけど・・・どうするんだよ」
バス停はちょうどオフィスの斜め後ろにあった。
ここにはすべてのホームステイの人間が集まってくるのだろう。
そこにはかなりの人数が置いてあるベンチに座ったり立って話をしたりしている。
この中から美影先輩を見つけるのは至難の業だな。
雫「えーと、たぶんあっちです!」
人混みの中をどんどん進んで行こうとする雫。
晶「ちょ、ちょっと待て!」
雫「え?」
腕を掴みどうにか引き止めることに成功する。
晶「お前、この人ごみの中を進む気か?」
雫「え?だめですか?」
晶「正直きついだろ、それに何処に美影先輩がいるかも分からないのに、闇雲に探したって」
バス停と言っても流石はオーストラリアだ、決して日本の駅の前にあるようなものを
想像してはいけない。
大体日本のバス停が三つ連なっているほどの大きさだ。
勿論それではそこまで大きいとは言えないがそれでもバス停としては十分すぎる大きさだった。
雫「あ、それは大丈夫ですよ!いつも向こうの木の下にいるんです」
晶「そ、そうなのか、良く知ってるな」
雫「はい!実は前から話しかけて見たかったんですけど、実はすごい人見知りするんですよ」
晶「人見知り?、お前がか?」
雫「はい!」
ん?・・・何か違和感が。
雫「それでいつもいる場所だけは知ってるんですよ!」
晶「そうか、にしても真ん中突っ切っていくわけにもいかないだろ、これだけ人がいるんだから」
雫「うーん、分かりました、じゃあ裏からこっそり行きましょう!」
こっそり、って言う言い方もどうだかなぁ、とか言うとまた長くなりそうなので、黙っておく事にした。

雫「あ!あそこです、いましたよ!(ぼそぼそ)」
いや、本当にこっそりしなくても。
晶「本当だな、でも誰かと話してないか?」
美影先輩の横に誰か背の高い人(180cmくらい)が立っている。
雫「あ!、あれってもしかしてもしかすると彼氏じゃないですか!?」
何!?。
俺はもう一度きちんと隣にいる背の高い人を凝視してみる。
後姿になっているので顔は見えないが髪は長い。
いや、それどころか綺麗な長い銀髪をしている。
美影先輩の漆黒の髪と並ぶとどちらもとても綺麗だ。
・・・いやいや俺、そんなことを考えている場合じゃないだろ。
晶「雫、よく見てみろ、あれは女の人だ」
そういえば俺の知ってる人にも銀髪が居たような・・。
雫「晶せんぱいこそ何を言ってるんですか!ここはオーストラリアなんですよ!?」
・・だからなんだと言ってやりたかったがここで一つ思い当たる。
晶「レズの可能性か?」
こくりと縦に首を振る雫。
オーストラリアだから、と言ってはオーストラリアに失礼かもしれないが日本よりはゲイやらレズやらがよっぽど多そうなイメージがある。
といっても勿論俺の独断論なので確かではない、が。
まあいきなり決め付けても失礼なので少し観察してみることにする。
まず、銀髪の方がやたらと美影先輩の髪を触っている。
OK、わかったレズと確定してかまわないだろう。
第一に触り方が・・何というか・・・いやらしいとまで言うと失礼だが極端に言えばそうだ。
はっきり断言できないところは日本人の性質だな、俺の。
晶「これは、俺らは戻ったほうが良くないか?」
幸いなことに美影先輩達はまだ俺らが後ろで見ているとは気付いていない。
これは気付かれていないうちに立ち去っておくのがベストだろう、という事は、何故美影先輩が
レズになってしまったかという質問が堂々巡りしている俺の頭でも出すことが出来た。
俺は立ち上がり数歩、後に引いた。
もちろんそこで木の枝を踏んで気づかれるようなベタな事はしないように気を付けつつ。
雫「・・・・・」
ただその代りに雫がまったく動こうとしなかった。
前で行われている行為、今はまだ髪を触っているだけだが、その観察に必死になっているようだ。
・・・思春期め。
よくよく考えてみると俺もそうだなあ、とか思いつつも、もう一度雫の隣に戻り、話しかける。
晶「何やってんだよお前」
雫「晶せんぱい!美影さんを助けないと!」
顔を良く見てみると耳まですっかり赤くなっている。
思春期め、もう一度そう思う。
晶「助けるって何が」
雫「真田せんぱい嫌がってます!」
・・そうなのか。
晶「それだったら・・なんとかしなきゃな」
気の抜けた返事をする。
俺の頭の中には妙な安心感が広がっていた。
よかった、不本意だったんだ、レズになったわけじゃないのか。
その時──
???「・・ところで先ほどから後ろで覗いているお二方、いつまでそうしている気だ?」
一瞬でその安心感が吹き飛ぶ。
バレた。
・・あれ?でも、聞き覚えがある声だ、だけど美影先輩のものじゃない。
その声の発信源である女性を見つめていると、その人が振り返った。
あ。
雫「あ!小夜子せんぱいじゃないですか!?こんなとこで何をやってるんですか?」
その通り、その人は副生徒会長とやらの小夜子さんだった。
小夜子「ああ、美影と楽しく遊んでいたところだよ、それより君たち」
やばい、覗いてたところを怒られる。
心臓のドクドクという音が周りに聞こえるんじゃないかというくらい大きくなっていく。。
普通ならそんなに緊張する必要もないかもしれない、だが相手は・・。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヒュンッ!カッ!
響の頭の右側(正確には元頭のあった場所)を、何か金属のようなものが通過した。
晶「・・・何だ、今の」
鈴「小夜子先輩の弓矢」
見ると後ろの壁に確かに矢が刺さっている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

という様な事をする人だ。
ハッキリ言って、大ピンチ。
晶「あ、あの」
言い訳をしようとする、ところでちょっと思いとどまって考えてみる。
もし言い訳が嫌いな人だったら?。
それこそその瞬間に何かされるかもしれん。
そんなこんなを考えている内に、
小夜子「私たちを覗いていた輩を知らないか?」
という以外でびっくりでなんとも安心を生んでくれる勘違いな一言がこぼれ出てきた。
晶「さ、さあ」
ふぅ、何とか一命は取り留めたか。
よくよく考えてみればいきなり手を出されることは無い気もするが、とりあえず安心しておこう。
すると覗いていた人がいなくなったと分かったからなのか美影先輩が次にゆっくりと振り向いた。
美影「だから止めてくださいと言ったんです、もう私の髪に触らないでください」
小夜子「そんなことを言わないでくれ、私の大切な精神安定剤を奪うつもりか?」
美影「他の物で代用してください」
小夜子「それは無理だ、美影の髪以上の物は私は・・知らん」
美影「何ですか今の間は、何か思い当たる物でもあったんでしょう、小夜子先輩」
小夜子「何を言っているんだ・・ああそうか、やきもちだな?ははは、安心しろ美影、
君の髪を超えるものはないよ、・・・ついでに言うがその呼び方は止めてくれと言っただろう
ほら、小夜子と呼んでごらん?」
美影「やきもちなんて妬きません、それと呼び方は変えません」
小夜子「恥ずかしがるな、一度でいいんだ」
美影「そろそろ仕事に戻ったほうがいいと思います、副会長さん」
小夜子「むぅ、その呼び方は止めてくれ、愛を感じない」
美影「元から愛なんて出してませんが止めてほしかったら早く戻ってください」
小夜子「・・・仕方がないな、それに早く戻らないと会長がいつ逃げ出すかも分からないし、
私はオフィスのほうに戻らせてもらうとするよ、それじゃあまた月曜日に、美影、雫、晶君」
・・・これまでの会話を聞かせてもらって一言。
あの人、響と同種だ。
雫「はい!またあしたぁー!」
雫はそんなことを気にする様子もなく元気に手を振っている。
類友ってあるんだなぁ。
俺は小さくお辞儀をしながらそんなことを考えていた。

・・そういえばそんなことを考えている場合じゃなかった。
俺は改めて美影先輩に向き直った。
すると美影先輩は少し前から俺を見ていたらしく目が合う。
・・・。
な、何話せばいいんだっけ。

駄目だ、緊張してきた。
晶「あ、あの、昨日は、急にすみませんでした」
美影「・・・別に気にしないでいいのよ、こちらこそ久しぶりだというのに昨日は
追い返してしまってごめんなさいね」
美影先輩の口調が昨日より優しくなっている、でも・・・。
どことなくまだ違和感が残っている、中学の時とは違う口調。
・・・もしかしたら、俺の事を忘れていたのかもしれない。
そうだとしたらちょっとショックだけど、考えられなくも無い。
一年も海外と言う、まったく新しい世界で過ごすとなると、日本の事も忘れてしまうんだろう。
晶「・・・」
で、理由に見当がついたのはいいが相変わらず会話は止まったままだ。
美影「・・・それで、そちらの子はどなた?」
美影先輩が俺の右隣を見つめる。
誰の事だ?と一瞬思ったが直ぐに思い出した。
そこにはまるで自分ですらそこにいると言う事を忘れていたような顔をしている雫がいる。
晶「えっと、俺の後輩で、一つ年下の・・夏目、だっけか?」
雫「え?あ、はい」
雫は緊張しているのかどこか心ここにあらずと言った感じだった。
俺がそれだけ言うと、美影先輩は俺にほんの少し困ったような眼差しを向けてきた。
美影「獅堂君・・まだ名前だけしか覚えない癖、直ってないのね」
晶「あ・・・」
そう言われて見れば中学のときに何度か美影先輩に同じことを言われた記憶がある。
・・・あれ?だとするとあながち忘れてないのか?中学校の頃の事。
雫「はっ、すみません少しボーっとしてました!」
色々と考えていると横からようやくいつも通りな元気な声が聞こえてくる。
美影「こんにちは、えーと、夏目さん、でいいのかしら?」
雫「あ、いえ!晶せんぱいみたいに雫って呼び捨てにしてくれると嬉しいです!」
美影「そう・・・それじゃあ雫ちゃん、でいいかしら」
雫「あ、はい!お願いします!」
美影「ふふ、可愛いのね」
雫「あっ」
とても自然な動きで雫の頭をなでる美影先輩。
・・見てる方は少し恥ずかしい。
美影「あ、バスが来たみたい、それじゃあまた今度ね、雫ちゃん」
え?マジか?。
雫「え、あ、はい!さようなら!」
俺、結局話せてないんだが。
美影「獅堂君もね・・・癖を、直しておくようにね」
晶「は、はい、さようなら」
最後に少し微笑んでから、美影先輩は今着たばかりのバスに乗り込んでしまった。
雫「・・なんか、素敵な人でしたね!」
晶「あぁ・・・」
雫「晶せんぱい?」
はぁ、またあんまり話せなかった。
それに分からない事がありすぎる。
・・・俺が考えすぎなのか?、これが普通なのか?。
晶「・・・なんだかなぁ」
俺はゆっくりと空を見上てみた。
空はもう、夕焼けで赤く染まっていた。

雫「それじゃあ、またディナーでー!」
晶「ああ、またな」
少し離れたところで大きく手を振ってくれている雫。
帰り道の話、全部適当に返しちまって悪い事したかな。
後で謝っとくなりしとくか。
ああ、でもなぁ・・・ああっくそっ!イライラする!。
何でこんなにうだうだしてるんだ、俺は!。
シャキッとしよう!、よし!。
俺は自分で気合を入れなおし、自分の部屋に入った。

さて、と。
部屋に戻ってきてやる事と言えば・・・。
まあ、掃除ぐらいなもんだよな。
・・・もそもそ。
・・・・・・・もそもそ。
・・なんか捗んないな。
晶「もういい!、止めだ止めだ!」
俺はすぐに諦めて作業を中止する。
何故こんなに俺が気持ちの悪い事になっているんだ?・・。
まぁ、考えるまでもねぇか。
とりあえず俺は椅子に座り、気の済むまでその事に関して考えてみる事にした。
まず、何故、いつから美影先輩が俺に冷たくなってしまったか。
自分自身でも女々しいと思うが俺が思い悩んでる事はその事に関してだ。
最後にちゃんと話をしたのが・・・受験シーズン前、か?。
そうだ、美影先輩がうちに来た日が最後だ。
俺は懐かしき思い出を探す旅に出た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月は11月、本格的に寒くなってきた日本は、その日も変わる事無く、しんしんと雪を降らしていた。
その日は、美影先輩がもうすぐ受験で忙しくなるので、最後にまた家に来てもらおう、
と言う親父の考えから始まった日だった。
学校が終わってすぐに、という話だったので、美影先輩は学校から一緒に俺の家に来てもらった。
何度か家に呼んだことはあるが、やはり緊張は抜けそうにない。

晶「いや、ホントいつも通り騒がしい家ですみません」
家に美影先輩を連れて帰ってみると、そこは飲み会会場と化していた。
どうやら組の皆で飲んでいるようだ。
大きな部屋を二部屋襖をぶち抜いて机を並べ、その机の上には大量のビールや日本酒が置いてある。
鬼神「おお、今帰ったかぁ!あきらぁー!」
大きな声が少しはなれたところから響いてくる。
どうやら少し酔っ払っているらしく、今日はその大声も五割り増しだ。
美影「お邪魔しています、獅堂さん」
鬼神「うぅむ!よく来た!さぁ晶そんな所で何をやっている!こっちに来てお前も飲まんかぁ!」
晶「い、いや、今日は遠慮しとく」
俺の返事を聞いてか美影先輩は少し微笑んだ。
美影「ふふっ、晶君、私がいるからって気にしなくていいのよ?」
晶「な、いえ、そういうわけにも・・それに、未成年だから」
それを聞くとまた笑う美影先輩。
美影「本当なら二つ目に言った理由が直ぐに出てこないといけないんじゃない?晶君」
晶「あ・・す、すみません」
鬼神「おお、まさか晶が彼女を連れてくる日が来るとは!これはお祝いをせねばならんなぁ!」
おおー、と歓声を上げる組の皆。
晶「な、ちょ、か、彼女じゃないだろ!つーか親父が連れて来いって言ったんだろ!?」
鬼神「ふむ・・そうだったかのぉ」
美影「お邪魔しています、おじさん」
鬼神「うむ、真田さんだったか、まあ気楽にしていくといい、酒ならいくらでもあるぞぉ!」
晶「未成年に酒勧めんなよっ!」
美影「本当にいつ来ても賑やかな家ね、ここは」
晶「あ、すみません」
なんか謝ってばっかりだな、俺。
美影「あら、何で謝るの?、私、こういう賑やかな家にあこがれてるんだから」
晶「そ、そうなんですか?」
美影「ええ、ほら、前に言ったと思うけど、私の家は私とお母さん二人だから」
晶「ああ、そういえば・・でも流石にここまでだと少しうるさいですよね」
美影「そうね、このままじゃ二人ともお酒を飲まされてしまうかもしれないし」
ニッコリと微笑んで俺を見つめる美影先輩。
・・・どうすんだ俺、言うのか?言うべきなのか!?。
晶「あの・・・俺の部屋、行きますか?」
美影「そうね、晶君がそれでいいなら」
晶「あ、そうですよね、嫌ですよね・・ってええ!?」
俺がかなり勇気を出して言ったのを知ってか知らずか、美影先輩は笑顔で即答してくれた。
美影「・・どうしたの?それとも、冗談だった?」
気づくと美影先輩の優しい笑顔は少し意地悪な笑い顔に変わっている。
この人、冗談なんかじゃないの判ってて言ってるな。
この美影先輩の小悪魔のような笑顔が、すべてを物語っている気がする。
晶「そ、そなことは無いです!・・・じゃ、じゃあ、こっちなんで」
俺は自分の部屋に向かって歩き出す。
何だ?何をどきどきしてんだ俺!、別に部屋に入れるだけ別に部屋に入れるだけ。
その言葉が何回俺の頭を回ったか数え切れなくなった頃、気づくと俺は自分の部屋の前にいた。
美影「ここ?」
少しボーっとしてしまっていたのか、美影先輩が少し不安げに話しかけて来る。
いや、一番不安なのは俺なんだが。
晶「あ、はい!・・えと、どうぞ」
俺はドアを開けて部屋に入ると、急いでクッションをベットの下から引きずり出した。
美影「ありがとう」

俺の部屋は見事に何もない。テレビが無ければラジオすらなく、更にはCDプレイヤーすらない。
つまり、この部屋には会話以外に間を持たせる方法が無いと言うことだ。
=俺が、何か、喋んなきゃ。

・・・だめだ、やっぱり緊張する。
何かをする気なんてはなから無い、だがそれでも緊張はする。
第一俺は部屋に女の人を入れたことが無い。
晶「・・・」
美影「・・・」
何か美影先輩は興味心身な様子でで俺の部屋を眺めてるし。

いや、このまま無言という訳にもいかないだろ。
・・・俺は、何か話をしようと覚悟を決め、口を開いた。
晶「み──」
コンコン。
途端に部屋に飛び込んでくるノックの音。
晶「あ、は、はい!」
急なノックの音にびっくりした俺は自分の家のだというのにとても他人行儀な返事をしてしまう。
ガチャリと音を立てて開くドアの向こうにいたのは、親父だった。
鬼神「晶ぁ!ここかぁ!」
晶「何だ、親父かよ・・ノックなんてするから誰かと思った」
鬼神「はぁっはっは!なーに、下手に邪魔してはいかんと思ってのう」
晶「な、何をだよ!」
鬼神「そんなことより!」
バン、と扉をこぶしで殴る親父。
鬼神「せっかく晶のために用意したのに何故いないんだぁ!」
晶「い、いないって、どこに?」
鬼神「飲み会だ!飲み会!、せっかく晶が好きな日本酒の鬼ごろ──」
晶「だぁっ、ストップストップ!」
親父の口をふさぎつつ、ちらりと美影先輩の顔を盗み見てみる。

い、一応笑っていらっしゃるようで。
美影「晶君」
晶「は、はい」
安心し始めたところで話しかけられ、思わずドキリとしてしまう。
美影「行きましょうか」
晶「へ?、どこにですか?」
美影「せっかく用意して頂いたんだったら、行かないのは失礼でしょう?」
・・・あれ?、もしかして、意外と乗り気ですか?。
美影「さ、いきましょう?」
立ち上がり、笑顔で俺の手を取る美影先輩。
その手は暖かくて、柔らかくて、
手を繋ぐ。ただそれだけの一瞬の行為なのにかなりドキドキした。
そして、昔からそうして来たかのような自然さは、俺を簡単に立ち上がらせてしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かくっ。
晶「っとわ!?」
世界がいきなり急変し、さらに縦に大きく揺れる。
そこは俺の部屋では無く、俺の手を掴んでいたはずの美影先輩の手は無くなっていた。
・・・またいつの間にか寝てたのか。
どうやら俺は椅子に座って考えるつもりが、いつの間にかすっかり眠っていたらしい。
まあ、寝不足だったしな。今回は仕方が無いと考えよう。
晶「・・腹減ったな」
取り合えず時間は、っと。
スタンバイ状態にしてあったパソコンを立ち上げなおし、時間を確認する。
いちいちパソコン立ち上げるのめんどくさいんだよ、時計買わなきゃな。
あ、それとも誰か余ってるやつがいないか聞いて借りるのもいいか。
パソコンは静かにファンを回しながら、画面に光を入れた。

画面右下にある時計を見てみると時刻は3時40分を指している。
もちろん、俺は時計を直すのを忘れてはいない。
だから今は4時40分ってことか。
・・・微妙だ。
ま、もう行って並んどくのもありだろ。

ドアを開けてみると辺りの風景は夕焼けで赤く染まっていた。
こちらは田舎なお陰か、空がとても綺麗だ。
これなら夜は星も良く見える事だろう。
今度一度見てみようと思った。
歩いて二分。
カフェテリアの前まで来ると、どうやらまだドアすら開けられていないようだった。
取り合えず俺の「もしかしたらもう開いているかも」と言う希望は砕かれてしまったらしい。
ガラス張りのカフェテリアを外から覗いてみると、中では人がせっせと動き回っていた。
晶「待つしかない、か」
今から部屋に戻っても大して何もすることも無く戻ってくることになるだろう。
それならここで十数分を待った方がマシだ。
???「ほらほら!鈴さん見てくださいよ、ほかにも雫とおんなじ考えの人がいたじゃないですか!」
???「あ、ほんとね、全くどこの・・って晶?」
壁に背中をつけ、少し何も考えずにいようとしていた俺の脳を無理やり呼ぶ奴がいた。
晶「その声は、鈴と雫か・・」
わざわざ顔を向けるのが億劫なので声だけで当てようとしてみる。
鈴「なによ、こっちぐらい向いたらどうなの」
晶「面倒臭い」
雫「だめですよ晶せんぱい!そんな事もめんどくさがってる様じゃ将来ニート確定です!
と言うよりもう既にニート予備軍ですよ!?」
何だよニ−ト予備軍って。
晶「失礼な事言うな、俺はちゃんと将来働く予定だ」
鈴「へー、具体的には何になるか決めてんの?」
晶「・・・」
なるつもりだった物は有るんだが、親父に速攻で反対されちまったしな。
まあ、反対されて無かったとしても教える気は無いけど。
晶「まだ、決めてないかな」
俺は少し考え、そう答えを返す。
鈴「何よそれ、せめて夢ぐらい無いの?」
晶「別に、適当な会社にでも勤めるさ」
・・・だめだ、やっぱり緊張する。
何かをする気なんてはなから無い、だがそれでも緊張はする。
第一俺は部屋に女の人を入れたことが無い。
晶「・・・」
美影「・・・」
何か美影先輩は興味心身な様子でで俺の部屋を眺めてるし。

いや、このまま無言という訳にもいかないだろ。
・・・俺は、何か話をしようと覚悟を決め、口を開いた。
晶「み──」
コンコン。
途端に部屋に飛び込んでくるノックの音。
晶「あ、は、はい!」
急なノックの音にびっくりした俺は自分の家のだというのにとても他人行儀な返事をしてしまう。
ガチャリと音を立てて開くドアの向こうにいたのは、親父だった。
鬼神「晶ぁ!ここかぁ!」
晶「何だ、親父かよ・・ノックなんてするから誰かと思った」
鬼神「はぁっはっは!なーに、下手に邪魔してはいかんと思ってのう」
晶「な、何をだよ!」
鬼神「そんなことより!」
バン、と扉をこぶしで殴る親父。
鬼神「せっかく晶のために用意したのに何故いないんだぁ!」
晶「い、いないって、どこに?」
鬼神「飲み会だ!飲み会!、せっかく晶が好きな日本酒の鬼ごろ──」
晶「だぁっ、ストップストップ!」
親父の口をふさぎつつ、ちらりと美影先輩の顔を盗み見てみる。

い、一応笑っていらっしゃるようで。
美影「晶君」
晶「は、はい」
安心し始めたところで話しかけられ、思わずドキリとしてしまう。
美影「行きましょうか」
晶「へ?、どこにですか?」
美影「せっかく用意して頂いたんだったら、行かないのは失礼でしょう?」
・・・あれ?、もしかして、意外と乗り気ですか?。
美影「さ、いきましょう?」
立ち上がり、笑顔で俺の手を取る美影先輩。
その手は暖かくて、柔らかくて、
手を繋ぐ。ただそれだけの一瞬の行為なのにかなりドキドキした。
そして、昔からそうして来たかのような自然さは、俺を簡単に立ち上がらせてしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かくっ。
晶「っとわ!?」
世界がいきなり急変し、さらに縦に大きく揺れる。
そこは俺の部屋では無く、俺の手を掴んでいたはずの美影先輩の手は無くなっていた。
・・・またいつの間にか寝てたのか。
どうやら俺は椅子に座って考えるつもりが、いつの間にかすっかり眠っていたらしい。
まあ、寝不足だったしな。今回は仕方が無いと考えよう。
晶「・・腹減ったな」
取り合えず時間は、っと。
スタンバイ状態にしてあったパソコンを立ち上げなおし、時間を確認する。
いちいちパソコン立ち上げるのめんどくさいんだよ、時計買わなきゃな。
あ、それとも誰か余ってるやつがいないか聞いて借りるのもいいか。
パソコンは静かにファンを回しながら、画面に光を入れた。

画面右下にある時計を見てみると時刻は3時40分を指している。
もちろん、俺は時計を直すのを忘れてはいない。
だから今は4時40分ってことか。
・・・微妙だ。
ま、もう行って並んどくのもありだろ。

ドアを開けてみると辺りの風景は夕焼けで赤く染まっていた。
こちらは田舎なお陰か、空がとても綺麗だ。
これなら夜は星も良く見える事だろう。
今度一度見てみようと思った。
歩いて二分。
カフェテリアの前まで来ると、どうやらまだドアすら開けられていないようだった。
取り合えず俺の「もしかしたらもう開いているかも」と言う希望は砕かれてしまったらしい。
ガラス張りのカフェテリアを外から覗いてみると、中では人がせっせと動き回っていた。
晶「待つしかない、か」
今から部屋に戻っても大して何もすることも無く戻ってくることになるだろう。
それならここで十数分を待った方がマシだ。
???「ほらほら!鈴さん見てくださいよ、ほかにも雫とおんなじ考えの人がいたじゃないですか!」
???「あ、ほんとね、全くどこの・・って晶?」
壁に背中をつけ、少し何も考えずにいようとしていた俺の脳を無理やり呼ぶ奴がいた。
晶「その声は、鈴と雫か・・」
わざわざ顔を向けるのが億劫なので声だけで当てようとしてみる。
鈴「なによ、こっちぐらい向いたらどうなの」
晶「面倒臭い」
雫「だめですよ晶せんぱい!そんな事もめんどくさがってる様じゃ将来ニート確定です!
と言うよりもう既にニート予備軍ですよ!?」
何だよニ−ト予備軍って。
晶「失礼な事言うな、俺はちゃんと将来働く予定だ」
鈴「へー、具体的には何になるか決めてんの?」
晶「・・・」
なるつもりだった物は有るんだが、親父に速攻で反対されちまったしな。
まあ、反対されて無かったとしても教える気は無いけど。
晶「まだ、決めてないかな」
俺は少し考え、そう答えを返す。
鈴「何よそれ、せめて夢ぐらい無いの?」
晶「別に、適当な会社にでも勤めるさ」
そうは言ったものの、本当はどうするかな。
実際親父の後を継ぐもんだと思ってたから何も考えずにいたけど・・。
鈴「はぁ、呆れた、そんなんでちゃんと働く予定とか言ったの?」
晶「あぁもう、うるっさいな、だったら鈴や雫はちゃんと決めてんのかよ?」
雫「雫はですねぇ、保母さんになりたいんです」
話題を振ると目を輝かせながら語りだした。
保母さんか・・・。
いや、なんか想像してみたら危なっかしくて任せられそうに無いんだが・・。
容易に想像できる失敗の数々。
晶「・・・雫」
雫「はいっ、何ですか?」
晶「悪いことは言わん、止めとけ」
雫「えぇっ!?な、何でですか!?」
晶「いや、心配で子供を任せられそうに無い」
雫「がーん、ひっ、ひどいですよぉ、晶せんぱぁーい」
鈴「・・・やっぱり皆似た様な事を思うのね、少し安心したわ」
晶「それに最近はあれだ、親が怖いらしいぞ、何で私の子が劇で主人公じゃないんですか、
的な苦情を普通に幼稚園側に言って来るらしいぞ」
雫「えっ!?、そ、それってよく聞きますけど本当にあるんですか!?」
晶「あ、ああ、俺の知り合いが言ってた」
言えねぇ、実は俺の父親がやりましたなんて言えねぇ!。
あれは、俺が幼稚園の劇で役人Bの役をもらって帰った日の事だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
晶「ただいまー」
鬼神「おお!帰ったか晶!・・ん?元気が無いながどうした?」
晶「うん、じつはおーでしょんに落ちちゃったせいで役人の役になっちゃったんだ」
鬼神「?、何の話をしているんだ?」
組の人「おやっさん、おそらく今度の劇の話かと」
鬼神「おお!来月のやつだな!なるほどなるほどそれで脇役が当って落ち込んでいる
と言う訳かぁ!」
晶「うん、しゅじんこうになりたかったんだけど・・」
鬼神「・・・健司、二人ぐらい若いもん連れて来い」
健司「へ、へい!」
晶「え?またお父さんどこかにお仕事しに行くの?せんしゅう言ってた最近ちょうしに乗ってる
っていう、ごとう組のところ?」
鬼神「ほぉ、よく覚えとるな!、だが今回は仕事じゃないから安心しとけ、がっはっは!」
健司「一応新しく入った二人を連れてきました!」
鬼神「おう、じゃあ言ってくるからのぉ!留守の間晶を頼んだぞぉ!健司」
健司「はっ!命に代えても!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんなやり取りがあって次の日に幼稚園に行ってみるといきなり役が変わってるんだもんな。
今考えるとヤバいだろ、あれは。
雫「じゃ、じゃあ小学校の先生に・・」
鈴「そういえば最近では生徒がストライキするらしいわね、小学校って」
雫「はうぁっ!」
結構なショックを受けているようだ。
ま、これだけの事で将来の子供たちの安全が確保されるなら必要な犠牲だろ。
晶「そういうお前は何かあるのかよ、鈴」
鈴「え!?わ、私?」
晶「あ、ああ」
物凄い勢いでビックリされてしまった。
鈴「私は、ほら・・別に良いじゃない」
何故か急にしどろもどろになったぞ、鈴の奴。
そんなに変な質問はしてない筈なんだがな。
それとも女子って普通はそういうのを聞かれるのを嫌がるものなのか?。
あ、でも雫は違ったか。
それともただ単に恥ずかしい夢なだけか?。
いや、恥ずかしい夢って何だよ。
雫「鈴さんの夢はですね、お─も、もごごっ!?」
鈴「ハイストップ雫ちゃん!少し静かにしててねー」
言いだそうとした雫の口を押さえ込む鈴。
今言おうとしたって事は雫は知ってるのか。
・・・もしかして俺、鈴に信用されて無いのか?。
まあそれは有るかも知れないな、こいつが俺の事嫌いだって言うのは日頃の態度で出てるし。
晶「・・・まあ、別に興味無いから言わなくていいぞ」
鈴「え?、あ、そう・・・それもなんかカチンと来る言い方ね」
じゃあどうしろって言うんだよ。
でもまあ後から雫にでもこっそり教えてもらうさ。
鳴かぬなら、他の鳥鳴け、ホトトギス・・・なんてな。
俺らがそんな話をしている内に十五分くらいは経っていたらしい。
中に居た人がドアの鍵を開けてくれた。
鈴「はぁっ、なんか変なのと話してたらお腹空いちゃった、早く食べよー」
晶「お前、雫の事をそんな風に思ってたのか・・・」
雫「えっ!?そうなんですか?・・変なの、かぁ」
鈴「ちょ、ちょっと、違うわよ!雫ちゃんじゃ無くて晶の事を言ってんのよ!」
晶「うわ、雫だけじゃなくて俺まで、こうなったら二人で食うか、雫。俺らはどうも嫌われてるみたいだ」
雫「変なのって言われちゃいました・・・」
鈴「うぅー、もうっ、悪かった、悪かったわよ!これで満足?それとあれは雫ちゃんに
言ったんじゃないってば」
晶「さ、早く飯食うか」
雫「はいっ」
鈴「もうっ、何なのよあんたたち!やけにコンビネーション良いわね・・」

今日の夕食。
フィッシュ&チップス。ライス。

鈴「またフィッシュ&チップスかぁ」
カチャカチャと食器とフォークがぶつかる音だけがする中、鈴が最初に口を開いた。
晶「なんだ、嫌いなのか?」
鈴「うーん、料理の存在自体は嫌いじゃないんだけど・・ほら、カフェテリアの料理ってお世辞にも
上手いとは言えないじゃない?」
晶「まあな」

・・・もしかして俺、鈴に信用されて無いのか?。
まあそれは有るかも知れないな、こいつが俺の事嫌いだって言うのは日頃の態度で出てるし。
晶「・・・まあ、別に興味無いから言わなくていいぞ」
鈴「え?、あ、そう・・・それもなんかカチンと来る言い方ね」
じゃあどうしろって言うんだよ。
でもまあ後から雫にでもこっそり教えてもらうさ。
鳴かぬなら、他の鳥鳴け、ホトトギス・・・なんてな。
俺らがそんな話をしている内に十五分くらいは経っていたらしい。
中に居た人がドアの鍵を開けてくれた。
鈴「はぁっ、なんか変なのと話してたらお腹空いちゃった、早く食べよー」
晶「お前、雫の事をそんな風に思ってたのか・・・」
雫「えっ!?そうなんですか?・・変なの、かぁ」
鈴「ちょ、ちょっと、違うわよ!雫ちゃんじゃ無くて晶の事を言ってんのよ!」
晶「うわ、雫だけじゃなくて俺まで、こうなったら二人で食うか、雫。俺らはどうも嫌われてるみたいだ」
雫「変なのって言われちゃいました・・・」
鈴「うぅー、もうっ、悪かった、悪かったわよ!これで満足?それとあれは雫ちゃんに
言ったんじゃないってば」
晶「さ、早く飯食うか」
雫「はいっ」
鈴「もうっ、何なのよあんたたち!やけにコンビネーション良いわね・・」

今日の夕食。
フィッシュ&チップス。ライス。

鈴「またフィッシュ&チップスかぁ」
カチャカチャと食器とフォークがぶつかる音だけがする中、鈴が最初に口を開いた。
晶「なんだ、嫌いなのか?」
鈴「うーん、料理の存在自体は嫌いじゃないんだけど・・ほら、カフェテリアの料理ってお世辞にも
上手いとは言えないじゃない?」
晶「まあな」

雫「あぐあぐ、ごくごく」
本当にその通りだと思う。
俺が来てから口にした料理はすべて微妙と言えればいいほうな料理ばかりだ。
これは俺の舌が特別贅沢なわけでは無く、ここの料理に問題が有ると断言して良いだろう。
鈴「ちゃんとした所で食べればそれなりに美味しいんだろうけど・・・」
雫「はぐはぐ」
鏡花「そうやねー、これでも一応オーストラリアの代表料理やからね」
椅子を引き、鏡花が俺の席に座る。
晶「・・・っておい!」
鏡花「あ、ごめん、隣座ったらあかんかった?」
晶「いや、それは別に良いけど・・じゃなくて!お前なんでここに居るんだよ!」
鏡花「あ、ひどいなー晶くん、それじゃまるでうちがここに居たら不自然みたいやん」
鈴「いや、不自然だと思うんだけど・・・」
鏡花「なははー、ばれたか」
鈴「それで、何でここに居るの?泊りに来る予定はなかったと思うけど・・」
鏡花「いやな、鞄を学校に置いて来たのを帰ってから気づいてな」
晶「じゃあ一回手ぶらで家まで帰ったのか?普通は途中で気づいてもよさそうだが」
それも滑稽な話だな、鏡花は意外とドジなのかもしれない。
鏡花「それが不思議な事に全く気づかんかったんよ、それでホストに送ってもらって態々取りに来た
序でに、鈴たちに挨拶してかえろーとおもて」
鈴「わざわざ鞄のために戻ってこなくても・・何か大事なものでも入ってたの?」
鏡花「ううん、教科書と辞書ぐらいしか入ってへんけど・・ほら、晶くんみたいにはなりたくないやん?」
俺みたい、と言われ考えてみると思い当たる節が有った。
たぶんこの前の宿題を忘れた事を言ってるんだろう。
晶「悪かったな」
鏡花「ああ嘘やって、そんな怒らんで〜な」
ひとつため息をつき食事に戻るとふと、違和感を感じた。
その違和感の元を探ろうと周りを見渡してみるとそれは俺の目の前にあった。
雫がやけに静かなのだ。
最初は食べるのに必死になってるんだと思っていたが既に食べ終わっていたようだ、が、
一言も発する様子はない。
晶「どうしたんだ?雫」
取り合えず話しかけてみる事にする。
雫「え?、べべべ別になんでもないですヨ?」
明らかに何か有る。
鏡花「ああ、たぶんうちが居るからやと思うで?雫ちゃんまでうちに慣れてへんくて」
晶「お前に?」
鈴「あれ、知らなかった?雫ちゃんすっごい人見知りするのよ、私も最初の方は話し掛ける
度にギクシャクしてたわよ」
晶「そうなのか?知らなかったな・・」
はて。そこでまた違和感を感じる。
晶「鏡花は何時からこっちに来てるんだ?」
鏡花「え?うーん、鈴とおんなじでちょうど一年前ぐらいやなぁ」
俺が来て初日の事を思い出してみる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
???「私もオフィスに用がありますので!ね?、晶先輩?」
しっかりと歩幅を合わせてついてきた。
? そこで疑問が出る、俺は自己紹介をした覚えはない。
晶「?? 名前・・・なんで・・・?」
???「今日新入生の先輩にスポーツ科の案内をするようにって先生に言われて、それでその人の名前が獅堂 晶って聞いてたから やっぱりそうだったみたいですね」
なるほど、つまり今日の午後はこの子と行動か・・・少し考えただけでため息が出そうだった。
晶「そうか、それじゃ今までの態度はあんまりだったな、悪かった」
???「そんな、謝るのは私のほうですよ、さっきはぶつかっちゃってごめんなさい」
晶「それなら大丈夫だ・・・名前、まだだったな」
雫「そうでした、私の名前は夏目 雫(なつめ しずく) 14才です、よろしくお願いします!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ってな感じで俺が鬱陶しがっていたのをスルーして無理やり話し掛けてきたんだが・・・。
晶「雫って男なら平気なのか?」
鈴「うーん、そうでもないんじゃない?どうなの?雫ちゃん」
雫「う、え、えーと、なんていうか誰でも緊張しちゃいます」
鏡花「鈴は寮で一緒やからすぐ慣れてくれたんやろうけど、うちなんかまだまだやしね」
鈴「そんな事無いって、私も最初の二ヶ月くらいはお互いガチガチでさぁ」
鏡花「そうやったん?気づいたらすぐ仲良うなってと思ったんやけど」
雫「そ、そんな事無かったですよ?最初はほんとに緊張しちゃって・・」
鏡花「うーん、やっぱうちが居るといまいち元気なくなってまうなー・・・ま、そろそろうちは戻るわ」
鈴「そう?」
鏡花「うん、実はオフィスの前でホストに待ってて貰ってるんよ」
晶「お前、あんまり待たすと怒られるぞ」
鏡花「そやねぇ、それじゃあまた来週に学校でなー」
晶「ああ」
鈴「あ、それならオフィスの前まで一緒に行こ?」
鏡花「そんな気ー使わんでもええよ?ご飯食べてるんやろ?」
鈴「あはは、ちょっと食欲沸かないって言うか・・なんていうか」
視線を食事に落とす鈴。その意図に気づいた鏡花はなるほど、といった顔をしていた。
雫「さ、さようならです」
手を振って別れを告げた後、俺は少し雫と話をする事にした。
晶「にしても本当に人見知りが激しいのか?」
雫「はい、それはもうかなりの勢いで」
晶「にしては、俺と最初会った日にやけに馴れ馴れしかった記憶が有るんだが・・」
雫「え、あー、うー、そうだったかも知れません」
ん?、そういえば最近にも同じ事があったような・・・。
晶「・・そうだ、美影先輩にもそんなに緊張してなかったよな」
雫「え?、あーそうですね、何でだろう・・あっ!、あー」
少し間が開いた直後に、頭に電球が出んばかりの閃き顔をする雫。
晶「な、何だよ」
雫「え?何がですか?」
晶「いや、今何か気づいた様な顔をしただろ」
雫「いや、特に対した事じゃないんですけど、真田せんぱいが平気だった理由が思いついたんです」
晶「ふーん・・・」
雫「・・えっ!?、聞いてくれないんですか!?」
聞いて欲しいのかよ。
晶「・・何でだ?」
雫「はい!晶せんぱいと似てるからだと思うんです!」
似てる・・・なるほど。
晶「確かにそれは、有る様な・・無い様な」
雫「何だろう、ふいんきって言うんですかね?なんかオーラが似てる気がするんです!オーラが」
晶「うーん、それは俺もたまに中学の時に感じた気もするが・・やっぱり育ってきた土地が
同じだからか?」
雫「土地が同じ・・あ、そういえば中学校が同じだったんですよね!」
晶「ああ、確かに俺らもちょっと似てるなぁ、ってのは言ってたりしてたんだよ、別に対して
気にした事は無いけどな」
雫「あぁー、確かにクラスメイトに一人くらい居る事ありますね!、類友って言うんでしたっけ?」
そういえばそんな会話もしたな・・・やべ、また昔を思い出してきた。
はぁ、ほんとに何でこんなに女々しくなってるんだろう、最近。
晶「でだ、とりあえず美影先輩が平気だった理由は理解できたんだが、俺は?」
雫「え?えーと・・・」
何だ?雫にしては珍しく歯切れが悪いな。
雫「うーん・・・忘れちゃいました♪」
晶「忘れたって、まだ一週間経ってないだろ・・・」
雫「えへへ、記憶系は苦手なんですよーたいていの事は三日で忘れる自信があります!」
あー、そういえば初日もそんな事言ってたな。
晶「三日で忘れるって・・・お前は鳥頭か」
雫「鳥?、うーん、あっ!それはヒヨコみたいにかわいいねって事ですね!?わーい、
晶せんぱいにほめられたー♪」
本当に、この子の将来が心配です。
鳥頭ってそんなマイナーな言葉じゃないよなあ。
晶「げ・・・飯冷えてる」
しばらく放って置おいたせいで、俺のディナーは冷え切ってしまっている。
雫「食べないんですか?」
晶「うーん、ちょっと気が引けるけどさすがに食う気無くなるよなぁ、これは」
一口食べたがなかなか食べたいと思えるものではない。
雫「うぅ、もったいないです」
晶「じゃあ雫が食うか?」
雫「それは遠慮させていただきたくございまする」
何語だ。
晶「じゃあそろそろ寮に戻るか・・雫は鈴を待つのか?」
雫「鈴さんはそのまま寮に戻ると思うのでその必要は無いと、という訳で一緒に帰りましょう!」
晶「一緒に帰るって言っても二分もかからない距離だけどな」
雫「ちっちっちっ、わかってないですなぁ晶せんぱい」
晶「何?俺が何を分かって無いって言うんだよ」
雫「つまりは、モチベーションの問題なんですよっ、ょ ょ (一人エコー)」
晶「・・・そうか」
もうスルーの方向でいいよな。

半分以上残っているディナーを捨てて、ドアの向こう側でまっていた雫の横に立つ。
日が沈み、明かりと言えば月の光と寮のライトだけで、外は少々足元が見辛かった。
晶「なに見てるんだ?」
雫は黙って空を見上げている。
雫「お星様がきれいだなぁっておもって眺めてたんです」
俺もつられて見上げてみると、そこには百万ドルの夜景も顔負けな星星が輝いていた。
いや、百万ドルの夜景見た事無いけどな。
日本では見られ無いような透通った星々の光が、俺の目に映る。
晶「確かに綺麗だな・・・でも雫は見飽きただろ?もう一年もこっちにいるんだから」
俺は上を向いたまま話をした。
雫「そんな事無いですよ、もしかしたらオーストラリアに来てちゃんと星を見たのなんて
初めてかもしれません」
晶「そうか・・・」
それから二分位経っただろうか。
俺が顔を雫に向けると雫はもう星を堪能しきった後らしく、彼女はじっと俺の顔を見つめていたため、
必然として目が合った。
何か意図が有るのだろうかと思い、そのまま見つめ合う形にしてみる。
晶「・・・」
雫「・・・」

お互い無言。
・・・何だこれは、目を先に背けたら負けなゲームか?。
そうかもしれない。
これで俺が目を背けたら「えへへー、雫の勝ちですねっ!」なんて言われるのが簡易に想像出来る。
それとも俺に言いたい事でもあるのか?。
それでなかなか言い出せないのかもしれない。
だが一向に雫が口を開く気配は無い。

・・・もしかして、告白?。
そんな馬鹿な考えが俺の頭に浮かんだ。
いや、それは無い・・・と思う。
ただ俺も一応男だ。
目の前に仲の良い女の子が黙って目を見つめてくれば十人中六人はそんな考えが浮かぶんじゃ
ないだろうか。
ちなみに、後の四人はその女の子が可愛いという理由で思うはずだ。

そんな考えが出てきてしまった自分に対して、頭の中で自問自答を続けていると。
ふと、雫の口が小さく開いた。
ただ雫は口をパクパクとさせるだけ、或いは俺が聞き取れないほどの小さな声を出しているらしく。
俺の耳には一向にいつもの元気な声が届く事は無かった。
俺が何を言ったのかと慌てて聞き取ろうとすると、直にその口は閉じてしまい、
次の瞬間にはいつもの声が俺の耳に届いていた。
雫「戻りましょうか!晶せんぱい!」
晶「あ、いや、今な──」
今までの事がまるで無かったかの様に万遍の笑みを向けてくる雫に、
俺は質問を投げかけようとする。
晶「・・何でだ?」
雫「はい!晶せんぱいと似てるからだと思うんです!」
似てる・・・なるほど。
晶「確かにそれは、有る様な・・無い様な」
雫「何だろう、ふいんきって言うんですかね?なんかオーラが似てる気がするんです!オーラが」
晶「うーん、それは俺もたまに中学の時に感じた気もするが・・やっぱり育ってきた土地が
同じだからか?」
雫「土地が同じ・・あ、そういえば中学校が同じだったんですよね!」

日本では見られ無いような透通った星々の光が、俺の目に映る。
晶「確かに綺麗だな・・・でも雫は見飽きただろ?もう一年もこっちにいるんだから」
俺は上を向いたまま話をした。
雫「そんな事無いですよ、もしかしたらオーストラリアに来てちゃんと星を見たのなんて
初めてかもしれません」
晶「そうか・・・」
それから二分位経っただろうか。
俺が顔を雫に向けると雫はもう星を堪能しきった後らしく、彼女はじっと俺の顔を見つめていたため、
必然として目が合った。
何か意図が有るのだろうかと思い、そのまま見つめ合う形にしてみる。
晶「・・・」
雫「・・・」
お互い無言。
・・・何だこれは、目を先に背けたら負けなゲームか?。
そうかもしれない。
これで俺が目を背けたら「えへへー、雫の勝ちですねっ!」なんて言われるのが簡易に想像出来る。
それとも俺に言いたい事でもあるのか?。
それでなかなか言い出せないのかもしれない。
だが一向に雫が口を開く気配は無い。

・・・もしかして、告白?。
そんな馬鹿な考えが俺の頭に浮かんだ。
いや、それは無い・・・と思う。
ただ俺も一応男だ。
目の前に仲の良い女の子が黙って目を見つめてくれば十人中六人はそんな考えが浮かぶんじゃ
ないだろうか。
ちなみに、後の四人はその女の子が可愛いという理由で思うはずだ。

そんな考えが出てきてしまった自分に対して、頭の中で自問自答を続けていると。
ふと、雫の口が小さく開いた。
ただ雫は口をパクパクとさせるだけ、或いは俺が聞き取れないほどの小さな声を出しているらしく。
俺の耳には一向にいつもの元気な声が届く事は無かった。
俺が何を言ったのかと慌てて聞き取ろうとすると、直にその口は閉じてしまい、
次の瞬間にはいつもの声が俺の耳に届いていた。
雫「戻りましょうか!晶せんぱい!」
晶「あ、いや、今な──」
今までの事がまるで無かったかの様に万遍の笑みを向けてくる雫に、
俺は質問を投げかけようとする。
雫「さあさあ!早く戻んないとかぜひいちゃいますよ!って言っても夏なんですけどねぇ、えへへ」
雫は俺の言葉を遮る様に言った。
晶「・・・そうだな、戻るか、また明日な」
俺は出そうになっていた疑問詞を飲み込み、寮に向かって歩き始めた。
さすがにもう一度聞く、等と言う行動は取れなかった。
きっと、聞かれたくないから言葉を遮ってまで言ったはずだから・・・。

雫と別れ、寮に戻ってきた俺はすぐにベットに倒れこんだ。
こういう色々有った日はさっさと寝てしまうのが一番だ。

雫、何が言いたかったんだろうな。
気にしないようにするのが一番なのだが人間の脳はそんなに便利には出来ていないらしく。
俺にまた一つ悩む事が増えてしまったようだ。
気を取り直して別の事を考えてみる。
明日は休み。
俺がオーストラリアに来て始めての休日だ。
何をする、と言う事も無いがとりあえず期待しておこう。
とりあえず今日は寝よう。
最近眠てばかりな気もするが、それはおそらく時差のせいだろう。
(時差って言っても一時間しかないのに?)なんて自分で自分に突込みを入れながら。
俺は、静かに眠りに落ちて行った。

四話 完。
次回予告
鏡花「ふうっ、なかなか雫ちゃんうちに慣れてくれへんなー。まあ鈴とじゃ寮とホームステイの差が
有るから仕方ないにしても。それにしても晶君に先を越されたんはちょっとショックやわー。
・・・え?な、何!?。今回次回予告するのうちやったん!!??。」
次回、荷物持ちとしての休日。
鏡花「なんか分からんけどごめんな〜!」


Side story
橘の木に咲いた花。

仲良くなったきっかけは、鏡花が話し掛けてきたからだった。
鏡花「なぁなぁ、友達にならへん?」
唐突だと思った。
実際そういうものは有る程度のプロセスを経て勝手に成っている物なんじゃないだろうか。
それを初対面で友達になろう、などと言う人は早々居ないだろう。
ただまあそんな人間も嫌いでは無かったので、そのまま二つ返事でうんと返しても良かったのだが。
その頃はひねくれていた所為か
鈴「・・・何で?」
なんてそっけなく返してしまったのを覚えている。
鏡花「だって、名前鈴って言うんやろ?だったら友達にならな」
彼女は当たり前のように応える。
鈴「は?」
余計意味が分からなくなった。
私の名前を知っている点は、先程全員がそれぞれ自己紹介をしたからなのは知っているが、
それにしてもこの人と友人になる事とそれがどう関係しているのかと、一瞬本気で考えた。
が、どう考えても思いつきそうも無いので、「何で?」と聞くとしょうも無い返事が返ってきた。

私はあの拍子抜けで意味の分からない台詞を一生とは言わないもののこの学校にいる間は
忘れられそうに無い。

鏡花「だって鈴って金に令、つまり金偏やろ?うちも金偏仲間やから!」
なぜかそういった彼女の目は自信に満ちていたのを覚えている。

少し沈黙が続いた後、私は笑い出してしまった。
周りが変な目で見てきたがそれも気にせず大笑いした。
まさかそんなどうでもいい事を理由にしてくるとは思わなかった。

こうして、私と鏡花は友達になった。
きっかけなんてこんな物なのだろう。

後で鏡花に聞いた話なのだが、その時鏡花は私が孤独に見えたらしい。
それで友達になろうと話し掛けてきてくれた。
今度私がそういう子を見つけたら、今度は私が話し掛けてあげよう。
そう、私は心に誓うのだった。

1位 夏目雫
2位 真田御影
3位 小夜子さん

雫はなんかこんぼくのあすかに性格にてるよな。

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