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匡の仲間達/みーのコミュの中大大戦争〜匡の仲間達〜(第1話)

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その夜、雨が降り、濃い霧がたち込めていた。雨よけの幌をかけたウイリスジープの中で匡はハンドルを握り締めた。ジープのエンジンは止められ、車内ランプはついていない。真っ暗である。ジープの後ろの座席で、山長は手にベレッタをもち、隣の男の脇腹に突き付けていた。前方に敵の小隊が警戒線をひいている。だが、彼らはジープに気がついてはいなかった。こんな後方に、敵が現れるなんて思いもしないのだろう。濃い霧がジープを隠している。
銃を突き付けられた男は敵軍の将校である。書類かばんを膝の上に置き、黙って前方を見つめていた。捕虜に声を上げられてしまえば、ジープは敵軍に見つかってしまう。雨音のみがあたりの静寂を支配していた。

雨音が大きくなった。山長は左手でヘルメットのつばを少しあげた。
「中田君、行こう」
中田はエンジンをかけ、ヘッドライトを点灯した。不意にジープは急発進し、敵の小隊の方向へ突進していった。歩哨は近くに来るまでそのジープが敵のものだとは気がつかなかった。彼が「敵だ!」と叫び、ライフルを発砲したときにはジープは障害物を跳ね飛ばし、逃げて行こうとする所であった。検問の小屋の中から兵士達が飛び出し、発砲をはじめる。しかし、ジープは再び夜霧に隠された。山長は後方で重機関銃の低い発射音を聞いたが、一発もジープには当たらなかった。

日本中の大学を二分した戦争は、K大、J大などの軟派大学連合軍(通称JALパック連合軍)が当初優勢を占めていたが、中立を表明していた国立大学が対立大学側に参戦し、形成は逆転するかのようであった。中大はM大、H大等と戦線を維持していた。情報工学科軍は理工の中核部隊として最前線にいたのである。

情報工学科部隊の駐屯する集落にたどり着くと、匡は自分の所属する中隊の司令部がある小屋の前にジープを止めた。迫撃砲がまわりに着弾している。ジープを降りると匡は爆音とともにみをかがめた。山長は、捕虜の書類入れを取り上げ、捕虜に手を頭の上に組むように命じた。匡と山長は捕虜を連れて小屋に入った。

小屋の中では情報工学科兵達がくつろいでいた。匡が小さな部屋に捕虜を入れようとすると、雨の中、東利がずかずかと入ってきた。東利は情報工学科生え抜きの最も経験のあるベテランである。いくつもの激戦を生き残ってきている。東利はだいぶ不機嫌で、無線機の前に座っていた鈴重にどなった。
「鈴重、道広を呼び出せ」


捕虜の顔を見ると、東利ははき捨てるように山長に言った。
「なんだ、この小汚ねえおっさんは。もうちょっとかわいげのある奴を捕まえてこい」
「東利君にそんな趣味があるとは知らなかったよ」
鈴重が受話器を東利に差し出すと東利は怒鳴った。
「道広、迫撃砲の照準を500m先に延ばすか、撃つのをやめろ。…。なに、聞こえない? そりゃ。そうだろうよ。おまえの撃っている迫撃砲がどかんどかんと、うるさいからな。いいか、おまえの撃っている迫撃砲の弾は俺達の頭の上に落ちているんだ。迫撃砲の照準を500m先に延ばせ。さもなきゃ、そこに行ってぶんなぐるぞ!」

小さな部屋には椅子が2つと机があり、捕虜は椅子に座った。
「階級および氏名しか答えられない。姓名は鶴崎。階級は中尉。J大所属。ジュネーブ協定を遵守したまえ」
匡は残りの椅子に腰掛けた。山長は立ったまま書類かばんをあけると中身をテーブルの上にぶちまけた。入っていたのは雑誌、それと意味のわからない書類、そして、灰色の鉄の固まりである。山長が書類を見るとそこには輸送計画が記されている。匡は鉄の固まりを手にとって言った。
「これはいったいなんだ?」
「それは捕虜になりそうな、いざというとき、鞄ごと池に沈めるための重りさ。機密書類を運ぶときには必ずいれるんだ。今回はその暇もなかったけどな」
「このG計画っていうのはなんだ?」
「それには答えられない」

匡はしばらく灰色の鉄の固まりを見ていた。良く見ると所々禿げている。禿げた所が光っている。匡はこれがなんなのかすぐ分かった。金の延べ棒である。灰色の塗料を塗って鉄の固まりのように見せかけてあるのだ。匡はその固まりを山長に手渡した。山長はしばらくその物体を見ると、部屋のドアを開けて、菊屋の所に行った。
「菊屋、おまえ、上等の日本酒を一升持っていたよな。よこせ」
菊屋はしぶしぶ、弾薬ケースの裏からそれを出した。
「どうするつもりですか、山長さん。まさかあの捕虜に飲ませるんじゃないでしょうね。それはもったいないですよ」
「いいから、早くよこせ」
山長は菊屋から日本酒を取り上げると、それを持って部屋に戻った。
「中尉さんよ。俺達はしがない兵隊だ。まあ、今日は一杯やろうぜ」
そう言うと匡と山長は捕虜の中尉に酒を飲ませはじめた。

捕虜はうまいと言って酒を飲み続けた。6合も飲んだろうか。べろべろになり机の上に突っ伏して寝そうになった。すると、山長は捕虜をむなぐらをつかみ、質問した。
「中尉、寝るのははやい。中尉! G計画で輸送されるのはこの鉄の固まりなんだろ。え、そうなんだろう?」
中尉はべろべろである。「そう」とだけ答えた。今度は匡が捕虜の肩をつかんで質問する。
「それで、この鉄の固まりは一体、どのくらいあるんだ?」
山長が中尉のむなぐらをゆすると、苦しそうに中尉は答えた。
「え、あー、400kg」
匡の顔色が変わった。「400kgか」
「よーし、中尉、まだ寝るのは早い。いいか、それは街のどこにあるんだ? 寝るな中尉!」
「銀行に決まっているだろ。金庫のなかだ」
「街を守る兵力は?」
「一個中隊」
そう言うと、中尉はどさっと床に倒れ、いびきをかきはじめた。

突然、夕凪が部屋に飛び込む。
「山長さん、中田さん、敵襲です」
匡が部屋を出ると、東利は大声で怒鳴った。
「さあ、敵がやってくるぞ。装備をトラックに運び込め。山汎、そこにある爆薬をジープにいれろ! ぐずぐずするな」
兵士達は急いで作業にかかった。東利は匡と山長をみつけると
「うわ、酒くせえ。なにやってんだ。おまえら。早く、後方にさがる支度をしろ」
「どうしたんだ?」
「敵戦車部隊が戦線を突破したらしい。もうすぐここに来るぞ。3km後方の集落まで後退する。こら、松凪! いつまで寝ているんだ。さっさと働け」
東利は寝ていた松凪を蹴飛ばした。
「捕虜はどうする?」
「そんなの捨てていけ」
雨の中、兵士達は装備をトラックに積み込み、自分達もトラックにのった。東利と、匡、山長はジープ2台に分乗すると、小屋から鈴重が出てきた。
「もう、だれもいません」
「よし、鈴重、ジープに乗れ! いくぞ」
ジープが小屋を離れると森から敵戦車が現れ、砲撃を開始した。砲弾は小屋を直撃し、爆音とともに燃え上がった。中隊は無事に窮地を脱したのである。

翌日は晴天だった。東利は中隊司令部からの命令書を受け取ると、大急ぎで司令部に向かった。司令部では惟新が忙しそうに酒瓶をトラックに積め込んでいる。東利は惟新を見つけると詰め寄った。
「ちょっと、惟新大尉、この命令書はなんなんですか」
「おお、軍曹。見ての通りだ。中隊は今より再編成のため前線を離れる。後任の部隊は電気工学科だ。いい休暇だろ」
「まってくださいよ、大尉。隊員達がいままでがんばって戦ってきたのは何のためですか? ようやくJ大の部隊を追いつめたのに一番いい所でなんで電気に変わっちまうんですか。それじゃあんまりじゃないですか」
「しょうがないだろう。師団司令部の命令なんだから」
「それに、こんな何もない所で休暇っていうのはどういう事なんですか? ここじゃ酒も女もないじゃないですか。ちょっと、大尉はどこに行くんですか」
「ここはのどかでいいだろう。創意工夫でリフレッシュしてくれ。それから、略奪行為等はいかんぞ。この辺の住民は散弾銃をもっているからな。変なことをすればすぐ蜂の巣だ。僕はI元帥とT将軍に呼ばれているのでこれから師団司令部に出かける。東利、留守をたのむぞ」
「師団司令部って、この酒全部持っていくんですか?」
「東利、これは命令なんだ。めいれい」
そう言うと惟新をのせたトラックは発進した。東利と一緒にいた夕凪は東利にこういった。
「よくあれで、大尉がつとまりますね」
「ああ、あれでも戦闘中はまともなんだ」

匡と山長は2人で兵站部を訪れた。兵站部の倉庫のなかで此下は仕事をしていた。此下は匡と山長を見ると軽い調子で声をかけた。
「よお、めずらしいじゃん」
「此下君、めづらしいワインをてにいれたぜ。見てくれよ」
そう言うと、匡はザックからワインを取り出し、此下に渡した。「ほお、めづらしいな」 此下はしばらくワインのラベルを眺めていた。山長が話を切り出す。
「じつは頼みがあるんだ」
「なんだい?」
「いまから言うものを至急そろえて欲しい。重機関銃2丁、サブマシンガン5丁、手榴弾10ケース、バズーガ4門、爆薬、無線機2台、その他7日間の戦闘に耐えうる弾薬、燃料、食料」
「山長君、中田君、戦争でもおっぱじめるのか?」
匡は鞄を開けると金の延べ棒を此下の前において言った。
「もちろん、ただでとは言わない」
「お、こりや純金か? これがどのくらいある?」
「400kg」
「うひょー、どこにあるんだ?」
「銀行だ」
此下の顔が曇った。
「戦争のどさくさにまぎれて銀行強盗ってのは穏やかじゃないね」
「敵の銀行にあるんだ」
「それじゃ、遠慮なくいただいても構わないわけだ」
不意に倉庫の後ろから佐久の声が響いた。
「それには支援戦車が必要だね。ちょうど2台あるよ」
匡は佐久をみると驚いて尋ねた。
「佐久君の戦車中隊は昨日の戦闘で全滅したって聞いてたけど、よく生きていたね」
「ああ、戦車は僕の小隊の2台以外、全部やられた。小隊長の鵜沢少尉も病院送りだ。だから、僕たちはしばらくお休みってわけ。もちろん僕たちは訓練を怠らないから、その話にぜひとも協力したい」
山長は佐久、匡、此下の顔を見て言った。
「よし、さっそく作戦をたてようぜ」

東利はみすぼらしい小屋の前にジープを乗り付けると、肩にトンプソンサブマシンガンを掛け、勢いよく小屋のドアを開けた。
「おまえらこんなところで何をしている。匡の言葉にだまされるなよ。いいか、いままで匡の言葉にだまされてみんな痛い目をみているんだ」
松凪が口をはさんだ。
「東利さん、今度は山長さんもついてますし、作戦もばっちりですよ。大丈夫ですよ」
「松凪、おまえはすっこんでろ!」
「いいか、山長君。俺はこいつらを一人でも多く生きて国に帰さなければならないんだ。こんな馬鹿な真似はやめろ」
山長が重い口を開いた。
「でも東利君。これは強制したわけではない。こいつらが勝手に集まってきたんだ。それに今は休暇中のはずだ。休暇中に何をしようと口は挟めないだろ」
「そりゃまあ、そうだが…」
東利はゆっくりと兵隊の顔を見てまわった。此下、古葉、早川、夕凪、瓶田、鈴重、宇津木。
「東利さん、山長さんは支援戦車まで用意したんです。作戦は完璧ですよ」
「支援戦車あ〜。どこの部隊だ」
「佐久さんの小隊です」
「あんなポンコツ当てになるか。奴の戦車は旧型のシャーマン戦車だぞ。昨日の戦闘では敵戦車から逃げ回っていたらしいじゃないか。敵戦車に出会ったらあっという間にあの世行きだ」
東利はさらに兵隊の顔を見た。宇久土、虎兵、輪島、菊屋、山汎。
「山汎、おまえもか」
「ええ、今度ばかりは行かなきゃなるまい、って気がするんです」
東利はため息をつき、匡を見た。
「そうか、どいつもこいつも。…、まったく馬鹿ばかりだ。それで? 話を聞こうか」
東利はトンプソンをテーブルの上に置き、地図を見はじめた。

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