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オリジナルリレー物語コミュのChaos Heart 11話

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第11話 渦巻く無限回廊の呪縛

レガイシス防衛戦線にてジャネルの今は亡き弟クルトの二度の死を乗り越え、一同はジキル討伐に向けて気持ちを新たにした。
ディザスター山岳を抜け、広大な樹海を抜けて、その先にあるペリッシュ渓谷の絶壁にそびえるジキルの城ビシャスコアを目指し、樹海に入ってから既に7日が経っていた。

「…なぁ、この樹海、何かおかしくないか?」
鬱蒼と生い茂る木。差し込む光は数筋ばかりで残りは闇に包まれた空間。そんな中テッドが口を開いた。
「あぁ、確かにおかしい。いくら広大な樹海だとしてもこれは異常だ」
薄ら汗を浮かべながら頷くヒスイ。
「今日でこの樹海も7日目…何か悪意を感じます」
あたりの気配を探りながら呟くジャネル。
「どうでもいいけど、いい加減うんざりするわ…」
なんとか歩行を続けるルナは、今にも倒れそうな蒼白な顔をしている。
「いっそゼノンブレードで焼き払ってやりたいぜ…」
そう言ってカシャリと柄に手を当てるハイド。
「だめだよハイドくん」
てちてち小さな歩幅で一同に合わせて歩きながら注意するセラ。
「じょ、冗談ですよセラ様…ははは」
「目がマジだったぞ…」
呆れ顔のテッド。
「だ、黙れニンゲン」
もはや喧嘩するほどの気力も無い様で、顔も見ずに吐き捨てる。テッドもいちいち名前を呼ばせようとする気も起きずにそのままスルーする。

その後、特に会話も無く延々と歩き続け、樹海の外ではそろそろ日も暮れようとしていた頃。
「なぁ…気のせいかもしれないけどさ」
少しは気を紛らわしてやろうとルナに声をかけるテッド。
「何?」
とルナ。
「この木って前にも見なかったか?」
「そんなわけ無いでしょ…私たちは真っ直ぐ歩いてるんだからもと来た道に戻ってるわけ無いわ」
「…そっか、何か見覚えあるんだけどな。やっぱ勘違いか」
「ん…いや、テッド…」
「何だよ先生」
「どうやらそのまさかの様だ」
言ってヒスイは木の幹についた真新しい傷を指差した。見ると”←”と矢印マークが刻まれていた。
「何ですか?その傷は…」
「あぁ、あたしも気になって通過地点の木に目印を彫っておいたのさ」
「ん?『彫っておいた』…?」
「この傷は今朝彫ったもので、ルートがずれて戻ってきているかを確認したかったんだが…」
「ちょっと待ってくれよ…つまり、俺たちは真っ直ぐ進んでいたにもかかわらず、通り過ぎたはずの場所に同じ方向から通りかかったって言うのか?」
「ちっ、『無限回廊の結界』か…」
辺りを見回しながら舌打ちをするハイド。
「『無限回廊の結界』…?」
首をかしげるルナ。
「『無限回廊の結界』ってのは呪紋系魔術の一つで、一定の範囲の時空を切り離して湾曲させる術さ」
解説をするヒスイ。
「私、初めて聞きました」
「当然さ、魔導学園のカリキュラムには入れてないからね。実戦部隊に配属されてから初めて伝授される高等魔術だからね」
「…この術、わたしのいた世界にもありました。陰陽道の結界術です」
ぽつり、とセラ。
「おんみょう…?」
ヒスイは何を言われたか理解できていないようだ。
「陰陽道です。陰陽五行説を基本とした日本独自の魔術大系。その源流はわたしのご先祖であるユダヤ人が行っていたカバラ魔術であるとも言われていて…」
「だぁ〜、ストップストップ!」
難しいことを言われて頭がパニックになったテッドはセラを制するように唸った。
「要するに、”この世界(ケイオス)の魔術じゃない”ってことだな?」
「そうです。…わたしのほかにもこの世界に渡ってきた人間…しかも魔術師がいたなんて…」
「セラちゃん、そんなに詳しいならそっちの世界の魔術使っちゃえばいいのに」
「それはだめです。この身はすでに神のもの…再び魔術を行う罪を犯すわけにはいきません」
かちゃり。とセラは袖から二丁のモデルガン…魔導銃を出し手に取る。
「この世界には、世界の力が流れている…わたしはそれを使うことしかしない」
銃を天にかざし、マナを込める。
「奇しくもわたしは祭司の家系…祭司のみに着ることを許されたこのエポデは、わたしの最小にして最大の武器」
エポデに飾られた緑の宝石エメラルドが輝き、魔導銃にマナを充填し続ける。
「ジャネルさん、風の防壁で皆さんを包んでください。今から樹海を切り開きます」
「は、はい…」
戸惑いつつもジャネルが防壁を作り出す。それを確認すると風を纏った銃の引金を引くセラ。
「烈風迅雷…サンダーストーム!」
銃口からは弾丸の代わりにマナの奔流が迸る。螺旋状に真空の刃が広がっていき、大気摩擦によって雷が走る。真空の刃は鎌鼬の様よろしく周囲の樹木をなぎ倒し、最終的に結界によって阻まれる領域までの樹木を読んで字のごとく木っ端微塵にした。
「す、すげぇ…」
「これほどの力を使っておられながら、一切魔術を行っておられない…」
テッドの感嘆とハイドの羨望。
確かにセラは強大なマナを使ってはいるが、術式を組んではいない。例えるならばただ単に、その場に落ちていた石ころを拾い上げて投げているに過ぎない。
「やっぱり、結界の要はこの程度では壊れなかったね」
セラが見つめる先。そこには樹齢1000年はあろうかという古木。それがギロリとこちらを睨んでいた。

古木はバリバリとひしゃげた音を立てながら身体の正面を一行に向けた。
「…なんじゃ!?今の烈風はその小娘の仕業なのか!!?」
古木は驚き戸惑い、枝をわさわさと揺らしている。
ヒスイは身構えて
「…人面樹…トレント」
と言った。
「先生、何だそれ?」
「…授業でやったんだけどね」
やっぱりな、とでも言いたそうな目でテッドをジト目でねめつけるヒスイ。
「テッドってほんとに頭悪いわねw」
「悪かったな…!!」
「トレントって言うのはね、ケイオスに満ちる魔属性のマナを長い時間吸収してきたことによって魔族化した野生の樹木のことなの」
「ダークエルフの里にも似たようなものがいましたが、それは魔属性のマナではなく地属性や水属性を取り入れて風属性のマナを生み出す守り神の様な存在でした」
「それは分類上”ボックル”と呼ばれる種族だね。亜人族の集落に鎮座するマナの循環器の役割をする共生生物の一種さ」
「要するに、多量のマナを取り込んで自我と意識を手に入れた魔導生物と言うことだ。わかったかニンゲン?w」
肩をすくめてお手上げのしぐさのハイド。
「あ゛ぁぁぁ〜、よくわかんねぇけど、木なんだから燃やしちまえばいいんじゃねぇの?」
それを聞いたトレントは口の端をほころばせて笑い声を上げた。
「ふぉっふぉっふぉ、このワシを燃やすじゃと?出来るもんならやってみぃ」
「へっ、言ったなジジイ!!」
テッドは剣の柄に炎の呪紋を巻きつけて疾風の如く駆け抜ける。剣身から炎が迸り、斬撃の軌道が弧を描いてトレントへ向かう。
「鳳凰瞬降斬っ!」
炎を纏った隼のような物が獲物を見つけて急降下してきたかのような斬撃がトレントに触れたかと言うところ、突如として剣は弾かれ、反動でテッドが真後ろに吹き飛ばされた。
「ふぁっふぁふぁ、愚か者め。ワシの身体はマナで満たされておる。水魔のマナで魔障壁を張れば恐れるに足らずじゃ」
「全く、テッドってほんと短慮よね。トレントは高等魔導生物。魔障壁を張れるだけじゃなくて根からマナを取り入れ続けるからマナ不足による消耗はしない。先天属性は風、補助属性に水と地。物理攻撃は風の防壁、炎には水で防御、攻撃に地の衝撃と風の斬撃と水の激流を使い分ける切れ者よ」
「戦術を駆使せずに挑んだものは生きて帰ることの出来ない凶悪モンスターなんだよ、トレントってやつは」
にやりと口の端を歪ませながらテッドは剣を構えなおす。
「おもしれぇじゃねぇか…ジジイ」
テッドの身体から黒炎が迸る。

『ほぅ、我の力を使うか人の子よ』
(あぁ、使わせてもらうぜ)
『トレントか…少しは歯ごたえがありそうだな』
(俺の見立てじゃ…退屈はしなさそうだ)
『良かろう…楽しませてもらおうか』

「燃やし尽くしてやるぜ…」
「ふん、小童に何が出来るというんじゃ」
「こうするんだよ…ヴァン・ディ・エルガー」
轟と黒炎が火柱を上げる。紛れもない。ヴァンの解放である。

「…!?」
ヒスイはその炎を見た瞬間息を呑んだ。
「どうしたんですか…先生?」
「…いや、まさか…そんなはずは」
ルナの問いかけに答える余裕すら失っているヒスイ。
「ニンゲン、またあの力を…」

「ぬ、何じゃその力は!?」
「さぁな…」
ヴァンの炎は二刀の剣身へ注がれる。
「さぁて、ちゃっちゃと行くぜ!」
テッドは剣を大きく振りかぶり息を整える。
「まずは小手調べだ」
炎とともに気を込める。
「飛燕抜刀流…飛炎斬!」
黒い炎を纏った斬激がトレント目掛けて吸い込まれていく。
「なんとっ!?」
トレントは根っこを地面から引き抜き、水と魔の魔障壁を展開する。
飛炎斬は障壁に阻まれながらも着実にトレントとの距離を詰めていく。
「何じゃ、この攻撃は…!?」
トレントは地属性のマナを操り飛炎斬の真下の土を隆起させて真空波を打ち消す。
「ふっ、やるな」
「なぜじゃ、なぜ水魔の魔障壁に炎の斬激が食い込む!?マナの親和性が高いとでもいうのか?」
「あいにく、小難しいことはサッパリなんでね!」

確かに、トレントの魔障壁にはテッドの斬激が食い込んでいる。本来、相反する属性同士のマナは互いに反発しあう…まるで磁石の同極同士のように。であるにもかかわらず、現に斬激は食い込んだ。それは反発する力よりも接合しようとする力が勝っていたことを意味する。マナは同属性同士であれば互いに引かれ合う性質を持つ。水滴が表面張力で一つになろうとするように滑らかに、磁石の異極同士が引かれ合うように力強く…。
だが、トレントの魔障壁には水属性と魔属性のマナしか使われていない。テッドは火属性のマナを扱っている以上、相反する水属性の影響は考えられない。つまり、この現象はもう一つの属性の影響で引き起こされたことを意味していた。他でもない…魔属性のマナだ。

「…そうか小童、貴様のその力、貴様自身の力ではないな?」
「だったら何だってんだよ…」
トレントは「やはりのぅ」とでも言いたそうな面持でしげしげとテッドを見回す。
「ふっ、否定はせんか…いずれ、その力は貴様を…いや、世界そのものの危機を引き起こすじゃろうて」
「へっ、脅したって無駄だぜ?」
「…どうやら貴様はその力の危険性について何も気付いていないようじゃな」
危険性。その言葉が激しく耳に引っかかる。
「…?何が言いたい?」
「貴様はノイシュタントからさらわれた人々を救うためにジキル様に盾突こうとしておるようじゃが…今はその人々を捨て置くことのほうが世界の平穏のためになると思うのじゃがのぅ」
「何だと!そんなことできるわけねぇだろ!!」
トレントは心底あきれたように溜息を吐いた後
「…なぜお前は今まで”生かされてきた”ことに気付けんのじゃ?」
と言った。
「…生かされてきた?」
「さよう。貴様がそもそも平々凡々とノイシュタントの障壁に守られて生活しておったなら、今の貴様にその異形の力は目覚めなんだ」
「異形の力…ヴァンのことか?」
「ジキル様は貴様のうちに眠る力を目覚めさせ、我が手に入れようと考えておられる」
「…!?」
驚愕で瞳孔が点になる。
「ようやく気付いたようじゃな…」
「…やめろ」
声から覇気が失せる。
「ノイシュタントが潰された理由…」
「言うな…!」
目から光が失せた。
「それは貴様のせいじゃったんじゃよ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁっぁ!!!」
ノイシュタントが滅びたのは自分の為だった。その事実を知ったテッドは我を失い、ヴァンの炎を迸らせ天を焦がし尽くさんほどの火柱を上げた。

その頃一方ビシャスコア。
樹海から上がる火柱を尻目にジキルは水晶玉にテッドたちを映しながら玉座に座って眺めていた。
「ふっふっふ…トレント、ネタバレし過ぎw」
ジキルの肩にはヤタがとまっている。
「ジキル様…これでは予定が狂ってしまいそうですね」
「全くだよ…こんなに早くテッド・ヴァン・ヒーリックが壊れちゃったら儀式に間に合わない」
ふとジキルが脇に目をやるとカイトが跪いていた。
「奴も頃合だ。始末を頼んだよ…」
「はっ、あの哀れなボックルと無限回廊の結界の破壊ですね」
「うん。それと、テッド・ヴァン・ヒーリックのこと…痛め付けておいてね。くれぐれも”適当”に」
適当。それはいい加減という意味ではない。軍のような集団的武力の統制がなされている組織においての”適当”とは「自分の持ちうる全力で最善の結果を出せ」と言う意味だ。
「御意に…」
そう言い残すとカイトは闇に解けて消えた。
カイトの気配が消えたのを確認するとジキルは空を見上げた。夕闇に染まり始めた空にはうっすらと細い月が浮かんでいた。
「忌々しい月だ…」
次第に透けていくその手を見つめて
「月光のもとではその身を維持することすら出来ない」
そう吐き捨てた。
手から水晶玉に視線を移す。そこにはトレントの姿。そのときなぜかジキルは頭を抱え、苦しみもだえ始めた。
「そ…ん、な…ボクは」
「どうされましたか?ジキル様」
ヤタの顔なき顔が怪訝に歪む。いくら話しかけてもジキルは何も答えずただ苦しむだけだった。そして
「さよなら…じっちゃん」
それだけを言い残してジキルは霧散した。
「…フム、これはイカンな…これではジキルに利用価値は無い。シャラク様に報告だ」
普段ジキルに仕える態度とは一変し、ヤタは踵を返して夕闇の空へ飛び去った。

続く▽

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