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オリジナルリレー物語コミュのエレメンタル・サポーター 第3話

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第3話 「霊神の子の歌」


静かな空気の流れ。
心地がいいのだが、何か違和感もある。

愛してる 愛してる
意識なんかしなくても
愛してる 愛してる
心の奥で知っているの
貴方に向けた最高の愛
愛しい坊や 貴方にこの歌を

澄んだ歌声だ。
(この歌…たしか、シスターが習う愛歌の1つの一節じゃなかったか?)

坊や 坊や
愛しい貴方は夢の中
恋しい貴方は眠り安らぐ
大丈夫 そんな貴方を私は守る
だって貴方は私の心のよりどころ

ゆっくり目を開く。
すると、見慣れない部屋だった。
白い壁紙に白い天井、まさに神聖な場所を現しているようだ。
すると、横から小さく先ほどの愛歌が響いてくる。
カインは、ゆっくり視線をそちらのほうに向けた。
すると、少女が開け放った窓に向けて歌を口ずさんでいた。
その少女は白く、光の中で透き通りそうだった。
「エヴァ…?」
名を呼ぶと、少女は歌を止め、こちらを見た。
目は閉じられていて、こちらを見ているようには見えなかった。
「…目」
「あ?」
「覚めた?よかった」
「あ、ああ…」
そう呟いて体を起こす。
改めて周囲を見ると、自身が横たわっていたのは白い天蓋付きのベッドで、部屋中の家具は白で統一されていた。
そして、ベッドの周囲は聖花と呼ばれる霊神と同じ名の花の鉢が多く並んでいて、それはやわらかく甘い芳香を放っていた。
自身を見ると、レザーのジャケットはどこかにしまわれたのかシャツとGパンの姿。
下着姿までにはぎ取られなくてよかったと心の奥では安心した。
ガントレットは傍の白い丸テーブルの上に置かれていた。
ゆっくり、花を踏みつけないように自身のブーツの中に足をおろし、履きこんで立ち上がる。
「…もう、いいの?」
「ああ。世話、かけたみたいだな」
ふるふるとエヴァは首を横に振る。
「そんなことないよ。エヴァを助けてくれた」
「エヴァ、彼は…ああ、起きたのね」
声がした入口のほうを見ると、先ほど見たシスター…たしかイヴとあごひげが似合う騎士団服の男性が入室してきた。
「イヴさんと…そっちは?」
「俺か?俺はグレム。グレム=フェリノットベアだ。ここの騎士団の団長を務めさせてもらっている」
「似てないけど、あたしの従兄なんだ」
「へえ…たしかに全然似てないな。年齢も相当離れてそうだ」
「まあ、正解だな」
グレムは機嫌を崩すことなくそう答えた。
「で、その騎士団団長さんまでなんで?イヴさんがエヴァの世話係みたいなもんなんだろ?」
「ああ、それはな…君に話があってな」
「へ?」


椅子に座りなおして、グレムと向き合うカイン。
「俺が、騎士団に?」
「うむ」
グレムは大きくうなずいた。
「でも、どうしてそんなことに?俺、この教団に貢献するようなことはしてないぜ?」
「いいや、もうしているとも」
「?」
「エヴァを、我らが巫女を助けてくれた。それで十分貢献になる」
「ああ…」
そういうことね、というようにカインは自身の長い黒髪を軽くかきむしる。
何だか、恥ずかしかった。
「まあ、君は貴族でもあるそうだから、親族…当主様にも連絡を入れればなるまいな」
「ああ…兄さんのことか。あの人は俺が他者と交流することを願ってる。このことについてなら大喜びで賛同してくれるだろうさ」
「ほお…」
「少し心配性だが、国の重要なことだしな」
「では、説得は君に任せようかな?」
「返事がもらえたらこっちからここにくる。じゃあ、俺はこの辺で帰るよ」
「そうか。では期待して待たせてもらうよ」
カインは立ち上がって、机の上のガントレットをつけ始める。
「あのさ、俺のジャケット、どこかな?」
後ろにいるイヴにそう尋ねる。
手はガントレットをつける動きをしている。
「ああ…そっちのクローゼットの中だけど…」
「そうか、サンキュウな」
そのクローゼットを開けて、ジャケットを取り出して着てから、振り返る。
「じゃあな、エヴァ」
にこやかな笑顔でそう言い放ち、カインは退室していった。
「グレム…」
「む?」
声のほうを見ると、イヴに隠れてエヴァがいた。
「エヴァ…まだその癖は抜けませんか?」
少し肩を落とし、グレムはそう呟く。
エヴァは人見知りが激しく、慣れない人とはこうやってイヴを盾にして人の様子をうかがう。
「ごめんね、兄さん。でもこれがエヴァだからさ」
「…慣れたから構わないが…」
「あのね、お願いがあるの」
「エヴァの頼みでしたらなんでも。仰ってください」
「うん…あのね」


「…捕まえるのに失敗した?」
血のように赤い髪に白い肌、黒いドレスの少女が小首をかしげて目の前の人物にそう尋ねた。
言葉と視線の向け方は上からで、彼女が高い地位であることを物語る。
目の前にはウェーブのかかった栗色のショートカットの髪型で予想できる年齢に反して少し幼さがある顔つきの男性。
「申し訳ありません。どうやら、あちらの霊神の子は、それに近い能力を持つ者を傍に置いているようでして…」
「…へ〜」
少女は興味なしといった声を上げたが、すぐにその大きな瞳を開いた。
「霊神の子に近い?」
「はい。イフリートを宿しても、肉体が消滅せず眠っただけになったと」
「…なかなかじゃない、エヴァ」
にぃっと笑む少女。
なんだか妖艶で、少女とは思えない。
「まあ、いいわ。次の刺客は、甘くなくてよ?」


「騎士団に?」
兄クリフの聞き返しにカインは頷く。
「ああ、偶然だけど、エヴァ…じゃない、巫女を助けたことになってさ。団長さんに言わせると十分な教団への貢献だって」
「そうか…君はその道を?」
「ああ。許可もらえたら荷物まとめていこうかと思ってる」
「……」
あごに手を当てて、クリフはふむ…と考え始める。
弟が人の中に入ることは好ましいことだ。
だが、いきなり集団生活になじめるか、それが心配だ。
「…集団の中で、大丈夫か?」
「まあ、なんとかやって見せるさ」
「決心は、揺るがないね?」
「ああ」
「…分かった。許可を出そう。準備をすればいい」
「ありがとう、兄さん」
カインはにこやかにほほ笑んだ。
「弟の願いだ。叶えるのが当たり前だろう?」
「そう言ってもらえると、嬉しいな」
「じゃあ、茶に付き合ってもらいたいが、構わないね?」
「ああ」


一時間ほど、兄ともうしばらくは行えないであろう茶会を行った。
もちろん参加者はカインとクリフだが、なかなかに楽しめた。
飲んだ茶が、いつもよりもうまかった。
部屋に戻って、必要と思われる荷造りをして、眠りに就いた。


エヴァの部屋。
エヴァは白いローブで身を包み、ベッドサイドに腰かけていた。
「エヴァ、もう寝ないと体に悪いぞ?」
イヴがそう言葉をかけて彼女の肩をたたく。
「うん…ありがとう。でも」
「?」
「アクレイルが、いつもと違う香りなの」
「アクレイル…この花だな?いつもと違うのか?」
こくんと頷くエヴァ。
「あたしにはわからないんだが…」
「でも、違う。何か、不安なのかもしれない」
「不安?」
「もう寝る。おやすみ」
「ああ…」
イヴはそう答えて退室していった。
エヴァはベッドに横たわる。
すると、僅かに、自分と、アクレイルの花以外の匂いがした。
そう、カインの匂いだ。
「…人の匂い。この匂いは、普通の人の匂いなのに」
彼が、何故大精霊を宿せたのか?
それは、言いだしたエヴァにしても、いまだにわかっていない。
ただ、彼には強い力を感じた。
だから、信じてみたのだと思っている。
(また、会えるから、その時に話をいっぱいしよう)
そう呟いて、エヴァは眠りに落ちる。


次の日の朝、カインは大神殿前にいた。
その前には、剣でアーチを作った騎士団団員がおそらく全員、ずらっと並んで道を作っていた。
一番奥に、エヴァとイヴ、そしてグレムが立っていた。
カインは意を決して、その道を歩き始める。
こつ、こつとブーツのかかとが石畳を蹴る。
騎士団団員は皆真剣な眼差しでカインを見ていた。
そして、エヴァたちの前に立ち止まろうとした瞬間。
一人が飛び出し、カインに斬りつけた。
カインは瞬時にガントレットをかざし、攻撃を受け止める。
目の前の騎士は、カインより少し幼い少年顔で騎士には似合わないぐらい華奢だった。
しかし、放たれた攻撃はとても力強い。
「な、なんだよ!」
「お前なんかが巫女を助けただと…それで騎士団入りとは貴族の金も使ったか?」
「!?」
「ルフェム!ルフェム=クフェトナ!!」
グレムの厳しい声。
それにはっとして、怒り満ちた表情から冷静な表情に戻り、彼…ルフェムは跪いた。
そこに、エヴァが歩み寄る。
「エヴァ…?」
「巫女?」
「ルフェム、カインは仲間になるの。そんなに殺気立たなくていいの」
「し、しかし…」
「貴方は、分かる人だと思っている。わかるよね?」
柔らかい声でそう尋ねるエヴァには、逆らえないのかルフェムは「はい…」と沈んだ声で答えた。
「カイン、来てくれてありがとう。嬉しい」
エヴァは眼は伏せられているが微笑んでくれた。
その笑顔には少し照れてしまい、カインは頬を指で掻く。
「…ま、まあ、俺自身も鍛えられると思ってさ」
「どんな理由であれ、カインは導かれた者。私と同じ」
顔を見ると、その頬には紋様。
すると、エヴァの横に燃えた髪のたくましい体躯の男性が現れた。
その周囲は炎の龍が回っている。
『自身持ちやがれよガキ!俺を宿して戦ったのは事実なんだからよ』
拳を差し出したので、それに合わせて拳を寄せる。
するとガントレットをはめたカインの拳と男性…イフリートの拳がぶつかりごんっと音を立てた。
そのやり取りにほかの騎士団員たちはこそこそ話を始める。
(あいつが、大精霊を?)
(嘘だろ?)
(でも、大精霊は嘘つかないんだろ?)
(でもなぁ〜)
ルフェムはギリッと歯ぎしりをした。
(大精霊を宿しただと…?俺は中級まで宿せて騎士団の中で団長に次いでの地位を持っていたのに…)
「カイン」
声がしたほうを見ると、エヴァがこちらをじっと見ていた。
目が開いていないので、じっとであるかどうかは不明だが。
「ようこそ。大神殿に」
すっと手が差し出された。
白くて、細くて、小さな手だ。
その手を、壊れ物を扱うようにそっと持ち、軽く握って握手をする。
「ああ。これからよろしくな、エヴァ」
そう言うと、エヴァはほころぶように微笑んだ。
それを見終わってから、グレムが声をかけてきた。
「カイン。では、大神殿内と騎士団詰め所を案内する。ついてきてくれ」


続く▽

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