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オリジナルリレー物語コミュのChaos Heart 第十話

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第十話 レガイシス戦線−戦闘開始−

「キキキ・・・」
キメラ達が笑っている。
そして、その中央に大剣を肩に担いだ全身鎧(フルプレート)を軽々と纏い、軽装兜をかぶったエルフ亜人が立っていた。
「さぁて、行くとしますか?」
にぃっと唇に弧を描かせてそのエルフは進軍命令を出した。

レガイシスから見て、空中型キメラが遠くの空いっぱいに広がっている。
「来たみたいだな」
レジスタンスリーダーがそう呟く。
「負けやしない」
ハイドが彼の隣に立ち止まり、腕を組んで遠くの空を見た。
「こっちには戦略がある」
「うむ・・・」

先遣隊のキメラ一部隊がディザイスター山岳よりレガイシス東の城壁に接近した。
と、同時にドガァンと大きな音を立てて巨大な機械と岩の混じり合った壁がかなり広い範囲に現れた。
「ギ!?」
「ガアア!」
「な、何だこれは!」
地上にいる獣人達が声を上げる。
地上型キメラも「ぐるる・・・」と敵意を持って唸り始める。
砲門が備わった機械壁、ガルズオルムが唸りのような音を立て、そこにはジャネルとマルコシアスが乗っていた。
「お待ちしていましたよ」
「さあて、雑魚はさっさと片付けるとするか?ジャネル」
「はい。ここでの足止めは私達の役目ですから。行きますよ!」
ガルズオルムのふちを蹴り、飛び降りる二人。
ジャネルは風を纏い、優雅に着地。
マルコシアスはだぁんっと大地にひびを広げるぐらい強い着地。
ガルズオルムは空中のキメラ達に砲撃を開始した。
ジャネルとマルコシアスはそれぞれ左右に展開、敵部隊に突っ込んでいく。

どぉん、どぉん。
一方、レガイシス正面城壁。
「すげぇ・・・ここでも音が聞こえるぜ」
「ガルズオルムは巨大なんだ。街全体がそうだと言えるの」
テッドの言葉にセラがそう答える。
「確かに賢者だけが使えるっていうのが分かる気がする」
ルナもそう呟く。
「ジャネルさん達がいるから安心はしてるんだ。でもガルズオルム単体でも強力ではあるんだけど・・・」
セラはそう呟いて城壁の魔導砲を見る。
あとは弾込めのみを残した魔導砲は使った形跡がなさそうなぐらい少し汚れていた。
「セラ様」
ハイドが駆けてくる。
「来たの?ハイドくん」
「はい。まっすぐこちらに」
「じゃあ、始めようか?準備して」
魔導砲をそれぞれ構えに入り、レジスタンスがそれぞれにつく。
セラは中央部位に立ち、目を閉じる。
すると立ち上る聖の力。
それが魔導砲に吸い込まれていく。
「装填完了!」
「いつでも砲撃可能!」
「よし・・・撃て!」
ハイドの命令にレジスタンスの砲撃手は魔導砲を撃ち始める。

弾丸が地面を穿つ。
「・・・」
先ほどのエルフ亜人がすっとその切れ長の目を細めた。
そして、周囲の浄化されていく部下達を見てにぃっと笑った。
「へぇ・・・聖の力の魔導砲かぁ・・・それに、山の方は賢者だけが発動できる兵器・・・」
こちらの動きは読まれている。
だからと言ってあきらめるわけにはいかない。
「レガイシスは・・・滅びるべきなんだよ!」
飛んできた聖の弾丸を大きくバッドのスイングのように大剣を振り、はじき返す。

弾丸がセラに向かって飛んでくる。
「セラ様!」
ハイドがセラを庇うように押し倒した。
聖の弾丸はセラが元いた場所・・・そこをえぐっていた。
「なんて威力なんだよ・・・」
テッドが一筋汗を流す。
「大丈夫ですか?」
「う、うん・・・私は大丈夫・・・」
「先生!」
ルナの声に皆がルナの視線の先・・・下を見る。
ヒスイがクナイを持って仁王立ちをしていた。
「ふっ!」
ヒスイは駆け出した。
魔導砲が乱射される中を見事に駆け、前線の蜥蜴亜人に突っ込んでいった。
「くそ!俺も行く!」
テッドは城壁から飛び降り、腰から剣を抜いて駆ける。
「ど、どうしよう・・・ジャネルさんはあっちだし・・・」
ガルズオルムの出現位置を見て慌てるルナ。
「ルナさん、俺が行く。セラ様を」
「え、でもハイドく・・・」
「あのニンゲンはともかく、ヒスイさんには少々危険に思える。俺が行く」
「は、はい・・・」
「セラ様、すぐに戻ります。魔導砲のほうをお願いします」
「う、うん・・・」
ハイドも城壁から飛び降り、ゼノンブレードを構えて駆け出す。

一方、ガルズオルム付近。
そこは倒れた魔物の山だった。
「すげぇもんだ。ガルズオルムってのは」
「では、私達は戻りましょう」
そう言ってジャネルは目を閉じた。
風がふわりと二人を囲む。
「う、うぉお!?」
「口を動かさないでくださいね。舌噛みますから」
そう言ってジャネルは手を振った。
それと同時に爆発的スピードでレガイシスに向かう。
ガルズオルムは役目を終えたと同時に砲門を閉じ、魔導障壁を張り始めた。

ヒスイとテッド、そしてハイドは戦場の中央で背を合わせて敵をせん滅していた。
「くそ!なかなか減らねぇ!」
「一人で来るつもりだったんだけどねぇ・・・見つかっちゃったみたいだね」
苦笑するヒスイに「いや」と言葉をかけるハイド。
「お一人は危険です」
「そう言ってくれるとありがたいもんだね」
「何だよ、先生に媚売るつもりか?」
「誰がそんなことを言った」
「はいはい、喧嘩しない!今は戦いの方が大事だろう?」
剣を振り上げて飛びかかってきた蜥蜴亜人をクナイで斬り、蹴り飛ばすヒスイ。
ハイドは上空から突っ込んでくるキメラを斬り、テッドも同じく地上を駆けて迫ってきたキメラをすれ違いざまに斬り飛ばす。
「しかし・・・」
ヒスイは周りを見る。
レジスタンス達も戦ってくれているし、魔導砲の援護砲撃もかなりの効果がある。
なのに士気は落ちず、敵進軍も止まらない。
自分達はこれ以上足止めを食らっているわけにはいかないのに。
「仕方ないね・・・」
ヒスイはぐっとクナイを握る手に力を込める。
「先生」
テッドの声にはっとする。
「無茶しないでよ」
「・・・分かってるよ」
「じゃあ、散!」
テッドとヒスイはまるで通じ合っているかのように言葉を交わし、左右に展開した。
ハイドはそれを横目で見て、息を吐いた。
「通じ合う仲か・・・」
呟いてからハイドも駆けだした。

魔王軍奥。
先ほどのエルフ亜人はそこで遠くを見つめていた。
「こちらの多さに気づいてなかったってことかな?ふふふ、まったく」
甘いね人間は。
そう呟いて亜人は大剣を担ぎ、一歩踏み出す。
「?」
近くにいた巨大キメラが首をかしげた。
「行くよ?」
キメラの頭を撫でてそれにまたがる。
キメラは咆哮を上げて飛び立った。

レガイシス正面城壁。
「セラちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です・・・」
少し疲労が見える。
ルナは少しおろおろしつつセラを支えていた。
ハイドに任されたのだ、頑張らなければならない。
「疲れたら言ってね」
そっとその小さな手を握り励ましの言葉をかける。
「・・・はい・・・」
セラはにこりと笑うが、それもつらそうだ。
「ルナさん!」
声がした方を向くと、着地をするジャネルとマルコシアス。
「ジャネルさん!」
「テッド君とヒスイさんがいませんね」
「それに、ハイドの奴もな」
「三人は・・・戦場に」
「え!?」
驚くジャネル。
「行くか、ジャネル」
「いえ、マルコシアスさんはここにお願いします」
「は?お、おい・・・」
「では行ってきます」
ジャネルは風を起こし、だんっと城壁を蹴って飛んだ。

上空からあたりを見回すジャネル。
すると小さくヒスイが見えた。
(あそこだ!)
ジャネルは爆発的突風を足元に起こし、推進する。

「はっ!はぁああ!!」
体術とクナイの一撃で敵を沈めながら、ヒスイはあたりの状況を見る。
右にハイド、左にテッドがそれぞれ戦っている。
そしてそれより少し遠くにレジスタンスの皆が。
「そろそろ出てもいいんじゃないかとは思うけどね・・・」
息をつくヒスイ。
「呼んだ?」
その声に反応して振り返ると、巨大キメラとその傍に大剣を担いだ全身鎧と軽装兜のエルフ亜人が立っていた。
「・・・あんたかい?指揮をしているのは」
「ああ、そうだよ。あんたは?」
「あたしは・・・「ヒスイさん!」」
上からの声に顔を上げるとジャネルが降りてきた。
「ジャネル!あっちは終わったのかい?」
「ええ、ガルズオルムのおかげです。ところで彼は」
ジャネルはエルフ亜人を見てはっとした。
「クルト・・・!?」
「久しぶりだね、ジャネル姉さん」
するとすぅっとエルフ亜人の肌の色が白から黒になった。
「ど、どういうことだい!?あんたのこと姉さんって・・・」
「簡単なこと。僕はジャネル姉さんの弟だよ」
言われてみると確かに、ジャネルと似た面影のある顔つきだ。
「・・・死んでしまったかと思っていたのに」
ジャネルははらはらと涙をこぼし始めた。
足が自然と数歩歩いた。
するとぶぉっと空を切る音がして、ジャネルの鼻先に大剣が突き付けられる。
「クルト・・・」
「悪いね、姉さん」
にぃっと笑い、エルフ亜人・・・クルトはこう続けた。
「僕はジキル様に命を救われたんだよ。だから恩としてこうしてここに来たんだ。姉さんがここにいるなんて・・・生きているなんて思ってもいなかった」
「・・・」
「ジャネル・・・もう諦めな。そいつからは魔の魔力しか感じられない。あんたの弟だとしたら風の魔力が感じられるはずだからね」
「でも・・・」
「ねぇ、姉さん」
大剣をジャネルから下げ、地面に突き立てるクルト。
すると黒い風がクルトから溢れるように吹き始めた。
「こ、これは・・・!?」
「僕は魔の力を手に入れて、もともとの先天特性を強めることができるようになったんだ。姉さんの風より・・・強力だよ?」
「ヒスイさん、下がっていてください。私がやります」
「で、でもあんた・・・」
「大丈夫」
そう言ってジャネルは目を閉じる。
広がるのは酷い光景。
ダークエルフ族が全滅したあの日の光景だ。
思い出すだけで、目の傷が疼くが。
目を開き、ジャネルも風を起こし始めた。
「いく」
ジャネルはかなりのスピードでクルトの懐に入った。
風を纏わせた拳でのえぐるようなアッパーをクルトはかわし、大剣の重みを感じさせない一撃をジャネルに放つ。
それを風で受け止めて弾いてジャネルは飛び上がった。
クルトも黒い風で飛び上がり、大剣を背の鞘に納めて拳を突き出した。
ジャネルはそれを受け止め、二人は空中で拳で戦い始めた。
地上ではキメラが飛びあがろうとするが、ヒスイがクナイを投げつけて邪魔をし、それを弾いて睨みつけてくる相手にヒスイはこう宣言する。
「行かせないよ。あんたの相手はあたしさ」

ががががががががががががががががが!
激しい音が空中で鳴り響く。
防御のため受け止めて、攻撃のために渾身の力を込める。
風はそれの補佐だ。
クルトは鎧であっても、風のおかげで素早い動き。
こちらの方がまだ速度は勝っているが、防御力は鎧の相手の方が上。
鎧を殴った拳からは血が滲んでいた。
「おあああああああああああああああ!!」
ジャネルは拳に加えて足も使い始めた。
風によって速度と威力が増した蹴りが、クルトの鎧にひびを広がらせる。
「へぇ・・・流石だね姉さんは。あのときより強くなってるや」
そんな軽口を叩きながらクルトも拳に風を纏わせてジャネルの顔面を狙う。
それを風の壁で受け止め、蹴りを同じように横っ面に叩きこんだ。
クルトの軽装兜が、壊れた。
欠片はパラパラと地面に向かって落ち、しかし、クルトにダメージはない。
「甘いね、姉さん」
にぃと笑い、クルトは拳をジャネルのみぞおちに叩きこんだ。
「が!」
ジャネルは息を思い切り吐き、少し後退した。
「本気で来ないと死ぬよ?」
「・・・」
腹部を押さえ、けほけほと少しせき込んでから顔を上げると足が迫ってきた。
それを仰け反ってかわし、その足を掴んで、ジャイアントスイングの要領でぶんぶんと回し始める。
「へぇ・・・」
振り回されながらもクルトは声を出し、思い切り投げ飛ばされて、岩に激突する瞬間まで笑みを浮かべていた。
岩に背から激突し、少しバウンドして苦痛を感じているとジャネルが突っ込んできた。

ヒスイはキメラとじっと互いの隙を窺っていた。
「ぐるる・・・」
「・・・」
そして数秒の沈黙の後、ダッと駆けだしたのはキメラだった。
ヒスイは何本ものクナイを一瞬で抜いて投げつけた。
それを翼の羽ばたきで吹き飛ばしながら加速し、頭からヒスイに突っ込んだ。
「ぐ・・・」
ヒスイは吹き飛ばされ、しかし空中で回転して見事着地。
「やっぱでかいと力が違うね」
腹部をさすりながら苦笑するヒスイ。
「ぐうう・・・」
「しかもこれは普通と違う・・・これだけふつうの配合法じゃない?」
あまりにも巨大で逞しいと言える体躯で、ないはずの角が二本。
おそらく全体のほとんどに竜のものを用いているのだろう。
キメラは色々な獣をつなげた生き物の呼び方によく使われる名称だ。
キマイラとも呼ぶところもあるだろう。
この世界では魔術による合成獣のことをそう呼ぶ。
しかし、標準のサイズは狼や狐など中ぐらいの動物程度であり、このキメラは熊かそれ以上の体高。
幼竜と言えるぐらいの大きさはあるだろう。
「竜を引っ張り出してきたか・・・まあ、司令官用ならそれぐらいは・・・」
「ぐぎゃああああああああおおおおおおおおおおん!」
突然に咆哮を上げるキメラ。
すると、空中型が3体、地上型が5体現れた。
どうやら仲間を呼ぶ咆哮であったようだ。
一筋汗を流すヒスイ。
「増えたか・・・さて、一人でどこまでいけるか・・・「先生!」」
振り向くとテッドとハイドが競うようにこちらに駆け寄ってきた。
「2人共・・・」
「あれ何だよ?!真ん中の!」
「竜か・・・?しかし合成されたのが分かる姿だな」
「甘く見るんじゃないよ、あれはおそらく幼龍だけど力は相当なもんだ」
「あれで子供!?」
「・・・俺は能力は使えないな」
ハイドは悔しそうに歯軋りをして手のゼノンブレードを握り締める。
そう、竜の鱗は炎や吹雪に強い。
ゼノンブレードに刻まれた古代言語は炎。
相性は言うまでもなく最悪だ。
「じゃあハイドは戦えないのか?」
「属性を使わなければ大丈夫。斬撃が絶対の効果を持つかは分からないけどね」
竜の鱗は硬い。
それはかなり知られている事実だ。
「そうなのか・・・でも、近づかないと攻撃できないよな?」
「そうだが・・・」
「だが、近づくのは簡単じゃないよ?あれに竜が使われているってことは・・・」
「・・・そうか!」
「任せろよ!」
テッドが前に出た。
「テッド!?」
「来いよ!相手してやんぜ!」
すると空中型と地上型は左右に散り、巨大キメラはぷくっと頬をふくらませ、炎を吐きだした。
テッドはそれにニヤッと笑い、剣を突き出してそれの先から魔導障壁を発動。
吹きつけられた炎はその位置から割られるように左右に分断され、後ろにいたヒスイとハイドの少しの間隔がある横一直線を焼く。
「なるほど・・・考えたねテッド」
ヒスイはそれに感心しながら上空から迫る空中型のキメラにクナイを投げつける。
ハイドは炎を突っ切って現れた地上型キメラ2体を斬り、炎の中に蹴り飛ばす。
息が切れたのか、キメラの炎が途切れ途切れになった瞬間テッドは魔導障壁を解除、駆ける。
「うぉおおおおおおおお!!」

クルトはガラガラと音を立てながら体を動かし、風を起こし始める。
それが突っ込んでくるジャネルを捉えた。
「!」
ぎりぎりと締め付ける漆黒の風の帯。
「ぐ・・・く・・・」
「姉さん、もうやめなよ抗うのは」
冷静な、しかし哀れむような声でジャネルに言葉をかけるクルト。
「姉さんもジキル様のもとに来ればいいんだ。そうすれば、昔みたいに笑って暮らせるから」
「自分の・・・一族を消した・・・者によく忠、誠が・・・誓えるわね」
「・・・」
ジャネルは絞り出すように言葉を紡ぐ。
「ジキルは・・・私達ダークエルフを、消したのよ?この傷は、その時負ったの」
クルトはじっとジャネルの傷を見つめ、溜息。
「もったいないね、姉さんは美人なのに・・・」
「そんなことは・・・関係ないの。私はただ・・・」
「ただ何?僕をそんなにジキル様から離れさせたいわけ?それなら無駄だよ」
クルトは上半身の鎧をはぎ取り、ジャネルはそれを見て息をのんだ。
心臓があるはずの場所に暗い穴が開き、その奥に機械と生身のものを合成したような漆黒の心臓が蠢いていた。
「・・・」
「これは魔術と機械の合成物。かりそめの命」
「そんな・・・」
「本来、あの時に僕は死んでいたんだ。でも・・・」

(死にたく・・・ないよぉ・・・お姉ちゃん・・・)
(ねえ、君)
(!)
(生きたい?じゃあ、その心臓をちょうだい。代わりの心臓、あげるからさ)

「こうして僕は生きてたんだ」
「・・・」
「ねえ、姉さん」
切ない顔をしていたクルトがニコッと笑った。
クルトの漆黒の心臓が、ばくんと脈打った。
「僕と、行こうよ。人間なんてほおっておいてさ」
ジャネルは少し俯き、顔を上げてカッと目を見開いた。
すると風が漆黒の風の帯を断ち切ってジャネルを高く跳ねあげた。
「な・・・」
ジャネルはかなり高い位置から風を起こしてそれをブーストにしてクルトに向かって爆発的なスピードで突進した。
「同じことをやっても僕には勝てないよ!!」
漆黒の風の帯を何本も飛ばし、ジャネルを捕まえようとするがジャネルはそれを軽々とかわし、時折手に風の刃を作り出して切り裂いた。
「な・・・」
風の刃が、クルトを切り裂いた。

「やれやれ・・・テッドも無茶するやつだね」
ヒスイはあきれ顔だ。
テッドは黙って剣を鞘に戻す。
巨大キメラは至近距離からの飛燕斬に耐えきれず、息絶えたのだ。
地面にどくどくと漆黒の血が流れ出ている。
「あんまり強くなかったなぁ、竜ってこんなものなの?先生」
「・・・まあ、使われてたのがまだ知能が育ってない幼竜であったからかもしれないね。幼竜はまだ能力に目覚めてないのが多いからね」
「・・・しかし、一撃とはな・・・」
ハイドは少しぽかんとしている。
「どうだよハイド。俺だってなかなかだろ?」
「ふ、ふん!相性が悪くなければ俺が・・・」
へっちを向くハイドに明らかに負け惜しみだ、とテッドは思う。
「はいはい、喧嘩はやめな」
ヒスイが静止させ、ジャネルが向かったほうを見る。
「ジャネルは・・・大丈夫かね?」
「ジャネルさん?ジャネルさんこっちに来てたの?」
「ああ、敵の指揮官と戦ってるのさ。どうやら、二人は姉弟だったらしくてね」
「ダークエルフに・・・生き残りがいたということですか?」
「そうらしい。でも、ジャネルにはつらいことだね」
ヒスイは目を細めてジャネルがいる方を見る。

「・・・負けちゃったね」
クルトは倒れたままそう呟いた。
胸には、真一文字に傷が走り、血がどくどくとあふれている。
「クルト・・・ごめんなさい。ごめんなさい・・・」
ジャネルは涙をぽろぽろとこぼした。
「やだなぁ、敵同士なんだから、泣くなんておかしいよ」
すると、ジャネルは目の傷を押さえた。
「っ・・・」
これは、まさか。
手を離すと、真っ赤な血がついていた。
「そうか・・・姉さんは、ジキル様に・・・愛されてるんだね。それは・・・その、呪い・・・」
そう呟くと、クルトは目を閉じた。
「クルト?クルト!!」
揺するが、何の反応もない。
漆黒の心臓は、ゆっくり鼓動を止めていった。
「い、いや・・・いやぁああああああああああああああああああ!!」
ジャネルは血の混じり合った涙をこぼし始める。
「ジャネル!!」
ヒスイの声。
顔を上げるとヒスイとテッド、ハイドが駆け寄ってきた。
「み、なさ・・・」
「・・・」
ハイドは目を細めてクルトの顔を見る。
テッドは悲しげな表情を浮かべ、ヒスイは膝をつき、ジャネルと目線を合わせる。
「・・・これは・・・“闇の心臓”だね?」
「はい・・・ジキルに与えられたものだと」
「・・・」
ヒスイはジャネルの肩をそっと叩き、立ち上がる。
「さあ、戻ろうか。ルナ達が心配してるだろうしね」

クルトはその場に穴を掘って埋め、大剣を墓標のように突き立ててきた。
私が、愛されて?
クルトの最後の言葉の一部だが、信じることができない。
愛する者の種族を皆殺しして、姉弟を殺し合わせて、何が愛しているだ!
私は、絶対にジキルを許すわけにはいかない。
大事な、大事なものを奪った。
あの時の様に魔族化しかけることはなかったが、そう思いながら夜の月を見つめていた。

次の日。
「では、行かれるのですね?」
「うん。皆、街をよろしくね」
セラは微笑んでそうレジスタンスリーダーに言った。
テッドは空を見上げながら一歩踏み出た。
「セラちゃん、行こうぜ」
「うん。じゃあ、みんな」
セラはそう言って手を振った。
「セラ様、どうか、御無事で」
皆がそう呟いて手を振った。
「おい!小僧!!」
マルコシアスの声にテッドは立ち止まり、振り返る。
「負けたら承知しねぇぞ?また戻って来い。その時に再戦だ」
「ああ!マルコさん!行ってくる!!」

こうしてテッド達はビシャスコアに向かって一歩を踏み出した。
皆、それぞれの思いを抱いて・・・。


続く▽

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