ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

オリジナルリレー物語コミュのChaos Heart 第八話

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
第八話
魔王との対面

ディザスター山岳。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
息を切らせてその麓に到着したセラとハイド。
「ここ・・・だね」
「はい、おそらく・・・」
「おぉ〜い!」
テッドとルナも息を切らせて追いかけてくる。
「・・・ニンゲン、貴様も来たのか」
きっと鋭いまなざしでテッドを睨みつけるハイド。
「なんだよ、助けに来たってのに」
「セラちゃん、私達も行くよ。先生達は後で来るって言ってたけど」
「え・・・ヒスイさん達はもう来られるの?体調・・・もういいのかな?」
セラは少し不安そうにうつむいてぶつぶつと呟く。
「セラ様、今は心配するよりすることがあります」
「そ、そうだね。じゃあ、さっそく登ろうか?」
てちてちと駆けて先に進んでいくセラ。
「あ、セラ様!おひとりでは危ないですよ!」
ハイドは慌てて追いかける。
テッドやルナも追いかけて山に入る。

ディザスター山岳は傾斜はなだらかであるが少々道に起伏が多い。
普通の歩き方をしている3人はともかく、てちてち歩きのセラは時々転がっている石や地面の出っ張りに躓きかける。
その度々後ろのハイドに手を引かれてなんと止まる。
「ご、ごめんなさい、ハイドくん・・・」
「もう少し足元を見れば安全だと思うけど・・・」
テッドがそう呟くとハイドがキッと睨みつけてきた。
「ニンゲン!セラ様に生意気な口を叩くな!」
「はぁ!?俺はただ注意すればいいんだって言ってるだけだぞ!?」
「ハイドくん、いいんだよ、私が注意しないのがいけないんだから・・・ありがとう、テッドくん」
「え、あ、いや・・・お礼言われるほどのことはしてないけど・・・」
テッドは指先で頬を掻く。
「セラ様、甘やかしてはいけませんよ。ニンゲンはすぐつけあがりますから」
ハイドは注意なのか警告なのか、同じ人間であるセラにそんなことを言う。
「だれが勝手につけあがるって!?」
テッドはその言葉にカチンときたらしい。
(・・・先生・・・早く来てくれないかなぁ・・・テッドがまたケンカしてるし)
ルナは心の底から助けを求める声を上げる。

登り始めて1時間ほど経過した。
3分の1ほど登ったぐらいでちょうど水場を見つけたのでそこで休憩をとっていた。
それは体力の少ないルナとセラのためでもあった。
「この水冷た〜い!」
「それに美味しい〜、自然の水ってこんなに美味しいんだ・・・ハイドくんは飲まないの?」
セラは見張りをしているハイドにそう声をかけた。
「俺はかまいません。セラ様は早く体力を戻すことだけを・・・」
「は、はい・・・」
少しシュンとなるセラ。
「テッドも休憩したら?疲れてるんでしょ?」
「いらねえ。お前が休憩しとけよ」
「・・・テッド」
「ん?」
ルナは嫌味たっぷりにこう言葉をかけた。
「もしかして、ハイドくんに負けたくないの?」
その言葉に顔を真っ赤にするテッド。
「だ、だ、誰がこいつと勝負なんて・・・俺は体力が残ってるし、こいつだけで見張りってのも頼りないからだな・・・」
「何!?」
ハイドも怒りを表情として顔に浮かべた。
「誰がニンゲンごときに負けると・・・頼りないだと・・・!?」「もう一度言ってやろうか!?お前一人じゃ見張りは頼りねぇって言って・・・」
「2人共!」
セラの声にびくっとする2人。
「ケンカをしてる場合じゃないのよ!分かってるの?」
腰に手を当ててその場にシュンとなる2人に怒りの目を向けるセラ。
「ごめんなさいは?」
「「ごめんなさい・・・」」
「反省したならいいですよ。さ、もう行きましょうか。ルナさん、行きましょうか?」
「え?あ、うん・・・私も体力戻ったし・・・」
「さ、急ぎま・・・」
「セラ様!」
ガシッと抱えられ、セラはふわっと浮き上がる。
セラを抱えたハイドが少し離れた岩に跳び移る。
「な、何だ!?」
「テッド、前!」
ルナの声にテッドは反射的に剣を抜いた。
丸まった何かが転がってくる。
それはぴたりと止まり、ばっと広がった瞬間に上から何かも降ってきた。
丸まっていたそれは毛の生えたアルマジロのようであり、降ってきたのは瞳の濁った茶色の毛色の獣人だった。
その獣人は上半身を覆う軽装鎧を着ており、片手にはダガーナイフと剣の中間ぐらいの刃物を持っている。
「な、何だお前・・・」
「ぐるる・・・お前達、この山に何の用だ」
「何って・・・ここに抑制鉱石があるって聞いて・・・」「ニンゲン!べらべら話すんじゃない!」
「鉱石だと!?お前達・・・“主様”の鉱石を盗っていく気か!」
「な・・・んだと!?俺達が盗人だという気か!」
ハイドは再び怒りを顔に出してそう叫ぶ。
「待てよ・・・主と言ったな?貴様以外に魔獣使いがいるのか?」
しかしすぐに冷静に分析を始めるあたり、亜人慣れをしているように感じられた。
「ふん、お前も亜人か・・・それもエルフ。何故人間と行動している?」
「は、貴様などに答える義理などないな」
「ぐ、ぐるる・・・」
怒りに歯軋りする獣人にハイドは剣・・・ゼノンブレードを鞘から抜いて構えながら抱えていたセナを下ろす。
「セナ様はルナと一緒に下がってください」
「う、うん」
そしてテッドと前線に並ぶ。
「ニンゲン、邪魔するなよ」「それはこっちの台詞だよ、俺だって戦える」
「いけぇ!」
アルマジロが再び丸まり、こちらに勢いよく転がってきた。
傾斜がなだらかであるとはいえ、坂であることに変わりない。
かなりのスピードながら、魔獣使いの獣人は玉乗りの要領で安定して上にいる。
「き、器用な奴・・・」「来るぞ!」
2人は地面を思い切り蹴って横に跳び、突進をかわす。
「ふん!」
獣人が自身の剣を閃かせ、テッドの方に斬りかかった。
「げ!きやがった!」
すぐに構えて迎え撃ったものの、相手はなかなかの腕力を持っているようで。
ぎちぎちと刃がかみ合う音。
非常に耳障りな音でもある。
「ニンゲン!そのまま逃がすな!」
ハイドの言葉と同時にゼノンブレードが炎を吹き上げた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
一撃が決まった。
その体毛を燃やしながらその場でくるくる回り、獣人は倒れる。
その場には消し炭だけが残った。
自身を使役する魔獣使いがいなくなったことで、毛玉アルマジロは短い脚を必死に動かして逃げて行った。
「お、終わった・・・」「ふん、言うだけだな、ニンゲン」「だから俺にはテッドって名前が・・・」
「2人共、もう終わったからケンカしない」
ルナがそう声をかける。
「そうだよ、ハイドくん。早く行かないと」
「は、はい・・・」
「さ、行こうか!」
またセラがてちてちと先導を切った。

ディザスター山岳、麓。
「さて、あの子らがどこまで登ってったかは分からないけど、急いで追いかけるかね」
ヒスイとジャネルがやってきたのだ。
「はい。急ぎましょう」
2人も山に入る。

山の頂上付近。
セラは息をついて上を見た。
空には鷲か鷹か、そのどちらかが旋回している。
「さて、もう少しだね、頑張ろう」
セラはそう皆に声をかけて歩き出す。
頂上には大きな鳥の巣のようなものがあった。
「これって・・・鳥の巣?」
「でも、卵とかないぞ?」
「雛はもう飛び去ったんだろうな」
3人が話をしている間にセラは巣の方に駆け寄り、巣の中心にあった普通の鶏の卵サイズの石数個を指差した。
「ねえ・・・これって・・・」
手が届きかける瞬間。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃーっ!!」
「!?」「セラ様!」
ハイドが駆け、セラは目を見開き、テッドとルナは何かを叫んでいた。

「今の声・・・」
あっという間に中腹まで登ってきていた2人。
ジャネルが耳をすませた。
「テッドとルナだね。急がないと・・・」
「はい」

ハイドがセラを抱きかかえて地面を滑るように転がる。
「っ・・・」「は、ハイド、くん?」
その背には鳥の爪の痕。
そして、剣を抜いてルナを背に庇うテッドの目の前には巨大な鷲型魔獣と、それに乗っていたらしいマントと裾が短いローブ、魔の紋章の髪飾りを付けた見た目が人間、おそらく混血亜人・・・彼女が先ほどの獣人が言っていた“主様”という人物だろう。
「困るねぇ・・・勝手に人の領地に入り込まれては・・・しかも子供ばかり・・・」
主様は倒れているハイドの背を蹴りつけ、呻く彼を見てぱあっと顔を明るくさせた。
「おや、エルフじゃないか。それも純血と見える・・・これはいい薬になる」
「く、くす、り・・・?」
セラが困惑したまま尋ねる。
「ああ、エルフの純血者は魔力を持つ者への薬の材料には最高なのさ。マンドルゴラが回復薬なら、これは魔力増大の秘薬になる」
「ぐぅ・・・」「ハイドくん・・・」「さ、どきな小娘。それは私のものだよ」
立ち上がろうとするハイドの腕の中からセラを蹴り飛ばす主様。
「きゃ!」「セラ様!」
手を伸ばそうとするハイドの首筋にひやりとした感触。
その正体は鎌。
死神が魂を狩るために用いるような、大きなものだ。
「逃がさないよ?ジキル様へのいい手土産になりそうだ・・・」「ジキル・・・だと?」
怒りのこもったようなハイドの声に主様は笑った。
「ジキル様がお強くなれば、誰もかなわないだろ?そうすれば私達の天下だよ、ははは!」「くだらないな、ばあさん」
その言葉にピタッと笑うのをやめる主様。
「ばあさん・・・だって?」
「そうだ、ジキルに従う女なんてばあさんで十分だ」
鎌をのけると、今度は地面に転がせたハイドを蹴りつけはじめる。
一撃目はみごとにみぞおち。
「がっ!」
「こんのガキが・・・私をばあさんだと言ったことを後悔させてやるよ!」
「ハイドくん!!」

一方、テッドは鷲型魔獣とのにらみ合いが続いていた。
「・・・」
「テッド・・・大丈夫なの?こんなの相手にして・・・」
「ルナ、火の呪紋符持ってるか?」
「あるけど・・・それを何に使うのよ」
「ハイドのものまねだよ。そうなるのは少し癪に障るけどな」
少しむかつきも混じっているのか、変に歪む笑顔に首をかしげながらルナは火の呪紋符を渡した。
それを剣に巻きつけ、熱を帯び始めた剣を振るって頷くテッド。
「よっしゃ!ルナ、危ないから下がってろよ!」
そう言い残してテッドは駆けた。
「て、テッド!」
テッドは大きく踏み出してまずダガーを投げつけ、それを魔獣が頭で払うのを見計らい、躍りかかるかのように帯びるのが熱から炎になった剣を叩きつける。
それによって相手の羽が若干焼け焦げ、黒煙を上げる。
弾かれて地面に刺さっているダガーをすぐに拾い上げて、炎を吹き上げる剣とともに構える。
ぶるんぶるんと首を振って黒煙を収め、魔獣は猛禽類とは思えないような声で啼いた。
まるで、獣でそれは大きな風を起こした。
「う、うわぁ!」
五月蝿いのと吹き飛ばされかけてルナは耳を塞ぎながらその場に膝を折って伏せる。
「ルナ、耳塞いどけよ!」
テッドは風をものともせず再び駆け、飛び上がって自身の体重と落下速度を利用し、上からの一撃を加える。
それは魔獣の右目の位置を切り裂き、魔獣は再び咆哮を上げる。
そして。傷口周辺が燃え盛る。
その炎は徐々に広がり全身を覆い、魔獣は咆哮を上げながら燃え盛りその巨体を倒した。
「いよっしゃあああ!!」「す、すご・・・」

「!」
主様は自身の魔獣の最後の咆哮を聞き、振りむく。
「な、何!?私の魔獣が・・・普通の人間ごときに!?」
「あいつは・・・ただのニンゲンじゃなかったってことだよ、残念だったなばあさん」
そのハイドの言葉に再びハイドの腹部に蹴りをお見舞いした。
「が!」
「五月蝿いねぇ、ガキが・・・本当に殺されたいみたいだね?まあ、私には血肉があれば死んでいても関係ないけどねぇ」
「そうはさせません!」
声と同時に風が主様に叩きこまれる。
主様はさっと身をかわし、ぎりっと歯軋りをした。
目の前には拳に風を纏わせたジャネルが立っていたのだ。
「じゃ、ねるさ・・・ん・・・」
「ハイドくん、大丈夫ですか?」
その言葉によろよろと立ちあがり、ゼノンブレードを構える。
「なんとか・・・大丈夫です」
「セラちゃん!」
ルナが倒れているセラに駆け寄ろうとする。
「その小娘は後で始末するんだよ!邪魔するんじゃない!」
鎌を振り上げて主様がルナを追いかける。
その速度は並みの女性ではない。
「しまった!」
ハイドはそう言ってふらふらの足のまま主様を追いかけようとするが、倒れかけてジャネルに支えられる。
「ハイドくん、無茶はいけません」
「でもセラ様が・・・」
「大丈夫、私が一人で来るわけはないでしょう?」
その言葉にはっとした。
「小娘ぇええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
鎌が煌めく。
「え、ああ!」
ルナはその場に屈みこんでしまう。
「死ねぇ!!」
鎌が振り下ろされる瞬間、ルナの前に人影が入った。
ガキィン!
「!?」
「あたしの生徒に手を出させるわけにはいかないね」
「せ、先生!」
ヒスイがクナイで鎌の刃を受け止め押しとどめていた。
「きぃいい!!また邪魔者がぁ!」
「ルナ、急いで賢者様を」「は、はい!」
ルナは何とか立ち上がりセラの方に駆け寄る。
「セナちゃん、大丈夫?」
「わ、私は大丈夫・・・少し、膝をすりむいただけだから・・・それよりハイドくんは?」
「ジャネルさんが助けたよ。大丈夫」
「よ、よかった・・・」
「ルナ!」
テッドが駆け寄る。
「セラちゃん、大丈夫なのか!?」
「少し擦り傷があるだけ・・・大丈夫だよ」
「じゃ、それささっと治すか」
テッドはセラの肩に手を当て、命のマナを流し込む。
傷が消え、体が軽くなる。
「あ・・・」「これでいいな。じゃあ、俺は援護に行ってくる。ルナ、これ返すよ」
そう言って剣に巻きつけていた呪紋符をルナに返してからテッドは駆けていく。
「ルナさん」
「?」
「少し・・・手伝ってください」
そう言ってセラは両袖からモデルガンを取りだした。

ジャネルの拳をあっさりとかわし、それと同時に放たれたヒスイの蹴りも受け止めて弾き、今度は向かってくるテッドのダガーの一撃を蹴り上げる形で妨害し、少し後ろに跳び退る主様。
その背後からハイドが大きな振り下ろしを繰り出す。
それを後ろ手の鎌で防ぐと彼の腹部に容赦なしの拳を叩きこんだ。
「がほあ!」
「ハイド!」
テッドが駆けて吹き飛ぶハイドを受け止める。
「ぐ・・・ニンゲンなどに助けられるとはな・・・」
「この事態で名前を教え直す暇はないし・・・とりあえず助かったな」
ジャネルとヒスイという強者を相手にしながらも、もてあそんでいるかのように見える主様。
「あのばあさん・・・なんて強さだ」
「どうにかして二人の援護をしなきゃなんないけど・・・俺達じゃあ・・・」
「・・・ふん、俺をお前と一緒にするな」
「なんだと!?簡単にやられてたのは誰だよ!?」
「ちょっと、そこのおばさん!」
その声に2人ははっと顔を上げ、ジャネルとヒスイを相手取っていた主様はピタッと止まった。
主様は振り返ると、その声を発した人物・・・ルナを睨みつけた。
「だぁれがおばさんだってぇ?」
顔は笑顔だが、怒りのオーラMAXといったところだ。
「あんた以外いないでしょ!おばさん!」
その言葉にぶるぶる鎌を持つ手が震えているのが見えた。
「ルナ!それ以上挑発は・・・」「待って、ヒスイさん」
ジャネルが冷静にヒスイを止めた。
「ジャネル?何で止め・・・」「大丈夫です。彼女・・・いえ彼女“達”に任せましょう」「彼女達・・・!そうか!」
気づいたヒスイにこくんと頷いて見せるジャネル。
「ふざけんじゃないよ小娘ぇえええええええええええええええええええええええええ!!」
そう叫びながらかなりのスピードでルナの方に駆ける主様。
すると、ルナは横に避け、その後ろからモデルガンを構えたセラが立っていた。
「ホーリィレクイエム!!」
そう叫んだと同時に聖のマナがモデルガンから放たれ、それがどんどん駆けてくる主様に当たる。
しかし、効果がないのか主様の突撃は止まらない。
「残念だったねぇ!私はこれでも生者なんだよ!浄化の力なんて効かないのさ!」
しかし、最後の引き金を引き、主様の鎌が迫った瞬間だ。
セラはふっと笑んだ。
その瞬間、ドクンと主様の体が揺れた。
「な・・・何・・・これは・・・」
そう、セラが狙っていたのは魔の紋章の髪飾り。
それには彼女に力を与えていた魔のマナを受ける役割を果たしていた。
しかし、それの浄化によって力が流れ込まなくなり、力が失われていった。
「が、ぐがああああ・・・」
鎌を取り落とし、数歩たたらを踏んで顔を押さえる主様。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!み、見るな・・・私を見るなぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
若い女性の声だったのがしわがれた老婆のような声になって、叫びを上げる。
その場にがくんとついた膝、手、腕は徐々にしわだらけの老人の体つきになり、手が離れた顔は老婆そのものだった。
「「「「「!?」」」」」
「やはり、貴女は魔のマナによって若さと力を保っていたのですね。それの受け皿を失って・・・急速に体が年をとって、力も弱まった」
「ぐ、くそぉ・・・私は、私はぁ・・・」
すると主様の額が割れ、奇声を発する赤く濡れた胎児のような生き物が現れた。
皆が目を見開く。
「きぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
奇声を上げながら、その生き物はずるずると這うように逃げて行こうとした。
しかし、その生き物が向かう方に人影が現れた。
「フフッ。情けないねクリネ」
その人影はハイドとそっくりの青年だった。
その青年は、目下の主様のなれの果て・・・クリネを冷たい紅の瞳で見ていた。
「き、きいい!きいい!きいいいいいい・・・」
「五月蝿いよ」
そう言い放ち、青年はクリネを踏みつけ、潰した。
そして地面に押しつけるように踏みにじった。
何か、粘液のようなものが青年の足の下・・・クリネがいた位置から流れ出る。
「・・・ああ、せっかくの靴が汚れてしまった。まったく、役に立たない奴だったなぁ」
「・・・ジキル」
きっと相手を睨みつけてハイドがそう言った。
皆は驚いて青年・・・憎き敵であるジキルを見た。
「やあハイド、元気かな?そんなにぼろぼろになって・・・クリネなんかにそんなにされたのかな?」
哀れむかのように紅の目を細めて小首をかしげるジキル。
それは少しこちらの怒りを買う問いかけだった。
「お前・・・自身の部下を殺して何にも思うことはないのかよ!?」
テッドが前に出てそう叫ぶ。
「部下?やだなぁ・・・フフッ」
言っていることが可笑しいことであるというようにその喉を震わせてくすくすっと笑うジキル。
「これは“道具”だ・・・僕は使い物にならない者は部下とは呼ばないんだよ」
「何・・・お前!」「よせニンゲン」
テッドの肩を掴んでハイドが止めに入る。
「で、でも・・・」「よせ」
ハイドの強い眼が、テッドを射抜くかのように見ている。
「ジキル・・・お久しぶりです」
ジャネルがそう冷静に言葉を発した。
「ああ・・・君は確か僕が滅ぼしたダークエルフの里の生き残りか。元気そうだね」
ニコッと微笑んでジキルは神経を逆なでするかのようにそう言った。
「・・・」
自身の魔族化を防ぐためか、ジャネルは冷静に感情を押し殺した。
「あんた、何のために来たんだい?あたしらを殺す気・・・ではなさそうだけど」
「ああ、そうそう。直接顔を見たいと思ってね。ねえ、テッド・ヴァン・ヒーリック」
そう呼ばれてテッドはびくっと反応を示した。
なんだか、背筋が寒くなるような・・・そんな呼ばれ方だった。
何故だろう、この声は、闇に誘いこんでいる呼びかけのようだ。
「テッド!」
手を引っ張られて振り返る。
ルナが、自身の手を引いてくれていた。
「どこ行くのよ・・・行かないでよ、勝手に」
そのか細い声が、テッドの意識をはっきりさせる。
「・・・悪い、どっか行きそうだった」
「おや、誘惑に勝ったのかい?」
不思議そうにジキルがそう言った。
「流石は、四大英雄と呼ばれた人間を両親に持つだけはある。魔の誘惑には抵抗力があるようだね」
「!?」
「あんた・・・なんでそれを知ってる」
ヒスイは怒りを封じたような声でそうジキルに問うた。
「やだなぁ、僕だって魔王のはしくれだ。そんなこと知っていなくて魔王なんてやってられないよ?」
クスッと笑ってジキルはそう言った。
「ジキル・・・貴様、ただそれを言いに来たのか」
「言っただろう?テッドの顔を見に来ただけだって。それと役に立たなかった道具の始末さ」
「じゃあお前もここで命を始末していくんだな!」
ハイドはボロボロの体でゼノンブレードを構え、飛びかかった。
ジキルは手をかざし、暗い闇のような壁でそれを受け止める。
「なに!?」
「甘いよ・・・そんなボロボロなままで僕に勝てるとでも?」
「く・・・」
まあ、いいかと呟き、ジキルはハイドを闇の壁で吹き飛ばし、背を向けた。
「今日は様子見だし・・・君を殺すわけにもいかないんでね。そろそろ失礼させてもらうよ」
「ま、待て!」
「じゃあね、ハイド。そしてテッド・・・」
ゲートが開き、ジキルはその中に消えた。
ゲートはすぐに閉じた。
「「「「「「・・・」」」」」」

その後、巣の中にあった抑制鉱石をすべて回収し、それをすべて予備も含め磨き上げて指輪にした。
「これでしばらくは大丈夫だね。皆ご苦労様」
指輪を確かめたヒスイの言葉にテッドはへたり込み、ジャネルは指輪を見、ルナとセラは瞳を輝かせ、ハイドはまだ怒りを持っているようで不機嫌そうな顔をしていた。
「でも・・・あの主様の力の源を見抜くなんてすごいな・・・」
「私だって怖かったわよ。セラちゃんの提案で挑発役を買って出たんだもの・・・外れてたらやられてたわ」
「私もすぐに気づいたわけじゃあないんですけど・・・もしかしたらと思って」
「それが当たっていて助かりましたね」
ジャネルはそう言って微笑んだ。
「でも・・・ジキルってハイドとそっくりだよな。何か関係あんの?」
「・・・そんなの知るか」
ハイドはまだ不機嫌だ。
「そうだ、皆さんはこれからどうなさるんですか?」
セラの言葉にヒスイがうーんと唸った。
「そうだねぇ・・・」
「先生、俺、しばらくここに残りたい」
「え?」
「テッド、どうしてよ」
「このあたり・・・修行にぴったりだと思うんだ。だから・・・」
「それはいい提案ですね。私もそれに賛成です」
「ジャネルさん・・・でもジャネルさんはここが嫌なんじゃあ「嫌いではありませんよ。蔑視があっても修行には関係ありませんし」」
ジャネルはそう言って微笑んだ。
「そうだねぇ・・・次の行き先を考えるのにいいかもしれないね」
「そうですか、じゃあ改めて皆さんを歓迎します」
そう言ってセラは微笑んだ。

続く▽

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

オリジナルリレー物語 更新情報

オリジナルリレー物語のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング