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全宇宙蹂躙残虐無双絶命唯一神。コミュの「あれから・・・」各々の交錯する想い、果て無き野心、それ故の過ち・過信・苦悩、そして自刃・・。”あの日金子で酌を交わした君に、たった一つだけ約束するよ・・〜”隔たり無き改革で人類を統べろ”

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激闘が終わり早2ヶ月。
日本國政府から掠め取った報奨金を手に、私は有限会社・宮野財閥を発足。
この國の全ての財産を手中に収めていた。

財閥を部下に一任し、金・地位・腐る程の女を手にした私は遊び呆け、心身共に堕落した生活を送るようになっていった。

金で二、三発女の頬を撫で、薬漬けの性交渉に明け暮れる日々。
快楽の中に空しさがある事は確かだった。

そんなある日、いつもの売人と落ち合うため門司港に足を運ぶと、
そこに居たのは売人ではなく、亡くなられた筈の恩田だった。

「女?金?名誉?違うだろ、お前は平和ボケして闘いに飢えてんだよ。世界制服しろ。異論は受け付けん。俺はあっちの世界で見守っててやんよ・・。」



この一言に触発され、自我を取り戻した私は軍艦でエルサレムへ赴き、武力でキリスト教を弾圧させた。
宗教戦争など私にとっては只のお遊びだ。宗教が乱れれば國を崩壊させることなど容易い。

その勢いで十字軍をも壊滅させ、ローマ教皇に自刃を促したその時だった。


なんと・・・私が師事するひな鳥金子の御父さんが現れたのだった。

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私は渋い表情で、使い捨ての命を所持している聖神仏に近付き、拝んだ。

思えばこいつも可哀相な漢だ。
初登場の時から暫くは、それこそ希代の名横綱の如く猛威を奮い、我々を恐怖のどん底に落とし続けていた。
それがどうだ?今ではただ時間稼ぎの為だけに登場させられ、すぐに退場させられる。
こいつも今の行き過ぎな商業主義の犠牲者なのだ。それを思うと私は泪を禁じ得なかった。

どうか…、どうか安らかに眠れ…それが我々の願いだ…


聖神仏を供養した我々は今後の協議をするため、すき家に移動した。

そこで私はある異変に気付いた。さっきまで(といいつつも書き込みからは結構前から登場していないが)一緒にいた貴婦人がいないのだ。

我々が背筋に冷たい汗を感じ始めた頃、宮野の携帯電話に非通知で着信が入ったのだった…
確かに!!貴婦人がいない…どういう事だ?

気が付くと直ぐに私のPHSに非通知着信が入った。私は恐る恐る電話に出た。

「この電話に出たという事は、聖神仏関を葬ったみたいですね。彼など捨て駒にもならん…謂わば塵の様な者だ。さてここからが本題のようだが?」

私達一同は息を呑んだ。

「私の妻を近江八幡で見つけましてね…。貴男方の影響で愛だの正義だの、それはそれは酷い状況です。最早私の妻である資格はないようだが?滅失させようかと悩んでいた所ですよ…。」

「や、やめてくれ!!貴婦人だけは手にかけるな!!」

「ならば近江八幡の(株)五月雨製薬まで来てくれるか?私の妻を賭けて最終決戦です。」


勝ち目など無い。だが愛を説いてくれた貴婦人を奪い返す為、我らは舊國鐵西日本近江八幡驛に到着した。

驛前からして異様な空気だ…

その時、突如小林が発狂し始めたのであった。
近江八幡が位置する、ここ滋賀縣は言わずと知れた我が国一の面積を誇る琵琶湖を擁している。
近畿地方の主な河川の水源とする琵琶湖は流石に大きい。初めて見る者はまるで海かと見紛う偉大さだ。それも全く波風たたない湖面は何か不気味ですらある。

古しえから水場にはこの世を浮遊する霊が集まるという風評がある。私はこの風評を端から信じてなどいなかった。否、ここ琵琶湖に来てその風評が間違いではなかった事を確信した。ここには浮かばれず死していった霊が蠢いている。

その時、私の体内にある霊が憑依した。その霊とは織田信長に焼き打ちされた比叡山の僧だった。


「信長の糞が!!ぜってぇあいつをぶっころしてやるよぉ!!安土桃山正拳突き!!!」と私は私の意思とは反し突きを繰り出し、吉岡に全治二週間くらいの怪我を負わせた。

怪訝な顔で私を見つめるレジスタンス達。
これは私の意思では無いのだ!!どうかどうかわかって欲しい…

といった想いに反して私は日本刀を取り出し吉岡に斬りかかったのだった…
私は小林が自我を失っていることにいち早く気付いた。だからこそ吉岡最大のピンチは傍観を決め込む事とした。

だが吉岡妻はそうはいかない。一目散に吉岡を庇い…十字に切り付けられ…絶命した。

この夫妻の愛には甚だ驚かされるばかりだ。やや達観した面持ちで一部始終を見守っていた私だが、最近本当に泪脆い。私は再び泪した。

私が泪に暮れていると吉岡が震える口を開いた。


「小林!!私は貴殿を許しはせんぞ!!私と戦え。詩織の仇討ちだ…」

「貴様は…信長!!死ねぇぇぇぇい!!」

自我を失った二人が、哀しい戦いを始めた。ま、まさかこれこそが"あの御方"の策略では?まんまと騙された…


私は自らの過失を償う意味で、二人の間に入った。


「待て。殺すなら私を殺せ!!」


もはや悔いは無い…。
私が宮野を斬りつける寸前、あろう事か日本刀は1メーターをゆうに越える玉蜀黍に姿を変えた。

いかに渾身の力で斬り付けようとも玉蜀黍は玉蜀黍。しかも若干茹ですぎだ。これでは玉蜀黍のあの歯ごたえを堪能することなどできまい。
当然、斬りつけた宮野を絶命させる事など出来ず、斬られた宮野本人が何やら苦笑いをしている有様だ。


何故、このような不可解な事象が?


私は琵琶湖の奥深さにただ笑うだけだった。



我々が脱力しきって珈琲なぞを嗜んでいた時、琵琶湖の対岸から、全て金で塗装した水上バイクに跨がり、“あの御方”がやってきたのだった…
金色(無論、「きんいろ」ではなく「「こんじき」と読む)の水上バイクで琵琶湖を我が物顔で疾走する"あの御方"は、ウイリー状態を保ちながら我々のいる地上をも疾走、吉岡を轢き殺した。

脇役且つ時間稼ぎ的な役割を担わせるつもりで登場させた吉岡だ。まさかこれほど生き残るとは…甚だあっぱれであった。私は最大限の敬意を表し、その場で念仏を唱え、ただただ合掌した。


「んー?その念仏は自分自身に唱えた方が宜しいようだが?」

何!?なんと"あの御方"は以前國道八号繊で多くの死傷者を出した金色プレジデントに乗り換え、私目がけ一直線に迫ってきていたのだ。
気付いた時にはもう遅かった。私は吉岡の屍もろとも琵琶湖の底深くに弾き飛ばされた。
更に"あの御方"は琵琶湖目がけ魚雷を発射。私はバラバラ遺体となった。

この抜かり無さ、怒り、尋常ではない…手も足も出なかったのは初めてだ。


小林、後は頼んだぞ…宇宙を、貴婦人を貴男の手で救うのだ。











私は絶命した。
糞っ!!あいつもう死にやがった!!いくらなんでも早過ぎるだろっ!!

おっと、つい愚痴が出てしまった。いかんな。
だがしかし、愚痴とは生きている証拠。もうあいつは愚痴すら言えんのだ…そう思うと、生きるとは、なんと、なんと奥深い事か。
決して綺麗な事ばかりでない、汚い事、辛辣な事も全部含めて“生きる”という事なのだ。

私はなんだかその事が分かったような気がした…

その事を忘れないように私は手持ちのメモ用紙に考えた内容の全容を書き留めた。
そのメモは突然吹いてきた春一番によって私の手元を離れた。うろたえる私。そのメモを拾う出版社の編集者っぽい紳士。何やら私のメモを熱心に読んでいる。時折、深く頷く紳士。紳士は読み終わったらしく私のほうに歩を進めた。

「あの文を書いたのは君か??」

「はい…そうですけど…」

「素晴らしい!!君は天才だ!!私は文藝春秋編集部編集者の見城というものだ、どうだ?私と一緒に作家への道を歩んでみないか??」

なんという幸運だ。まさに瓢箪から駒。この幸運に私はほくそ笑んだ。

私と見城編集者は新幹線に乗り一路東京文藝春秋社に向かった。
私は絶命後、直ぐに冥界へと送られた。

冥界には舊レジスタンスの清水や松田も彷徨っていた。私達は再会を悦び合い、私は皆に現世での出来事をゆっくりと話し始めた。

すると、清水が口を開いた。 
「まだ"あの御方"に拘ってがぁか?いい加減諦めたらどうら?それより冥界乗っ取って天下取ろうれ。」

松田が口を開いた。
「天下取って俺らの國作ろうれ。あっ、先ず風俗いかね?」


私は絶句した。こいつら暫く絶命してるうちに糞野郎に成り下がりやがった…。
だが奴らの言い分も一理ある。現世で勝ち目の無い戦いに身を置くくらいなら、冥界で好き勝手暴れた方がマシだ。堕ちる所まで堕ちてやる。


「管理人、冥界には"冥界神"とやらがいるらしい。そいつを血祭りにあげれば此処は俺らの國になり、全ての女が俺らに諂うようになるぞ…。」

私は考えるより先に即受諾した。
「だがまぁ待て。冥界に入ったばかりの私はまだ気圧に慣れていない。戦いに行く前に先ずは宴だ。清水、酒を盗んで来い。松田、女を攫ってこい。あははははは。」


私達は泥酔し、女を食い荒らしてそのまま深い眠りについた。
私は文藝春秋が用意してくれた蒲田のマンションの一室で一週間で小説“こい空”を書き上げた。

その小説が出版されるとすぐに全国の書店でベストセラーになり膨大な印税を得た。

私はその印税をまるまる名古屋銀行の私の口座に振り込んだ。今までの浪費癖を断ち切るために、私は金を得たらすぐに預金する事を自分の中の決まり事にした。



そして大手書店の紀伊國屋から私にサイン会の依頼がきた。勿論依頼を引き受け、一張羅のスーツに身を纏い私は紀伊國屋新宿店に向かった。


サイン会に訪れてくれた人は私の想像した人数を遥かに越えたものだった。私はこれだけの人を動かす事が出来る作家という職業に改めて誇りを感じた。
と私がいい気分でサインをしていると何やら最後尾に金色の異様なオーラーを纏ったある人の存在を感じたのだった…
一糸纏わぬ姿で女共と寝ていた筈の私達。極楽であった筈の冥界は、目を覚ますとまるで様変わりしていた。

真っ暗闇。そして血深泥の世界。一体何が?まさか、"冥界神"とやらの仕業か?


若干神妙な面持ちで三人で歩いていると、前から金色のマントを羽織った人物が現れた。まさか…貴男は…?

いや、そんな筈はない。私は確かに現世でこの漢に殺害された…。なぜ冥界に…?

すると私のPHSが鳴った。小林だった。

「こちら現世小林。管理人よ…私のサイン会に"金色の漢"が!!ひぃぃぃぃ!!」

「こちら冥界宮野。小林よ、その話は真か!?私の目の前にも"金色の漢"が!!どうなっているんだ!?」



すると、小林の悲鳴と共に急に電波が途切れた。一体これはどういう事なんだ??
私の目の前に忽然と現れた“あの御方”は氷のような笑みを浮かべ私に近付いた。
“あの御方”が私に近付く毎に私は恐怖に戦き失禁し瞳孔は限りなく開き脚気になり産まれたての小鹿みたいになった。

「んー、小林貴也ー。貴方は私を舐めているのですか?貴方の筆により私は出たり出なかったりのようだがー?もっと私をコミュニティに出してくれるか?」

「すっ、すみませんっ!!!善処致します。」


「それならいいのですが。そうそう、話は変わりますが私の生き写しを冥界に送っておきました。これで冥界にいる宮野は生き絶えるでしょう。でも、悲しむ事はありません、貴方も宮野の処に行くのですから…」

小便を全てし終わった私は若干冷静さを取り戻した。冷静になった私は何やら、この状況に違和を感じた。
まずここ紀伊國屋に“あの御方”が現れる必然性。全くない。“あの御方” の生き写しが冥界に現れる必然性。全くない。“あの御方”の好戦的な態度。いつもと違う気がする…



ここで私は大胆な仮説を立ててみた。もしかすると…もしかすると“あの御方”は既に亡くなられているのでは?
そして此処にいる“あの御方”と生き写しだという冥界在住“あの御方”は虎の衣を借る狐なのではないだろうか?
私は考えに耽った。
私は現世の小林からのテレパシーを受け、我に返った。
"あの御方"が"あの御方"でない、虎の威を借る虚像だとすれば絶命させるなど容易い。だがもし実像ならば、私は忽ち殺され大冥界へ送られてしまうだろう。


ええい、四の五の考えても始まらん。私は勇気を振り絞り、市販のカッターで金色マントを引き裂いた。…"あの御方"は絶命した。
何という弱さ…小林の言うとおり、奴は虚像に過ぎなかったのだ。 

だが一つ謎が残る。本当に、本物の"あの御方"は亡くなられたのか…?死因は?あの鬼神の如き強さを誇った"あの御方"に絶命という概念はあるのか?


その時私はある重大な方程式に気が付いた。

生きとし生ける者全ては絶命後、冥界へ送られる。"あの御方"といえどもその摂理には逆らえないであろう。 

もし本当に"あの御方"が絶命されているのなら…此処冥界にいる筈だ!!

「小林!!"あの御方"はおそらく冥界にいる。応援頼めんか!?」
この私の前に佇む“あの御方”と思しき人物。
本当に“あの御方”なのか突き止める為、私は簡単な質問をした。

「二、三お聞きします。
貴方の好きな言葉は?」

「遊牧民族と殺人術の因果関係。」

この答えでは判断しかねる。


「では続きまして…
貴方の好きな観光地は?」

「襟裳岬及び釧路湿原。」
この答えでも判断しかねる。

「これが最後の質問です。貴方の愛してやまない行為は?」


「目覚めてすぐのランニングと週末、仕事が終わってから行うスイミング。」


…この質問でわかった。こいつは“あの御方”ではない。
では、一体誰がこんな回りくどい真似を?

泥んでいる私に宮野からの電話が鳴った。

「小林よ!頼む!!冥界に来てくれないか?」

ん?何を言っているのだ?こいつは?私に絶命しろというのか?


と私が思案に更ける時、“あの御方”もどきの男から一発の銃弾が私に向かって放たれた。
私はその銃弾をモロにうけ息も絶え絶えの状態。
私が絶命寸前になったその時、“あの御方”もどきの男が、口から凄まじい量の血を吐き、やがて、絶命した。
私はこの疾風怒濤の展開に困惑した後発狂寸前になり気違いになった。


気違いになった私が絶命寸前になったその時、テレパシーで何やら本家本元の”あの御方“ の声が聞こえた。
「お疲れ様ですー小林貴也ー。よく踊ってくれたようだがー。貴方が対峙していた私は、今月末刑が執行される死刑囚のようだがー。全ては貴方を冥界に連れていく為の策略。まんまと引っ掛かったようだがー。ちなみに文藝春秋編集部編集者見城も私が用意した死刑囚のようだがー。とりあえず私はひとまず冥界で待ってます。早く来て欲しいようだがー。」




そうか…全ては罠だったのか…やっとわかったよ…









私は絶命した。
「小林!!待っていたぞ!!死因は何だ?切腹か?火炙りか?」

「"あの御方"擬きの野郎に撃たれた…本家"あの御方"にまんまと踊らされた…畜生!」

「貴男程の漢が他殺されたとは…だが概要はわかった。今やるべき事は本家"あの御方"への復讐に他ならんな。」

「まぁ待て。私はまだ気圧に慣れていない。飯でも食わんか?」

↑まぁ本来であれば大凡このような会話がなされていた事だろう。
だが今の私は文字通り絶体絶命の状況であった。


実は、"あの御方"もどきの漢を絶命させた後、本家"あの御方"が私の元に御降臨されたのだ。

「んー?やはり死刑囚如きでは噛ませ犬にもなりませんでしたか。しかし、小林がここに来る際に貴方には絶命してもらいます。塵も積もれば山。貴方方に組まれると少々厄介ですからね・・。」

そう言うと本家は鉈で私の四肢を切断。更に私を十字架に磔にし、私の頭部にマグナム銃を突きつけてきた。
この引き金を引かれれば私は絶命する。大冥界=本当の意味での絶命。それだけは避けなければならん。だが・・もう力が入らん。


小林、すまない。最後にもう一目貴方を見ておきたかった・・。だがそれも叶わん夢なのか。

「さぁ、死んでくれるかー。さようなら。」


さらばだ、そしてすまない。





「待て!!管理人を絶命させたりはせんぞ!!」
小林は本家に向かい胴タックルをぶちかまし、私は一命をとりとめた。

「すまん小林。だが私は十字架に架けられ、しかも頭部だけの状態だ・・。足手纏いとなろう。ならばいっそのこと私を絶命させろ・・せめて貴方の手で!!」
「この大馬鹿野郎!!」

と私は管理人の頬を思いっきり殴った。

「貴様!!それでも我々を束ねる管理人か!!寝言は寝て言え!!いいか?確かに今の状況は頗る悪い。まるでABCD包囲網に囲まれた旧日本軍の如くだ。だが、だがしかし背を向け尻尾を振る今の貴方の姿勢は如何なものか?甚だ残念だ。こんな状況だからこそ自らを鼓舞し奮い立たせなきゃならんのではないのか?泣き言は絶命してから思う存分聞く。今は前を向き敵を睨むのだ。」


「んー、内輪揉めですかー。結構結構。死に行く時までやんちゃな貴方達には掛ける言葉もありませんな…」


「ふっ、今だけだ。貴方が余裕を噛ましていられるのは。
私が何の土産も持たず此処へ来たとお思いか?全く祇園祭並に目出たいな、貴方は。これから我々の助っ人をご覧戴いてもらう。その後でもほざいてられるかな?
前置きはこれまでだ。いよいよ助っ人の登場だ!!
じゃあ、お願いします!!地方の星よ!!」


と冥界用ハイエースからややいきり立ったあの競走馬が現れたのだった。
「管理人、もう戦えない…だと?地方は中央の二軍だとでも言うのか!?俺たち競争馬はターフに命かけてんだよ!!」

「貴男はアマゾン!!だが頭部だけでは私は戦えん…」

「馬鹿野郎!!俺の背中、何の為にあると思う?お前を乗せるためだよ…さぁ、管理人、小林、俺に乗れ!!"あの御方"を叩き潰すぞ!!」

私は磔にされたままアマゾンに乗り、小林もすぐに乗り込んだ。

「ほぅ…雑魚がまた一人増えたようだが?相変わらず往生際が悪い…すぐ大冥界に送ってあげますよ。」


「小林!!宮野!!栗東で編み出したあの禁断の奥義、今使わねえでいつ使うんだ?」

「あの奥義を使えば貴男の競争馬生命、いや、命そのものが危ういのだぞ!?」

「いいさ…お前等の為に命張ってやるさ。俺達で地方の力を見せ付けてやるんだ!!」


奥義を放てばアマゾンだけでなく、既に瀕死状態の私も絶命は免れないだろう。小林も生き延びる保障は全く無い。
だが三人の意志は同じだった。奥義を打ち"あの御方"を討つ。それがレジスタンス冥界軍の全てだ。 


私達は奥義の態勢を取った。
この奥義を放つには若干の手間がかかる。先ず三人が円になり手を繋ぐ。そして煩悩を全て取り除いた“無”の境地に持って行かなくてはならない。
アマゾンはJRA、G1レース制覇の煩悩。宮野は支那蕎麦及び酒への煩悩。私は世界平和及び環境保全への煩悩。
三者三様の煩悩を断ち切るのは文字通り並大抵な作業ではなかった。

我々は苦しみ、疱き、時折一服し、腹拵えをしに支那蕎麦屋に行き、やっとのことで煩悩を断ち切った。時間にしておよそ三時間の時間を要した。
次にその状態で縄跳びをしなくてはならない。近くにいた人に大縄跳びを回してもらい手を繋いだまま目をつぶり大縄跳びを五十回跳ばなくてはならない。この作業にも多大な時間を費やした。やっとの事で成功した(跳んだ回数は若干ごまかした)。
五十回跳んだ時は嬉しさが泪となって現れた。

汗を拭い、息を整え、いよいよ我々は奥義を放つ態勢に持って行く事ができた。


準備は万端だ。我々に気合いが漲った。


ここで宮野が奥義名を声にだした。
私は奥義名を度忘れした。いや、正確に言うとこれは度忘れではない。
私の中の本能が「奥義を打つな。打てば絶命は免れん」確かにこう申している。

更に暫くすると、私は原因不明の吐血、嘔吐、骨折が立て続けに起き、身体は襤褸雑巾のようになった。

まるで何かに憑依されているかのようだ・・。ん?そういえばさっきまで対峙していた"あの御方"は何処へ・・?


「今更気付きましたか。本当に阿呆ですね。そう、憑依したのはまさに、私。今の貴方と私は一心同体。小林、アマゾン、私を絶命させる為に宮野に奥義を放ちますか?それが貴方方にできるとは思いませんがね・・。」

「俺に構うな!!奥義を放て!!"あの御方"の絶命は貴方達の悲願の筈だ!!」

「しかし、管理人、貴方の絶命は免れんのだぞ!?」

「この國の為に絶命できるなら本望だ。それに、"あの御方"に憑依され私は身も心も絶命寸前なのだよ・・。」



私は覚悟を決め、目を閉じた。
「んー?何ですか小林その目は。まさか・・打つおつもりですか??」



小林が一世一代の決断をした。
実は私は“マイスター”になるため独逸を訪れた時、“西欧の鬼太郎”こと独逸一の霊能力者オリバー・シュナイダー氏から幽体離脱の方法を伝授されたのだった。

正直あの時は糞めんどくせえ、こんつぁん教えらいても糞の役にもたたねぇや等の雑言を辺り構わず吐いていたのだが、人生とはわからないものである。まさかこの能力が役立つ時が来るとは…



“あの御方”が宮野と一心同体になられた今、私はどう動かなくてはならないのか必死に考えた。私の能力を十二分に活用しこの窮地を乗り越えるには…

私の頭脳から弾き出された回答は“宮野の体に幽体離脱を用い侵入し、宮野の体内で“あの御方”を殲滅させる”というものだった。


早速、私は幽体離脱するための呪文を唱えた。

「是正凶悪資本主義。関係性則ち左利き魂共同体唯一無二秀逸音楽陸奥恐山常陸筑波山信濃乗鞍岳近江伊吹山因幡大山薩摩開聞岳台湾新高山網羅百名山我一心同体宮野及び神悲観孤独地方馬いざ参らん」


私は宮野の体内に入った
小林は私の体内に入るや否や、直ぐに"あの御方"との体内相撲を開始した。

相撲は小林の得意分野。ましてや体内相撲ならば小林に十分勝機あり!!うっちゃり、上手出し投げ、一本背負い、腕ひしぎ逆十字固めなど、まさに技のデパート栃尾本店。総合格闘技を相撲に融合させているこの天性のセンスはあっぱれとしか言い様が無い。
だが相手は最強大横綱神である"あの御方"。序盤は優勢に見えた小林だが、徐々に攻め込まれるシーンが多くなってきた。


「んー?どうです、私のぶちかましの威力は?独りで私に勝てるとでもお思いですか?車内相撲の時のように引き裂いてあげますよ。」 


ま、不味い…確かに独りで"あの御方"に勝つなど不可能だ。これでは絶命するのも時間の問題だ。

土俵際で絶命寸前の小林。その時、体内相撲をモニターで一緒に観戦していたアマゾンが土俵(無論、土俵とは私の事だ)目がけ突っ込んできた。

「俺はなぁ、末脚一気で勝負する馬なんだよ!!」

ブリッツの言葉を真似たアマゾンは私にぶちかましを敢行。私は吹っ飛ばされ絶命寸前となった。いや、私などどうでもいい。体内相撲の結果は…どうなった…?
アマゾンに吹っ飛ばされた土俵(もとい宮野)は文字通り潰滅的な被害を被っていた。

毛細血管はズタズタに引き裂かれ血液の流れも滞り心不全の危険性もでてきた。

私と“あの御方”は食道から胃に運ばれ、胃液の鼻を貫くような悪臭にほとほと絶望した。


そして胃液の強力な溶解力は確実に我々を蝕み続ける。このままこの場にいたら我々は跡形もなく消失するだろう。

盟友、宮野の体内で死にゆくのか…


悪くない。



私は自分の運命を受け入れた。

視界には犬かきであがく“あの御方”。私はその光景を滑稽と切り捨て瞳を閉じた。

その時、“あの御方”から意外な提案が飛び出したのだった。
私の体内からは有ろう事か、こんな会話が聞こえてきた。

「ギギギ…小林貴也ー、私も貴方も絶命寸前ですね…胃液で最期を迎えるとは私らしくない。然し、生き残る方法が一つだけあるようだが?」

「ギギギ…私は恥ずべき生よりも名誉ある絶命を選ぶ。だが冥土の土産に聞いてやる…なんだ?」

「単純明解ですよ。私達で奥義を放ち宮野の胃に穴を開け、体外に脱出する。弱った私達でもそのくらいなら簡単な筈だが?」

「お断わりだ。胃に穴を開ければ宮野は胃潰瘍に悩まされ、大好きな支那蕎麦や生麦酒、馬鈴薯も食せなくなる。打ち所が悪ければ絶命だ。断固として断ろう。」

「そう仰ると思っていましたよ。然し、それによって三者に生じるメリットもあるのです。それは…」


しまった!!アマゾンのぶちかましで意識が朦朧としてきてもう聞きとれん…"あの御方"は一体どんな名案で小林を説得しようとしているのだ? 



「…成る程。わかった。宮野には悪いが、胃を破壊させてもらう。"あの御方"よ、私の漢道からは大分反れるが、手を組もう…。」


な、何だと!?一体どんな話し合いがなされたのだ?私の命の燈も、最早これ迄か…。

味方と敵の両方に絶命させられるとは、何という皮肉。私は覚悟を決め、アマゾンの膝枕でゆっくりと瞳を閉じた。
“あの御方”が提案された我々の脱出方法とは、一度我々の超能力で我々自身を寄生虫サナダ虫に変身させ宮野の胃、腸等をズタズタにし肛門から脱出するという劣悪な脱出方法だったのだった。

我々の変身後のサナダ虫は胃液にも耐えられるというスーパー寄生虫だ。出来ればこの方法は使いたくなかった。だってそうだろう?誰が好き好んで寄生虫なんかになりたがる?同志を胃腸障害にさせだかるか?答えは否だ。しかし、止む負えないのだ…私は既に胃液によって里芋みたいにとろとろだ。このままでは里芋どころかトロロ芋(自然薯)みたいになってしまう…そこはわかってほしい…


我々はサナダ虫に変身した。
知っての通り、私は蟲が大の苦手だ。
小林、"あの御方"が蟲として体内で生きている。そして胃から大腸に渡り、肛門から排出されるだと!?私はそれを想像しただけで顔面蒼白となり、半絶命状態に追いやられた。

アマゾンはそれを察したのか、ひたすら私の肛門の破壊に努めている。だがそれでは小林の絶命は免れん。私はゆっくりとアマゾンを諭し、ひたすら排出されるのを待った。

その時だった。サナダ蟲二匹が私の肛門から飛び出してきた。
排出されてもサナダ蟲のまま…なのか?これは千載一遇のチャンス。ここで"あの御方"に全力のぶちかましを敢行すれば、恐らく絶命に追いやれる。何たって相手は只の蟲なのだからな。ははっ、"あの御方"よ、ここで宿命を終わらせようか。


が、しかし待てよ。小林と"あの御方"の区別がつかん…だがこの機を逃せばもう世界はお仕舞いだ。


私は泣きながら小林にテレパシーを送った。

「私はこれから片方のサナダ蟲を踏み潰す!!。貴方が絶命する確率、5割。"あの御方"が絶命する確率、これまた5割。即ち確率論。貴方も漢のはしくれだ。いいな!?」
「わかった…宮野よ。貴方の判断に私は身を委ねよう…
たが、二匹のサナダ虫を今一度注視してみろ…
“あの御方”と私の決定的な違いが外面上に出ている筈だ…」

そう、私と“あの御方”には決定的に違う箇所がある…それを捜し当てるのだ…
それは私が窮地に陥った時、いつも最大限の援護をしてくれる貴方には判る筈だ。
今回はノーヒントで捜し当ててもらわなきゃいけないのだ…
何故って?それは私の体調が今年に入ってから一番悪いという今現在の私の現状に起因する…
日本酒と牛乳を併飲するとこんなにも悪い体調に陥るのか…今私は激しい腹痛と戦っている。これがあったので思考回路は弱体の一途を漂っている。すまないがリアルにキツイのだ…


さぁ、ご決断を!!
私は咄嗟に両者の陰茎を見比べた。

小林程の強心臓ならば如何なる時でも隆々としている筈。


…やはり予想通りだ。縮こまっている陰茎とはち切れんばかりの陰茎。サナダ蟲とは言え、両者の差は歴然だった。

"あの御方"よ、貴方も堕ちたものだな。答えが解った以上、何の躊躇いもなく踏み潰させてもらおうか。

「リアス式就職祈願並びに、蟲嫌悪人類逸脱踏みつけ型ぶちかまし!!」

決まったな。呆気ない最期だった。

技を決めると同時に両者は人間の姿に戻った。だが様子がおかしい…何!?

「相変わらず愚かですね。私の陰茎が萎縮したことなど無いようだが?まぁ助かりましたよ。私の命を救ってくれて有難う御座います…。」


しまった。完全にこれは私のミスだ…。小林は完全に内蔵が破裂し、今まさに大冥界へ旅立とうとしている。私は取り返しのつかない自責を受け入れ、自決することを決意した。


仲間と敵を見誤る私にこの乱世を生き抜く資格はない。さらばだ。 
私は隠し持っていた果物ナイフをそっと喉元に当てた。


「管理人!!」


息も絶え絶えの小林が私にゆっくりと何かを語りはじめた。
「ギギギ…貴方が自決する事はない…ギギ、悪いのは私だ…ギギ、私がもっと賢く背が高く腕相撲が強ければこんな事にはならなかった…ギギギギ、甚だ遺憾だ…ギギギ…私はサナダ虫の状態なので大冥界虫部門に送られる見込みだ…ギギギギギ…もう会う事もないだろう、残念だ…貴方は私の分も強く信念をもって生きて行ってくれ…ギギ、さ、ら、ば…だ。」



私は絶命した。






その後、私は大冥界虫部門に搬送された。


大冥界虫部門は、空には輝く蛍の光。それに群がる夥しい量の蛾。水辺には殿様飛蝗が跋扈し、陰日向にはゴキブリが蠢いている…


こんな場所で私は生きていかなくてはなのか…
そう考えるだけで寒気がした。

だが、泥んでばかりもいられない。私は先ず住民票を移すべく、市役所にむかった。住民課の職員は甲虫だった。


私は住民票を移し、次はアパートを借りるべく、不動産屋に向かった
故意でないとは言え、小林を自らの手で殺め、大冥界へ送ってしまったことに私は深く哀しんだ。

私は殺人(正確に言うと殺虫なのだが)を嫌悪する。やはり私は自決する他に道は無い・・。すぐに後を追うぞ。では・・・!!


「ん〜?仲間を絶命させた挙句に今度は自決ですか?愚か極まりないですね。」

「私は殺人を犯した。生きている資格などない。そこをどいてくれ。」

「よく考えてください。自決とは自分を殺めること。これを殺人と言わずに何と言いましょうか・・。」

「確かに一理ある・・。では、どうすれば?」

「然しもう遅い・・。最早血で血を洗う以外に道はないのです。仲間を全員絶命させなさい。冥界にいる筈ですよね?その全員を見つけ出し、大冥界へ送ってさしあげれば小林は哀しくなんかなくなりますよ?」

「教祖様・・そこまで私と小林の事を・・(目にはうっすらと泪が)」



私は"あの御方"に師事した。
こんな罪深き私を救ってくれたのは"あの御方"に他ならない。私はこれより先、修羅に入る。仲間の血で私の罪を浄化し、かつ大冥界蟲部門の小林を淋しくさせない方法。嗚呼何て素晴らしいのだ・・。



私は先ず手始めに清水を探し始めた。

「どこにいる!!ぶっ殺してやんよ!!」
不動産屋のお父さんはカメムシの容姿をしていた。正直、こいつから紹介される部屋など借りたくはない。だが、しかし雨風を凌げて、寝床を確保出来るアパートは社会生活に於いては必要不可欠だ。無ければあるのは絶命だといっても言い過ぎではない。世界の様々な場所で家がない事で朽ち果て死にゆく人達。遺憾極まりない。運よく私はこの程よい平和国家に生まれ、生を紡いでこれた。よって安心な生活をこれまではさせてもらっていた。だが、これからどうなるかなど誰にもわからない。隣の気違い國家がいつ気違いじみたことをかましてくるか解らない。しみじみ。


このような思いを馳せている時、カメムシの親父が口を開いた
私は清水を発見した。それは容易い事だった。
煩い音楽が流れ、やや大きめのTシャツにキャップを斜めに被りながらブレイクダンスを興じる清水。 

何故、こんな者が仲間だったのか?甚だ不思議でならん。チャラチャラしおって…
私達レジスタンスの参加資格は"漢"である事だ。こいつは女だ。悪いが絶命してもらおうか…。

私が殺戮兵器を厳選していると、清水が私に気付き声をかけてきた。 

「管理人。それに…"あの御方"!?お前等手を組んだのか!?」

「物は見方だ。何とでも言え。しかし、何だ?その格好にその振る舞いは?見苦しい…。ですよね?"あの御方"?」

「見るに値しませんね…。宮野ー清水を八つ裂きにしてさしあげてくれるか?」


私は鉋を取出し清水に奇襲を仕掛けた。
清水は直ぐ様絶命した。口程にも無い。

「ギギギ…裏切ったな…ギギ…。貴様には地獄が訪れよう…ギギギ。パワーアップした小林が貴様を絶命させに…ギギギ…いずれ此処に来る筈だ…ギ…。思い知れ…ギギギギギギ…。」


小林?確かにそんな名の仲間もいたな。だがもう忘れてしまったよ。今の私に仲間などいない。私は"あの御方"に仕える一介の漢。邪魔立てするならば例え小林でも殺害する!!



その時、空間が歪み私達は大冥界へタイムスリップした。目の前には不動産屋のカメムシと仲睦まじく話す小林が居た。一体何が…?


「んー?不思議ですね。都合よく小林の前にタイムスリップするとは。まぁ寧ろ都合がいい…宮野?宣言通り小林を絶命させなさい。冥界征服をかけた世紀の一戦、私がとくと見届けるようだが?」 

いや、そんなに手緩い相手ではない。私は先ず小林の出方を伺った。
「いらっしゃい!!お客さん初めてだね!!いやさぁ、何たってこの未曾有の不況だろ?部屋が決まらんでね(苦笑)まだいっぱい部屋あるから好きなの選んでね!!あっ、今珈琲持ってくるね!ブラックでいい?」

私は深々と頷き、奥の部屋に消えたカメムシの親父さんを眺めた。

なんだ…思ったよりいい人そうだなぁ。安心して借りれそうだ。


「はぁ〜い、お待たせ!!珈琲ね!お兄さん煙草すうかね?」
「はい。まぁ嗜む程度ですが…(と、ポケットからマルボロと春日山城址で購入した上杉謙信“昆”ライターを取り出す。)」

「おっ!お兄さんマルボロ吸うの?!俺もさぁ若い時はおんなじのだったんだけど、年取るとキツくてさぁ、今は1?_なんだけどね。おっ!!お兄さん上杉謙信好きなの??俺もさぁ昔の大河ドラマで上杉謙信やっててさぁ、それから好きなんだよね。いいよねぇ〜謙信。」

「いいですよ謙信は!!僕地元が謙信に縁があるとこなんでやっぱりDNAに組込まいてるっていうかねぇ。とにかく敬える人物ですね。いやぁ嬉しいなぁ〜謙信好きな人と会えて。」

「あぁいう生き方に憧れるってか漢の鏡だよね。政治家としても軍事家としても優秀だしね。じゃあ、お兄さんあれなんだ?新潟の人なんだ?」

「はい、新潟です。長岡の近くの、知ってるかなぁ栃尾っていう田舎が地元です。」

「おぉ!知ってるよ!!いやさぁカミさんの母方が実家新潟の見附で栃尾も行ったもんね。あれ旨いよね、ほら油揚げ!!あれは最高だったなぁ」

「いや、旨いですよ〜あれは自慢できる地元の名物ですね。よかったら今度お持ちしますよ!!」


「あぁ!!ほんとぉ!!ありがとう。あれで酒呑むのが好きでね〜」



と我々は意気投合し会話を満喫した。

するとそこに思いも寄らぬ訪問者が現れたのだった。
訪問者とは、正に私。そして"あの御方だった"。

私は開口一番に、小林に不動産屋の絶命を命じた。
小林は明らかに動揺している。だがそんな事は関係無い。

「早くその腐ったカメムシを絶命させろ。さもなくば私が貴方を斬り捨てる!!」

私は朱槍を小林に突き付けた。



「管理人・・貴方は変わられた様だな。"あの御方"などに付き従いおって何を望んでいるのだ?」

「世の秩序を打ち壊し"あの御方"と共に新世界を作る事だ。さぁ早く絶命させろ。新世界に汚い物は必要無い。」

「汚い物・・だと?麦は何度も踏まれて強くなる。泥に塗れろよ!!」

「泥に塗れろ・・だと?地べたに這い蹲るなど愚の中の愚。ならば仕方ない。我々の最終決着をつけよう。相撲でな。」


私は"あの御方"から金色の化粧廻しを拝借。一方の小林は昆と書かれた廻しを装着した。ふっ、この勝負もらった。


「ならば行事は私が務めるようだが?土俵は・・そうですね。この巨大剣山の上で。はっけよい、のこった!!」


かつての仲間同士の剣山相撲が始まった。
剣山相撲とははたから見ているより優しい物ではない。まず土俵は土ではなく剣山、踏ん張る事など当然できず足に力を入れれば剣が体の奥まで突き刺さる。

相撲の基本は足腰。どんなに腕力があろうとも足腰が脆弱なら敗北は必至。私は体を貫通する剣山のおかげで擦り足ができない。すっかり串刺し状態になってしまった。

宮野も同じように身動きができない状態だ。このままでは角界始まって以来の引き分けになってしまう。それは則ち角界の汚点として歴史に残ってしまう。


業を煮やした行司“あの御方”そしてセコンド役のカメムシの親父さん。皆一様に不安げな表情をしておられる。


私はこのまま角界を引退したくない。…そうだな負ければこの宮野戦が最後だ。



この状況を打破すべく宮野がゆっくりと口を開いた
取組中だというのに何を思ったのか、行事である"あの御方"が物言いを始めた。

「只今の取組について説明するようだが?互いに膠着を誘発したということで、このまま膠着するようならば両者失格、絶命処分と致すようだが?剣山相撲とは生温いものではない…宜しいかな?では、はっけよい…のこった!!」

行事に物言いの権限は無い筈…偉そうなこった…私はこの漢に師事しているが、本当に正しいのだろうか?私に一抹の不安が過った。だが、今は信じるしかない。闘うしかないのだ。

そこで私はテレパシーを小林に送った。

「小林よ、このままでは我が師"あの御方"に我々は絶命させられてしまう。だが、このまま串刺し状態が続いても絶命は濃厚…。そこでだ、八百長をしよう。無論、敗者は貴方だ。私の内掛けで倒れるだけでいい。異論はないな?」


小林は、首を横に振った。
我が國が何故世界の一等國と成り得たのか?
我が國に詳しい、新潟縣在住のある方に聞いた。

「先ず第一に和を以て尊しとする考え。これは非常に稀有な思想だ。
そして次に守るべき事を絶対に守るという考え。こんな勤勉な民族は世界広しといえども他に類を見ない。
そして最大の要因はそれらを含み常に味わいを醸し出してきた悠久の歴史だ。歴史とはいと深いものよ…」



と、ようするに八百長反対な姿勢を私は全面に出した。日本民族のアイデンティティに反する思想を全面に出したヤツには正義の鉄槌を下さねばならん。これは自然の摂理だ。だがその張本人はまさかの管理人宮野。私の中で葛藤が始まった。その葛藤は非常にすごい葛藤だ。すごいよこれは。


そこが日本民族の弱きところだ。美しい花を咲かす事は時として弱さになる。私はどうすればいいか分からずただ串刺しのまま泥んだ。


そこへ私の元に、あのいくらオファーをしてもクラス会に来てくれない高校二、三年の時の担任が現れた
「宮野に小林、久しぶりね。」
なんと…久方ぶりの聖母の登場だ。

「剣山相撲?そんな事して何になるの?ふふふっ、愚かね(苦笑)野垂れ死ぬがいいわ。キャハハハハ。」


むっ、様子がおかしい。かつての聖母は罪深き者全てを受け入れる正に"聖母"であった筈。何が彼女をここまで変えたのだ…

私達は串刺しになっているのを忘れ、暫し呆然とした。


次の瞬間、私は聖母の頭部に不自然に埋め込まれているICチップを発見した。何者かに洗脳されているのか…?


その時だった。聖母は私達目がけ薙刀を振りかざした。これをモロに受けた私は親指断裂、小林は肉離れという生命の危機に立たされた。

「あ、"あの御方"…助けてください…このままでは私は絶命してしまいます…」

「んー?これこそが私の狙いのようだが?どうです?担任に絶命させられる気分は。」


毎度ありがちな、極めて卑劣かつ遠回りかつ自らの手を汚さない極惡非道なやり方だ。


「貴男方も弱ってきたところですし、最終決戦といきますか。プロレスルール、タッグマッチ60分1本勝負です。宜しいかな?」


私は開始早々"あの御方ラリアット"を被弾、更に卍固め、逆水平チョップ、金的等の怒濤の攻撃で三途の川が見え始めた。

しかしそれでも最後の力を振り絞り、私は小林にタッチを敢行。プロレスならば貴方は相撲以上の力が出せる筈。絶対誰にも負けん。絶対にだ。あとは…頼んだぞ…


私は半絶命状態となった。
宮野から意志を受け継いだ私はとりあえず宮野の事は救護班にまわってもらっているカメムシの親父さんに任せ、形勢逆転を目指しリングに立った。

正直、プロレスはやったことがない。しかも得てして受け身が苦手な私にとって技を受けねばならぬプロレスは試練と言っても言い過ぎではない。とりあえず私はプロレスラーの十八番、ドロップキックを繰り出した。

何にせ素人なもので私の繰り出したドロップキックは殺傷力のかけらもない代物だ。だが、ご丁寧にも“あの御方”は痛がってくれた。感謝。
立ち上がった“あの御方”はすぐさま反撃に出た。技名は“油膜河川凝固雀パンチ”という、何とも悍ましい技だ。

喰らった私は当然の如く鼻が折れ血が滴り落ちた。血が出たことでうろたえる私。そこへセコンド役の聖母がタワシを持ち、それを使い私の顔を思いっきり掻いた。まさに泣きっ面に蜂。タワシが何本か鼻の中に入り鼻の粘膜がやられた。これではまともに闘えない…


私が絶望的な状況に陥っている時、ロープ外にいる宮野の様子がなんだか変になっていった
私は小林の劣勢を目の当たりにし、絶命寸前だった闘志がめらめらと湧き上がるのを感じた。

これは"あの御方"に裏切られた事とかつての仲間、小林が絶命寸前であるこの状況に対する怒り。
私の身体は全盛期の戸愚呂(弟)を彷彿させる筋骨隆々なガタイとなり、観るもの全てを魅了した。
だがそんな事は問題ではない。私には"あの御方"からフォール勝ちを奪う事、これ以外に目的は無い。



「初めて"敵"に会えた・・。うぉぉぉぉ!!100%中の100%!!!」


私は指弾一撃で"あの御方"をリングの隅に弾き飛ばし、雪崩式毒霧フランケンシュタイナー、ボディープレス、ストンピングを敢行。
"あの御方"は息も絶え絶えだ。


「勝機!!小林、最後は我等二人で決めようぞ。ツープラトン相撲式張り手型極め系ぶちかまし!!!!!!!」




決まったな。これが私の100%だ。思い知ったか・・。



「くっ・・なかなかおやりの様だ・・。ですが、この光景を目にしても勝ち誇っていられますか?んー?」


なんと"あの御方"は客として観戦に来ていた貴婦人(久々の登場だが一応、"あの御方"の妻である)にスタンガンを突き付けた。
か弱い貴婦人だ。感電すれば絶命は免れないだろう。

「以前貴方方は私の妻に世話になったようですね?儀を重んずる貴方方が、このまま妻を見殺しにできますか?答えは否なようだが。助けたくば、自決なさい。んー?悲観する事は無いですよ?」


何て卑劣な奴だ・・。最早これ迄か。


私は懐に隠し持っていた自決用の短刀を喉元にそっと当てた。


「去り逝く者は何も語らん。小林、貴婦人・・・さらばだ!!」





喉元深く刺さんとするその刹那、漢小林が漢気溢れる行動に出た。
私は今にも自刃しそうな宮野から短刀を奪い、勢いよく“あの御方”の元に走り、スタンガンを弾き飛ばし、貴婦人を“あの御方”の元から離れさせ、宮野から奪った短刀を“あの御方”の心の臓目掛け、深く、深く突き刺した。



「謙遜するな、あんたすげぇプロレスラーだぜ。俺はあんたの屍を越えていく。そしていつの日か、あっちの世界でまた戦ろうや。あの、四角いリングでな」

「ぐっ…お前、なに生き急いでいるんだ。お前は将来を嘱望されたレスラーだろ?こんな汚れた血で将来を棒に振る気か…?」

「ふっ、俺にはレスリングしかねぇんだ。そうだな、この國を抜け出してメキシコ辺りでプロレス界の“ドリームチーム”でも作るさ。あんたはあっちの世界でそれを見ていてくれ。
…ちっ、もう追っ手がきやがった。急がなきゃだな。」


それからプロレスラー小林三四郎は駆け出した。彼の掲げる“ドリームチーム”を作るために。
次回、メキシコで彼を待っていたのはどうしようもない現実だった。

第二話「禁じられた言葉」
ご期待下さい
私は奪われた短刀、更には心の臓を突き刺される"あの御方"を目の当たりにし、動揺した。


私は確かに自刃を決意した。だが…その目論見は儚く散り行き、しかも宿敵"あの御方"は呆気なく滅失した。

これを"無念"と呼ばずに何と言うか。死すべき時に死せず漢など漢では無い。私は死に場所を失ったのだ。


私はメキシコに旅立つ小林を見つめながら、ただただ泪に暮れた。片や、夢を追い求める小林。片や、死に場所すら無い只の流浪人。私は再び自刃を決意した。その時だった。メキシコに到着した筈の小林から電報が入ったのだ。


「管理人!!次のタッグマッチ、私の相方になってはくれまいか?正直キツイ闘いだ。私の夢の為に管理人、メキシコに来てくれ!!貴男とならば"世界"が獲れる!!」



私は深い溜息を吐き、次の瞬間には電報を破り捨て、再び瞑想に入った。


だがこの愚決断こそが、真の地獄の始まりだった。

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