ジュリーとの新しい思い出コミュの１９８６年・パート２（女神）

　夏の全国縦断ライブは『架空のオペラ・パート?』と題されて開催され、
ボクも静岡市民文化会館で観た。オープニング、チト河内さんらのドラム
が打ち鳴らされる中、たかれたスモークの中にジュリーのシルエットが浮
かび上がる。まさにカリスマの登場だ。
　エレクトリックバイオリンを加えた前回よりもロック色が強く、ジュリ
ーはまるで子供のようにステージ中をぐるんぐるん回り続ける。そして、
バラードはしっとり。ＴＶでの露出は以前より少なくなったけれど、以前
よりもグレードアップしたジュリーをこうやって観られるのはなんて贅沢
なんだと当時は思っていた。

　それでもＴＶでは『夜ヒット』でジュリーはマンスリーを務め、山口小
夜子さんとの共演（本当にキスしたのかな？）、誕生日にはロック仲間が
集まり『闇舞踏』を歌ったり。


夜ヒットマンスリー『ヴォラーレｗｉｔｈ山口小夜子』

http://www.youtube.com/watch?v=EhOKVE4G3TI&feature=related
夜ヒット・マンスリー『闇舞踏』

http://www.youtube.com/watch?v=FLJ5kFBj-Ys&feature=related
夜ヒット・マンスリー『スタンド・バイ・ミー』

　ＣＭではメガネスーパーで梶井基次郎の小説『檸檬』をモチーフにした
映像が流れていた。本屋の山積みの本の上に檸檬を置いてくる。それだけ
の話なんだけれど。バックに流れていたのは、『Ｂサイドガール』。


　シーズ・Ｂサイド・ガール　ボクの愛を戸惑いながら尽くしてくれた

　シー・ソー・ビューティフル　少女のように何も望まず　生きててくれた


　どうしても当時噂になっていた田中裕子のことを想像してしまう内容だ。
よくジュリーは日本のミック・ジャガーと言われることがあるけれど、ボク
は本当は日本のジョン・レノンじゃないかって思っている。ジョン・レノン
がオノ・ヨーコにのめりこんでいったように、ジュリーも何もかも捨てて田
中裕子に走ったんじゃないかって。
　実際、この頃だと思うんだけど、ジュリーは豪邸から出ていき、奥さん（
ピーナッツの人）と別居する。本当に何もかも捨てていったらしい。近所に
住んでいたハナ肇さんは「彼は勝手に出ていった」と不機嫌な様子で語って
いたことがある。
　今でも時々芸能人の慰謝料ランキングが出ることがあるけれど、ジュリーは
千昌夫に次いで毎回２位で登場している。けど、実際はお金で払っていない。
ジュリーはそれまでの財産すべてを奥さんに置いて、黙って出ていったと思わ
れる。自分勝手といえば自分勝手だけれど、奥さんへの優しさやいたわりも感
じられる。ジュリーらしい。
　そのため、この時のジュリーはちょっと金欠だったのか、アルバム『告白』
をニューヨークで録音したのだが、その時のスタジオは当初予定していたもの
より安いスタジオに入ったと写真週刊誌で報道された。

　そうそう、この頃のジュリーはフォーカス、フライデーのかっこうのターゲ
ットだった。ある時は飲み過ぎた後のお腹をとられたり、ある時は田中裕子を
助手席に乗せて飲酒運転している姿さえも撮られた。
　当時、田中裕子は中森明菜のように歌を歌いたいと言って、ジュリープロデ
ュースでアルバムを作り、なんと全国ツアーも行っている。まるで女ジュリー
のように。
　ひょっとしたら会場にジュリーも来てるんじゃないかと思って、行きました
よ、ボクも。田中裕子ライブｉｎ静岡県民文化会館！　会場はガラガラだった
けれど、裕子さんも神秘的でセクシーな人だった。この頃、裕子さんはラジオ
のスペシャル番組で「最近アートガンファンクルさんの映画『ジェラシー』を
観たのだけれど、実はその映画の原題が『バット・タイミング』ってゆうの。
どうして日本語になると『ジェラシー』になるんだろうって‥‥‥」と話して
いた。あのけだるい口調で。ジュリーと出会ったのは、彼女にとって『バット
・タイミング』だったのか。それともジュリーにとって『バット・タイミング
』だったのか。

　そして、秋になるとジュリーは新曲『女神』を発表する。これもまるで田中
裕子のことを思わせる激しい愛の歌だ。作詞・阿久悠、作曲は『桃色吐息』の
佐藤隆。