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荒野に生きるチームコミュの【第1話】笑う男

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http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27039711&comm_id=2962642
【第0.5話】からの続きです。





 それから3日して、1通のメールが届いた。

──────────
えんぴつfrom:吉良 貫一
メモsub :ターゲット
mail toto :有永梅人様
クリップ :
おはようございます。エグゼクティブ・ミステリアスジョブの吉良でございます。
その後いかがお過ごしでしょうか。
早速ではございますが、お仕事の依頼がございました。
ご依頼者様に子役のお話をしましたところ、有永様に是非に、とのお言葉を頂戴しました。
つきましては、本日11:30に都営地下鉄三田線 御成門駅A-6出口付近までお越しください。
ドレスコードはダークスーツでお願い致します。
笑うタイミングや笑い方につきましては、直前に指示いたしますので、宜しくお願い申し上げます。

かしこ
──────────

 笑い屋の依頼だ。どじょうひげの野郎、メールだとずいぶん丁寧な口調なんだな。
 つーかあいつ、吉良さんっていうのか。
 ていうか今日? 11:30? あと2時間しかないじゃないか!
 僕は慌てて携帯の乗り換え案内サイトで調べた。良かった、そう遠くないし、地下鉄駅だから徒歩5時間ってことはなさそうだ。

 とりあえず交通費がギリギリ足りることだけ確認し、入学式の時に一度だけ着たスーツに袖を通した。


 駅は、平日昼間なのに静かだった。
 所々、警官が立っている。
 その時、メールの着メロが鳴った。

「そういや、着メロまだメリークリスマスのままだったな。絢かな」

 絢は、同じサークルの後輩だ。密かに狙っていて、クリスマスイヴにデートの約束を取りつけた子だ。残念ながら、急に家族で過ごすことになったらしく、延期となったけど。

──────────
えんぴつfrom:吉良 貫一
メモsub :ターゲット
mail toto :有永梅人様
クリップ :QRコード.jpg
お世話になっております。エグゼクティブ・ミステリアスジョブの吉良でございます。
駅にはご到着されましたでしょうか。
まずはA-6出口付近のコインロッカー、204をお開けください。有永様の携帯で、添付いたしましたQRコードを読み取らせれば開くはずです。文明の利器とは便利なものですね。しかしそんな便利さだけを追求して、人は果たして幸せになれるのでしょうか。小生が思うに、やはり人と人との触れ合いというものが…
話が逸れました。
では、後はロッカーの中の指示に従って笑ってください。
一世一代の笑いを祈念いたしまして、ご挨拶と代えさせて頂きます。

かしこ
──────────

「なんだ、吉良の野郎か」

 メールの指示通り、ロッカーはあった。添付ファイルを開くと、QRコードをリーダーに押し付ける。電子アナウンスが流れ、204のロッカーが開いた。

「えっと‥‥黒いネクタイに‥‥袱紗?」

 去年、おばちゃんが亡くなった時に使ったから知っている。袱紗は香典袋を包むものだ。僕の婆ちゃんはさすがに年の功、そういうことには詳しくて、教えてもらった。婆ちゃんは、ずいぶん年下のおばちゃんが亡くなったのがショックだったようだった。まあ、今ではすっかり元気だけど。‥‥しかし。
 ということは、中には香典が?

「‥‥10万って」

 抑えきれずに覗いた香典袋には、大金が入っていた。思わず持ち逃げしようかとも思ったけど、失敗した時のペナルティっていうのが気になる。

「指示は‥‥これか。駅徒歩5分の増上寺光摂殿にて、奥平のぞみちゃん(10)の前で高笑いすること。タイミングは携帯電話で指示する。マナーモードにして着信と同時に笑うこと、か」

 着いたのは、広大な境内だった。

「増上寺? でかい寺だな。東京タワーの近くに、こんなところがあったのか」

 それにしても、正月も過ぎたというのに人が多い。
さっきから、黒塗りの高級車やリムジンが次々と入っていく。それを撮影するためか、テレビ局まで来ている。
 フラッシュがバシャバシャと焚かれる中、人混みを縫うようにひときわ大きなリムジンが、音もなく滑り込んできた。
 玉砂利が敷きつめてある境内で音も振動もなく入ってくるとは、運転手の技量がずば抜けているんだろう。僕は何気なく車のエンブレムを読んだ。

「リンコ‥‥ルン? そんな車あったかな。ごつい割にかわいい名前だな」

 遠く、奥の方でお経らしい声が響いている。

 光摂殿は、荘厳な建物だった。入り口近くには、立て札がある。

「‥‥奥平義一郎 由美子 葬儀」

 これはあれか? 葬儀場で笑えってことか?
 これはやばい。だって考えてもみなよ、厳かでみんな泣いてる中、いきなり高笑いだぜ。絶対引かれる。引かれるだけならまだしも、多分怒られる。もしかしたら殴られてつまみ出されるかも知れない。

「‥‥まあ、でも殺し屋の背中掻くのと違って、命までとられるわけじゃないしな」

 それに、30万円は魅力だ。ペナルティも恐い。こんなことなら、ペナルティの内容をちゃんと聞いておくんだった。浮かれてすぐさまサインしたのは失敗だったか。

「30万円のためだ。笑うだけだ、笑うだけ」

 言い聞かせながら、僕は光摂殿に入った。
 入り口近くには、受付。香典があるってことは、ここで記名して渡すんだろう。

「御霊前にお供えください」

 よし、言えた。ありがとう、婆ちゃん。それから受付だ。
 名前は指示によれば僕の名前ではなく、『城山 学』と書けということだ。つまり、今回のバイトは、この人の代わりを務めろっていうことなのか。

「それなのに笑っちゃっていいのかね」

 だんだん楽しくなってきた。
 受付を済ませると、大きな祭壇と二人のにこやかな写真。まだ若い。30代前半かも知れない。

「かわいそうに。あの若さでねぇ」

「これからっていう時に‥‥あんな事故なんて。お嬢ちゃん、まだ小さいんでしょ」

 喪服の人々が、故人のことを口にする。でも、なんだかうつろで、空々しい。
 夫婦なんだろうな。その若さでこんな盛大な葬式をやってもらえるなんて、有名な人なんだろうか。
 祭壇のすぐ手前、喪主の席には女の子が座っていた。
 無表情なその顔。

 僕は、参列から外れ、後ろからその子に近づいた。

 ヴィー、ヴィー、ヴィー。バイブが僕のポケットを揺らす。

 心臓が口から飛び出そうだ。

 ええい、男は度胸だ! 30万円!

「ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。どわーっはっはっはっは! はーっはっはっはっ! げほっげほっげほっ」

 やけくそ気味でむせ返るほどの僕の笑いに、女の子はきょとんとしている。
 そして、次第に顔が赤くなり‥‥

 泣き出した。




【第2話】に続きます。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27142937&comm_id=2962642

コメント(11)

 げーおもしれー。
 あんなに早く書いたのになんですかこの面白さは。
 これ、どうするんでしょ。
 はやく続きが読みたいよー。

 ちょっと今仕事中なので、またあとで読み返して感想書きます。
あ、A-1出口じゃなくてA-6だった。
あと、リンコ…ルンのところの3点リーダ、訂正お願いします。
 修正しました。

 そして読み返しました。
 いやこれ、面白いです。

 どう展開するんでしょう。
 難しい。

 舞台は東京なのですね。
 東京タワーに暗殺者がいて欲しいなあ。ふふふ。
 あそこ、窓開かないけどな。



 もし二番手が僕だったとしたら‥‥

 高笑いするか泣くでしょうね。
うわーおもしれー!!!
そしてハードル高ぇぇ!!!!!
そしてムチクエを残した理由は…?
最後むせちゃったのはEMJ的には減点対象なのかなぁ?
とりあえずミッション遂行しちゃった。
でもまだまだいっぱい人出てくるよね??

わたし、今まだ純粋な読者状態です。
おもろかったー☆

aniさんワールドを堪能しつつ、反芻しつつ、
これからお風呂に入ってみます☆

aniさん、第0.5話/第1話と、おつかれさまでした!!!!!!!
本日はゆっくりお休みください!

たぶん、後日ちょっと相談します!!!(笑)
お疲れ様でした。

これからすごく話を広げていきやすい終わり方ですね。
面白かったです。

どうなるの?この先は!
と期待大です。
わ〜もう気楽ぅ〜。
さあ、皆の衆。書いてたもれ!
わっ☆
aniさん素敵☆
わたしね、とりあえず書いちゃった!
でもまだ推敲するのでもう少し待っててくらはい☆

おっ早いねぷーたんさん。
推敲か、オレみたいに上げてからやっきーさんに直してもらうってのもオツだぜ?
期待してます!
 ぷーたんさんの、僕のところにメッセージで届いたので、やっきーがあげました。すげーことになってます。

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