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モノノ怪・考察演習のっぺらぼうコミュの最終レジュメ【何かの参考になれば】

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一、研究目的
 「のっぺらぼう」とはなにかということをお蝶の心理構造を追いながら考察する。

二、作品概要

 本作は、ノイタミナ枠で以前放送された『怪 〜ayakashi〜』のエピソード「化猫」の続編。制作スタッフもほぼ同じである。
前作に続き、謎の薬売りを主人公とした「座敷童子」「海坊主」「のっぺらぼう」「鵺(ぬえ)」「化猫」の5エピソードがオムニバス形式で描かれる。

怪 〜ayakashi〜
日本古来の怪談の中から著名な三話「四谷怪談」、「天守物語」、「化猫」を元に、俊英クリエーター達が原作を独自に解釈、あるいは新規にストーリーを書き起こして現代的な視点・様式を加味し制作。それぞれの作品にストーリー上の繋がりは特に無く、各作品は全く別の作風に仕上がっている。化猫のストーリーは完全オリジナルである。演出手法も大きく異なっており、3DCGの多用、浮世絵風の色使い、全編に渡って和紙風のテクスチャが使用されている。

<基本設定>
 正体不明の薬売りの男が、自身の持つ『退魔の剣』に導かれ、モノノケを斬る。退魔の剣は、人の因果と縁が成す「形(かたち)」、事の有様をあらわす「真(まこと)」、心の有様をあらわす「理(ことわり)」を明らかにしなくては抜くことができず、モノノケを斬ることはできない。
 人=世に生まれるもの アヤカシ=世にあるもの
真(人+理+アヤカシ)→形 =モノノケ

初出
 フジテレビ『ノイタミナ』枠2007年8月16日(前編)
脚本 石川学  絵コンテ・演出 うえだひでひと  作画監督 岡辰也

23日(後編)
脚本 石川学 絵コンテ 梅澤淳稔、渡辺純央  演出 中尾幸彦  作画監督 渡辺奈月、袴田裕二

あらすじ
夫とその家族、佐々木家惨殺の咎で死罪が確定し、牢に繋がれている女・お蝶。
この事件の背後にモノノケが存在するとあたりをつけた薬売りは、お蝶の牢に現れて彼女を追及する。しかしお蝶の惨殺事件に対しての記憶は曖昧であり、更に突然現れた狐面をまとった男に邪魔されてしまう。問答の末薬売りは顔を面に変えられ、お蝶を牢から連れ出されてしまう。
仮面の男は自分がモノノケであること、自分の力ではお蝶を婚家に戻すことしかできないことをお蝶に告げるが、婚家に戻ることを拒否したお蝶に対して求婚をする。承諾したお蝶は狐面の男の作り出した空間で彼と祝言を挙げるが、お蝶の母親の登場により空間は崩壊。面を取り戻した薬売りも現れて再び仮面の男と対峙する。
しかし、狐面の男は本当の「形」を表さない。薬売りは狐面の男が執着するお蝶の情念を男に突きつけることでその形を表わそうとする。
お蝶の心を探るうちに、お蝶が夫家族を惨殺するに至った原因が明らかになる。それはお蝶と母親の関係にあった。お蝶の家は父親を早くに亡くしたことで家禄を召し上げられてしまい、母親は娘を武家に嫁がせることに執心していた。母親を愛し、彼女に喜んでもらいたい一心でお蝶は辛い花嫁修業に耐え、遊びたい心を封じて武家である佐々木家に嫁いだ。
しかし、婚家でのお蝶の扱いは使用人並であり、それで尚母の願いのために耐えたお蝶の心は決定的に破綻してしまった。今まで見ないふりをしていた自らの本心に、お蝶は自分は逃げられなかったのではなく逃げることをしなかったこと、今まで殺してきたものは佐々木家の人間ではなく自分自身であることに気付く。すべてを自覚したお蝶に、薬売りはモノノケの正体を突きつける。
舞台は現実の佐々木家台所に移る。以前と同じく夫たちの罵声を聞きながら空を見つめていたお蝶は微笑む。屏風の絵の梅の木からは鶯が飛び立ち、台所の戸口に座った薬売りが煙管をふかす。酒を持てと蝶に怒鳴る夫。薬売りは一言「しかし……誰もいない」。誰も居なくなった台所、晴れやかな外の風景に鶯の声が響く。

登場人物
お蝶(おちょう)
藩士の家(佐々木家)に嫁いだ女性。器量はよいが、目の下のくま等、暗い雰囲気を纏う。母の期待に答えようとするあまり、自分を押し殺してしまう。
仮面(狐面)の男 
面をつけた人外の男。煙管を持ち、紫煙を吐く。通常は狐の面をつけているが、他の面にも変える事ができる。 お蝶を守ろうとする。
お蝶の実母  
夫を失い、家の力が衰えてしまった事で、娘・お蝶を武家の名家に嫁がせる事を望む。お蝶に熱心に琴の稽古などをつけていた。
お蝶の亭主
お蝶の嫁ぎ先の主。お蝶の事をぞんざいに扱っており、妻というよりも飯炊きのようにあしらっている。前の嫁は首を吊った。
佐々木家の人々(姑・義弟夫婦)
お蝶の亭主の家族。亭主同様お蝶に対し良い感情は抱いておらず、馬鹿にしている。

→登場人物の少なさ…お蝶の世界の狭さ

三、「のっぺらぼう」話の構造
 ループ(お蝶の妄想)…惨殺→投獄→逃亡→婚家→惨殺
モノノケが造り出したもの(閉塞世界)→薬売りの介入で破綻していく

モノノケの消滅(退魔の剣)→ラストシーン(台所ラスト)のみ現実=お蝶の婚家からの逃亡

四、モチーフ分析

部屋
屋敷や牢屋のシーンだけでなく野原(森)をわざわざ区切り一部屋ずつ見せる。
芝居仕立て
母が稽古をつけて花嫁修業「琴に茶に花」→幼少期より母との時間が多い
箱入り娘で育てられたお蝶はそこしか知らない
お蝶は自ら隔離された空間=母親が作った世界の中に留まる事を望み、他の選択肢が見えなかった。

 梅
いつも降りしきり、どの場所にも生えている
降りしきる花びら→お蝶の涙(心=感情をなくしたお蝶は感情をあらわにできない)
真っ白な空間で「ありがとう もう大丈夫」=もう自分で泣けるからもののけは必要ない
降りしきる梅=涙=お蝶自身
梅からでてきた面の男=お蝶から出てきた
何処にでもある梅=お蝶が「でたくない」城(自縛)
「梅」であることで「梅沢家(=母)」無意識下で自分を納得させようとする
家と母に縛られている(でられない)と思い込むが、実際は家と母で自分を縛っている(でたくない)
故に薬売りは「自らを縛ろうとするお蝶(梅)」=主観からお蝶をきりはなし客観視させるため、札で結界を貼った

梅…お蝶の自縄自縛の象徴

 面
子供のお蝶「わたし、がんばる」(いい嫁になれると母に言われて)
この台詞の前まではつけていなかった面がつく

佐々木家の面々…布(面ではない)
 この人たちは自分の欲望に素直…心を殺していない

面…心を殺していることの象徴

 煙
「煙」ということばのもつイメージ
 煙に巻く・煙になる…ごまかす、視界をさえぎる、曖昧さ
→お蝶の思考・視界を曇らせる
『明確な正体のない』モノ=顔のないのっぺらぼう

 空・窓
晴れている空は自由・希望の象徴。
牢に居るときも、佐々木家の台所に居るときも、窓の向こうは晴天 → お蝶の心の希望・自由の現れ
しかし、空はあくまで窓越しであり、お蝶にとっては限られた範囲で見る(感じる)ことの出来るもの。更に窓は格子であり、空は見えるものの遮られている(希望の限定)。格子窓の特徴は、牢に使われていることからも中のものを外に逃がさない、外からのものを中に入れないという外界との遮断の役割も持つ。窓から外に出る事は格子によって遮られ、よしんば出れて腕や手が関の山。
お蝶は空を見るものの窓には触れようとしない → 希望や憧れはあるものの格子によって遮られ、限定されてしまい、お蝶を閉じ込め、何らか行動を起させない。

・狐面が、台所にいるお蝶の前に現れる(窓の前に立っている) → 憧れとお蝶の間に立ちふさがり、自由を見つめるお蝶に別の道がある事を暗に示唆する。(この後、狐面が包丁をお蝶に差し出す)


五、お蝶の心理
母親に好かれたい・期待に応えようとするあまり、自分の感情を押し殺して過ごしているお蝶
 自分の「生きる証」=母親に認めてもらうこと、としている(無自覚)

お蝶の「生きる証」を求める心は、自分に想いを寄せていたアヤカシ・狐面の男をあやつり、佐々木家惨殺の幻を見せたり、狐面の男との恋を演出することにより、自らの本心を自覚しないように自分自身をだましていた
⇒自縄自縛の無限ループ


冒頭牢獄シーン、薬売りの介入
薬売り「違いますか じゃあ どんなものでしたっけ」
お蝶「…あれ?」
一家惨殺は実際に自分がやっていたと思い込んでいたお蝶は、薬売りとの問答で疑問を持ち始める


狐面の男が現れ、一旦は薬売りを追い出し、お蝶を牢獄から連れ出して佐々木家に戻そうとする
しかし、お蝶は佐々木家に戻ることを拒否する
狐面「戻らねばなりません さあ」
お蝶「いやです あの場所に戻りたくないのです」…本心の浮上


狐面「俺と一緒になってくれないか」…お蝶に想いを寄せるアヤカシ狐面の言葉
・武家には嫁げないが、「よい嫁になる」は守れる(母親に好かれたい)
・自由な恋愛(自由に生きたいという本心)
・「生きる証」を狐面に求める(「生きる証」を求める心)
⇒お蝶の妥協、結婚を承諾


薬売りの介入
薬売り「モノノケに貴方の情念を見せてやるんですよ」=自覚させる

薬売り「お蝶の一生」
客観視させるため、梅から遮断するように札で結界を張り、芝居仕立てにし、お蝶をとりまく環境や、お蝶の本心はどうであったかを見せつける
 狐面が邪魔しようとするのは、感情をなくして佐々木家の台所で窓を見上げるお蝶に惚れた狐面が、お蝶が本心を自覚してしまうと逃げていってしまうと思ったから
また、モノノケからしても本心が浮き上がってきてしまう=自覚への足がかりになってしまうので阻止したかった


お蝶の独白、心情吐露
「私 頑張ったの 頑張ったけど」
「いやだ いやだ」
「かかさま 聞いて 聞いてよ どうして話を 聞いてくれないの」

母親に好かれること=「生きる証」とし、本心を殺し続けてきた自分を自覚…線引き
「ばっかみたい」
「(本当に殺したのは)ぜんぶ、私」
「モノノケは、私」


モノノケを斬る薬売り
⇒自縄自縛のループからの脱出


現実世界、佐々木家の台所
「生きる証」を自身に求めるという選択肢に気付いたお蝶は、逃げ出す

六、まとめ
母親に好かれる・母親からの期待に応えることでしか自己を確立できなかった(他の選択肢を知らなかった)お蝶は、自由に生きたい・恋をしたいという本心を殺し続けていた。
しかし、薬売りの介入により、自らの本心に気付いたお蝶は、「生きる証」を母親に求めるのではなく、自らの内に求めるという選択肢に気付き、婚家から逃げ出した。

「のっぺらぼう」とは、感情や主体性を殺し続けた結果、自分の芯を見失い面だけになってしまったお蝶のこと

七、参考文献
オトナアニメVol.6 (洋泉社MOOK) 洋泉社 (2007/10/6)
季刊S (エス) 2008年 01月号 飛鳥新社; 季刊版 (2007/12/15)
Charaberrys Vol.3 (エンターブレインムック) エンターブレイン (2007/12/26)
アニメーションノート no.8 (2008) (8) (SEIBUNDO Mook)  誠文堂新光社 (2007/12)

東映アニメーション「モノノ怪」公式ページ
http://www.toei-anim.co.jp/tv/mononoke/

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