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目指せアート鑑賞の達人コミュの取材してきました(加山又造展)

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 「日本画というジャンルが1世紀か2世紀くらい途切れてもどうということはないと思う。そのうちまた、日本人の中に
厳然と存在する美意識にぶちあたるだろう」。
 戦後の日本画壇を代表する存在であった加山又造は、こんなことを述べている。それだけ長く途切れたら、直接的な
継承はまずおぼつかない。それにも関わらず、どうということはない、というのである。すごい自信だ。これは表面的には
日本画のパワー自体に対する自信である。しかし同時に、その日本画の遺伝子を間違いなく自分も持っているという自信
でもあると思う。

 一方で作家は、こんなことも言っている。「私は古画その他工芸品から平気で写しをする。自分がそれらの伝承者ではなく
断絶しているという確信があるからだ」。
 伝承者とはこの場合、単純に写すことしかできないというネガティブな意味で使っている。ここには二重の逆説があって
面白い。日本画が持つ潜在力や自分が持つ実力を信じているがゆえに、日本古来の絵や工芸品からいくらでも離れる
ことができる。いつでも自然に戻れるからだ。そしていくらでも離れる自信があるからこそ、平気で写しができる。
写しだけで終わってしまうことはないと自分でわかるからだ。だから実際加山は、特に琳派のアイデアや手法を、
時にベタなまでにはっきりと取り入れた。琳派の継承者といわれるゆえんである。どれだけ露骨に取り入れてもそこに
新しさを与える自信があり、また新しさを与えて一見別のものになってしまっても、日本画が究極的に持っている力は
必ず残るというわけだ。

 だからこそ加山の絵は、ある意味で安心して、ある意味でスリリングに楽しめる。安心できるのは、スタートが日本画らしい
素材や手法であると同時に、日本美術の良さに最終的に回帰できるからだ。日本美術の良さとは、絵のフレームを超えて
広がる空間の自在さであり、スッキリとした意匠感覚であり、日常品の中にも平気で持ち込まれる身近さである。そして
スリリングなのは、日本画で始まり日本画で終わるというそんな流れの過程で、実に大きな円が描かれ、そこに伝統的な
琳派にとどまらないさまざまな要素を見つけ出すことができるからだ。

 そのさまざまな要素だが、初期の頃は比較的西洋絵画からのものが多かった。何といっても太平洋戦争に敗れて間もない
時代である。実際、マティスの作品から受けたショックも大きかったというし、作品によりピーテル・ブリューゲルやアンリ・
ルソーやジョアン・ミロなどの影響も指摘される。筆者は個人的には、エルンストの哀愁やクレーの図像性やビュッフェの
筆致に近いものも感じた。そんな影響を鑑賞者がそれぞれ発見するのも楽しいだろう。一方年が経つにつれ、東洋的ないし
日本的なものの比重が高まっていく。それは水墨画であり、浮世絵であり、横山大観や速水御舟にも通じる感覚である。

 展覧会は全6部構成だが、その最後の部分では、食器や箱や着物に描いた意匠、月刊誌の表紙絵、それに故郷・京都の
祇園祭の山車を彩る絵柄なども展示される。このあたりは琳派の伝統にもマッチしており、まさに日本画ならではの
楽しさだ。そんな伝統とは逆に、作家は晩年にCG(コンピュータ・グラフィクス)にも挑戦していたという。休憩コーナー
ではそれもディスプレイに展示される。猫が大好きで作品にもよく残した加山だが、CGの題材はなぜか犬である。

開催中 - 03月02日(月) / 火曜日は休館
10:00 - 18:00 / 金曜日は20:00まで、入館は閉館の30分前まで
国立新美術館/東京都港区六本木7-22-2/ハローダイヤル03-5777-8600
一般1300円、大学生900円、高校生700円
http://www.nact.jp/
http://www.kayamaten.jp/

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