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師匠 シリーズ コミュの四つの顔2

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もう一度呼びかけながら2人でドアの隙間から中を覗き込む。
暗くてよく見えない。

「いるような感じがしませんね」

俺は声を潜めて玄関にソロソロと足を踏み入れる。
そして壁際に手を這わせ、電気のスイッチを探り当てた。
眩しさに一瞬顔をしかめながら靴を脱ぐ。

「鍵の掛け忘れですかね」

山下さんの部屋は一人暮らしにしては割と広い。
そしてとても綺麗に整理整頓されている。
余計な物が全く無く、有る物はすべてきっちりと相応しい向きに並べられている。
台所も料理道具が揃っているのに、まるでほとんど使われていないかのようにピカピカだった。
神経質な彼の性格そのままの部屋だ。
テレビの前にあるベッドを見ると掛け布団がほとんど起伏もなく伸ばされている。
生活臭がない。
一体いつ頃まで彼がこの部屋にいたのかも分からなかった。

「でも2時間半くらい前まではいたはずなんですよね」

机の上のパソコンに目を遣った。
近付いて本体のパワーボタンに手を伸ばしかけると

「ちょっと、悪いよ」

とたしなめられる。
それもそうだ。
様子が変だからと訪ねてきたものの、勝手に留守中の部屋の中をいじくって良いはずはない。
失踪したわけでもないのに。
そう思った時、ふと頭にその単語が引っ掛かった。
失踪?どうしてそんなことを思ったのだろう。
パソコンの前に立ったまま床に目を落として考える。
その思考が、一筋の悲鳴にかき消された。
ハッとして振り向くと、洗面所があるらしきドアの向こうから続けざまに短い声が上がる。

「どうしたんです沢田さん」

そちらに足を踏み出しかけると、いつかの山下さんの話が脳裏を過ぎった。

『まだお湯張ってない湯船に、立ってるんだ』

Dが・・・
ぞわぞわと背筋が冷たくなる。
誰だか分からない人物が無表情でドアの向こうに立っているのを勝手に脳がイメージしてしまう。
躊躇しかけて、なんとかそれを振り払うと半分閉まったドアを開け放つ。
沢田さんが小刻みに身体を震わせながら立っている背中が目に入る。
その肩越しに、洗面所の鏡があった。
その真ん中が割られていて、放射状に亀裂が伸びている。
怯える沢田さんの顔がまるで切り裂かれたように不鮮明に映っていた。
俺も固まりかけたが、嫌な予感がしてすぐさま風呂場の戸に手を掛ける。
思い切って開け放つと、ひんやりした空気が顔に当たった。
中には誰もいなかった。
湯船の蓋は取られ、お湯も張られていない。
はあ、という声がしてそれが自分の出した安堵のため息だと気付くまで少し時間が掛かった。

「どうして、これ、こんな」

割れた鏡の前で棒立ちになっている沢田さんに

「大丈夫です」

と無責任な声を掛ける。
他に異常はないかと部屋のすべての場所を確認して回ったが結局なにも見つけられなかった。
他人の部屋で勝手に家捜しをすることに対する引け目をあまり感じなかったのは、あまりに生活感のない空間だったからだろうか。
しばらくして落ち着いた沢田さんに

「もう帰りましょう」

と言うと、軽く笑って頷いた。
山下さんの携帯は相変わらず通じないし、部屋に帰ってくる様子もなかったが、なにかの事件に巻き込まれたと判断するには材料が乏しすぎる。
割れた鏡は気になったけれど、物取りや暴漢に襲われたにしては部屋の中に全く荒らされた形跡がない。
この程度で警察に連絡しては山下さんにとっても迷惑だろうという判断をせざるを得なかった。
ただあれだけ神経質に部屋を整理整頓している人が、どうして割れた鏡をそのままにしているのか、それだけはよく分からない。
『Dが増えている』という書き込みをしてから、山下さんは鍵も掛けずに出て行った。
まるで何かから逃げるように。
鏡はその時割れたのか。
割ったのは誰?
あれこれ考えているとまた薄気味悪くなってくる。
沢田さんにつつかれて我に返ると玄関に向かった。
部屋を出るとき、上がり口に見覚えのある靴が置いてあるのに気が付いた。
山下さんがいつも履いている靴だった。
裸足で外へ?まさかな。
他の靴くらい持っているだろう。
変な考えを振り払い外へ出ると、すぐにドアの鍵を掛けられないことに思い至る。
開いていたからといってそのままにして行くのはまずい気がして、どうしようか悩んでいると沢田さんがドアの側に置かれていた小さな鉢植えの下に手を入れる。
引っ張り出したのは鍵だった。

「内緒」

人差し指を唇に当てながら彼女はドアに鍵を掛け、また元の場所に戻した。
そう言えば、2人は付き合っているという噂があったことを思い出す。
今さらだが、沢田さんがやけに山下さんを心配している理由が分かった。
途中まで沢田さんを送ってから自分の家に帰る間、自転車をこぎながらふと思ったことがある。
山下さんの体験の中で、帰宅直後に鍵をしたはずのドアが開いていて誰かの顔が覗いていたという部分。
その後近付くとドアが閉まって、ノブを見ると鍵が掛かったままだったという怪談じみた話だったが、実際ああしてドアの側に鍵を隠してあったのなら、それを知る人間には不可能なことではない。
一体山下さんの言うDとは、彼の脳が生み出す幻なのか。
それとも彼の脳が被せる匿名の仮面を着けた生身の誰かなのか・・・
そんなことを考えながら家に帰り着き、軽くかいた汗を流すためにシャワーを浴びた。
シャンプーをしている時、いつも以上に背中の方が気になった。
目を閉じている間、後ろに誰かがいたら嫌だというあの感じ。
シャンプーが沁みるのを我慢してチラチラと薄目を開けながら早めに洗髪を切り上げる。
風呂場から出てしばらく布団の上でまったりしていたが、思いついてパソコンの電源を入れる。
ブラウザを立ち上げ、いつもの掲示板に入り込んだ途端、最新の書き込みに目を奪われた。

【またDがきた。出て行ったあとに取っ手を見たらまた鍵が掛かっていた】

山下さんだ。
なんなんだこれは。
一瞬ゾクッとしたが、すぐにその書き込みの意味を理解する。
書き込まれたのは『Dが増えている』という山下さんの書き込みを見てから沢田さんと2人で彼の部屋へ行った後だ。
鍵を掛けて出ていったDとは俺達のことに違いない。
なんの悪ふざけなんだこれは。
留守に見せかけてどこかに隠れていたのか。
あれほど探し回ったのに。
気分が悪い。
山下さんが何故そんなことをするのか、理由が思い浮かばなかった。
怪談話を真に受けて乗ってきた俺達にイタズラを仕掛けたということなのか。

【ワサダさんが連絡取りたがってましたよ】

ワサダとは沢田さんのハンドルネームだ。
そう書き込んでしばらく待ってみたが反応はなかった。
もう落ちていたのだろう。
バカらしくなってパソコンを切り布団に寝転がった。
まったく、心配して損した。
けれど眠りにつく少し前、さっきの書き込みのタイムスタンプがふと頭に浮かんだ。
あれ?
その時間って、俺達がまだ部屋にいた時間じゃないか?
まさか。
そんなはずはない。
たぶん俺達が部屋を出てすぐに書き込んだんだろう。
隠れ場所から這い出てきて。
ほくそ笑みながら。
そんなことを思いながら瞼を閉じた。


翌日、バイトが終わってこれから家に帰り夕飯を食べようという時に沢田さんから電話があった。
昨日の山下さんの書き込みを見て、フォーラムの管理人をしているメンバーに連絡をとったのだそうだ。
やはり沢田さんも書き込み時間がおかしいことに気が付いたらしい。
山下さんが『またDがきた』と書き込んだのは自分達がまだ部屋にいた時間だった、と沢田さんは断言する。

「部屋にいたとき時計見たから間違いない」

だからあの書き込みは別の誰かがしたものか、あるいは本人が別の場所にいて書き込んだか、そのどちらかだと。
そう思って管理人に問い合わせると

「ほぼ間違いなく山下さんがいつものパソコンで接続したもの」

との回答があったのだとか。
アクセス解析で分かるのだそうだ。
「これってどう思う?」
「どうって。さあ。確かに不思議ですけど」

そう答えたものの、頭の中にはいくつかの可能性が浮かんでいた。
ひとつめ。
山下さんはいつも自分の家ではなく、別の場所からネットに接続していた。
ふたつめ。
俺達がオフで出会い、山下さんだと認識している人物は、ハンドルネーム『山下』を名乗る人物とは別人だった。
みっつめ。
沢田さんが案内してくれたあの部屋は、山下さんの部屋ではなかった・・・
現実的なのは、ひとつめか。
どうしてネット環境があるのにわざわざ自分の部屋以外で?という疑問は残るが、あり得なくはない。
ふたつめは気持ちの悪い回答だが、これまでの掲示板やオフでのやりとりなどで同一人物であることを疑う理由はないように思われた。
みっつめは単なる沢田さんの勘違いという線。
部屋を間違えて、そこの住民がたまたま留守だったという締まらない話だが、沢田さんは一度ならずあの部屋に来たことがある様子だったから、それもなさそうだ。
玄関のドアの横に表札があり、それが『山下』だったことを俺自身覚えていることからしても。
もし仮に山下さんと沢田さんがグルで、2人して俺をからかおうという腹ならまた話が違ってくるけれど。
そんなことを考えていると、重要な部分を聞き逃しそうになった。

「ちょっと待ってください。鍵が消えてたって、今日も行ってたんですか」

「そう。書き込み時間はなにかの間違いだとしても、あの部屋、絶対どっか隠れる場所があったはずだと思ったから」

なのに昨日帰るとき元の場所に戻したはずの鉢植えの下の鍵がなくなっていたのだという。
ドアは施錠されていて入れなかった。
ノックしても応答はなし。

「もうなにがなんだか分かんない」

疲れたような声でそうこぼす沢田さんに

「まあ、なにかあったわけでもないし、しばらくほっときましょうよ」

と言ってみたが、オカルト仲間とはいえ赤の他人の俺と違ってそこそこ親密なお付き合いのあるらしい彼女にとってはそう割り切れるものではないようだ。

「まあいいや、色々ごめんね」

と電話が切られた。
静かになってこれまでの経緯を一人で思い返していると、どうも沢田さんが一方的に山下さんから避けられているだけのような気がしてきた。
確かに掲示板への書き込みが減り、その内容もおかしなものになってはいたが、おかしいと言えばもともとオカルトフリークの集う奇妙な場所なのだし、中には前世がどうとかもっと無茶苦茶なことを言い出す人もいるのだから取り立てて騒ぐほどのものでもない。
ただ沢田さんが個人的に連絡を取ろうとしてそれが上手くいってないだけなのではないだろうか。
痴話げんかの類ならもう関わらないでおこう。
その時は無責任にそう思ったものだった。

「4パターンの顔ねえ。それ面白いな。要は世の中の人みんなが4種類のお面のどれかを被ってるようなものか」

「しかも疲労のピークに入ったら体格とか服装まで区別がつかなくなるらしいです」

「てことは国民総着ぐるみ状態か」

大学の先輩でもあるオカルト道の師匠に会ったとき、たまたまその話をしてみるとやけに嬉しそうに食いついてきた。

「病んでるね、その人」

まあ普通ではない人だけれど、あなたに言われたくはないだろうと思う。
ニヤニヤしながらひとしきり頷いた後で、師匠はぼそりと言った。

「Dは明らかにこの世のものじゃないね」

それは自分も思った。
現れ方もそうだが、元々霊感の強い人なのだし。

「実際は3パターンと考えた方がいいかも知れない。大多数のA、次点のB、少数派のC。すべての人間がそのどれかに見えてしまう心の病気。それに加えて、霊感で察知したこの世のものではない存在を、そのどれにも当てはまらない第4の姿で認識してしまうんだ。だとするならば、その山下さんの霊感はかなり強いね」

「どうしてです?」

「他の3パターンと質的に同じレベルで見えてしまってるからだ。多少見えてしまう人でも、たいていはそれはそれと分かる」

確かに俺も経験上、人間なのか霊なのか分からないものを見てしまうことはあったが、それでもほとんどのケースでは普通の人間と同じようには知覚していない。
霊は霊だ。

「そういう、常に霊を視覚的に人間と同レベルに認識してしまう人はごく稀にいるみたい。それの極まったような物凄い例を知ってるけど、そんな人はまずまともに世間では暮らせないね」

「誰です。その人」

「アキちゃん」

知らない名前だった。
まだその時は。

「まあともかく、その山下さんに見えているDが霊的なものだとしたら、それが増えているってのが気になるな」

そうだ。
最初にその書き込みがあってから彼と誰もコミュニケーションをとれていない。
少なくともフォーラムの仲間内では。

「単純にDを霊と置き換えると、目に見える霊が増えているってことか」

「霊感が上がってきてるってことですか」

「いや、とは限らないよ。そのまんま、実際に霊が増えているのかも」

あっさりと師匠は言う。

「彼の周囲で。それとも雑踏の見ず知らずの人々の群れの中で。あるいはテレビに映る無数の人間達の中で・・・」

この人はまた嫌なことを言って俺を怖がらせようとしている。
咄嗟に心の中の眉毛に唾をつける。

「そもそもこの街に何人の人間がいるかなんて、誰も正確な数を把握していない。役所?役所が把握しているのは形式上住所を置いている人の数だけだろう。特に大学生なんて住民票を移さずにこの街に住んでる代表格だ。その住民票がない人間だっている。本当にこの街にいる人間の数を知りたかったら、時間を止めてひとりふたりと数えていくしかない」

その結果、少々人間の数が多すぎたところで。
と師匠は続けた。

「本来誰も気付きはしない」

なにを言っているんだこの人は。

「まあ、それはさて置いて、その山下さんの見ているDが増えてきたってのは、どかかから湧いてきたというわけじゃなさそうだ」

「なぜです」

「またDがきた、っていう書き込みは部屋を訪ねた君らのことを言ってるように受け取れるけど、2人とも前のオフ会の時点ではAだったはず」

そうだ。本人がそう言っていた。

「ということはAに見えていたものがDに見えるようになったってことだよ」

「ちょっと待ってください。Dは霊的な存在じゃないんですか」

「自分でも知らないうちに、そうなってるんじゃない?」

指を向けられ、思わず目を反らす。
でもそんなわけはない。

「おっ。否定するね。自分が死んでることを認めたがらない。典型的な霊体の症状です」

からかわれている。
さすがにむかついてきた。

「まあそう怒るな。Dになった君が依然として霊的存在ではないとすると、初めからDは人間だったってことになるんじゃないか」

Dは人間。
それは俺も考えた。
玄関のドアから覗く顔は植木鉢の下の鍵を使えば人間にも可能だ。
帰宅した山下さんが中から鍵を掛けたのを見計らって植木鉢の下から鍵を出し、ドアを開ける。
気付いた山下さんが近付いてくる前にドアを閉じて、外から差したままの鍵を捻って施錠し、逃げる。
1階の端部屋だったから、角を曲がれば上手く逃げ隠れできるだろう。
誰がなぜそんなことを、という疑問は残るが。
ただ風呂場に立つDは分からない。
その風呂場はこの目で見たが、小さな窓はあったものの人間が出入りできるようなものではなかった。
気付かれないように家宅侵入して、同じく気付かれないように出て行くなんてことができるだろうか。

「難しく考える必要はないよ。ヒトは生身の人間ではなく、まして霊でもない人間を見ることがあるじゃないか」

「幻覚だと」

でも、師匠も山下さんの霊感が強いのを認めていたじゃないか。

「だとするならば、ってつけてたよ。Dを霊と仮定した場合の話だ。僕の結論は最初に言ってる」

師匠はまたニヤニヤ笑いながら言った。

「病んでるね、その人」

だったらさっきまでの話はなんなんだ。
本当に回りくどいなこいつは。

「最初は幻覚が見えたんだよ。それでも生身の人間と幻覚の区別がついてたんだ。それがだんだん本物の人間まで幻覚のように思えてきたって話。末期的だね」

あからさまに他人事だと言わんばかりの口調で、幻聴の場合だとどうだとかいう話をつらつらと続けた。

「あんまり関わらない方がいいと思うよ」

最後にそう忠告してくれたが、それは結局俺の結論と同じだった。


それからしばらくは山下さんのこともDのことも、あまり考えることなく過ごした。
新しく始めたバイトやサークル活動で忙しく、オカルトフォーラム自体にもほとんど顔を出さなかった。
沢田さんからの電話もなく、俺の中で終わったことになりかけていた。
ところがある夜、寝る前に何気なくフォーラムの掲示板を覗いてみると、一番下に

【殺し方ってなに?】

という書き込みがあって、思わずドキリとする。
嫌な予感がした。
その少し前の書き込みに対するレスのようだった。
投稿者は俺の知らないハンドルネーム。
新顔だろうか。
緊張しながら上にスクロールしてみる。
すると今から1時間ほど前に、山下さんの名前で書き込みがあった。

【あいつらの殺し方がわかった】

その文字を見た瞬間、心臓の鼓動が早くなった。
あいつらってなんだ?殺し方って?
さらに遡る。

【いや、フリじゃない。ツモリなんだ】

間に、業者の宣伝がいくつか入り込んでいる。
俺は画面から目を離せずにゆっくりとマウスを動かしていく。

【あいつらは人のフリをしている。ぼくだけがそれを見抜くことができる】

危険だ。
俺は立ち上がった。
なにをしようと思ったわけでもない。
ただ無意識に身体が動いたのだ。
山下さんの書き込みはその3つだけ。
5分ほどの間に書き込まれ、そしてそれから現れていない。
何人かが冗談めかしてレスをしているが、常連の名前はなかった。
みんなこの書き込みの意味を理解していない。
情緒不安定なんてものじゃない、山下さんは本当に危険な精神状態にある可能性があるのだ。
Dが増えている。
彼の平穏な生活を脅かすDが。
疲れた時、人の顔が4パターンに見えたように、少しずつ狂っていった彼の精神が、増えていくDに追い詰められていく。
そして彼の中でついに暗く恐ろしい決断が下された。
その増えたDとは。
あいつらとは。
俺であり沢田さんであり、大多数のただの人間のはずなのに。
俺は家を出ると自転車に飛び乗り山下さんの部屋に向かった。
ドロドロと纏わりつくような嫌な予感がして仕方なかった。
まずコンビニに到着し、前回のコースをそのまま辿る。
やがて見覚えのあるアパートが見えてきた。
ドアに掻きつくように駆け寄ると激しくノックする。
名前を呼ぶ。
深夜だが周囲の迷惑など気にしていられない。

「山下さん」

動きを止めて静かにしてみたが、中からはなにも聞こえない。
裏に回ってベランダ側から覗き込もうとしてもカーテンに覆われていて中は伺えない。
しかし明かりは一切漏れておらず、相変わらず人の気配はなかった。
次に俺は周辺道路を歩き回った。
山下さんらしき人影がないか目を凝らしたが、見つからない。
疲れ果てて、なんの収穫もないまま帰らざるを得なかった。

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