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師匠 シリーズ コミュの名無し

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237 :本当にあった怖い名無し:2007/10/15(月) 22:20:19 ID:64Wis/r30
これはオカルトとは直接関係ないが、思い出したので書いてみようと思う。

大学一年の11月。
秋から冬にかけての、季節の変わり目だった。
俺はその頃、オカルトという底なし沼に片足どころか全身どっぷり侵されていた。
大学の先輩のせいだろう。
俺はその人のことを、師匠と呼んでいた。
オカルトの知識が半端無い人だった。

そのせいか俺は春頃からネットのオカルトサイトによく通うようになった。
もうすっかり顔馴染みとなり、常連客と化していた頃のこと。
次の三連休でオフ会をしようという提案があった。
そいつのハンドルネームは、「名無し」。
ただの悪戯だろうか。
そうは思ったが、違うらしい。
ここの掲示板は名前欄を未記入にすると送信できない仕組みだ。
自ら名無しを名乗るなんて変なやつ。


238 :本当にあった怖い名無し 2:2007/10/15(月) 22:21:01 ID:64Wis/r30
件名:無題 投稿者:名無し
本文 こんにちは、ここに
書くのははじめてです。オカルトは
きらいだったんですが、ある人のお陰で興味を持ちました
なので、次の三連休にオフしたいのですがどうでしょう
書き込みをした者ですが、を合い言葉にしたいと思います
気に入らなくてもなるべく来てください
いきなりですみません
痛いDQNではありません
来たらメールで連絡します

オフで何をするかというと、死体洗いのアルバイトを募集しているんです
自分一人で行くのには心細いので(笑)誰か一緒に行きませんか?
怪しい者ではないです。日給一万五千円とかなりの高額です
待ち合わせ場所は大学病院の前でお願いします


その書き込みを見た途端、背筋を冷たいものが駆け上った。
『死体洗いのアルバイトを募集する』
――何気なく書かれたその一文が、変に不気味だった。


239 :本当にあった怖い名無し 3:2007/10/15(月) 22:22:38 ID:64Wis/r30
困った時は師匠に相談。
これがお決まりのパターンになりつつあった。
膨大な量のオカルト知識に埋もれている師匠に聞けば、正解に近い答えを導き出してくれる。
俺はあの変な「名無し」の書き込みをそのまま印刷して、師匠の家に行った。
どうせ鍵なんてかかってないだろーなーと思いながらノブを回す。
予想通りスッと軽い感触がして、ドアが開いた。

「師匠、入りますよー」

玄関先で靴を脱ぐ。
と、俺の視界にあるものが目に入った。

「……」

四隅に塩が持ってあった。
一体あの人は何がしたいんだ。
いや霊避けなんだろうけど。
すると、奥から師匠がひゅっと顔を出して、

「あァ、その塩は気にしなくていいから」
「歓迎されてないような気がしますよ」
「大丈夫だよ、君は霊じゃないし」

あんたの方が幽霊みたいだよ、という言葉は言わなかった。
俺は師匠に、あの「名無し」の書き込みを見せた。
ふっ、と一瞬だけ眉が潜められる。

「……君はこれに行こうとしてるわけか?」
「まあそうです」

顔の下半分は紙に隠れていて見えない。
ただ、両目はいつにもましてニヤニヤしていた。

240 :本当にあった怖い名無し 4:2007/10/15(月) 22:24:06 ID:64Wis/r30
「死体洗いのアルバイトなんてただの都市伝説だよ。それもかなり使い古された」
「でも行ったら行ったで面白そうじゃないですか」

面白いもの見れるかもしれませんよ、と付け加える。

「あるわけないだろうそんなもの。どこかのチェーン書き込みじゃないのか?名前が名無しっていうのは怪しいし」
「いや、ここの掲示板は名前欄未入力じゃ送信できない仕組みです」

師匠が頭を抱える。
しかしその表情は嬉々としていて、まるで意地悪な手品師みたいだった。
タネを隠して、トリックを言いたげな表情するが絶対に口を割らない。
そんな悪質なマジシャンが目の前でコピー用紙とにらめっこしていた。

「生憎、僕は次の三連休予定が入ってるからな。一緒には行けない」

師匠曰く、友達と釣りに行くらしい。
冬の荒波で何が釣れるか試したいそうなのだ。
俺は師匠の珍しいアウトドアな行動に、変だなと思いつつも、「……じゃあいいです、一人で行きます」
俺は師匠の手から紙をひったくって、全然優しくない手品師の家を出た。
師匠は始終、ニヤニヤしっぱなしだった。


241 :本当にあった怖い名無し 5:2007/10/15(月) 22:24:58 ID:64Wis/r30
「やっぱり来たな」
「……どうして師匠が居るんです?」

待ち合わせの日、俺は大学病院前に居た(俺と師匠の通ってる大学ではなく、別の大学だ)。
ベンチに人が座っていたので、俺が「書き込みをした者ですが」と呼びかけると、見慣れた手品師の顔がこちらを向いた。
ニヤニヤ笑いがいつにも増して陰湿なものに変わっている。
師匠と目が合った途端、全身がゾクリと震え上がった。
神出鬼没、奇々怪々。
その二つの四字熟語が脳裏に浮かんだ。

「言ったろ、魚釣りに行くって」

釣り。
成る程、と即座に合点がいく。
要するに俺は釣られたのだ。

「名無しっていうのは師匠だったんですね?」
「その通り。おい、あの印刷したやつ見せてみろ。持ってるんだろ」

そう言うなり師匠は俺の鞄を奪い、返事もしてないのに勝手に中身を漁り始めた。
プライバシーの侵害、という言葉はこの人の辞書にはないのだろうか?

「これ、よく見ると縦読みになってるんだよね。二行目から九行目の二文字目がそう」

俺は師匠の言うとおり、二文字目を縦に読んでいく。

「く ら の き に き い た」


242 :本当にあった怖い名無し 6:2007/10/15(月) 22:25:39 ID:64Wis/r30
倉野木に聞いた。

「歩くに聞いたんだ」

倉野木、というのは師匠の彼女だ。
歩くというのは彼女のペンネーム。
歩くさんはColoさんというハンドルネームで、俺と同じ地元オカルトフォーラムに通っていた。
サイト全体のリーダーのような人だから、こんな書き込みが消されずにいたのだろうか。

「全部、師匠の自作自演、ですね」

そう言うこと、師匠はニヤニヤしながら続けた。

「君がここに通ってるのは明白だったし。過去のログを読む限り、君はどんな小さなネタにも食いついてるみたいだし」

だから、こんな期限切れ当然の餌でも釣れると思った。
師匠が笑うと、俺はすっかり疲れ果てた気分になった。
本当に怖いのは霊でも何でもなく、この人なのかもしれない。


243 :105:2007/10/15(月) 22:27:21 ID:64Wis/r30
自己満足に付き合ってくれてどうもでした
「本当にあった怖い名無し」というお題だけではどうしても書き切れそうになかったので都市伝説ぽさとネットを取り入れてみました

すまん、今恥ずかしさで死にそうだ
ちょっと回線切って首吊って逝ってくる

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