創作恐怖話～新感覚恐怖へ～コミュの桜の木の下で　①

ちょうど１０年前の今頃、桜が散り始めた時の出来事。

彼女が忽然と姿を消した。

後数日で結婚式という幸せの絶超の日々の中での突然の出来事。

婚約者は悲嘆にくれ、両親は必死に彼女を探す日々がしばらく続く。

しかし・・・・

やがて両親が相次いで病に倒れ、婚約者が悲しみから立ち上がり
新しい愛を見つけ育み、やがて新たな幸せを選ぶ中で、彼女のことは仲間内や世間から次第に忘れ去られて行った。

彼女とは父親同士が同じ会社の同僚で、同じ営業部門で私の父が上司、彼女の父親が部下の関係で仲のよい師弟関係といった間柄だった。

転勤の多い会社で私も父について各地を数年おきに引っこす幼少時代を送り、彼女もまたそうだった。

そんな中でお互いの父の任地が一緒になることが何度かあり、小学校高学年から中学１年までの時期もそんな中の一時期だった。

ただ、私自身は彼女と幼い頃から面識があり、知らない仲ではなかったが、なんとなく苦手な意識があった。

当時の彼女は影が薄く、幸薄い印象を受ける少女で、美麗な顔立ちな美少女だったが
その陰気な感じが私にはなんともいえない物を感じさせた。

今から思えば『同属嫌悪』と言えるかもしれない。

私も転校が多い子供で幼い頃、初めて彼女と任地が一緒の頃はよく遊んでいた記憶があるが、屋外で遊ぶことはほとんでせずお互いの家ですごすことが多く、そんな自分を私は変えようと、小学生から野球を始めた。

そこそこ才能があったのか同年代の中ではうまいグループに属し、転校したときのツールに野球を活用することを覚えた私は始めての東京への転校が決まった小学校５年生時代もなんなく乗り越える事ができた。

ただ意外だった事がある。

同じ社宅で１年前から一足先に転勤してきた彼女の雰囲気が少し変わっていた。

雰囲気がすこしばかりだが柔らかくなり、笑顔を見せる事が多くなっていた。
ただその笑顔を向ける対象はほぼ特定の男の子に限定されていた。

その男の子は彼女と同じクラスの同級生で美少年というカテゴリーに分けていい秀麗な顔立ちで同じクラス意外でも人気のある男子だった。

そんな美男美女のカップルは学校でもうわさの的でよくからかわれていたのを覚えている。

しかし２人はそれに対しても付き合いは止める事無く、ますます深まっていくように感じた。

『そんな風に見てたんだ～』

あの時の感想を聞いて笑顔で受け流す彼女

ちょうど行方不明になる年の正月、私の父が定年を迎え、久々に故郷に帰っての祝いの席にきてた彼女の両親とともに、帰省していた彼女もやってきていた。

彼女とは中学１年の時に私の転校で再び疎遠にな、再会したのは大学生になってから。

同じ大学のゼミ生としてだった。

彼女はびっくりするくらいに綺麗になっており、あの頃の面影はどこかに消え去っていた。

そんな彼女に一瞬心を奪われかけたが『あの出来事』が私の恋心に強烈なブレーキをかけた。

高校時代のあの出来事。

かつて彼女と一心同体のような小学生時代を送ったあの男の子とはからずも親友となり
そしてその男の子、彼がそこで生涯十字架を背負うような悲劇を受けた出来事を。

そして彼女には私と彼が高校時代に親友となった事は大学時代も含めて語っていない。

それは語ってしまう事が何か『よからぬ事』を起こしそうな予感があったからだと、今になれば思う。

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[1] mixiユーザー 04月08日 23:46

中学にあがる頃、父が勤める会社の本社があるとある地方都市に転勤となった。

無論彼女の父も部下として本社に晴れて栄転となる。

しかし彼女にとっては一身同体も同然の彼との別れを意味する。

地元の公立中学に入学した私たちはクラスは別れたが、時々帰り道に会うと立ち話をする間柄になっていた。

だが表情は昔の幼い頃の彼女に戻り、時々すがるような目でこちらを見つめる彼女を
やはり次第に避けるようになっていた。

そんな彼女が１年の３学期の終わりごろに事件を起こした。

深夜に鳴る電話にたたき起こされた私の母は用件を聞くと、父をたたき起こし
父は車に乗りあわただしく出て行った。

何かあったの？と尋ねた私に母は彼女がまだ家に帰らないと告げて、あわただしく近所の知り合いに電話をかける姿を覚えている。

そして翌日の早朝、部活で最寄の駅（田舎町なので２駅乗車しての通学だった）
で見たのは

行方不明のはずの彼女が無人駅のホームであの男の子　彼と別れを惜しむ姿だった・・

そんな彼との再会は以外にも早くやってきた。

数年前から話があった父の勤める会社が進めているとある地方の同業者との合併話が
トントン拍子に進み、予定より１年早く合併されることになり、今度は私の父、そして家族が南国の地に引っ越すことになった。

そこで偶然にも東京から引っ越してきた中学２年になる生徒がいた

あの駅のホームで彼女と別れを惜しんでいた『彼』だった。

小学校時代はそんなに意識していなかったが、同じクラスになってみて
の印象は最悪だった

八方美人でそのくせ立ち回りはうまく、本心は見せない。

そんなナルシストをクラスの女子人気は高く、私が好きだった『あの子』も
彼のファンの一人だった。

そんな彼の人気にあやかろうとしたのか廃部寸前の野球部の顧問が彼を半ば
強引に誘う形で野球部に入れたのが付き合いの始まりだった。

上背があり鍛えればさぞかし速い球が投げれるぞという顧問の言葉通り

彼は３年時にはエースとして弱小中野球部を県大会のベスト４までもっていったが
いかんせんバックを信頼しない性格で自滅する癖があった。

そんな彼とバッテリーを組んでいた私は何度喧嘩したかわからないぐらいだ。

何度も退部届けを出そうとする彼を野球部のマネージャーである『あの子』が引き止める、それを見た私がますます・・・・で喧嘩のループは卒業まで続いた。

彼は県下の私立からの誘いも受けていたがむかつく事に私と同じ高校に進学

そしてそこに『あの子』もいた

[2] mixiユーザー 04月08日 23:50

『彼』と『あの子』は付き合っているといううわさが中学時代からデフォだったが

ある日『あの子』に聞くとそうではないという

『彼の目は私なんか見てないから・・・・』笑いながらそう寂しくつぶやくあの子の姿を見て、私は『彼』への敵意をますます高めていったが

学年が２年になると彼はエースナンバー１を、私も正捕手の怪我で夏の甲子園
の県予選でバッテリーを組むことになった。

ただひとつ気がかりなのは県予選を前にマネージャーである『あの子』が入院したということ

予選は県大会準決勝あで進んだが、またも彼が一人相撲を見せて敗れる。

号泣する３年を前に表情ひとつ変えずにいる彼に私の怒りが爆発した

『ガキの頃に女に魂抜かれて悲劇のヒーロー気取るな』と

そこから殴り合いの大喧嘩が慰労会でスタート

しかしそこから彼は私と素のままの自分を見せ始めたと思う。

そして県予選から２ヵ月後、あの子の容態が深刻な状態になった時

見舞いに来た彼にあの子は言った

今の彼君は見ていても辛いほど生きる力を亡くしている

それはもしかして心を奪われた相手がいるから

だから私の気持ちにも応えてくれない、すきとも嫌いとも言ってくれない

最後に

もう私は駄目なんだろうと思う

『だから私の生きる力を君にあげる』

その翌日から容態が急変したあの子は目を覚ますことなくこの世を去った

葬儀会場で霊柩車を見送る際、クラクションが鳴り出発しようとする際に
号泣した彼は変わった

３年次にキャプテンとしてチームを纏め、並み居る強豪を押しのけて
県大会優勝、そして夏の甲子園ベスト４という結果を残した。

しかし連投のツケが肘にのしかかり、高校で野球を断念
プロのスカウトの誘いも振り切り現役で医大に進学

今は研修医として都内の総合病院小児科に勤務している。

『一人でも多くの子供を救いたい』そういう彼の診察態度は現場でも患者さんにも
好評らしいときいた。

うちの父の息子自慢の一つが甲子園出場で、しかし母がいつも
『あれはほとんど彼君のおかげ』とつっこむのがお約束

そして今回もそれが炸裂した後、

『彼君って確か高校２年まで○○っていう苗字やったけど』
『今は・・・・』

といい始めて私はあわてて『彼女』に聞こえぬように話題を変えようとした

その時だった

母が急に顔を青ざめさせて、もっていたグラスを落としそのまま机につっぷしたのだ
みんなは飲みすぎで気を失ったのかまたは急性アル中かと大騒ぎし、この日のお祝いはお開きに

しかし、その後に聞くと母はあのときの話もそして『彼』の名前も忘れていた
私と高校時代に仲のよかった存在としてはきちんと覚えている

しかし名前、特に彼が高校２年まで両親が離婚するまで名乗っていた名前は
彼女が行方不明になる直後までいえないままだった。

まるで誰かがその名前を『彼女』の耳に入るのを阻止しているように

そして彼女の結婚式の２日前だった

私は突然彼女に呼び出しを受けた

[3] mixiユーザー 05月03日 15:56

『あれからずっと夢を見るの』『しかも同じ夢を』

そう語る彼女の顔には結婚式前の慌しさからくる疲労感以外の何かが感じられた。

夢の内容は、あの中学1年の３学期に私が見たあの光景のあった日の前の日

雪の中を彼をひたすら待つ彼女に会いに来たのは彼ではなく

『女の子が来てね』

ボーイッシュな髪型で肌は小麦色に日焼けした女の子

季節は冬なのに夏服の制服でゆっくりと彼女に歩み寄る、彼女は体が固まって動けない

目の前に迫った女の子は彼女の目をじっと見据えてこう言った

『返して』と

そう言い終わるや否や、女の子はどんどんやせ細り、髪の毛が抜け、幽鬼のような状態になりながら、手を彼女のほうに伸ばして近づこうとする

やがて女の子の手が彼女に触れようとする瞬間

『返して！！』という女の子の叫び声を最後に目が覚める

そんな状態が年末からずっと続いているという

精神科のカウンセリングを勧めた私に、すでに受診していると告げる彼女

そこでは仕事や結婚のストレス（いわゆるマリッジブルー）ではないかと診断されて薬も処方されているらしく、リラックスできるような対策はおこなっているが効果はないらしい・・・・・

しかし・・・その彼女が語る女の子、ボーイッシュで小麦色の肌で健康的なというくだりは・・・・まさかとは思うが・・・・

『もしかしたら、これって罪悪感の表れじゃないかって指摘されたの』

精神科のカウンセリングの他に、いくつかの民間のカウンセリングも受けた彼女は
そこで年末に起きた出来事以降にこの夢を見ると話すと、そう指摘されたらしい

『私、あの○○君と最後に会って、生きる勇気が出た』
『おとなしい私がいまこうしてきちんと幸せになろうとしているのは○○君のおかげ』

でも・・・と前置きして
『もしかしたら、○○君の生きる力を奪ってしまったんじゃないかって』
『心の片隅で思ってもみたの』

『でもあの時の思いでは私にとって何者にも変え難い美しい思い出』

『それは○○君にとっても同じだと確信してたの』

だから、一度彼に○○君に会って、確かめたい。
もし彼が私のことを恨んでいるのなら、きちんと誤りたい

『実は○○君が高校時代に名前が変わった事を最近知ったの』

どうも１０年前の高校野球の試合をテレビで見ていて、苗字は違うが名前は同じ
そして雰囲気が何かしらにているという事は感じていたらしいが、当時はあまり
気にもとめなかったらしい。（イメージでは文学少年だった事があったらしい）

『なんで黙ってたの』

やや批判めいた口調の彼女に対して、聞かれていない以上はこちらから喋る事でもないと答える私

そう言いながらもあの時の事を思い出して、カチンときた私は

『なんであいつが君との文通で野球をやってる事を隠してたか知ってる？』
と切り返した

なんであなたがそれを知ってるの？と驚いた様子で尋ねる彼女に

私はこう答えた
『大学時代に君の話題を珍しく彼（○○君）が出してきた事があってね』

『心の奥底に、もしかしたら本当のことを書くと』
『また彼女、つまりあなたに魂を奪われるという恐怖が無意識に働いたかもしれないだと』
『文通にしても高校の途中で途切れているはずだろ』

『あれはもう嘘をつくのに疲れたからだと言ってたよ』

高校の名前も野球部に入っている事もフェイクの文通の事実を知って
少しショックを受けた様子の彼女だったが

そんな彼女の携帯に電話が入る、どうやら婚約者からのようで何かしら外に出て話した後、今から急用でいかないといけないからと席を立つと

こう最後に言葉を投げかけた
『私はそれでも○○君が私のことを憎んでいるとか信じられないし、信じたくない』
そして
あなた、私の事好きだったのを知ってるのよと前置きした上で

『あなたが○○君によからぬ事を吹き込んでるって事がよくわかった』

もう付き合いは金輪際しないと言い放ち外に出ようとする様は、他の人から見れば
別れ話をこじらせたカップルだったろう

しかし唖然とする結論に私は思わず後ろ姿にこう言い放った

『あいつは、ずっと生きることであんたに復讐しているんだ』

『泣くな、復讐をしろ、よりよい復讐はよりよく生きることだを座右の銘にしてな』

しかし、その言葉の途中で彼女は店を出てしまい、おそらく半分も届いていない
いやすべてが嘘と決め付けているだろう

私はその夜、親友である彼に連絡をとり今日の詳細を伝えた
もしかしたら明日お前のところに彼女が来るかもしれないと

それに対して彼の答えは意外なものだった

なんでも勤務している病院に直接彼女がやってきたそうで、勤務中で手が離せないという彼宛てに手紙を渡したらしい

[4] mixiユーザー 05月03日 16:44

翌日の昼過ぎ

土曜日に久々に休みが会った私と彼は昼食を共にしていた

例の渡された手紙は短い物だったが、この近くの公園のとある場所で待っているという物で時間は今から１時間後

本当に会うのか？という私の問いに

彼は小さくうなずくとこう付け加えた

『でも』
『もう会うことはないと思うよ』

私はそれを今回限りの再会だという風にそのときは理解したが・・・・

その１時間後

私たちは公園の出口近くにある桜並木の通りに来ていた

桜並木は公園を出て線路下の小さな暗いトンネルまで続いている

おそらく駅を出てこの公園の指定の場所に来るのにはこのトンネルを使うことになる

彼はトンネルを出ると桜並木が続く中で公園の出口が見える場所に立つ

私は何かあったら出てくるという形で出口脇の門から土塀が続く塀の小窓のように外が見える場所に陣取り、様子を伺う。

すると彼が何かトンネルに向かって丁寧にお辞儀をした

トンネルの途中からは見える場所に陣取っていた私がこっそりのぞくと

誰かがこちらに向かってくる様子が・・・・

そしてトンネルから出てこようとする瞬間

『○○君！！』という声が

間違いない、彼女だと思い、思わず身を隠そうとした瞬間だった

春一番とでもいうべき突風が吹き、砂埃に思わず目を閉ざす

次の瞬間、トンネルを見ると人の姿がない

公園の門付近を見ると、彼が先ほどと同じようにたたずんでいる

『さっき・・・』

と彼に声をかけると

『まだ来ないね』と笑顔で答える彼

声がしたし、人の気配がしたんだがと言うも

最近疲れてるんじゃないと軽くあしらわれてしまいそのまま２時間近く待ったが
彼女は結局こなかった

何度か私がしびれを切らして彼女の携帯に電話をかけたが出ないまま

日が暮れるころにようやくわれわれは先ほどのトンネルをくぐって駅に向かおうとした

するとトンネルの中ほどに差し掛かると、壁に止まっていた１匹のモンシロチョウが弱弱しく羽ばたき、彼の方向に飛んでいく

その瞬間
私の頭の中にこんな声が響いた

『○○君！！』『助けて』と

一瞬あのモンシロチョウに視線を向けると

彼は向かってくるモンシロチョウを手で包み込む形で捕らえ

ひとしきりやさしい目で見つめていた

モンシロチョウは逃げることもせずに、彼の手の平で体を休めている

だが次の瞬間、彼は包み込んでいたその手ごと、トンネルの壁の穴に巣を貼っていた
蜘蛛の巣に近づけ、驚いたモンシロチョウが飛び出したと同時に蜘蛛の巣にかかってしまう

羽をばたつかせているモンシロチョウを狙い蜘蛛が近づくが、その様子には興味がないのか彼はその場を後にする

私もあわてて追いかけようとした時、頭に響いた声

『助けて』『なんで！！』という声と

最後にトンネルを出る間際に聞いた断末魔の叫びは今でも彼にすら内緒だ

私は今日は疲れているからと彼と別れて早めに寝る事にした。
どうか考えても現実にありえない出来事だし、結局彼女は約束をすっぽかしたという結論いたったんだが

翌日、母からの電話で彼女が式にこなかった事実を知り、愕然となった。

[5] mixiユーザー 05月03日 17:44

それからの出来事は少しだけ語る。

彼女と最後に確認されたのは結婚式の前日の昼。

新居のマンションから昼前に出かけたのを婚約者が見送り、あの公園の最寄駅まで来たのは駅員が確認しているが、その時に不可思議な行動に出ている。

携帯や財布、そして婚約指輪をコインロッカーに預けていること。

そしてあのトンネルを通る道はあの時柵と鎖で閉鎖されており、手前に新しいトンネルができており、花見の季節での週末なのでそれなりの花見客がいたのに彼女の目撃情報がまったくないこと。

そしてあの時の事を思い出すと、不自然なことが多い。
花見客で多くの人が訪れるはずの、あの時あたりはほとんど人がいない
厳密に言えばまるで人が私たちのいる場所を避けるかのように近づかなかった

あのトンネルには駅の出口側に柵があり、後で確かめるとやはり公園側にも柵があり、それは解かれる事は最近もなかったらしい

だがあの時は確かに柵がなかった

あの後気がついたが、あの公園は昔、彼と彼女、そして私が小学校の高学年時代に通っていた時によく写生や課外授業で訪れていた公園

そして私も小学校時代に少年野球で公園内のグランドで練習した後、近道で通っていた

夕暮れ時にはうす暗くみんなは度胸試し、肝試し的な感覚で通っていた

小学生時代のたわいもない噂ではあのトンネルで何人かの人が行方不明になったらしい

だが私は知っている
彼と彼女はよくこの公園でデートしており、コースで人がいない所はありがたい（はやし立てるガキがいない分）場所だったかもしれない

だが今のなっては何を語ろうとすべては後の祭り

あの後、私や彼も警察から事情聴取を受けたが容疑者というよりもお話を聞かせていただきたいという程度のものだった

なんでも彼女の勤める会社の上司がその日の朝に自宅を出たまま行方不明で
最後に確認されたのが、あの公園の駅らしい

警察は会社の同僚からの話を元に２人が逃避行をしたのではと疑っていたようだった

それが証拠にどうも上司は自宅への置手紙で彼女と逃げることをほのめかしていたらしく、その後上司から彼女と一緒にいるという手紙が婚約者の元に届くと事件は刑事事件から民事事件に切り替わった

その後の彼女の音信はまったくない

彼はいまだに独身だが、私は数年後に結婚し、今は1児の父

一人娘は今５歳のかわいい盛り

先月格安で売りに出ていた中古のマンションを購入

ただ購入した物件の経緯から私の両親はいい顔をしなかったが

今日も娘を膝に抱きながら、ソファーでウトウトしていた

とそこにピンポーンとチャイムの鳴る音

おそらく今日こちらに訪ねて来る予定の私の両親と迎えに行った妻が帰ってきたんだろうと重い腰を上げる私よりも早く

娘が『ママー』と駆けていき　ドアの鍵を開けようとするのでそれを制して
こう娘に諭す

『いいかい、もしかしたら違う人かもしれないからちゃんと確認しようね』

そう言いながら玄関ののぞき窓から確認すると

（誰もいない？）

そのときだった

娘が突然後ろを振り返るとこういった

『お姉ちゃんだーれ？』

『よそのおうちにかってに入ったらメ！！だよ』

？？？？？？

私には誰もいないように見えるし、何も聞こえない

だが娘はこう私に告げた

『このおねえちゃん、ここが私のお家だって』

冷や汗がにじみ出る、ここがお家だったおねいちゃん

ここマンションの前の持ち主は・・・・・・・

『しかし・・・あのマンション買うだなんて』

そうぼやく老婦人をなだめる運転しているアラサーの主婦と老婦人の主人とおぼしき男性

『でも、あそこはあの子が暮らそうとしてた所だしね・・・』

『あの子って、あの10年前に行方不明になったっていう』

なにもそんな曰くつきの物件を安いからって買わなくてもとまだぼやいている老婦人

元婚約者が数年手放さずにいたのを結婚を契機に売却すると聞き、市価よりかなり安めに購入した事をぼやきながら老婦人、男の母はこう言った

『もし、あの子が帰ってきたらどうするの？』

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