カンポ広場の周辺 シエナの市庁舎(プブリコ宮殿)Palazzo Pubblicoは1297年から1342年にかけて建設されたトスカーナの市庁舎の中で最も優美な建築で、カンポ広場に面し、一階は現在も市庁舎として使用されている。建物の上に102メートルのマンジャの塔Torre del Mangia(1338〜1348)が聳えている。私は何度かこの塔に登ったことがある。階段は503段もあり、流石にカメラバッグを肩にかけて、階段を昇るのはつらかったが、上に出るとマンジャの塔が、カンポ広場にシルエットのように影になって写っていて、とても美しかった。旧市街の外は緑豊かな田園風景が開けて見えた。
2、3階は市立美術館Museo Civicoになっており、2階入り口右手は世界地図の間Sala del Mappamondoがあり、シモーネ・マルティーニの「マエスタ(荘厳の聖母)」、「モンテマッシの攻略に向かうグイドリッチョ・フォリアーノ」が描かれている。これに続く平和の間Sala della Paceにはアンブロジョ・ロレンゼェッティAmbrogio Lorenzettiの描いた名画「良き政府と良き政府の効果」、「悪しき政府と悪しき政府の効果」の2枚の絵画がある。これは私の好きな絵で、ワインのラベルなどにもなっていて親しみを感ずる絵でこの絵画では、当時シエナでは世俗音楽が盛んであった様子が描かれている。また当時の絵画に描かれた風景と現在のシエナの景色があまり変わってない事が見られ、面白かった。
カンポ広場 Piazza del Campoは、市庁舎を中心にして扇型に広がっているイタリア屈指の美しい広場で、中央にフォンテ・ガイアFonte Gaiaの噴水 がある。ガイアというのは「喜び」という意味で、丘上にあるシエナは水の供給に苦労していたが、街の中心に初めて水が引かれた事を記念して造られた。その際喜びのあまり大騒ぎした事に名前は由来するといわれている。夏に開催されるパリオが行われるのもこの場所である。1998年の夏パリオを2回見たが、この広場で色彩豊かな中世の衣装を着た人たちが繰り広げる行進、旗振り、パレードなどは美しく壮大な歴史絵巻だった。 サン・ドメ二コ教会 Basilica di S.Domenicoは13世紀から15世紀に建設されたゴシック様式の教会、ここの回心の礼拝堂Cappella delle Volteに、聖女カテリーナと同時代に活躍した画家A.ヴァンニの製作した本物の「聖女カテリーナ・ダ・シエナ」の本物のフレスコ画、またソドマの描いたフレスコ画もある。しかしステンドグラスはカラフルで美しいがモダンなデザインで余り好きではない。ジョヴァンニ・ダ・ステーファノが制作したルネッサンス様式の美しい大理石の聖櫃に中には聖カテリーナの頭部が安置されている。
国立絵画館 ピナコテカ・ナツィオナーレ Pinacoteca Nazionaleは15世紀に建設されたブオンシニョーリ宮殿内に設けられた絵画館で、中には12世紀末から17世紀前半ごろまでのシエナ派の傑作、シモーネ・マルティーニの「幼な児を抱く聖母」、ドゥッチョ「フランシス会士の聖母」、A.ロレンゼェッティの2点のヨーロッパ最初の風景画と「聖母子」、他にベッカーフミ、ドメ二コ・ディ・バルトロメオ、ソドマ、ネロッチョ、ジョヴァンニ・ディ・パオロなどシェナ派の画家達の作品が多数ある。サンタ・マリア・デイ・セルヴィ教会 Basilica dei S.Maria dei Serviは1234年にシエナに定住した聖母マリア下僕会会士セルヴィティが13世紀に建設を始めた。内部には13世紀から16世紀にかけてのシエナ派の絵画が飾られている。シエナとフィレンツェが争ったモンタペルティの戦いで、シエナに捕虜として連れてこられた画家コッポ・ディ・マルコヴァルドCppo Di Marcovaldoが自由の身になった1261年に描いた「ボルドーネの聖母」、マッテオ・ジョヴァンニ作「嬰児虐殺」、ピエトロ・ロレンツェッティのフレスコ画「ヘロデの宴」「洗礼者ヨハネの死」など名画が飾られている。教会の外に出ると左側に門があり、入って見るとそこからマンジャの塔が中央に聳え、左にドゥオーモがあり、シエナの街が一望に見渡せ素晴らしい景色だった。