イタリア世界遺産（JITRA)コミュのミラノのドミニコ修道会と｢最後の晩餐」

皆様ボンジョルノ。今月はミラノのドミニコ修道会、サクロモンテ、ヴァルカモニカの岩に描かれた絵画の3つを紹介します。

ミラノのドミニコ修道会と「最後の晩餐」　　ミラノ（ロンバルジア州）
ミラノにあるサンタ・マリア・グラッツェ教会とレオナルドが、ドミニコ会の食堂に描いた「最後の晩餐」と教会は1980年イタリアで2番目の世界遺産文化遺産に登録された。登録基準は（i）(ⅱ)である。

サンタ・マリア・グラッツェ教会は、1446年から1490年のルネッサンス時代に、ゴシック様式で建設された。頂上のティブーリオTiburioと呼ばれる8角形のドームを持つ後陣Tribunaは、1492年ブラマンテが付け加えたといわれる。この後陣の左手の扉をくぐると、これもブラマンテの設計した回廊Chiostroに出る。中庭には樹木が植えられ、柱と調和してすがすがしい美しさがある。

それに隣接する建物がレオナルドの食堂Cenacolo Vincianoで、ドミニコ会修道院の食堂であった。世界で最も有名な絵画のひとつレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、レオナルド・ダ・ヴィンチが仕えていたミラノの領主ルドヴィコ・スフォルツァの依頼で、1495年に描き始め1498年に完成している。レオナルドは、ルーブルにある「モナ・リザ」をはじめ、未完成の作品が多いが、「最後の晩餐」は、彼の少ない完成作品である。この絵は、ヨハネ福音書第13章21節にキリストが12弟子の一人が私を裏切ると予言し、それに動揺する弟子たちの微妙な心理状態を描いている。

キリストが「あなたたちのひとりが私を裏切ろうとしている」と語った瞬間12使徒の間には、戦慄が走った。あるものはそんな事は信じられないという表情を示し、あるものは戸惑い、恐怖、あきらめ、嗚咽などを漏らした。その一人一人の微妙な心理状況を描くためにレオナルドは、新しい構図を用いた。これまでの同テーマの絵画は、キリストを囲むように描いたがそれと異なり、長方形のテーブルの同じ側に全ての人を置いた事だった。これは現実では恐らくあり得ない。テーブルを囲むように描くのが自然だろう。するとキリストと向かい合っている人間の顔は描けない。しかし細長くイエスを中心にして使徒達を均等に配置する事によって一人一人の心理的描写が可能になった。12人の使徒は3人づつ4つのグループに構成され、左右対称に分けられていて、幾何学的にもキリストが中心に存在するという事を強調している。そのためこの絵画は人物の心理がリアルに描かれ劇的になっている。また背後に描かれた植物などがある景観はレオナルドが自然に並々ならぬ憧憬と愛情を持っていたことがわかる。モナ・リザにおいて、彼は肖像画の背後に自然を描いたが自然と人物の調和がレオナルドの目指した理想的絵画だったと思われる。よく見るとれレオナルドは、ここで使われている食器まで詳細に描き、その時彼らが何を食べたのかが識別できる(鴨のオレンジ風という)ほど完全に描いている。

絵の大きさは横910 x 420 もあり、フレスコ画でなく、テンペラ画で描かれている。ルネッサンス時代天井や壁に絵を描く場合、ミケランジェロの「最後の審判」などもそうだが、フレスコ画で描かれた。この画法は漆喰を塗り、それが乾く前に顔料を混ぜ、壁自体をその色にする技法でこれだと絵画は壁や天井に同化し、ほぼ永久に保存される。しかし漆喰と同化させるために使える色彩には制約があり、漆喰を練って乾ききるまで8時間位の短い時間で絵を仕上げる必要があり、しかも基本的には描き直し、重ね塗りは難しい。それに反してテンペラ画は、写実的描写をするのに優れ、重ね塗り、描きなおしも容易である。何度も納得のいくまで、描きなおすタイプの画家であったレオナルドは、テンペラ技法でこの作品を描いた。しかしテンペラ技法は、温度や多湿に弱く、彼が作品を完成した10年後にはすでに損傷が始まったといわれ、世界で最もダメージを受けやすい絵画の一つである。それ以来16世紀から19世紀にかけて何度も修復が繰り返されたが、逆に作品の価値を損ねるような修復もあった。18世紀末、ナポレオンがミラノに侵攻し、この食堂は一時馬舎として使用された。動物の排泄物やガスなどが絵画によいわけはなかった。第2次世界大戦中の1943年にはミラノは主要な建物の43％が破壊される空爆にあい、ミラノのスカラ座などは倒壊したが、この食堂も瓦礫の山となったが「最後の晩餐」の絵だけは奇跡的に倒壊を免れた。絵の3メートル前で爆弾が破裂したという。1977年から1999年にかけて、ミラノ芸術財団、歴史保存監督局によって、オリベッティ社の資金協力などもあり本格的な修復作業が行われた。
その作業に携わったのが、女流修復家のビニン・ブランビッラ女史で、一人で22年の歳月をかけ、
後世の画家たちが加筆したものなどを洗浄し、除去した。その結果レオナルドが描いた線や色彩は再生したが、オリジナルな部分が欠落している場所もかなり見つかった。最近では「ダ・ヴィンチ・コード」などで、この絵の関心が高まり、作品を見たいという人が急増。しかし保存のことを考えると鑑賞者に制限を設ける必要があり、ビジネスと名画の保存という難しい局面に立っている。
私がこの絵を最初に見たのは1972年、一人でヨーロッパを旅行している時だった。その後修復前に数回訪れ、修復後は2003年に訪れている。修復されてからは、見学は予約制になり、日本のツァーでもミラノに来る多くのツァーがこの「最後の晩餐」をツァーに組み込んでいる。それ故予約を取るのが大変だと聞いていたが、電話をかけると意外に簡単に予約ができた。25名くらいの人数が、約15分、中で鑑賞できる。写真撮影も禁止され、ガイドの統制のもとに無機的に見ただけだった。久しぶりに見た「最後の晩餐」の印象は色が鮮やかで特に赤と青の色が美しいと思った。しかし修復前の絵の方が、貫禄があり、名画の雰囲気がただよっていたような気がする。

joschua

コメント(1)

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[1] mixiユーザー 02月06日 04:54

サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会です。

冬はそれ程でもないが観光シーズンには、多くの人がサンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会の前の広場に、「最後の晩餐」を見る人たちが並んでいる。という事はここはミラノでももっとも盗難が多い場所である。最近は、イタリアにルーマニアなどから沢山の移民が入り、彼らの犯罪も増えている。くれぐれも身の回り、貴重品などを注意、管理してください。

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