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<小説>ちゃり・つー♪コミュの≪SCENE-5≫幸せ、と云う名の衣。

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私の初恋は、小学校の時だったっけ。



その初恋の人はある人の事が好きだった。

そういう記憶だけは覚えているのに、肝心の姿形はうる覚えだったりする。私は今でもどうして彼が好きだったのかさえも、よく覚えていなかった。

「ここの小学校なの、朝美?」
私が通っていた小学校は家からそう遠くはなかった。家から高校までの距離に比べたら、高校の校門から体育館位までの近さなのかもしれない。
「そう。その初恋の人は私と同じクラスでね、窓際から外の景色を眺めていたのをよく覚えてるの」
夕子からしたら家から結構な距離なのに、私の想い出のためにわざわざ自転車でこんな所まで付き合ってくれるなんて、私は夕子にただただ申し訳なかった。
「朝美、運動場の向こうの方にさ、誰かいるよ?」
「え、こんな時間なのに?」
放課後から数えて数時間が経つから、今はもう19時を過ぎていた。
「とりあえず、向こうまで行ってみようよ!」
「え、う、うん」
私はその人の姿形も名前さえも思い出せずにいた。
どうしてだろう。その人の事を想えば、さほど覚えてそうな情報なのに。

「あ、こんな時代に新撰組がいる!」
「え?」
夕子がビックリして、そう発言したのも無理はない。だってその人は新撰組の法被を着ていたのだから。



「マコトくん、」
「、、え!?」
私は彼の背中の文字を書いてあるまま名前の如く読み上げると、夕子の表情は少し変わった気がした。
でも何故彼がそんな辺鄙な恰好をしていたのか理由まではよく判らないが、背中の文字が正に昔の記憶と何処か一致していたから、そう発言してしまったのかもしれない。
「どうしてボクの名前を知ってるの?てか、キミたちは誰??」
「わ、私は、あ、あの、、」
私は想い出と現実の狭間で揺れ動きながら、動揺していた。

少し間を置いて、夕子は彼を見て少しだけ笑った。
「今時、法被って、、」
「そうさ、今時じゃないって事。ボクは知ってて笑いモノになってるんだ」
「?」
私はそれが気掛かりだったので、その後に続けてコトバを重ねた。
「あえて、笑われるの?それで恥ずかしくないの??」
そう云うと、彼も少し笑って続けた。
「ピエロになりたいんだ。ココロを強くするために」
人のココロは皆臆病だと、私はそう感じた。傷付きやすく、脆く、寂しく、情けなく、弱く、どうしようもなくハカナイものだと。

「ハッピで、ハッピー。なんだよね?マコトくん」
「?」
夕子は俯いたまま、彼に静かに呟いた。
「、何も変わってないんだから、、」
「ユウコ?」
夕子は顔を上げないまま、振り向いてすぐ逃げ出すように走り出した。
私は夕子を追いかける事も出来ず、彼の横顔だけをただひたすらに見つめていた。



ただ、ただ、淋しそうに。

ただ、ただ、侘びしそうに。



そう、夕空の中、で。

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