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同人 創作 自伝小説倶楽部 コミュの天上戦記 三国志天河 第二巻

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『木星?今からか?』
 劉備の居る木星から遠く離れた火星の宙域の曹操のもとに一通の命令書が届いた。その内容は木星宙域で黄巾艦隊と交戦中の政府軍と合流しこれを叩けとの事。
『まったく、海賊退治と同じノリか?お偉いさんたちは?』
 旗艦にある艦隊司令用の私室で命令書を読んだ曹操は不満を隠す事無くそう言い放つと命令書をデスクの上に放り投げた。
『ま、連中には前線の事など分かるはずもないしな。一度前線のに来てみればよいのだが。』
 曹操の放り投げた命令書をデスクの上から拾い上げた夏侯惇も不満気にそう言った。
『いや、それは良い。来たら来たで邪魔になるだけだ。何も出来ないならまだ良いが足を引っ張られてはたまらんからな。』
 遠慮なく上役の無能を公言するのは今に始まったことではない曹操の口癖のようなものだ。
 無論、夏侯惇以外の者の前では口にする事は無い。
 曹操にとって夏侯惇は部下である前に姉のような存在であり、親友でもある。他にも腹心と呼べる者は数人いるが夏侯惇は特別なのだ。
『しかしまあ、だからと言って断るわけにもいかんしな。どうする、猛徳?』
 曹操はデスクに足を投げ出した体勢のまま数秒目をつぶっていたが、目を開くと鉄扇を肩当に勢い良く叩きつけると立ち上がった。これは曹操が行動を始める時の癖である。
『お偉いさんたちには言いたい事もあるし、不満もあるが・・・』
 そう言いながらきらめく星々が居並ぶ宇宙が見える船窓へと向かう。
 そして夏侯惇の方に振り返ると、
『黄巾を叩き木星の一般市民を救う事に依存は無い。それに・・・』
『それに?』  
 夏侯惇が聞き返す。
『市民の人気を得る事はこの先の私の人生に必要な事だしな』
 曹操の野望の一端を垣間見る瞬間だ。
『元譲!艦隊を至急木星へと向かわせろ!亜空間航法の使用を許可する。』
『承知』  
 夏侯惇はそう応えると部屋を飛び出し艦橋に向かう為歩き出す。
『ああ、それと・・』  
 エアロック式のドアを開いた夏侯惇を曹操が呼び止める。
『兵たちには交代で休息を取らせてやってくれ。どんなに急いでも2〜3日はかかろう、軽い飲酒くらいなら許可しても構わん』
『承知した』
 応えた夏侯惇は軽い微笑を浮かべると艦橋へと再び歩き出す。
 それから一時間後、曹操艦隊は木星へと移動を始めた。
 その間にも曹操の下には次々に木星の情報が舞い込んで来る、そのどれもが曹操にとっては取るに足らないものばかりで目を通すだけ時間の無駄と思われたがその中に一つだけ曹操の気を引く事に成功したものがあった。
『・・・義勇軍ねえ・・・』
 それは、黄巾艦隊地上部隊が劉備らの率いる義勇軍に撃退された事が記されていた。
『黄巾艦隊も烏合の衆とは言えそれなりの武装集団ではある、それを退けるとは・・・』
 曹操は鉄扇を肩当に軽く当てた。
『面白い。会ってみたいなこの劉備と言う男』
 あわよくば自らの部下にしたいとさえ曹操は考えていた。
 曹操は有能な人材をこよなく愛する。それがたとえ敵であろうと有能な者は誰の目もはばからず懐に置こうとする癖があった。
 その危険性を夏侯惇などは何度も説くのだが曹操は『分かった分かった』と流すだけで一向に聞こうとはしない。
 だが、曹操のこの人集めの癖も曹操艦隊が精鋭部隊となった一つの理由に挙げられる。曹操艦隊に有能な分艦隊指令や参謀が多いのも曹操の人集めの賜物だからだ。
 
 兵の休息と補給を完了した曹操艦隊が木星に到着したのは火星を出発してから2日と16時間後。
『司令。本艦隊は木星宙域に入りました。なお、木星本星上空で政府軍と黄巾艦隊の交戦を確認しました』
 部下の報告と同時にモニターに木星が映し出された。
 惑星地球化計画で古の昔とはその姿を変えた青と緑の惑星の外周の一部で光球が生まれては消えそしてまた生まれている。
 その光は宇宙戦闘艦の主砲が作り出すものだと言う事は戦闘に慣れているものなら誰でも分かる事だ。
『状況は?』
 曹操は短く尋ねた。
『はっ。戦況は我が軍が不利な状況にあると思われます。元々木星守備艦隊は数も少なく・・・』 
 そこまで聞くと曹操は部下の言葉を手でさえぎった。
『分かった。ご苦労、下がってよい』
 初めから分かっていた事だ。と言うよりはこうでなくては自分がわざわざ木星まで来た意味が無い。
『では、我が軍はこのまま戦闘宙域へと移動し木星黄巾艦隊を火星に現れた輩同様にしてくれる』
 そう言うと指揮官席から立ち上がり鉄扇を振りかざす。
『全艦突撃!!黄巾艦隊と名乗る賊を跡形も無く消し去ってやれ!!』
 曹操の号令と共に曹操艦隊すべての艦が一斉に戦闘速度で前進を開始する。
 目の前の獲物に飛び掛る肉食獣の如き勢いだった。
 それまで優勢だった黄巾艦隊はたちまち戦線を分断され時間が過ぎていくに連れて元々ただでさえ希薄だった互いの連携を完全に断たれていった
 曹操艦隊が戦闘に参加して2時間ほどで形勢は完全に逆転し、さらに一時間を経過した頃には黄巾艦隊はすでに艦隊としての機能を完全に失った。
『木星の黄巾もこの程度か・・・』
 明らかに落胆した表情で溜息と共にもらした。
『敵とは言えもう少し楽しませてもらいたいもんだが、盗賊集団にそれを求めても無駄か』
 そう言うと肩肘をついたまま
『もうよい、さっさと片付けてしまえ。それよりも、上陸準備を急がせよ』
 曹操の心はすでに戦場から木星の地に居るであろう一人の男、劉備玄徳の元にあった。
 黄巾艦隊の掃討戦を終えた曹操艦隊はそのまま木星へと降り立ち、木星の住人から歓呼の声で迎えられた。
 すでに、火星での黄巾艦隊殲滅は木星まで届いていたし、同時にそれを成し遂げた曹操の名前も木星に伝わっている。その曹操が木星に駆けつけて来た事も政府軍を通じですでに木星中に知れ渡ってたのだろう、木星市民の歓声の中に曹操の名を叫ぶ者も少なからず存在する。
 戦後処理を終えた曹操はすぐさま部下に劉備の捜索、そして発見次第自分の下へと連れてくるように命じた。
 曹操の願いはすぐさま叶えられる事となる。
 曹操ぐらいのクラスになれば通常の戦艦よりも一回りから二回りほど大型の艦隊旗艦が支給される。通常の戦艦と比べ攻撃力、防御力もさる事ながら設備などもまるっきり違うのだ。
 その旗艦の中にある応接室に劉備、関羽、張飛の三人は案内され豪奢なソファーに少々堅苦しさを感じながら落ち着かない表情だった。
『劉備兄。なんで僕たちこんなとこに呼ばれたのかな?』
 張飛は特に落ち着かない様子でしきりに劉備や関羽に話しかけていた。
 関羽にしても表面上は落ち着いて見せてはいるものの多少の緊張を感じずにはいられない。
 ただそんな中でも劉備だけはいつも通りの自分を完全に保っている。
『さあねえ。心当たりと言えば黄巾の連中とやりあった事くらいだが・・・ま、少なくとも処罰されるような事はしてないから安心して座ってろ』
 その台詞が終わった直後、三人の正面にある真紅のドアが開いた。
 そしてそこに現れたのは、真紅の髪に深海の蒼い瞳を持ちその瞳には野望の火が燃え盛る一人の女傑。曹操猛徳が立っていた。
 さすがの劉備も首筋に流れる冷たい汗を感じずにはいられない。それほどに曹操の持つ雰囲気はそこいらの政府軍の者とは違っていた。
 だが、それは曹操も同じだった。
 目の前に居る金髪の学生を見た瞬間にただならぬ物を感じてたのだ。
『何だ、この男が発するものは・・・』
 今まで何人もの男を見てきた曹操もこれほどの気を持つ男には出会った覚えが無い。どんな政府の高官にも、大物と言われた宇宙海賊の頭目にも、政府軍の中でも出会った事が無い。
 それほどの気を劉備は意識せずに発している。当の本人はそんな事を言われれば笑って流すだろう。
 この出会いが何をもたらすかは二人はまだ気付いていない。
『よく来てくださった。まあ、楽にして下さい』
 曹操の第一声からとりあえず今日呼ばれたのは友好的な内容のようだと安堵する三人。
 ぎこちない緊張の糸をドアのノック音が弾く。
 一人の給仕が入室し、曹操に紅茶を三人には新しいコーヒーがはこばれてきた。
 紅茶を一口だけ含み舌の上で転がし苦味と甘みを軽く堪能した曹操が口を開いた。
『貴公の活躍は耳にしている。相手が山賊の如き輩とは言えよくぞ退ける事が出来たものだ。満足な装備もなかったであろうに』
 心からの言葉である。
『いやいや、私は何も・・・ここに居る二人をはじめとした他の人々の働きによる所が大きかったのですよ・・・』
 頭を掻きながら照れくさそうな劉備。
『謙遜する事は無い。それも、貴公と言う核があってこその事だと私は思う・・・』
 曹操の視線は関羽、張飛へと移る。
 その視線を受けた関羽はそのとおりと言わんばかりにうなずき、張飛は敬愛する兄貴分を褒められ嬉しいのだろう、喜びの笑みが顔一杯に広がっている。
『さて、今日あなたにここまで足を運んでもらったのは』
 さらに一口紅茶をすする曹操。
 音も無くカップを受け皿に戻す。
『どうだろう?私の下で働いてみないか?』
 唐突な申し出に劉備はあやうくコーヒーのカップを落としそうになった。
『・・・・・』
 数秒の沈黙が場を包む。
『どうかな?』
 曹操の問いかけに劉備は
『そうですね。悪くないお話だと思います。ですが、今のところは辞退させて頂きたく思います。』
『なぜだそれは?』
 曹操は劉備を一兵卒として部下に置くつもりは無い。それ相応の地位を用意して彼を迎えるつもりである事も話した。だが、
『いや、私はあなたのお役に立てるような人間ではありません。何より、もっと気楽に生きていたいだけなのです。』
 そこで一息つける劉備。
『黄巾に対して抵抗したのは私たちの生活を乱す輩であると感じたからであります。軍に身を置き堅苦しい軍人生活はどうも私どもにはなじめそうにありませんし』 
 そこで劉備は屈託の無い笑みを見せた。
 その表情を見た曹操は何故かは分からないが彼の言葉に納得してしまった。
『そうか。残念ではあるが今回は諦めよう。だが、気が変わった時は何時でも私を訪ねてくれ』
 曹操も屈託の無い笑顔を浮かべ返した。
『そうですな。仕事が無く飯を食うのにも困った時にはお願いにあがるとします』
 そう言って互いに笑いあう。
 その後は軽く雑談をした後に曹操も艦隊の業務に戻らなければならなくなった。
 曹操は最後に三人の手を一人一人握り今日の出会いに感謝した。
 艦を後にする三人の背中を見送りながら
『・・・惜しいな』
 隣にいた夏侯惇にすら聞こえないほど小さい曹操のつぶやきには声の大きさと反比例する心の葛藤があった。
 
『あ〜あ、何で断ったのさ劉備兄。あの様子ならかなり偉い役をくれたんじゃないの?』
 張飛は不満だった。
 自分は劉備と一緒に居られれば何でも構わないのだが、劉備にはより高い場所に居てほしいのだ。
 そんな張飛を見ながら笑う劉備。
『確かに張飛の言うとおりかも知れないねえ・・・でもなあ・・』
確かに、曹操の部下となれば恐らく新参者としては破格の待遇で自分を迎えてくれるだろう。
だが、曹操の部下になってしまえば劉備の秘めたる野望は成就する事もない。
 曹操には並みの将には無い魅力がある。カリスマと言い換えても良いかもしれないが、軍の一将校で終わるような器ではない。
 今の世の中では禁忌とされる専制君主、独裁者となり一国を治められる器だ。
 劉備にはあまりに危険で魅力のある人間だ。だからこそ、これ以上近付くべきでは無いと感じている。
『やっぱ、軍の規律規律の生活はどうにも俺には合わない気がするからな』
 張飛にはそう言って置くことで劉備はこの場を収める事にした。
『そっか。兄さまがそう言うならそれでいいや♪僕も堅苦しいのは嫌いだしね』
 張飛の言葉に嘘偽りは無い。良い意味でも悪い意味でも素直でまっすぐな娘だ。
 関羽は劉備の意を察しているのか何も言わない、ただ
『私は劉備兄に付き従うだけのこと』
 とだけ。

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