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合作小説「灰」コミュの第 15 章   幻  惑

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●・・・男・・・●

 

 

 

リンゴーン・・ リンゴーン・・

懐かしい 教会の鐘の音。

 

いつも ここには 一つの笑顔がある。

その笑顔は 幾重にも広がったり 繋がった輪となったりしながら。

 

いつでも側に居たのは Sandyだった。

あの頃は Anndyも 居たなxxx

 

もぞもぞと 寝返りを打つ。

「・・・ン? Anndy?!」

 

そこに アンディーが居た。

懐かしい 白と茶色のイルミネーション。

 

昔は 白が濃かったような気がするがxxx

まるで、紗代が洋蔵に送った キタキツネのメッセージボードのようだとシェーンは思った。

 

くぅん。。。 くぅん。。

摺り寄せて来る鼻は 相変わらず少し 湿り気があった。

 

「アン・・・ 駄目だよ おじさんを くすぐっちゃぁ!」

「おじさんじゃないでしょ!」

 

声のする方を見やると、霞んだ霧の中に 愛しのSandyの姿が見えた。

「・・・・?! Sandy?!」

 

「アナタ、いつも そうだったわね! まだ若い頃から アンに話し掛ける時は、自分の事、“おじさん、おじさん”って!」

「すると・・・俺は。。。」

 

目をこすってみても 目の前の霧は 晴れない。

Sandy・・・いや、綾子の姿は 近いようにも 遠いようにも感じられた。

 

シェーンは 風邪気味のハスキーヴォイスを涸らせながら 呟いた。

「俺は。。  死んだのか。。。。?」

 

その声は Andyに 届いたのだろうか。

Andyが ゆっくりと ほほ笑んだ。

 

「そうか。。。 Honey。。 やっと。。。 これで。。。」

途端に 白い風が 吹いた。

 

七十年近くも生き永らえて来て、初めて感じる風だ。

「俺は。。。この風を 感じられただけでも 幸せだったよ。。。」

 

シェーンの記憶が 甦って来る。

あれは。。何十年前の 記憶だろう・・・

 

綾子と出会って アンが居て。。 倖せで

「いや。。。 そんなの 何時だったかなんて どうだってイイんだよ、な? Andy・・・?」

 

久々に きちんとした名前で呼ばれた事を喜んでか

Andyは 大きなシッポを さらに大きく左右に振った。

 

「あんっ♪」

嗚呼。。。 アンディーの泣き声だ。。

 

薄れ行く記憶の中で シェーンは思った。

懐かしい。。。 全てが 懐かしい。。。

 

指先が 悴(かじか)んでいる。

少しずつ 体温が 奪われて逝く様な感覚。

 

「此れも 神様の 思し召しxxx」

さっきよりも 自分の声が 聞こえ辛くなっている。

 

昔の・・チュウジエンを・・ブリカエシタカナ・・・?

カカカッと 浅く笑う。 何故か布団が冷たい。

 

浅く流れる潮騒の音が聞こえる。。。

砂時計に包まれたような時間が 流れて行く。。。

 

 




●・・・女・・・●

 

 

「ちょっと 今日は 遊びに行かせて♪」

ダーリンは ちょっと ヤキモチ焼き。

 

結婚するって決めてから、やれ結納だ やれ式場だと

ばたばたわめいているのは 当人同士よりも むしろ 周りの方だった。

 

「どんなウエディング・ドレスがイイの?」

たっくんは そう言いながらも 自分の大好きな 純白のウエディングドレスのディスプレイに 見とれている。

 

「もう・・ 内掛けにしちゃおうかなぁ〜〜」

笑いながら 少し頬を ふくらませてみる。

 

その頬を見て 達也が指で押す。

あたしの唇からは 笑い声と 幸せな空気が漏れる。

 

流れるように飛ばされた 彼等。

灰になった恐怖と 安堵感。

 

その 両極端な感情とミックスされた 最期のプロポーズの言葉。

あたし 決して 忘れない。

 

指輪は シェーンが 拾って来て呉れた。

まるで 101回目のプロポーズのようだった。

 

あの日・・・ 号泣しているあたし達が 一瞬止まったのは

空を流れる雲が 二人の影に 見えたからだった。

 

ヒトは 死んでしまうと お星様になるのだと思っていたけれど。

けいくんと かよっちは フワフワの雲さんに なったんだね。。。

 

雲が ソフトクリームの形をしているように 見えた。

二人の真ん中で揺れていた アイスクリームの欠片の中グレイの粉雪が 降って逝った。

 

その瞬間に 達也が言った。

「溶けないアイスクリームを作ろうか。。。」

 

Melty Baby。 あたしたちの夢。

確かに あの頃から 始まっていたんだね。

 

そう フライパンを見詰めながら 泣いていた貴方も。

サボテンに刺されて アナタを思い出していた 私の指も。

 

二人だけで 紡いでゆける 溶ける程の甘い愛も良いけれど。

いつか気付く その時を あたしは 待って居たのかな。。。

 

Melty Baby。 あたしたちの結晶は

儚くも あの雲に なってしまったけれど。

 

これからは。

「溶けない アイスクリームを 作ろうか。。。」

 

 

●・・・男・・・●

 

「これで 最期に しよう。。。」

いつも そう 言い聞かせていた二人だった。

 

だけどカラダが 溺れてゆくのはxxx

寄り添う温もりから 永遠に離れられないような感覚に陥る瞬間。

 

何にも例え難いエクスタシーの中で。

恍惚を浮かべる俺の愛しい貝殻・・・ シスター。。。

 

一瞬 あの日の灰が脳裏を駆け巡る。

少しだけマリア像が浮かんだのは。

 

シスター。。 それは 教会に居るシスターでは無かった。

Shoko。。。

 

撫ぜる髪に 揺れる肢体。

絡み合う二人の影に 窓辺から入るのは 優しい風。

 

「あの日・・きっと ・・ シェーンは 可笑しかったんだわ。」

感情の無い声で Shokoは呟いた。

 

「俺と。。。 嫌か。。。?」

何度も確かめ合った温もりの中 徹也の声が響く。

 

「My lonely little Sister・・・」

慣れない英語に 昌子が笑って居る。

 

昌子が シェーンからプロポーズを受けたのは あの浜辺であった。

そう、 今では昌子とシェーンの愛の巣とも言えるべきSeaWindの目の前の浜辺で。

 

夜更けに 散歩をするのが癖になっているシェーンが なかなか戻って来ないのは いつもの癖だった。

少し 心配になった昌子が二階の窓から眺めると浜辺の砂に埋もれるようにして シェーンが冷たくなっていたそうだ。

 

びっくりした昌子が頼ってきたのが徹也だった。

シェーンをくるむ 白いソファーから隠れるように 俺達は久々に肌を重ね合った。

 

きっと 苦しかったんだ。。。 俺も。。。 お前も。。。

また 繰り返す 輪廻のような恐怖に 俺は 脅えていた。

 

 

●・・・女・・・●

 

 

「あなたって 魔性の女ね。。。」

目の前に居る女性の瞳は 黒く輝いている筈も無く。

 

目の前で走っている犬は この世のモノでは無く。

透明に 輝いて居た。

 

私は 初めて見るアンディーの姿に 戸惑って居た。

まだ 夢の中に居た 私に。

 

白い風が 舞い込んで来た。

今まで 見た事も無いような 白い風が。

 

優しい風が好きなのは紗代だった。

いつでも ひもとく言葉の中には 優しい風が有った。

 

だから、紗代のイメージは 私の中では 優しい風だった。

いつでも そうだった。

 

気が付くと、何かに導き出されるかのように 私は砂時計を眺めていた。

普通 砂時計は三分間のモノが多いような気がするけれど。

 

とても大きな 砂時計。

そして シェーンを包み込むように 薔薇の花時計もあった。

 

ここは。。。どこ?

シェーンが アンディーに 語り掛けて居る。

 

会話をしているxxx と言うよりは、

シェーンの一人芝居の様だった。

 

まるで どこかのおとぎ話の騎士(ナイト)のように

白い馬に乗った王子様のように見えたんだ。

 

「ワタシには 貴女の事が 良く解るのよ・・・」

透き通るような アンディーの声。

 

何かを 言わなければ。

けれど 声が 出ない。

 

あうあう。。。と 赤ん坊のように 口をパクパクとさせていると

「知りなさい。。。 今夜の貴女をxxx」

 

そう。。。 気付けば私は 徹也と。。。

 

 

●・・・男・・・●

 

 

・・・ン。。。

耳を澄ます。

 

 『Shanne-----』

少し 気を失いかけていたようだ。

 

Sandyと選んだ筈の 海色の毛布が

いつの間にか 茶変色している。

 

・・・ん? これは。。。

手の平で かき集める。

 

それは 砂だった。

細かくて 細かくて。。。 そして。。。 温かかった。

 

「何 バカな事 言ってるの・・・?」

綾子の声がする。

 

「アナタは。。。 倖せに なるんでしょう・・・?」

あ・・・ 唇を開きかけたシェーンの頬に 綾子の指が触れた。

 

いつの間に、 こんな 近くに。。。

綾子は もう Sandyでは無かった。

 

漆黒のような瞳が 何かを訴えかけるように。

けれど それが何か 分からない 解らない。。。

 

解らないけれど とても 愛おしい。。。懐かしい。。。

何故だか 安心出来る。

 

そして。。。 許しを乞う 罪人の様な気分に苛まれた。

「AYAKOxxxx」

 

「アナタの選んだ女性は 魔方陣の中に 生きているわ。少し ・・・ 子悪魔ちゃんね。

・・・でも、許しておあげなさい。“その時”が来たならば 私は 真っ直ぐにアナタを導いてあげるから。。」

 

声が 途切れた。 目を開けると そこにはもう アンディーの姿も

サンディーの姿も。。。 そして 砂も無かった。

 

ただ聞こえる 二つの声があった。

ソファーから起き上がり 横から覗くと そこには 徹也と昌子の半裸体が有った。

 

「OOOOOHH!」

ビクッとカラダを振るわせた二人が 斜めに転げ落ちた。

 

板の間のキッチンには 冷たい液体が零れていた。

一輪挿しの薔薇の花のような 昌子の肢体が 露になった。

 

沈黙が続いた。

「おれ・・・」

 

徹也の声を制し、シェーンは昌子の瞳を見詰めながら大声で言った。

「ボクと ケッコンして クダサイ!!」

 

開けっ放しの開き戸から 浜辺の風が 流れた。

海と同化した 人魚(マーメイド)。

 

きっと 彼等も そうなったんだろう・・・

だから これは 浜辺のプロポーズ。。。

 

そう思った昌子が感じたのは 優しい 優しい 風であった。。。



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