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リレー小説「起承転結」コミュの太陽戦隊サンバトラー〜第一回「起・笑点・結」

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俺の名は赤井英雄。通称レッドと呼ばれている。
いや、「呼ばれていた」のほうが正しいか。

「太陽戦隊サンバトラー」の一員として、
悪の地下組織、ドリルライダー一家を壊滅に追い込んだのは、
21歳、一番輝いてた頃の俺。

地球に平和が訪れた。
サンバトラーは解散した。
稼ぎが全く無くなった。
フマキラーが蚊を皆殺しにしないわけを理解した頃、俺は大人になる意味を知った。

俺は大企業に就職した。昼夜を問わず働いた。
懸命にやればやるほど、俺の任務が正義か悪かわからなくなった。

サンバトラーではリーダーだった俺。
大企業では一兵卒。部長の指令は絶対だ。
明日、解散して以来初めて、15年ぶりにブルーとイエローに会うことに。

あいつら。どんな大人になったのだろう…。

(ご)
======


俺は待ち合わせ場所である上野の丸井前に向かった。
18時40分着。土曜日の丸井前はあいかわらずの混雑だった。
「ちょっと人が多過ぎでまずいな・・・」
俺はボソリと呟いた。
ブルーとイエローが見つけ難いからという理由では決してない。
昔は人気者だった俺のことだ、大衆に気付かれてしまう・・・という理由からだった。
しかし、そうは言いながらも真っ赤なTシャツを着
て大衆にアピールしている自分なのだが、と苦笑すると背後から急に肩を叩かれた。

(おっと、サインなら勘弁だぜ)

と振り向くと、おどけた表情をしたブルーだった。

「赤井っち、見〜つけたっ」
「お、おう、青柳・・・」

現役時代、いつもクールだったブルーからは想像できない程のおどけた表情と軽いノリに驚いた。

「ヒュ〜、真っ赤なTシャツ御馳走様ですぅ〜」
「な、なんかお前、だいぶキャラが変わったな・・・」

「まあね、俺ってば今やNo.1ホストだからさぁ」
「お前がNo.1ホスト?」

「ヒュ〜、ブルーボムで上客ゲットなんでヨロピク」

青柳は当時と変わらないブルーボムの態勢をしながら、
にやけた笑顔で俺に必殺技を見せた。人間って変わるもんだ。
しかも、数々の怪人を倒してきたブルーボムがホスト芸に変わってしまうとは・・・
しつこくブルーボムをやり続けている青柳に向かって、

「なんか俺達ってみんなに忘れられちゃったのか?」
「そーいや誰もウチらに気付かないね、ヒュ〜」

「寂しいもんだな・・・」
「あれっ?あの汗だくで走ってくる太っちょ、イエローに似てなくない?ベイビー」

(鯊)
======

レッドの指差す方には、海面から突き出た潜望鏡のように、群集の波をかき分け、
激しく飛沫を撒き散らしながら巨大な上半身が疾駆して来るのが見えた。
俺と青柳は絶句した。「イ、イエローサブマリン…」

「お待たせ〜」
見下ろす笑顔は、昔のキィボーそのままだったが、どこか変!
昔からその巨漢を"燈台"だの"ロケット"だのと、
賛美を欲しいままにしていた黄茂だが一回りも膨れた感じであった。

「懐かしいぜぇ、赤井っちに青タン。ふん、ふん。少しも成長してないな」
「キィボー、成長し過ぎよ」

ブルーボムが萎えて、おネエ言葉になっていた。

「いいオ・ト・コになった、って思わない?」

「15年だぜ、あれから。俺も一家の大黒柱だ。妻あり子もあり、黒光りするオヤジってことだ。
青タンは今やNo.1ホストにのし上がった。お前はお前なりの人生をばく進中だろうな」
俺の纏め癖は、サンバトラーのリーダーだった証だ。

「真っ赤なTシャツにブルーのレオタードか。ダサいじゃないかね。まぁ、いいや。飲みに行こう」
それにしても黄茂は目立つ。イエロージャケットは、さながら幅広の『幟』だった。

赤、黄、青の3人が揃っていれば、往年の「太陽戦隊サンバトラー」復活か、と怪しまれない訳がないが、
こうアンバランスでは、かえって広小路界隈の猥雑さに埋もれてしまうのだった。
否、肩で風切る程の人気もない今じゃ、
ティッシュペーパーを配っても受け取ってくれる人はいないだろう。

飲食店が連なる裏通りは客も疎らだった。
家族連れのファーストフードが賑わっている程度で、
土曜日の晩は、酔客を殆ど見かけないものだ。

若いネエちゃんがスタンドサインに電気を入れていた。
釣られて大衆酒場「網元・源助」に入った。
通された座敷の一角は薄暗く、奥に囲炉裏があるのか、煙で霞んでよく見えない。
人声もするが、さほどに混んでいるようには見受けられなかった。
「さ、さ。遠慮なく。こういうのが大人の趣向よ。何お飲みになる?」
青タンが、テキパキ注文して、小まめに水割りを作ってやっている。

口の堅いキィボーは、『法の目ギリギリの仕事』しか明かさないが、
『某国石油プラント関係』で一年の半分しか日本にいないのだそうだ。
この体躯だもの、外国でも一歩もヒケをとらないだろう。
元同士として誇りに思わないではいられなかった。

「真に大人の世界というものが何であるか、教えてやろう。
ドリルライダーは"悪"だった。サンバトラーは"正義"だった。そうだろ?」
俺達は、互いの顔を確かめた。「その通り…」

「言い換えればだな、"地獄"か"平和"かの二つに一つ。"HELL"か"PEACE"だ。
俺のマニフェストが正にこれなんだ。『HorP』分かる?青タン」
「そ、そうっすね。キィボー」

二人は意気投合し(本当かね?)、飲むピッチが上がっていくのだった。俺は賛成できねぇ。

「現実は、そんなに甘いもんやオマヘンて。納得できねえ、ってんだよ」

青タンもキィボーも腕を上げた。
晩酌する程度の嗜みが慣習となった俺には、奴らについて行けない。
しかし奴らも、次第に何を言ってるのか、支離滅裂になっていった。
大人度をアピールすればするほど、幼稚さが目立って行くのだ。


「赤井っち、大丈夫か?顔、真っ赤っかだぞ」
そう言う青柳は、顔面、蒼ざめている。肝臓やられているな、こいつ。

「見ろよ、キィボーをよぉ」
会った時から、どこか変に思えた黄茂の顔は、実に明るい黄色だった。
暗い室内には明る過ぎだ。念の為に言っておくが、性格的に明るいのではない。
照度的に、そう…、2キロ先にも光が届くだろう程、煌々と輝いている。

黄茂の顔面は『発光ダイオード』に作り変えられていたのだった。
「キモ!」

(P)

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